武偵には強さのランクというものがある。
Sランクは特殊部隊一個小隊と互角に戦えるというものに対する称号のようなものだ。
その上にはRランクと呼ばれるランクが存在している。
このRランクは小国の軍隊なら単独で殲滅できるという化け物のような強さの称号だ。
だが、Rランクには届かなくてもRランクに匹敵すると呼ばれるものも中には存在しており
その存在はSランクに収まっているが明らかにSランクを超えている。
目の前の2人に戦いはおおよそ、人間とは思えない動きだった。
片手で日本刀で方天画戟と激突し火花を散らす。
2人が打ち合うたびに衝撃波が辺りをびりびりと揺らした。
神速の斬撃と豪腕の一撃。
槍と日本刀の戦いでここまでの戦闘が行えるのはおそらく日本中を見回しても5人いるかいないかだろう。
「はっ!」
「ちぃっ!」
雪羽の日本刀による突きをぎりぎりでかわした項羽は横に飛びながら両手で横殴りに方天画戟を雪羽に振るった。
ただの横殴りではない人間10人の胴体を一気になぎ払えるだけの一撃だ。
食らえば死は免れない。
突きの動作から日本刀を逆手に持ち替え左に飛びながら雪羽は項羽の方天画戟を日本刀で受けつつ威力を殺しながら階段に着地する。
すでに、何合と打合っているが両者の実力はほぼ互角だった。
項羽は心底楽しそうに
「ハハハハ!強い!強いなお前! お前ほどの武の達人と会ったのは久しぶりだ!」
「ほめ言葉と受け取っておきます」
片手で日本刀を項羽に向けながら雪羽は言った。
「俺の軍門に下る気はないか?」
「お断りします」
「だろうな」
「1つ聞かせてください」
「ん?」
「なぜ、優希君やレキさんを殺そうとするのです?」
「あの2人は弱さだからだ」
「弱さ?」
答える気がないというように項羽は口元を緩める。
「これ以上知る必要はないだろう。お前は今日ここで死ぬのだからな。残念だ両手であれば俺に勝っていたかもしれんのにな」
何かを隠している?
ズンズンと石の階段に何かが落ちる。
あれは鉄の腕輪?
1つ5キロはあろうかというその4つの腕輪を外した瞬間項羽の殺気がさらに濃くなった。
「ここからが本気だ鈴・雪土月花。花の次、2つ目に散るのは雪だ。心配することはない土も鈴も月も後を追わせてやる」
「・・・」
せめて片手でなかれば・・・
そう思っても始まらない。
雪羽は右手を後ろに下げた。
必殺の一撃。
勝負は一瞬で決まる。
†
「これは殺気か?」
びりびりと伝わってくる音と鉄が激突する音は俺にとって聞きなれた音だ。
紫電を手に立ち上がり廊下に飛び出した
「うわ!」
いてーな・・・足をもつれさせて倒れるなんてな。
立ち上がりかけて視界が霞んだ。
くそ・・・体がだるい・・・体調も万全じゃねえな・・・
「・・・」
激突音は続いている。
俺が1歩歩き出したとき
「優希様!」
振り返るとポニーテールに日本刀を持った少女が走ってくる。
「日向か?」
椎名の家の近衛の1人だ。
会うの久しぶりな気がするが
「睦月が向こうでヘリを用意しています。脱出の準備を」
「脱出? 状況が知りたい」
「現在、土方様と項羽が門前で激突しています。項羽の狙いは優希様です」
水が?
「お前は雪羽さんが負けるって言うのか?」
脱出を進めてくるのはそう思っているからだろう。
「18年前の武田雪羽様であれば99%負けはありません。ですが、今の雪羽様は・・・」
片手が義手だったな・・・
日本刀を持てば分かるが片手で扱うのは非常に筋力や技術がいる。
二刀流のスタイルだって二本持つから意味があるわけで1本のみ片手で扱うというのは大きなハンデでしかない。
激突したから分かるが項羽の技量は正直化け物クラスだ。
「なおさら逃げられないだろ」
俺は日向に背を向けて門前に歩き出す
「お待ちください優希様! そんなぼろぼろの状態で行っても命を落とされるだけです!脱出してください!」
慌てたように俺の前に立ちふさがる日向。その目は真剣そのものだが悪いな
「どけ」
「どきません!」
「家の中にはレキもいる。アリスもいる」
「その方達もヘリにお乗せします!どうか聞き分けてください」
ものはいいようだな・・・だが、ヘリといってもこの場所にいる全員を乗せることはできない
「もう一度言うどけ」
「どきま・・・」
「どけ!」
「っ!」
殺気の塊をぶつけると日向は息を飲んで固まった。
悪いな日向、俺はもう誰かを見捨てて自分だけ逃げるなんてことはしたくないんだ。
横を通り抜けようと1歩踏み出す
「う・・・」
ドクンと心臓が跳ねたような感覚と同時に全身が焼け付くように痛い。
これは・・・
髪の色が、目の色が変わっていくのを感じる。
緋刀の力か・・・
「ゆ、優希様!?」
初めて俺の変化を見たのだろう。
日向は戸惑った声を上げた。
「怒鳴って悪かったな日向」
俺は日向を見ずにそういってから走り出した。
体が軽い。
この変化は体力や傷の異常回復もあるらしい。
その分使った後の反動は大きいんだがな
《ほう、少しは特性を掴んできたようね》
「っ!」
立ち止まって周りを見渡すが誰もいない。
気のせい・・・いや、あの山の中で聞こえてきた・・・
「スサノオ・・・か?」
《そう》
いつの間にか俺の前に人影がある。
うっすらと体は透けているが俺の女装バージョンそのままの存在。
髪の色は背中まである緋色、目の色もカメリアの瞳だ。
アリアをうーんと成長させて見れば似たようになるかもしれない。
言えば、殺されるかもしれないけどな
それに顔はほとんど同じだが表情が妖艶な笑みという俺にはまねできない表情をしている。
これまでの状況からして認めたくはないんだが・・・
こいつは俺の中に存在している。
もう一つの人格という奴だ。
私はお前でありお前は私という言葉もこれで説明がつく。
それにしても、俺って二重人格だったのか?初めて知ったぜ
「で?何のようだ?急いでるんだが」
スサノオは門がある方角を見て
「あちらでの戦い。あれは、日本刀の負けだな」
「!?」