その日の授業は、全くと言っていいほど頭に入らなかった。
ただ櫻子に一体何が起きたのかをずっと考えていた。
櫻子のことでクラスの雰囲気は落ち込み、いつもの活気はなく、空気はどんよりしていた。
それでも周りの人達や友達や先輩は、私に気を使ってくれた。
生徒会の仕事もたくさん溜まっていたのに一向に手をつけられず、足を引っ張ってしまった。
先輩たちに言われ、私はしばらく生徒会の仕事を休むことにした。
学校からの帰りに重い足取りで櫻子のいる病院へ向かった。
何もやる気が起きない。
何もしたくない。
櫻子のことで頭がいっぱいだ。
一体何があったのか考えも及ばない。
私があの時、櫻子と一緒に登校していれば…!
櫻子のいる病院に着いた。
中に入り、階段を登る。
突き当たりの部屋。
『大室櫻子』
間違いない、櫻子はここにいる。
無事なのか、もしものことがないか、不安が頭をよぎる。
不安で心を押し潰されそうになりながら、そっと扉を開く。
「おぉ向日葵じゃん、やっほー」
頭と右足に包帯を巻いた、痛々しい櫻子の姿がそこにあった。
涙が溢れてくる。
それは櫻子の痛々しい姿が悲しかった涙か、櫻子に大事が無かったことに少し安心した涙なのかは分からない。
「ちょっと、向日葵何で泣いてんだ…?」
「いえ、ごめんなさい。大丈夫なのですか?」
「うーん、よく分からないけど全知全能の1ヶ月とか言われた気がする!」
…………どうやら頭は大丈夫のようだ。
「全治1ヶ月と言いたかったのかしら?」
「あ、それかもしれない!何だか右足を骨折したみたいでさ~。」
「骨折!?」
「うん、結構痛いんだぞ~」
「それはそうだと思いますが…、一体何があったのです?」
「何でそんなこと聞くんだ?………まあいっか、ちょっとヘマして車にはねられちゃった。」
テヘヘ、と言いながら櫻子は頭に手をまわす。
「え、事故にあったのですか!?そんなことをどうしてヘラヘラして言えるのです!?」
「な、何で怒ってるんだよ?」
「ご、ごめんなさい…。これ食べますか?」
病院く来る途中に買った林檎を出す。
「わーい、食べる食べる!」
「皮を剥いてあげますわ。」
「ありがとう~♪ 向日葵にしては気がきくじゃないか。」
「私にしては、とは何ですか。」
「いいじゃんいいじゃん。それよりも早く早く!」
「はい、はい。」
「あの、さ…こんなことを…ひ、向日葵に頼むのも…あれだけどさ…。」
櫻子は口ごもる。
「何ですの?」
「向日葵の焼いてくれたク、クッキー食べたい…。」
な、何だこの可愛い生き物は!?
櫻子がデレている…?
「しょうがないですわね、今度焼いてきますわ。」
「わ~い、ありがとうー!」
「もう、心配も少し和らぎましたわ。」
「………へ?心配?」
「心配しましたわよ。授業の時なんかも全く集中できないほど…。」
「別に心配何かしなくても良かったのに~。」
「…………え?」
皮を剥きかけの林檎が手を滑り、床に落ちる。
「別に向日葵に心配される筋合いは無いしさ、向日葵は向日葵のことをしてなよ。」
「な、何でそんなことを…?」
「だって、向日葵は私のことなんかどうでもいいんだろ?」
パンッ!
「…………い、痛いな!何すんだ!私は怪我人なんだぞ!!」
「私がどれほど…どれほど心配したと思っているんですか!?本当に馬鹿ですわあなたは!もう知りません!」
「はぁ、何で逆ギレしてんのさ!?」
「あなたが分からず屋だからです!」
私は病室を飛び出した。
読んでくださりありがとうございました。