スナイパーから逃れるために駐車場を抜けて林からさらに奥の森の中に入る。
進むに連れて真っ暗になっていく。
夜目は一応は効くほうだがスナイパーには及ぶまい。
俺は戦闘のレキを見失わないように歩き、なぜか村上と手をつないでいた。
理由は一つ、はぐれないためだがなんで男と手をつながなきゃならないんだ?
「くそぅ、なんで椎名なんかと」
と呟いているが俺のせりふだよ
その声にレキは振り返ると静かにとジェスチャーをしてきた。
俺と村上が近づくとレキは小声で
「声を潜めてください。敵は集音器を持っていると思われます。さっき、優さんが旅館の女性の名前を言った直後敵も同じ名前を使った」
そういえば、そうか・・・沙織さんと水の名前を言った後に敵はその名前を使ってきた。
そんなものまで使ってるとは厄介極まりないな・・・
凹凸の激しい森の中を俺達は歩いて行く。
こういう森林を歩くことも昔、してきているはずだが緊張感がまるで違う。
スナイパーに狙われているかもしれないこの状況と昔の状況は異なるからだ。
自然と汗が出てくる。
緊張によるものだ。
戦闘狂モードは使わないほうがいいだろう。
あれは、好戦的になるだけであまり利がこの場所ではない。
「レキ、どこに行くんだ?」
小声で訪ねるとレキも小声で
「さっきの敵の狙撃地点を元に今、敵がどこにいるかを予想しながらこちらの狙撃に適した地形を探しています」
アサルトで少し習ったがスナイパー同士の戦闘というのは有利な地形の取り合いになるらしい敵がよく見えて
自分が撃たれ難く自分が撃ちやすい。
そんな、場所を探してるんだろう。
「レキ様、こんな山の地形をどう把握していんですか?」
村上も小声で聞くがそれは俺も気になるな
「・・・」
レキは答えない。
「レキ」
俺が言うと
「さきほどの旅館に向かう途中地形を見ていました」
「さすがレキ様」
村上はへこんでいない。
まあ、無視されたことなど1回や2回じゃないんだろう。
その時、足元がずるりと滑った。
ぬかるんでるな・・・川が近くにあるのか?
夜目の効くレキの後に続いて川を渡ると目の前に現れたのは巨大な木だ。
樹齢1000年ぐらいありそうなその木を見上げ。
「さて、どうするレキ? スナイパーの戦いは俺は専門外だ。村上はどうだ?」
「私も専門外だ。 ここはレキ様に全てを託します」
俺と村上はそれぞれ武器をチェックしながら言う
「ここで待機・索敵し狙撃の機会をうかがいます、優さん村上さん腕時計を隠してください」
「なぜですか?」
と村上
「夜光塗料で敵に発見される恐れがありますから」
「な、なるほど」
俺と村上は腕時計を外す。
ここはプロに従うのが道理だ。
「敵はおそらくスターライトスコープも装備しています。そうでなければ夜襲はかけなかったはずですし。あの距離から黒塗りのラジコンは見えなかったはずです」
あれまでつけてるのか・・・スターライトスコープは夜の狙撃用の装備で星明りでも昼間のように見えるという優れものだ
「レキにはついてるのか?」
レキは首を横に振る
「このスコープが夜間用に装備してるのはライティング・レクティルのみです」
それは、不利とかいう問題じゃないライティング・レクティルはスコープの中の十字が光るから夜間照準ができるというものだ。
敵とどちらが装備面で優れているかなど言うまでもないだろう。
「椎名少し離れるがいいか?」
「なんでだよ?」
「男なら察せ、レキ様の前でできるものか」
トイレか・・・
「行ってこいよ。遠くには行かないほうがいいぞ」
「ああ、レキ様少し、失礼します」
ここに来るまで敵には見つかっていない。
光物も外したし大丈夫なはずだ。
村上が少し離れた時
ハイマキが耳をぴくっと耳を立てて立ち上がった。
直後、銃声が森の中から響いてきた。
村上か!
一瞬、送れて村上が視界に飛び込んでくる。
同時に俺は村上の後ろから出てきた相手に居合いから
「風凪!」
真空のカマイタチが相手にぶち当たる。
「ぎゃん」
とぶっ飛ばされた相手を見る。
闘用の犬、シャン・ペイか・・・中国では猟犬や軍用犬にも使われる凶暴な犬だ。
相手は風凪を食らっても立ち上がろうとしている。
殺す気はなかったが多少のダメージは与えたはずだぞ。
「・・・」
紫電を再び鞘に仕舞い対峙しようとした瞬間、敵は逃走を図った。
やはり、ダメージはあったからか?
「レキ追うか?」
あれが逃げれば飼い主のとこまでいくかもしれない。そうすれば隠れ場所もばれる。
「場所は先ほどの村上さんの発砲で悟られています」
きろとレキは村上を見る。
一方村上は顔面蒼白でレキに土下座した。
「すみませんレキ様・・・私が・・・私が・・・」
今にも泣きそうな声で村上は言った。
村上はレキに心酔している。
だからこそ、邪魔をしてしまった自分が許せないのだろう。
「・・・」
レキは村上には何も言わず俺を見る。
「移動は・・・もうできないな?」
敵がレキ以上のスナイパーだというならレキの狙撃から逃げ回った俺には状況が分かる。
レキはこくりと頷くと中身をだしてからカロリーメイトの箱に砂をつめて木の横に投げた。
刹那
ビシュ!
と、箱が砕け散り砂が飛び散った。
参ったな・・・もう本当に動けなさそうだ
「この木の左右に出た瞬間撃たれます。私達はもう、動けない」
遠くから銃声が聞こえてきた。
音が後に来たんだな
「予想通り敵は最初に旅館を狙撃した場所から動いていないようです。距離は2050、私のイン・レンジでもあります」
2050メートルからカロリーメイトの箱を撃てるスナイパーか・・・
今回は本当に役立たずだな俺は
「敵は狙撃のプロだと思われます。性格はきわめて自信家ですね」
「カロリーメイトを撃ったからか?」
「はい、撃つことで自分の位置を知られても負けないという自己アピールなのです。そして、敵は機械に頼っており極めて合理的な人物です」
そういや、聞いたことがあるスナイパー同士の戦いはは相手の人格も読んで精神面でも戦う
剣や銃は目の前の相手と戦う時でも読みあいや駆け引きはあるがスナイパーは相手が見えない分更に過酷な
条件になるだろう。
「長期戦になります食事を」
といってレキはカロリーメイトの半分の袋を俺にくれた。
「どうぞ」
袋を開けたレキは放心状態の村上にも自分の半分を差し出した。
村上は驚いたような顔で
「しかし・・・」
「長期戦です。あなたに空腹で判断を間違われるのは困ります」
合理的な判断か・・・
「・・・ありがとうございますレキ様」
村上はそういうとカロリーメイトを受け取った。
だが、そうするとレキの分が少なくなる。
俺はもらった袋を開けて1つを半分に割るとレキに差し出した。
ちょっと、村上が少なくなるが致し方ない
「半分にしようぜレキ」
「それは優さんが食べてください」
「この戦いのキーはお前だろ? だったら、お前が食べろ命令だ」
そうでも言わないと食べないからなお前は
「はい」
レキはそういうとカロリーメイトを受け取った。
†
幸いなことにこの木からまっすぐな位置に川があるため俺達はカロリーメイトを食べ、川の水を救って飲むということを
繰り返すこと1時間、何もしない敵も俺達も
時間はたくさんある。
過去のことをレキに聞くことも出来た。
だが、俺達は無言。
決着をつける時間は必ずある。
長期戦になれば椎名の家が察知して動いてくれるはずだ。
土方さん達だってもしかしたらこの状況を察知してくれて援軍を派遣してくれるかもしれない。
宿には水がいた。
あいつが援軍を要請してくれていれば・・・
2時間3時間と時間が過ぎていく。
そして、深夜0時を回った頃、レキが動いた。
ドラグノフの先端に銃剣をつけて制服のスカーフを銃剣につけてたらす
「・・・」
俺はそれを黙って見ていてレキはスカーフをそーっと木の外側に出した。
バシュバシュとスカーフが揺れる。
「場所は変わってるか?」
「いいえ、旅館を狙撃した地点から動いていません。おそらく機械がそこにあるため動くつもりがないのでしょう」
「本当に参った・・・姉さんとの旅の経験は当てにならん」
「水月希さんはどのように対処していたのですか?」
とレキが珍しく質問してきたので
「手からレーザー砲みたいな光を出してスナイパーごと殲滅していた」
冗談ではなくこれは本当の話である。
「私にはそれはできません。ですがそろそろ向こうは決着を急いでいるようです」
「この状況なら手ずまりだろ? 援軍到着まで粘れば俺達の勝ちだ」
レキはふるふると首を横に振った。
「時間がありません。私はこれから敵と撃ち合います。私が即死、あるいは負傷したら放置していってください。その際この銃からスコープを取り外していってください。
このスコープにはカメラが内蔵されていて狙撃の瞬間私が見ていた映像を記録できるようになっていますから敵の姿を確認できます」
「馬鹿いうなレキ!」
お前が死ぬなんて俺は認めないぞ
だが、時間がないのかレキが続ける
「私は狙撃用の武偵弾を3発所持しています」
お前も持ってるのか・・・
今回俺も持ってきてるが今回の戦いには役立っていない。
「私はこれから、武偵弾2発を使用します。3発目は通常弾を使いますのでそれが終わったらここ離脱しましょう」
レキはそういうとドラグノフのマガジンに胸ポケットから取り出した弾を入れ替える。
武偵弾だな。
「レキ!」
レキが俺を見る。悪いがこれだけは言わせてもらうぞ
「どんな状況でも俺はお前を見捨てない!絶対にだ!あの時みたいにな!」
その瞬間、レキが一瞬目を見開いた気がしたがそれは気のせいだったのかもしれない。
次の瞬間には無表情に戻る。
「私は1発の銃弾」
祈るようにレキはあの言葉を紡いでいく
「銃弾は心を持たない。故に何も考えない」
嫌な予感がする。
だが、もう止められない
「ただ、目的に向かって飛ぶだけ」
一瞬で木の側面に出たレキは発砲しすぐに木の後ろに戻ってくる。
敵の姿を見た瞬間に発砲。
この距離でM700のが着弾するまで2秒半だからものすごい技術だ。
その瞬間、森の向こうが明るくなった。
武偵弾閃光弾か!シャーロックとの戦いで使ったな。
続けてレキは再び木の側面に出て発砲。
次の瞬間
ギイイインンとすさまじい振動が届く。
音響弾か
敵がスターライトスコープを除いていてなら目が始めにやられ、2発目で耳がやられたはずである。
「敵のスナイパーは耳を押さえて苦しんでいます。単独犯で観測主はいません。敵は幼い少女です。私より年下の」
勝ったと俺は思った。
しかし、俺らより年下の少女とは世界も広い・・・
「射殺しますか?」
「駄目だ!」
武偵法もあるが俺は即座にそう叫んだ。
「では、敵の武器を破壊します」
と、レキが発砲した瞬間
ばちばちばちと音がし体の周囲ではじけた光に突き飛ばされたような仕草をした。
その場に踊るように半回転したレキのスカートがひらりとひらめく
ぴしゃとレキの下に何か水音がした。
「・・・」
レキは再び銃を構えさきほどとは違う場所を狙う仕草を見せつつ1歩2歩と後退してきた。
「レキ!おい!」
俺はレキの背中を支えて力なく崩れ落ちるレキを寝かせるように地面にかがんだ。
血のにおいを感じレキの額に手をおくとぬるりとした感触
そうとう出血してるぞ。
額の上部に重症、そして、右前腕、左大腿をやられてる。
止血しないと
「し、椎名!」
村上がかばんから包帯を差し出してくる。
「助かる!」
俺はアリスやアサルトで習った緊急の止血をレキに施していく。
情けねえ。
姉さんなら治療できるステルス使えるのに・・・
その時、ぞっとする音が聞こえてきた。
「オオーン」
「ウォオオン」」
この遠吠えさっきのシャー・ペイと同じ連中か・・・数から20匹以上はいるぞ
レキはこいつらの包囲網を察知して決着を急いだのか・・・
「優さんこれを」
レキはドラグノフと銃剣を預けてくる。
くそ!血が止まらない!
「残念ながら私は負傷しました。猟犬達を追い払い。あなたをかばいながら逃げる力はもうありません。ここで自分を守りながら
あなた達だけでも逃げてください敵はすぐに体制を建て直し私に止めを刺しにきます」
「ふざけるな!ふざけるなレキ!お前を置いて逃げられるか!」
もう、誰も見捨てない!俺は武偵になると決め時に決めたんだ。
「優さん早く・・・包囲網を縮められたら逃げる隙もなくなります・・・私は敗北しました。敵より弱かった。弱いものが倒され強いものが
それを血肉にする。それが自然の掟です」
ああ、そうかもな・・・俺はこれまで世界最強の姉さんが弱者を圧倒する姿を幾度となく見てきた。
「合理的になるので優さん・・・こうしていればみんな殺される・・・あなた達だけでも生き残ったほうがいい・・・」
違う!違うんだレキ!俺はもう、昔みたいに弱かったから悲劇を招いた俺が許せなくて必死に強くなろうとしたんだ!
ここでお前を見捨てたら・・・あの時と同じだろ!
「優さん。私のことを気遣う必要はありません。私は風が定めた宿命になぞって生き。死ぬ。それで構わないのです」
違う!それは違うんだレキ!
「ふざけるな! お前、笑ったことないんだろ! 風の命令ばかり受けて生きてきたんだろ? 何の感情もなく
死んでいくなんて俺は・・・」
レキはふるふると首を横に振った。
「優さん・・・あなたは覚えていないかもしれない・・・」
その時のレキは何かを思い出すかのような確かな感情を俺は感じていた。
「子供の頃、あなたは私に心をくれた・・・そして、私は風に命じられたとき思ったことがあるのです。あなたが
相手でよかったと・・・」
子供の頃の・・・俺の過去・・・ここまで来て俺は思い出せない・・・
なぜ思い出せないんだ・・・
「だから、優さん私は何の感情も持たずに死ぬわけではありません、。あなたが気に病むことは何もないのです。ウルスを永続させるための使命は私の姉妹が誰かが改めて追う事になるでしょう」
ふざけるな!ふざけるな!
「もう、私はいいのです。自分に・・初めて心をくれた人、あなたと共に食事し、あなたと共に旅をし、服を買ってもらった。
わずかな時間でしたがその間も、私は表現することは出来なかったけど・・・あれはきっと感情。私はきっと入れしかったのです、あなたと共に過ごしたウルスの里と・・・あの2週間は・・・良い・・・
日々だったのです」
そういってレキは血塗られた顔を上げた。
ああ、レキ・・・
そのぎこちない笑顔を見た瞬間俺は思い出した。
†
「じゃあ、僕がレキちゃんをお嫁さんにもらってあげるよ」
その言葉を聞いた瞬間の彼女は確かに笑顔だった。
†
思い出したなら・・・俺がやるべきことは1つだけだ!
だろう姉さん
「優さん行ってくださいもう・・・」
声は力を失っているが冷静なレキの声。
「できねえな」
俺閉じていた目開けるとまっすぐにレキの目を見て言う。
「死なせない!絶対にお前は死なせない!」
レキをドラグノフを肩にレキをお姫様抱っこして言った。
「・・・」
レキは抵抗しようとしたらしいが意識を失ったらしい。
がさがさと草を掻き分ける音。
ちっ!きやがったか・・・
俺が決断するより早くハイマキが俺達の前に進み出る。
シャー・ペイ達のうなり声が聞こえてくる。
お前、たった一人で挑む気なのか・・・
お前は主人に忠実で・・・俺にはなつかなくて・・・
半分振り返ったハイマキと目が会う。
「行け、レキを任せる」
そういっている気がした。
「村上!行くぞ!」
だからこそ、俺は戦友に後を任せて走り出す。
同時に20対1という絶望的な戦いが始まる中俺達は走る。
レキはもう、動かない。
村上と必死に逃走を図る。
泥水みたいな小川を何度か渡りどれほど森を走り抜けただろう。
少し、開けた場所に出た瞬間、俺は
「止まれ村上!」
「なんだ、椎名!」
何かいやがる。
冗談抜きに邪魔はいらないんだがな・・・
「久しぶりですね優希」
その声を聞いた瞬間俺は舌打ちした。
「シン」
神戸で戦ったSランク武偵ランパンのシンそして・・・
「私もいるわよ!」
青龍円偃月刀を手にしたミン
こんな時にSランクが2人・・・
「椎名ここいつらは・・・」
「村上」
俺はレキを村上に預ける
「レキを頼む。民家に出たら星伽神社に向かえ、タクシーでもそれで通じるはずだ」
シン達に聞こえないようにレキを村上に預ける。
「馬鹿をいうな椎名!お前はどうする!」
「足止めだよ。お前は残ってもこいつら相手じゃ10秒もたねえだろ」
「くっ・・・それは・・・」
「行け!」
俺は村上に背を向けたまま紫電を抜く
「もし、俺が死ぬようなことがあったらレキに伝えてくれ。俺の死をお前は気にするなってな」
「馬鹿を言うな! お、お前は大嫌いだが・・・」
村上は感じていた言葉を言い放つ
「お前はレキ様に必要な男だ!」
「死ぬ気はねえよ。早く行け!」
「死ぬな椎名! お前は絶対に・・・」
ギイイインとシンの刃つきのワイヤーを弾く。
「行け!早く!」
俺が怒鳴ると村上は何か言いたそうだったがレキを抱いて森の中に走り去る。
これで大丈夫だ。
「今生の別れそれでいいのですか優希君」
「誰が今生の別れだって?」
俺は紫電を手にしながら
「生きて帰るさ。お前らを倒してな」
体力は相当消耗してるが勝ってやる!だから、レキ・・・死ぬな・・・
頼む、村上・・・レキを治療できる場所に・・・
「殺しますよ今度こそ」
ごっとシンが突進してくる。
「やってみろ負け犬!」
紫電と仕込み刀が激突する。