ひまさく物語   作:眉男

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前回の引き続きです。


(2)

その日の授業は、全くと言っていいほど頭に入らなかった。

 

ただ櫻子に一体何が起きたのかをずっと考えていた。

 

櫻子のことでクラスの雰囲気は落ち込み、いつもの活気はなく、空気はどんよりしていた。

 

それでも周りの人達や友達や先輩は、私に気を使ってくれた。

 

生徒会の仕事もたくさん溜まっていたのに一向に手をつけられず、足を引っ張ってしまった。

 

先輩たちに言われ、私はしばらく生徒会の仕事を休むことにした。

 

学校からの帰りに重い足取りで櫻子のいる病院へ向かった。

 

何もやる気が起きない。

 

何もしたくない。

 

櫻子のことで頭がいっぱいだ。

 

一体何があったのか考えも及ばない。

 

私があの時、櫻子と一緒に登校していれば…!

 

櫻子のいる病院に着いた。

 

中に入り、階段を登る。

 

突き当たりの部屋。

 

『大室櫻子』

 

間違いない、櫻子はここにいる。

 

無事なのか、もしものことがないか、不安が頭をよぎる。

 

不安で心を押し潰されそうになりながら、そっと扉を開く。

 

 

 

 

「おぉ向日葵じゃん、やっほー」

 

 

頭と右足に包帯を巻いた、痛々しい櫻子の姿がそこにあった。

 

涙が溢れてくる。

 

それは櫻子の痛々しい姿が悲しかった涙か、櫻子に大事が無かったことに少し安心した涙なのかは分からない。

 

「ちょっと、向日葵何で泣いてんだ…?」

 

「いえ、ごめんなさい。大丈夫なのですか?」

 

「うーん、よく分からないけど全知全能の1ヶ月とか言われた気がする!」

 

…………どうやら頭は大丈夫のようだ。

 

「全治1ヶ月と言いたかったのかしら?」

 

「あ、それかもしれない!何だか右足を骨折したみたいでさ~。」

 

「骨折!?」

 

「うん、結構痛いんだぞ~」

 

「それはそうだと思いますが…、一体何があったのです?」

 

「何でそんなこと聞くんだ?………まあいっか、ちょっとヘマして車にはねられちゃった。」

 

テヘヘ、と言いながら櫻子は頭に手をまわす。

 

「え、事故にあったのですか!?そんなことをどうしてヘラヘラして言えるのです!?」

 

「な、何で怒ってるんだよ?」

 

「ご、ごめんなさい…。これ食べますか?」

 

病院く来る途中に買った林檎を出す。

 

「わーい、食べる食べる!」

 

「皮を剥いてあげますわ。」

 

「ありがとう~♪ 向日葵にしては気がきくじゃないか。」

 

「私にしては、とは何ですか。」

 

「いいじゃんいいじゃん。それよりも早く早く!」

 

「はい、はい。」

 

「あの、さ…こんなことを…ひ、向日葵に頼むのも…あれだけどさ…。」

 

櫻子は口ごもる。

 

「何ですの?」

 

「向日葵の焼いてくれたク、クッキー食べたい…。」

 

な、何だこの可愛い生き物は!?

 

櫻子がデレている…?

 

「しょうがないですわね、今度焼いてきますわ。」

 

「わ~い、ありがとうー!」

 

「もう、心配も少し和らぎましたわ。」

 

「………へ?心配?」

 

「心配しましたわよ。授業の時なんかも全く集中できないほど…。」

 

「別に心配何かしなくても良かったのに~。」

 

「…………え?」

 

皮を剥きかけの林檎が手を滑り、床に落ちる。

 

「別に向日葵に心配される筋合いは無いしさ、向日葵は向日葵のことをしてなよ。」

 

「な、何でそんなことを…?」

 

「だって、向日葵は私のことなんかどうでもいいんだろ?」

 

 

 

 

 

パンッ!

 

 

 

 

「…………い、痛いな!何すんだ!私は怪我人なんだぞ!!」

 

「私がどれほど…どれほど心配したと思っているんですか!?本当に馬鹿ですわあなたは!もう知りません!」

 

「はぁ、何で逆ギレしてんのさ!?」

 

「あなたが分からず屋だからです!」

 

 

 

私は病室を飛び出した。




読んでくださりありがとうございました。
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