ひまさく物語   作:眉男

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前回の引き続きです。


(3)

 

 

何だよ、向日葵のやつ。

 

何で私がビンタされなきゃいけないのさ。

 

「………痛い。」

 

頭は軽傷ですんだ、右足は骨折してるからとても痛い。

 

………でも向日葵に叩かれた頬はもっと痛い。

 

何でだよ?

 

「あーあ、なんか憂鬱だなー。」

 

病院って暇だな。

 

真っ白な空間に私がたった一人。

 

漫画が無ければ、ゲームも無い。

 

………向日葵の焼いたクッキーも無い。

 

「退屈だな………」

 

 

 

 

櫻子のお見舞いに行ってから2週間が経った。

 

あの日以来、お見舞いには行っていない。

 

心配して本当に損した。

 

心配なんてしなくて良かった。

 

櫻子のことで悩んでいた自分が馬鹿みたいだ。

 

「向日葵ちゃん、おはよう…」

 

赤坂さんと吉川さん、二人はいつも挨拶をしてくれる。

 

「おはようございますわ。」

 

「向日葵ちゃん、大丈夫?」

 

「何でです?」

 

「ずっと元気がないし、櫻子ちゃんのお見舞いにも行っていないみたいだし…」

 

「ご心配には及びませんわ、でもありがとうございますわ。」

 

「そう?何かあったら言ってね、私達友達なんだから。」

 

「えぇ。」

 

二人とも本当に良く気を使ってくれる、櫻子とは違っていい子たちだ。

 

「それから櫻子ちゃん、リハビリ始めたみたいだよ。」

 

「え、まだ怪我は完治していないのではなくて?」

 

「それが、体を動かしてないと退屈で仕方が無いからやってるって。私達はまだ止めておいた方がいいって言ったんだけど…」

 

「櫻子ちゃんったら、言うことを聞いてくれなくて…」

 

本当に何も考えてない、あの馬鹿は。

 

 

 

 

 

右足が思うように動かない、私の体ってこんなにも言うこと聞かなかったっけ?

 

とにかく何かしていないと、暇で暇でしょうがない。

 

向日葵とのあの日のことを思い出す度にムシャクシャする。

 

向日葵以外の友達や先輩たちはいつも見舞いに来てくれる。

 

向日葵は薄情者だ、ただのおっぱい野郎だ。

 

考えてみれば、今まで向日葵が近くにいなかった日はそんなに無かった。

 

傍にいなかった日はあったけど、それが2日以上続くことなんて無かった。

 

あかりちゃんも、ちなつちゃんも、歳納先輩も、船見先輩も、杉浦先輩も、池田先輩も、松本会長も、西垣先生も傍にいない日はたくさんある。

 

でもいつでも側には向日葵がいた、いてくれた。

 

それが当たり前だった。

 

そうだ、向日葵とはいつも一緒にいたんだよ。

 

ずっとずっと、昔から。

 

「あれ、おかしいな……」

 

不意に涙が頬を伝う。

 

拭いても拭いても止まらない、むしろどんどん溢れてくる。

 

向日葵のことなんてどうでもいいはずなのに、向日葵のことなんか………………嫌いなはず………なのに………。

 




読んでくださりありがとうございました。
次はおそらく年明けになると思います。
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