目が腐ったボーダー隊員 ー改稿版ー   作:職業病

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遅くなりました。そして改稿前とほぼ変わってません。申し訳ありません。

カバー裏的なの
捻くれ女ったらし はちまん
ボーダーの美女及び美少女を無意識に手玉にとる男性隊員の敵。しかし本人はその事を全く自覚しておらず、自身がリア充であることを理解していない。一体彼のSEは仕事をしているのだろうか。戦闘面ではバイパーをリアルタイムで弾道を引く弾バカ。トリオン量は二宮さんに次ぐ量あるというのになぜ弟子はこのような戦法になってしまったのか。那須さんの戦法は100%こいつのせい。弾バカ。

第3の菩薩 サッサン
来馬さん、ゾエさんに次ぐ第3の菩薩精神を持つ現時点ではNo.4攻撃手。原作スタートの時点では村上にランクを抜かされるがあくまでポイントで負けてるだけで実力的にはほぼ同じ。来馬さんのような腰の低さとゾエさんのような柔らかな態度により歳下からは一部親しまれ尊敬され一部の歳下からは完全に舐めくさられる。歳上からはいい後輩というポジションをゲットした。「怒らないから言ってごらん」と言って本当に怒らない。恐らく彼に怒られたのは太一くらいしかいない。奉仕部と違い飢えた人に魚の取り方を教えるのではなく飢えた人には佐々木メシを献上する。

とりあえず殴る なつき
気にくわない事があるとなんでも拳一つで解決に持ち込もうとする暴力少女。下心満載の男が近づいてくるととりあえず殺気で押し戻そうとし、殺気が効かないやつは殴るというスタンス。特別下心がない男は表面上人当たりよく接しているが、実は内心黒一色になっている。なお、ボーダーの男性は基本平気。怒るとそのやばさから核兵器に一部の人間から例えられている。なんだかんだで仲間思いのCカップ。


11話 柄にもなく、彼は贈り物に頭を悩ませ周囲の視線に胃を痛める。

今おれは駅前の時計塔の前のベンチでスマホいじくってます。本部からの連絡が来たのだ。決してやることがないからではない。

本部からの連絡とは前の一件により二宮隊はB級に降格となり、鳩原さんは表向きは隊務規定違反によりクビ。そしてその責任を取らされ二宮隊は降格となったという連絡だ。あくまで表向きではあるが。事実を知ってる人はかなり少ないだろう。うちの隊も守秘義務が課せられてるし。

 

そしてその代わりに影浦隊が昇格した。もちろん昇格試験的なのもパスしたらしい。あれ、これ次のランク戦影浦隊とじゃね?マジかーあの人達わかりづらいからやなんだけどー。ソロならいいのに。

 

さて、話を戻そう。なぜ今おれが駅前にいるか。断じて今頭上を通っているモノレールを眺めるためではない。人を待っているのだ。

理由は簡単、数学を綾辻に教えてももらって、そのお礼に買い物に付き合うというアレだ。

 

そしておれは思う。女性と二人で出かけることは全てにおいてデートというだろうか。おれは思わない。例えば作家が女性編集と出かけることがデートというだろうか?言わない。それは仕事だ。だから女性と二人で出かけることが全てにおいてデートとは言わない。だからこれもデートではない。買い物に付き合うだけだ。

 

まぁ、実際感謝もしてるから買い物に付き合うくらい吝かではない。どこいくかしらないけど。

やがて向こうから綾辻がやってくる。おれに気づき小走りで近寄ってきた。おれはこういう待ち合わせすると時々ステルスが発動して気づかれないこともあるのだが、綾辻相手にステルスが発動したことはない。不思議なことに。

 

「ごめん八幡くん!待った?」

「いや、5分くらい。というかまだ待ち合わせ時間になってないから謝る必要はないだろ」

「まぁ、それもそうだね」

「じゃ、いくか」

「うん。…あ、八幡くん」

「ん?」

「この服、その、どうかな?」

 

若干頬染めんな上目遣いやめろ。かわいいから。

綾辻は今白のワンピースみたいなのに薄手の黒のカーディガンみたいなのを合わせ、赤いハンドバッグを持っている。どことなく女子大生みたいな雰囲気だ。

 

「…あ、まぁそのなんだ?よく似合ってる」

 

マニュアル通りにしか答えられないおれを責めるなよ?こちとらもとコミュ障だからな。

 

「そっか…。うん!ありがとう!」

 

満面の笑み。どうやら当たり解答みたいだ。よかった。

 

「で、どこいくの?」

「最近できたあの大きいモールいってみようかなって。そこでちょっとぶらぶらして何買うか決めようかなって思ってるの」

 

ああ、あのやたらでかいモールか。最近なんか特集みたいのやってたな。確か映画館まであるのだとか。まさにお買い物天国みたいなとこだ。

 

「じゃ、移動しようか」

「おお」

 

 

電車で二駅移動し、そこから無料バスで大型モールに到着。はじめて来たが、なかなか圧巻の大きさだ。

 

「おお、でけぇな」

「日本最大級とか言ってたからね」

 

でかいのはいいのだが、でかすぎない?これ多分端から端まで移動すんのだけでも結構時間食うぞ。

モール内に入ると休みの日だからか結構人いる。ぼっちには辛い空間だな!人混みは苦手だぜ!ついでにいうと人間そのものが苦手だぜ!冗談ですすいません。

雑談しながらぶらぶらしてると綾辻がショーウィンドウに飾られている服をへーとかおーとか言いながら眺めている。

 

「八幡くん。ここ入ってみていい?」

「ん?ああいいぞ」

 

入ったのは、まぁ当然ながら女性ものの服屋。ぼっちどころか男にとっては辛い空間だな。というか女子同伴で入ってきてるのに店員さん警戒レベルあげないで。傷ついちゃう。

女子というものはこうやって服をみてるだけでもいいのだとか小町が前言ってたな。いろいろ物色して、いくつか手に取り眺めては戻し眺めては戻しをしている。おれは服に関しては全く知識も教養もセンスもない。だから今着てる服も小町に選んでもらってコーディネートしてもらった。

なぜか小町はおれが今日綾辻と出かけることを知っていて、おれが適当に選んだ服を着てこうとしたら「ふんずけてやる!」と言わんばかりの酷評だった。お前はおすぎか。いやピーコだっけ?どっちでもいいか。ただ二宮さんほどの酷評されなかったことはまだよかった。いや二宮さんほど酷評する人そうそういないけどね?

 

「八幡くん、これとこれどっちがいいかな?」

 

そう言って見せてきたのはベージュのカーディガン?みたいなのと赤いこれもまたカーディガン的なの。というかおれに服のこと聞くなよ。

 

「…いや、おれ服に関しちゃマジでセンスないから。今朝も酷評されてきたばっかだし」

「え?二宮さんに?」

「小町だよ!」

 

なんで朝から二宮さんに酷評されにゃならんのだ。というかなんで二宮さんがおれの服酷評すんだよ。どんだけ酷評イメージついてんだよ。でもあの人のオサレオーラは異常。

 

「…赤い方が綾辻のイメージには合ってると思うぞ」

 

多分ね。

 

「そっか。じゃあこれにしようかな」

 

あ、買うの。というかおれの意見で決めていいのか?ものすごく不安なんだけど。

 

「おれの意見で決めていいのか?さっきも言ったがおれは服に関しちゃマジでセンスないぞ」

「うん、八幡くんが決めてくれたのがいいの」

 

……いや、クールになれ、八幡よ。これはアレだ。勘違いへの第一歩となっしまうアレだ。綾辻はそういうアレでアレをアレしたわけではない。

「Calmaaato!」(訳:落ち着け)とどっかの美食家みたいなことを脳内で叫びながら他にもいろいろ物色している綾辻を眺める。とりあえず店員さんは警戒レベルを下げよう。何もしないしストーカーではないから。

 

ーー

 

その後来たのはなぜか男物の服屋。なんでもおれをコーディネートしてくれるとかなんとか。おれは着せ替え人形じゃないんだけどな…。

 

「うーん、八幡くんは黒のイメージが強いから別の色も試してみようかな」

 

多分黒イメージが強いのは隊服のせいだ。多分。

 

「あ、これとかどうかな」

 

とったのは、青いベストっぽいのと白い襟付きシャツ。ほう、よくわからんがよさそう。よくわからんが。

 

「試着してみてよ」

「え、いや、おれ買わないぞ?」

「買わなくても試着するだけでもいいんだよ」

 

そういうもんか?本当に買う気ないし試着だけっていいのか?

まぁ勧められてんだし試しに来てみるか。

試着室に入りもそもそと着替える。すると外からなんか声が聞こえてきた。

 

「彼氏さんですか?」

 

……多分、店員だろう。若い女性店員の人いたし。どこをどうみたらおれみたいな目が腐った奴があんな優等生オーラ全開というかガチな優等生の彼氏に見えるんだよ。

 

「え⁈え、いや、えと、その、ま、まだ彼氏では、ないです…」

「まだ、ですか」

「……」

 

聞こえてるからね?なんか着替え終わったのにすごく出て行きづらいんだけど?

つってもいつまでもこのままなのもアレだし、とりあえず出てみる。いたのはやはり若い女性店員さんと顔が真っ赤の綾辻だった。…うん、おれ悪くないけどなんかごめんなさい。

 

「……あ、き、着替え終わったんだね!ど、どう?着心地は⁈」

 

そんな狼狽えんなよ。そんなに嫌だった?おれが彼氏扱いされんの。

 

「まぁ悪くない。似合ってるかはしらん」

「へぇ、結構似合ってますよ。落ち着いた感じが彼氏さんによくあってると思います。もう少し明るい色でもいいかもしれませんね」

「…あの、彼氏じゃないす…」

 

綾辻もなんか言ってよ。顔真っ赤にしてないで。嫌なら嫌って言っていいから…。

 

「他のも試してみてはいかがでしょうか?」

 

というか買う気ないんだけど…。

それから適当にいろいろ見てみたがもとよりおれは買う気なんぞ皆無だからそのまま店をでた。出る時店員さんに意味深な笑みを浮かべられたのはなぜだろう。買ってけやってことかな?なんか違う気がする。

 

 

そのままぶらぶらしてると電気屋の前にさしかかる。その電気屋で売られているテレビに見覚えのある人が映ってた。というか嵐山さんだった。見た所ボーダーの特集らしい。

 

「あ、この前の取材のやつだ」

「今テレビで映ってる人が隣にいるというのも不思議な感じだな」

 

よくまぁテレビカメラの前であんなスマイルふりまけるよな。おれならきょどって噛んで盛大に目を泳がせて不審者扱いされるのがオチだ。

 

「八幡くんも一応忍田さん派なんだからやってみたら?広報」

「それはおれに死ねと言ってるのか。前にも言ったができるわけないだろ」

 

いやほんとマジで。カメラを向けることはできるかもだけど向けられたら死ぬ。カメラに魂吸われちゃう!

 

「最初は緊張してもそのうち慣れるよ。私も最初からあんなだったわけじゃないし」

「ムリだからね?どんなにギャラあってもそれはお断りだ」

 

なにせおれは元コミュ障だ。ムリに決まってる。

いや多分佐々木さんと横山だけならなんとかなるのかもしれん。あの人達人当たりはかなりいいし。(ただし、横山の場合下心満載の男を除く)

と、そんなこと話してるところの横で女子大生らしき人がなんか話してる。

 

「あ、ボーダーの嵐山さんだー!この前初めて生で見たんだよ!すごくカッコよかった!」

「えーいいなー!私も見たかった」

「隊服の嵐山さんもいいけど私服もよかったよー!今度話しかけてみようかな」

 

おお、嵐山さん大絶賛だな。さすが顔なだけある。

 

「嵐山さんすげぇな」

「すごいよね。大人気だもん」

 

強くてイケメンで爽やかで勉強もできる。最強だな。

 

「大学でもモテモテそうだな、あんま相手にしてるとこ想像できないけど」

「まぁやっぱりそれなりに人気あるみたいだよ。でも本人は『ボーダーの仕事が第一だ!』って言ってたけどね。………でもモテモテに関しては八幡くんがいうかな…」

 

ん?後半なに言ってるか聞こえなかった。周囲がうるさいからか?

 

「後半なに言ってんのかよく聞こえなかったんだが…」

「なんでもないですよーだ」

 

なんで若干膨れてんの?え、おれなんか気に触ること言った?やだこの子反抗期?というか心当たり皆無なんだけど…。

 

「じゃ、いこ。八幡くん」

「え、あ、ああ」

 

ふむ?結局なんだったんだろう。

 

「……いつか気づいてもらうからいいもん」

 

また綾辻がなんか言ったがそれはおれの耳には届かなかった。なんだったんだろうか。

 

 

いろいろ見てると既に昼時になっていた。広いだけあって飲食店もかなりたくさんある。

 

「どこ入ろっか」

「お任せする」

「んー八幡くんなにか希望はある?」

「希望、ね。高すぎは勘弁な」

「いやそんな高いとこはいらないよ…」

 

さすがに入らないか。定時給料貰ってても一応学生だもんな。

 

「つってもおれがいく飲食店なんて基本サイゼかラーメン屋しかないからよくわからん」

「そっか。じゃああそこはどうかな」

 

そう言って指差したのはラーメン屋。あれは確か佐々木さんの家の近くにあるやつと同じやつだ。取り扱ってるラーメンはあっさりからこってりまで幅広く、男性女性共になかなかの人気があるとこだ。

 

「おお、いいじゃん」

「じゃ、決まりだね!」

「綾辻はいいのか?ラーメンでも」

「うん、好きだからね!」

 

お前がラーメン好きとは意外だな。というか手は引っ張らなくていいから自分で歩くから。恥ずかしいし周囲の視線がきついから…。

 

 

「おいしかったね」

「そうだな」

 

ラーメン屋を出て再びぶらぶらしてる。よく考えたら今日ほとんどぶらぶらしてるだけな気がする。いや綾辻は少し服買ってたけどおれなんも買ってないし。

そこでふと目に雑貨屋がとまった。ぶっちゃけL○FTだ。小町に朝言われたことを思い出す。

 

『お兄ちゃん!もしL○FTいったらこのペンケース買ってきて!』

 

スマホに送られてきた画像を見る。なんか今時女子高生が使ってそうなペンケースだった。何がいいのかよくわからんが、何かしら魅力があるのだろう。

しかし値段が意外と高い。なんだこれ、こんなほぼプラスチックでできてるやつのどこにこんな金かかってんだよ。失笑するぜ。

 

「あー、すまん綾辻。ここ入っていいか?」

「うんいいよ。珍しいね八幡くんがこういうとこ入りたがるなんて」

「いや、小町に頼まれごとされてな。それ買うんだよ」

 

まぁ最近勉強頑張ってるしそのご褒美も兼ねて。ッベーマジおれ妹思い。

 

「なるほどね。じゃ、いこ!」

 

ーー

 

中に入りお目当のものを探すが、しかし広いなここ。文房具のとこはどこだ。お、あった。

 

「えーと…。あ、これか?」

「こっちじゃない?」

「あ?そっちか…。なんか似たようなのばっかでわかんねーな…」

 

全部同じようにみえる…。なに、これはおれの目が腐ってるから?節穴だから?

手に取ってみるが、どこがいいのかわからん。ぶっちゃけ今おれが使ってるやつの方が実用性高い気がする。すぐ壊れそうこれ。こんなのに金かけんのか女子高生…。げんなりしちゃう…。

 

「女子高生ってみんなこういうの使うのか?」

「ううん、私は使わないな。クラスで使ってる人はいるけどね」

 

やはり個人差があるのか。一概には言えないもんだな。

とりあえず頼まれたのはこれでいいだろう。恐らくきっと多分大丈夫だ。

 

「あ!八幡くん見て見て!これ八幡くんに似てる!」

 

そういって見せてきたのは、なんだこれ。やる気なさげな目をしたアホ毛がたってる猫だ。えーおれこんなやる気なさげな目してる?アホ毛はそのままだけど。

 

「ほら、アホ毛そっくり!」

「そっくりっていうかそのまんまだな…。というかこんなやる気なさげな目なのおれ…」

「それは……まぁ、ね」

 

あれ、目から汗が……。

と、そこで横に置いてある犬的な何かが目に入る。なにこいつ、サッサンそっくりじゃん。

 

「これは佐々木さんそっくりだな…」

「あ、ほんとだ。あ、このウサギは夏希に似てない?ほら、この拳握ってるとことか!」

 

そっちかよ……。顔じゃなくて武闘派の方で似てるかよ。

しかしこういう話をしてると自然と笑みがこぼれる。昔から綾辻とはこんな感じだからかもしれない。こういう一時は純粋に楽しいと思えるように今はなったのはボーダーの連中のおかげだろう。

 

ーー

 

「あー綾辻、ちょっと買うもん他にもあるからお前好きなとこ見てていいぞ。終わったら連絡するし」

「そう?じゃあ私本屋いるから終わったら来てね」

「ああ」

 

そうして綾辻は本屋へ向かっていった。さて、どうしよう。あいつが喜びそうなのってなんだろ。昨日スマホでいろいろ調べてみたがよくわからんかった。横山に何かしら聞いとくんだったな…。

いろいろ見て回るが、やっぱりわからん。さぁ、マジでどうしよう。

うんうん唸ってると、後ろから声かけられる。

 

「お困りのようだね、比企谷くん」

 

なんでいんだよ…。

 

「なんでいんだよ宇佐美…」

 

まさかストーキングしてたわけじゃねぇだろうな。

 

「ストーキングなんてしないよーひどいなー比企谷くんは」

「いや心読むなよ」

 

なんでわかんだよ……。

 

「あたしはひゃみちゃんと買い物来てたんだけどね、はぐれてあたしが迷子になっちゃったの。それで集合場所としてここに来たら比企谷くんが遥とイチャラブしてるからそれを後ろからニヤつきながら見てたってわけ」

 

結局ストーキングしてんだろ!なにニヤついてんだ!ニヤつく要素ねぇよ!おれは綾辻みたいな美人が横にいる状態で周囲の視線がやばくて死にそうだったのになにやってんだお前!

ちなみにひゃみちゃんこと氷見亜季は二宮隊のオペレーターだ。

 

「今日遥誕生日だから比企谷くんもそれ買おうとしてたんでしょ?あたしもひゃみちゃんと合流するまでに何かしら買っとこうと思ってね。比企谷くんどーせわかんないでしょ?」

「まぁ、わからん。そう言ってもらえると助かる」

「よし決まり」

「で、どういうのがいいの?」

「実用的なものと形に残るものだね」

 

実用的なものと形に残るもの?どういうことだ?

 

「ほら、遥事務仕事多いでしょ?それに役立つものとかさ。あと形に残るものってのは、アクセサリー的なのとか」

 

なるほど、そういうことか。

ふむ、なら…

 

「これとか?」

 

とったのはブルーライトカットメガネ。確か綾辻前にパソコンで目が疲れるとか言ってたし。

 

「あーいんじゃない?メガネ人口増えるし」

 

えーそっちかよー。

とりあえずブルーライトカットメガネは赤いフレームにしておこう。

 

「ふむ、じゃああたしはこれにしよっかな」

 

そう言って手にとったのは万年筆。なんの記念だよ…。あ、誕生日か…。しかし誕生日に万年筆ってどうなんだろ?いいのかな?わからん。

次は形に残るもの。ッベーこれマジでわかんねー。マジっベーわ。

 

「これはほら、ネックレスとかそういうの」

「おれのセンスに任せていいのかが心配でならないんだが…」

「いやー遥比企谷くんのならなんでも喜びそうだけどね」

「それはあまりにも偏見過ぎないか…?」

 

おれのセンスのなさは小町のお墨付きだからな。それに贈り物なんてしたことほとんどないし。去年一昨年は嵐山隊の誕生日パーティーに横山が選んだプレゼント渡しただけだから。なぜかその時横山が選んだということは絶対に口にするなと拳を握りながら言われた。なぜだ。

 

「はー…。比企谷くんは本当にもう…」

「あ?」

「朴念仁……」

「なんでだよ…」

 

なんでだよ、おれ超直感あるし超鋭いだろ。

しかし早く選ばないとな。あまり綾辻待たせんのもアレだし。おれのサイドエフェクトフル活用で選んでやる。超直感の力!目覚めよ!ユニバァァァァァァース!なにいってんだおれは。材木座かよ……死にたい……。

 

「あ、これとか」

 

ブレスレット的なやつ。

 

「お!比企谷くんいいセンスしてるね!じゃ、あたしこれ」

 

宇佐美はネックレスをえらんだ。ほう、よくわからん。

 

「まぁ、こんなもんかな」

「そだね。あ、ひゃみちゃん来たみたい。あたし行くね。またね比企谷くん!」

「おお、サンキューな」

 

そうして宇佐美は去って行った。さて、おれもとっとと買って綾辻のとこ行かねば。

 

 

「綾辻」

「あ、八幡くん」

 

綾辻は文庫本のとこにいた。手に取ってるのは最近映画化されたやつだ。

 

「これ、今人気のやつでね。ちょっと読んでみたんだけど結構面白いね」

「ほー…」

 

ふむ、ちょっと興味あるな。どうやら綾辻は買うらしい。

そこでなぜかおれのサイドエフェクトが反応する。嫌な予感。これは早々にここから去れと言っている。

そしてその予感の元凶が現れる。

 

「……」

「……」

 

雪ノ下だった。いやなんでいんだよ。その冷ややかな視線やめて。胃に穴あくから。いやほんとマジで。

そしてさりげなく綾辻おれの腕掴まないで。雪ノ下からの視線が余計強くなるから。

 

「あら比企谷くん。そんな有名人を無理やり引き連れているなんてね。まさか本当に犯罪に手を染めるとは思わなかったわ。今通報するから両手を括って待っていなさい」

「おい、人のこと犯罪者前提で話進めんな。とりあえずその携帯電話から手を離せ」

 

マジで通報しようとしてんじゃねぇかこいつ。しかも110番の11まで打ってるし。

 

「八幡くんはそんなことしないよ、雪ノ下さん」

 

そこで綾辻からの助け船。ありがたい。

 

「確か綾辻遥さんだったわね。雪ノ下雪乃です。そこの犯罪者の矯正を請け負ってるわ。あなたが何を握られその男と一緒にいるのか話してくれれば断罪に手を貸すわ」

 

だから犯罪者前提で話進めんな……。それと綾辻の掴んでるおれの腕を注視しないで。

 

「えっと、綾辻遥です。よろしくね」

 

全然よろしく感でてないよ?なにこの空間。絶対零度?

 

「私と八幡くんは幼馴染みなの。だからあなたより八幡くんのことよく知ってる。八幡くんは誰よりも優しいよ、ちょっと素直じゃないけどね」

 

最後のいらないからね。というかやたら強く言うな。なんで雪ノ下は敵ばっかつくるのかね。まぁ間違いなくあいつの性格が問題だな。

 

「……そ、そうなの。でもそんな目の腐った男、いつ何をしでかすかわからないから私がしっかり矯正しておくわ。安心してね、綾辻さん」

 

本当に好き勝手言いやがんなこいつ。さすがのおれも傷つくぞ。

 

「何度も言うけど、八幡くんはそんなことしないよ。何も知らないあなたが勝手なこと言わないで。いこ、八幡くん」

「え、あ、おい!あー、じゃあな雪ノ下」

 

手を引かれて連行されていく。最後に映った雪ノ下の表情は驚愕と困惑が入り混ざった素っ頓狂な表情だった。

 

ーー

 

現状を説明する。綾辻が膨れっ面です。

 

「なんであんなこと平然と言えるかな……」

 

どうやらさっきのことをまだ怒ってるようです。とりあえず手を離そう。柔らかい手におれは内心ドギマギしてるし周囲の視線が痛いし手汗かいてないか心配でおれの胃に多大なダメージが入ってるから。

 

「あいつはいつもああだから、おれは別に気にしてないぞ」

「それでもだよ。八幡くんそんなことしないもん。雪ノ下さんだってそのことわかってるのに言ってるから怒ってるの!」

 

え、そうなの?てっきり本気で思ってるかと思ってた。

 

「それに、私の大事な人を悪く言われたら気分悪くもなるよ」

 

どうやらこいつは想像以上におれのことを思ってくれてるらしい。昔から気遣いのできるやつだとは思っていたがおれにまでここまで気遣いしてくれてるとは思わなかった。

 

「…いや、その、なんだ?ありがとう?」

「なんで疑問系?」

「いや、アレだ。まぁ、その、気遣ってくれてありがとうってことだな」

「ううん、本当のことだから」

 

こいつは将来いい嫁になるだろうな。

そんなこと考えていたら綾辻の耳が少し赤くなっていた。なんがあったのか?

 

(どうしよう、今すごく恥ずかしいこと言っちゃったかな…。その、大事な人って……。でも八幡くん多分気づいてないよね…)

 

そして綾辻は落胆と安堵が入り混じったような溜息をついた。なんだったのだろう。

 

 

1日というのは早いものであっという間に夕方になった。再び電車に乗り三門駅で降りる。そして今は家まで歩いてる途中だ。

 

「ん〜!今日は楽しかった。ありがとうね、八幡くん」

「いや、礼は本来おれが言う方だからな」

 

そして綾辻の家の前まで来る。

 

「今日は本当にありがとうね!すごく楽しかった。また行こうね!」

「ああ」

「じゃ、またね」

「あーちょっと待て」

「?」

 

うむ、改めて思うとかなり恥ずかしいが、まぁこれも日頃の感謝の印だ。気にいるかはわからんがな。

そう言って昼間に買ったプレゼントをだす。わざわざラッピングまでしてもらった。

 

「その、アレだ。今日誕生日だろ。その、おめでとさん」

 

プレゼントを渡された綾辻は惚けた表情をしてる。あれ、まさか渡されたことそのものが気に食わなかったとか?違うよね?

 

「綾辻……?」

「え⁈あ、ああ。ごめん。その、すごく嬉しい。ありがとう、本当にありがとう!」

 

夕日に照らされた綾辻の目には僅かに涙が見えた。そんなリアクションをしてくれるとは夢にも思わなかった。そしてその表情は、思わず見惚れるほどとても綺麗なものだった。

そういう表情をされると、こちらとしても送った甲斐がある。

 

二つの影が夕日に映えていた。

 




先日センター試験がありましたね。作者は昨年数学2Bを受けてる最中に腹が猛烈に痛くなったのは今ではいい思い出です。

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