「全く、仕事だからと言ってもいきなりこれは無いだろう」
霧がかかっている森の中にいる俺はポツリと呟いた。
仕事と言っても犯人の逃走中にこの森に逃げんこだと他の奴らから連絡が入り近くにいた俺が追うことになったんだが。
霧が濃すぎて一m先も見えやしない。
そして迷った、なにこれ泣けるぞおい!
しかもこの森何故かは知らないが磁石で調べても針がくるくると回るだけで方向がわからない。
富士の樹海かよ!
「クソッタレめ」
お決まりのリボルバーの弾の数を確認して腰に下げている少し眺めの警棒を掴む。
視界が悪いのなら銃は使わない方がいいだろうと判断して接近戦ための警棒を左手に握る。
相手は連続殺人犯。
その凶器である鉈はかなり肉厚で首を一刀両断して殺していたらしい。
全く嫌な時代だねぇ。
転生前まで多くの人間を殺した俺が言うのもなんだけどさ。
俺が殺さなくても誰かが殺しちまうんだよな。
それをさせない為に警察になったってのに殺されないと犯人を逮捕出来ないとは。
「世の中うまくは行かないもんだよなぁ」
少し鬱になりそうだ。
「ぎゃぁぁぁぁ!!」
男の叫び声か響いた。
なんだ?
誰かが落ちたのか?
この森には谷や崖はないはずだが。
声のした方に走る。
「おいおい、勘弁してくれよ」
頭が牛で体が人のような生き物が犯人を上半身と下半身にちぎりその内臓であろうピンク色の物体を旨そうに食っていた。
常人ならこの光景を見ただけで吐き気を催すだろうがあいにく俺は常人ではない。
この身は英雄と祀られ人を殺しすぎた身。
故に、こんなものには慣れている。
怪物を見ると前の時の知識かふと心当たりがあった。
こいつは確か、ミノタウロスか?
元はどっかの国の王子だったがその父親が神の怒りを買い呪われてしまった子供。
こんなことを考えるのは場違いだと思うが、頭は牛なんだから、何で草食じゃないんだろう?
いや、あの顔が狼やらライオンなら、まだ肉食だなってわかるんだが。
牛だぞ?あの牧場で草食ったりしている牛だぞ?
犬歯よりも臼歯が発達した草食動物の牛が何で肉をかみちぎりムシャムシャと食っているのかが謎だ。
閑話休題
食べることに夢中でミノタウロスは、まだ俺には気付いていないらしい。
ならば好都合だ。
あいつの足元にはガタガタと震えている子供がいる。
多分あれを食べ終わった後に食べるんだろう。
死徒とは戦ったことはあったがコイツには通用するだろうか?
落ち着け俺。
焦ったらすべて失敗する。
ガっ
木の根元を蹴り陸上選手の様にスタートダッシュを決めた俺はミノタウロスの股下を走りながら子供を抱き上げてそのまま走る。
「ブモォッ!」
やべバレた。
直ぐに地面を力いっぱい蹴る。
飛び上がりそのまま手頃な枝を掴んで上に行く力がなくならないうちに体を持ち上げて俺は枝に乗っかった。
これで一時しのぎにはなるだろう。
俺は下にいるミノタウロスをどうしようかと思い頭を働かせた。