バーに入ると先ほどのアテンタントがカウンターに足を組んで座っていた。
ん? 武偵高の制服? それにあのフリフリは・・・
「今回もきれいに引っかかってくれやがりましたねえ」
アテンダントはその顔にかぶせられた薄いマスクみたいなお面をべりべりとはがし始めた。
「り、理子か!」
驚いて言うと
「こんばんは」
青いカクテルをくいっと飲みぱちりとウインクしてきた。
「アタマとカラダデ戦う才能ってさけっこー遺伝するんだよね。 武偵高にもお前達見たいな遺伝形の天才がけっこういる。 でも・・・お前の一族は特別だよオルメス」
オルメス?アリアが硬直したのを見るとHの名前か?
「あんた・・・一体・・・何者?」
「理子・峰・リュパン4世―それが理子の本当の名前」
リュパン・・・あ! あれかフランスの大怪盗の・・・
「でも家の人間はみんな理子のことを名前で呼んでくれなかった。 おっ母様がつけてくれたこの可愛い名前を、呼び方がおかしいんだよ」
「おかしい?」
アリアが聞き返す
「4世4世4世さぁ! どいつもこいつも使用人どもまで・・・理子をそうよんでたんだよひどいよねぇ」
「そ、それがどうしたってのよ。 4世の何が悪いのよ?」
なぜかはっきり言ったアリアに理子は目玉をひんむいた。
「悪いに決まってんだろ!! あたしは数字か! あたしはただのDNAかよ! あたしは理子だ! 数字じゃない! どいつもこいつもよ!」
この怒りは俺たちに向かってじゃない。
だが、一つだけ分かるのはこいつを野放しにしてたらだめだ。
「曾おじい様を越えなければ一生あたしじゃない! リュパンの曾孫として扱われる」
アリアは深刻な面持ちで聞いてた。
「少しだけ・・・俺にもわかるぜ理子」
「ああ?」
理子が俺を睨みつける。
「だが、今はそんなこと話すときじゃない。武偵殺しは全部お前の仕業なのか?」
「武偵殺し? あんなものプロローグをかねたお遊びだ。 本命はオルメス4世アリアお前だ」
その目はいつもの理子の目ではなかった。
獲物を狙う獣の目
「100年前曾おじい様同士の対決は引き分けだった。 つまり、オルメス4世を倒せばあたしは曾おじいさまを越えたことを証明できる。 キンジ、優おまえらどちらでもいい。ちゃんと役割を果たせよ」
俺たちに向けられる理子の目
「初代オルメスには優秀なパートナーがいたんだ。 だから条件を合わせるためにお前らをつけてやったんだよ」
「迷惑な話だな」
俺は言いながら銃を理子に向ける。
こいつは演じてたんだ。 馬鹿理子をずっと・・・
俺たちに気付かれずにずっと・・・
「バスジャックもお前が?」
「くふ、キンジぃ武偵はどんな理由があっても時計を預けたりなんかしたら駄目だよ。 狂った時計見たら遅刻しちゃうぞ」
つまり、あの時から理子は細工を始めてたんだな。
「何もかもお前の計画通りかよ!」
キンジが言う
「んーそうでもないよ。 予想外のこともあったもん。 チャリジャックで出会わせてバスジャックでチームも組ませたのにどちらともくっつききらなかったのは計算外だったもの。 優はもう、あきらめてたけどキンジがお兄さんの話を出すまで動かなかったのは意外だった」
「兄さんを・・・兄さんをお前が?」
キンジの兄さん?
シージャックで死んだあの人のことか?
「くふ、ほらパートナーさんが怒ってるよ。 一緒に戦ってあげなよ。 いいこと教えてあげるあなたのお兄さんは理子の恋人なの」
「いいかげんにしろ!」
「キンジ! 理子はあたしたちを挑発してるわ! 落ち着きなさい!」
「これがおちついていられるかよ!」
「冷静になれ! キンジ!」
駄目だこいつ完全に頭に血が上ってやがる。
キンジは反射的に銃を理子に向けたがその瞬間、飛行機が揺れた。
「うわ!」
気付いた時にはキンジのべレッタはばらばらになり地面に落ちていた。
理子の手を見るとワルサ―P99が握られている。
潮時だな
「アリア、キンジ下がってろ!俺がやる!」
「駄目よ優! あんたなんかに何ができるのよ! あいつは私をご希望よ!あんた達は隠れてなさい!」
ばんと床を蹴り2丁拳銃を構えてアリアは理子に襲いかかる。
武偵の戦いは防弾制服があるため拳銃は一撃必殺の武器にはならない打撃武器なのだ。
ワルサー1丁とガバメント2丁の装弾数は互角。
「アリア2丁拳銃が自分だけだと思ったら間違いだよ」
そういうと理子はカクテルを投げ捨てると新たなワルサ―をスカートから取り出した。
だが、アリアは止まらない。
「くっこの!」
「アハハ」
2人は至近距離から互いに銃を撃ち、射撃戦を避け、かわし、相手の腕を自ら弾いて戦う。
次の瞬間、弾切れをおこしたアリアは両脇で理子の両腕を抱えた。
2人は抱き合うような姿勢になり銃声が止む。
格闘ではアリアが上か
「優! キンジ!」
言われるまでもねえな
俺はガバメント、キンジはバタフライナイフを理子に向ける。
「終わりだな理子」
「カドラ―奇偶よねアリア、理子とアリアはいろんなとこが似てる。 家系、キュートな姿、それと2つ名」
「?」
「あたしも2つ名を持ってるのよカドラの理子。 でもねアリア」
な、なんだ?あれは
「アリアのカドラは本物じゃない。 お前はまだしらないこの力のことを」
まるで神話のメデューサのように動いた理子の髪は背後の隠していたと思われるナイフでアリアの襲いかかる。
1撃目はなんとかよけたアリアだが反対のナイフがアリアの頭に鮮血を飛び散らせた。
「うぁ!」
反射的に後ろに下がるアリア
ちっ!
「キンジ! アリアを連れて下がれ」
ドドン
ガバメントを2連射牽制で撃った銃弾は理子には当たらない。
キンジがアリアを抱えて出て行く時間さえ稼げればいい。
「優!」
キンジの声が聞こえてくるが俺は振り返らずに
「心配すんな」
俺は目を閉じた。
2人が出て行く気配がする。
「キャハハ、優希は逃げないの? 殺しちゃうよ」
10秒・・・11秒・・・
「なあ、理子聞きたいことがあるんだ。 教えてくれないか?」
「いいよ! 理子は今気分がいいからね。 スリーサイズでもなんでも答えてあげる」
20秒・・・21秒
「アリアを殺すのか?」
「もう、死んじゃったかもしれないねぇ。 心配しなくても優も後を追わせてあげる。 それともイ ウ―に来る? 歓迎するよ」
29秒・・・
「お断りだ4世」
俺は目を開く
「お前・・・今何て言った?」
理子の怒気が伝わってくる。
この言葉は彼女には一番言われたくない言葉だ。
だが、俺はあえて言う。
「4世って言ったんだよ。 聞きえなかったのかなぁ?」
俺は口を盛大に笑みに釣り上げると理子を見下すように言い放つ。
「殺してやる」
理子はそういうとワルサ―をこちらに向けてくる。
見せてやるぜ理子。
こうなった以上。お前は終わりだ。
俺はガバメントの引き金を引いた。