目が腐ったボーダー隊員 ー改稿版ー   作:職業病

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大規模侵攻結局一年以上書いている作者です。
その大規模侵攻編も終わりが近いと思うと時の流れを感じます。なにより俺ガイルが完結したことに時の流れを感じ、歳を取ったと実感する毎日です。

73話です。





73話 終戦

記憶が浮かんでは消えるを繰り返す。

 

走馬灯、とでもいうのだろうか。走馬灯はかつての記憶から生き残れる可能性を探すためにあるものだとか聞いたことがあるような気がする。

 

ああ、楽しかった記憶が見える。

 

 

なんて贅沢な走馬灯なのだろうか。

 

 

こんな楽しかった記憶を見ながら死ぬことができるとは、なんて幸せなのだろうか。

もしかしたら生き残れるかもしれないけど、きっとそれは僕の力ではない。生き残れるとしたらそれはきっと僕を助けてくれる優しい人だ。

 

僕は、僕の人生が幸せだったと断言して言える。

 

母さんを失った。でも、それでも残ったものはたくさんある。それがあるだけで僕はすごく幸せになれた。

 

幸福だった。母さんにあった時、きっとそう言える人生だった。

 

 

ああ、でも心残りはある。

 

 

大事な人を残してしまうこと。きっと、みんな僕のために泣いてくれる。でも、僕が泣かせてしまうとしたら、嫌だ。

 

死にたくは、ない。

 

まだやりたいことがたくさんある。

 

 

まだ、伝えてないことも。

 

 

でも、僕はきっと、もう自力では戻れない。

 

 

僕を助けてくれる誰かが、いないと。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

叩きつけるような雨が降り注ぎ体温を奪っていく。幸い出血はしていないが、ズキズキと痛む肋骨が意識を朦朧とさせる。

 

「……いって」

「ヒキガヤ先輩、大丈夫?」

 

側にいた空閑が心配そうにこちらを覗き込む。こいつ、感情が割と欠落しているのかと思ったけど普通にいい奴だな。

 

「……いや、正直大丈夫じゃない。痛すぎて……呼吸すんのもしんどい」

「多分、肋骨イッてるね。オサムは?」

「ぼ、ぼくは足がやられただけだから大したことない」

「……しばらくオサムは松葉杖生活だろうね」

 

そんな風に話す空閑の言葉も正直あまり入ってこない。骨折なんてしたことなかったからかなり今はしんどい。

 

「オサム」

 

そう言って空閑が渡したのは鉄の棒だった。

 

「松葉杖の代わり。オサムはギリギリ歩けそうだけど、ヒキガヤ先輩はちょっとダメそうだからおれが肩貸すよ」

「うん、そうしてくれ。ぼくはまだ歩けるから」

「ヒキガヤ先輩」

 

そう言って空閑は俺に肩を貸してくれた。正直ありがたい。立ってるのもやっとなレベルだったから。

 

「メガネ先輩!隠してたチカ子見つけてきました!」

 

そう言って近寄ってきたのは先程の訓練生だ。確か雨取と一緒にいた奴だったかな。

後ろには出水と、少し離れて二宮さんがいる。

 

「ありがとう、夏目さん」

「いえ、これくらい!」

「比企谷、大丈夫か?」

「……悪い、ダメだ」

「だろうな。見りゃわかる」

「出水、比企谷を本部の医務室に連れて行け。そこのメガネもだ。ここなら病院より本部の方が近い」

「二宮さんは?」

「俺は残存するトリオン兵を蹴散らす。お前、もうトリオンないだろう」

「はは、まぁもう戦えないっすわ。白チビ、替わるよ。お前はメガネについてやれ」

「うん。ありがとうイズミ先輩」

 

そう言って空閑は出水に俺の隣を譲った。正直空閑は小さすぎて寄りかかることがあまりできなかったからありがたい。いないよりは全然いいけど。

 

「悪い」

「いいって」

 

出水の肩を借りながら歩き始める。一歩歩くたびに胸が酷く痛み、呼吸もしんどくなってきた。骨折ってこんなにしんどいのか。

 

「…………」

 

ズキ、ズキ

 

やべ……無理だこれ。

 

「比企谷?」

 

急に足を止めた俺を出水は覗き込む。

俺は痛みと生き残ったことへの安堵感から意識がブラックアウトした。

 

 

 

 

 

 

「佐々木!」

 

風間が琲世の元にたどり着くと、そこはもともと街であったとは思えないほど荒れ果てていた。アスファルトは抉れ、建物は原型を留めておらず、瓦礫の山がいくつかできていた。

そして抉れた塀に寄りかかるようにして琲世はいた。

 

「佐々木、おい佐々木!」

 

風間が声をかけても反応はない。呼吸を確認すると、浅い呼吸ではあるが確かに息をしていた。

 

その事実に少し安堵するが、左腕を見て風間は凍りつく。

 

肘から先がなかった。

 

「こ、れは……」

「左腕が……」

 

周囲に散らばる血は琲世のものだろう。出血量は致死量に達してもおかしくない程に見えた。

 

「太刀川、本部に連絡しろ!佐々木が重傷だ!」

「わかった!」

「歌川、病院に連絡だ!この傷では本部の医務室じゃ足りない」

「はい!」

「菊地原、三上は付近に足がある者がいないか探れ!この状況じゃ救急車もろくに動かん」

「はい」

『はい!』

 

風間はそれだけ言うと左腕をさらに止血する。左腕に施された止血はもはや意味を為していないほどだった。自分でやった止血であるため仕方ないことではあり、ないよりは遥かにマシではあった。そして琲世が自分でした止血がなければ、琲世は失血死していた。

 

「…………」

 

黙々と止血を施しながらも風間は内心で焦りを感じていた。

 

(出血が酷い。これだけの血を失っては失血死する可能性があるし、出血性ショックで死ぬ可能性もある。病院に連れていけたとしても、そこまで保つか……保ったとしても、何かしら後遺症が残りかねん。早く、早く誰か来てくれ)

 

トリオンで治療はできない。トリオンで治せるものはトリオンでできたものだけだ。故に風間は今のトリオン体でできることは止血だけであった。生身に戻っても残念ながら医療道具など持ち合わせていないためトリオン体の換装は解かないが、できることは限られている。

 

「くそっ!」

 

自らの不甲斐なさを呪う。現状、風間が琲世にしてやれることは何も無いのだから。

 

「風間さん!」

「連絡はできたか」

「玉狛の木崎さんがこちらに向かっているそうです。というかもう着くそうです」

 

菊地原の言葉が言い終わらないうちに甲高い音が響く。そちらを見ると玉狛のマークをつけたジープがいた。

 

「早く佐々木を!」

 

窓を開けて叫ぶ木崎の言葉と同時に風間は琲世を背負いジープに乗せた。

 

風間が乗ると車は発進した。歌川、菊地原、太刀川はまだ後始末のためにやれることがあると判断し、風間が残らせた。

 

「……すまない、助かった」

 

風間は運転席の木崎にそう礼を言った。

 

「構わない。佐々木を助けるのに必要なことだ。あの場所から一番近かった支部がうちだと月見から連絡があった。ベイルアウトできないあの場でやられた人がいたらいち早く保護に向かって欲しいと」

「そうか」

「俺も敵にやられたので保護する程度しかできないがな」

 

少し自嘲するように言う木崎の言葉に風間は答えなかった。ただひたすらジープに積んであった救急キットで琲世の応急処置を行なっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間後、残存していたトリオン兵は全て撃破を確認され戦争は終結した。非番であった隊員もほぼ出揃い、追撃があったとしても対応できる布陣になった頃にはもうトリオン兵はほとんどいなかった。

 

多数の怪我人と数十名の行方不明者を出しながらも、戦争は終結した。

 

 

***

 

 

「…………」

 

目が覚めると、そこは知ってる天井だった。目線だけ動かすと、周囲には慌ただしく動く隊員の姿が見える。

 

「……本部の、医務室か」

 

あまり広さがない医務室のベッドをこの緊急時に占領しているのはちょいと心苦しいな。

なににしても目覚めたら以上、そのことを伝える必要があるな。そう考えて起き上がろうとするが

 

「いっ、痛ててて……」

 

肋骨が酷く痛みそれを許さなかった。痛みだけでなく全身に強い倦怠感がある。正直今は動きたくない。

仕方ない、大人しく寝てよう。なんなら四六時中寝ていたいまである。そう考えて再び目を閉じようとしたところで、聴きなれた声が聞こえてきた。

ちなみに服は雨に濡れていたため着替えさせられており、近くに乾かされた状態でハンガーに吊るされていた。誰がやってくれたか知らないがありがたい。

 

「おっ、起きたか」

 

声がした方を見ると、米屋がコーヒー牛乳を飲みながらこちらを見下ろしていた。

 

「米屋……」

「いやー目が覚めてよかった。死んじまうかと思ったぜ」

「……肋骨骨折程度じゃ人は死なないだろ。多分」

「そんだけ言えれば十分だな。どうだ、気分は」

「アバラがいてぇ」

「折れてるんだから当たり前だ。ったく、生身で無茶しやがって」

「しょーがねーだろ、ベイルアウトできなかったんだ」

「まぁな。お前らしいよ」

「……なぁ、俺どんくらい寝てた?」

「ん、大体三時間くらいだな。こちらに投入されてたトリオン兵は全て活動を停止した。今のところ追加戦力もない。ひとまず安心だろ」

 

そう言いながら米屋は傍らにあった丸椅子に腰を下ろし、近くの机に飲み物を置いた。

 

「そうか」

「今は後始末にみんな奔走してるよ」

「……犠牲者は?」

「……通信室オペレーターが3人死んだ。重傷なのは、お前含めて10人。あと、行方不明になったC級が36人だ」

「……そうか」

「ま、死の宣告されてたお前が生きててよかった」

 

死の宣告。そう言われたなぜこれを真っ先に聞かなかったのかと思えることを思い出した。

 

「そうだ!佐々木さんは⁈横山は⁈っていててて……」

「おい、起き上がんな。お前は比較的軽傷だが、絶対安静って言われてんだから」

「俺はいいから!2人はどうなった!」

 

そんな必死に訴えかける俺に、ため息をつきながらも米屋は答える。

 

「結果から言えば、2人は生きている」

 

その言葉に力が抜けてベッドに倒れ込む。

 

「……よかった」

「ただ、無事とは言い難い」

 

予想はしていた。死の宣告をされた以上、生きていたとしても無事ではあるまい。

 

「……どうなってる」

「まず横山だが、足を本部に侵入してきたネイバーにやられた。ただ大事な筋とかはやられてないからこれは軽傷らしい。一月も経たずに回復するらしいぞ」

「…………」

「だが重傷だったのは目だ。そのネイバーに左目をやられた。本部の医務室じゃ詳しくはわからなかったから今は病院行った」

 

目、か。目は非常に繊細な器官だ。わずかな傷が失明に繋がる。コンタクトレンズつけてたら失明しましたなんて話もあるくらいだ。どれほどの傷かはわからないが……

 

「最悪、左目は失明らしい」

「……失明」

 

この戦場に来なければ、横山は失明する可能性など背負わずに済んだのだろうか。そんなことを考えてしまう。

 

「そんでもっと重傷なのが、佐々木さん。あの人は生身でネイバーに特攻を仕掛けたせいで一刻の猶予もないレベルだったらしい。詳しくは知らないが、聞いた話だと左腕の肘から先がまるまる持っていかれたらしい。それに伴う出血で重体。今は三門総合病院の集中治療室だ」

「……重体」

「まだ詳しくはわからん。あ、横山も三門総合病院だったかな」

 

……左腕欠損。そんな酷い状態になるほど戦ったのか、佐々木さん。あの人のことだ。自分のためじゃなくて他人のためにならあの人はなんでもする。例え、自分の身体がどんな風になろうとも。

 

「C級はかなり連れ去られた。新型の被害もあるが、あの黒トリガーの被害が圧倒的に多いだろうな」

「……だろうな。あれはどうしよもねぇ」

「2日後に記者会見があるらしい。そこでそれも突っ込まれるだろうな。オレらが会見に出るわけじゃないけど」

「……ああ」

「ま、とりあえずお前が無事で良かった。しばらくは安静にしてな。今日は無理かもしれんが、そのうち帰宅許可でるだろうから。あ、小町ちゃんには那須が連絡してくれたらしいぞ」

「そう、か。すまん、助かる」

「今日家に1人は不安だろうから那須の家に小町ちゃんを泊まらせるらしい。いいだろ?」

「ああ、そうしてくれると助かる」

「ん、了解。オレから伝えるけど、お前からもちゃんと伝えろよ?」

「……わかってる」

「んじゃ、オレそろそろ行くわ」

 

そう言って米屋は立ち上がった。

 

「なんか頼みあったらなんでも言ってくれ」

「……ああ」

「ったく、辛気臭い顔すんなよ。きっとみんな大丈夫だ」

 

そう言って米屋は軽く俺の肩を叩く。そう思いたいが、頭に浮かぶのは悪いイメージばかり。もともと根が後ろ向きなのだ。仕方ないだろう。

すぐにでも走り出して二人の元に向かいたいが、生憎身体は言うことを聞かないし、そもそも絶対安静命令が出ている。下手に動くことはできない。

 

「なぁ米屋」

「ん?」

「早速一ついいか?」

「なんだ?マックスコーヒーか?」

 

 

 

 

 

「佐々木さんと横山のいる病院に行きたい」

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

米屋に無理言って、結局手持ち無沙汰にしていた諏訪さんの車で病院まで連れていってもらった。

 

「お前自分が怪我人って自覚あんのか?」

 

怪我人への対処で騒がしい病院のロビーのソファーに座りながら呆れたような目で見られる。いやわかってるけど……。

 

「え、いや、まぁ……」

「怪我人は怪我人の見舞いなんかしねーよ。まず自分の足でこれねーんだからな」

「……すんません」

「はぁ、いやいいんだけどよ。俺も心配ではあったんだ。とりあえず、すぐに面会できそうな夏希ちゃんのとこから行ってこい。その間俺は佐々木の方の様子だけ見てくる」

「ありがとうございます」

 

手をヒラヒラ振りながら歩いていく諏訪さんの背中を見送り、俺は横山の元へと向かった。

 

ーーー

 

扉を開けると、数人がベッドにいる部屋だった。その一番奥に横山はいた。

 

「お、ハッチじゃん」

「……よお」

 

横山は顔の左半分を包帯で覆われていた。もともと美人な顔の半分が包帯で覆われているのは、どうもいい気はしない。コスプレならばちょっと興奮……いややめよう。こいつをそんな対象として見ることはできないしそもそもそんなふざけていい場面じゃない。

 

「元気そうね」

「まぁ、な」

「お互い無事で良かった」

 

無事……無事と言って良いのだろうか。俺はともかく、横山や佐々木さんは無事とは言い難い。

横山は女の顔に傷を、そして佐々木さんは左腕を無くした。これが無事といっていいのか。

 

「……その傷」

「ん、ああこれ?本部に侵入してきたネイバーにやられたの。あと足もね」

「…………」

「足の方は軽傷よ。しばらく松葉杖生活だけど、ちゃんと回復するみたいだし」

「目の方、は?」

「……これはちょっとまだなんとも。ただ傷は眼球に達してた」

 

予想はしていた。目蓋なんて言っちゃあれだが薄皮の一枚だ。高火力の黒トリガーの攻撃が貫通しないわけがない。

 

「一応手術はする。もう日程決まってね、来週だってさ」

「早いな」

「うん。割と重傷だし自然に治るものでもないから早めにってことでそうなった」

「……そうか」

 

……俺が、あの時無理矢理にでも止めていればこうはならなかったのだろうか。そんなこと考えても無意味だとわかっていてもそう考えてしまう。

 

「今、『俺が止めていればー』みたいなこと考えてたっしょ」

「……エスパーかよ」

「ハッチがわかりやすいだけ。よく言われない?」

 

心当たりがありすぎるから否定できない。

 

「もう三年の付き合いよ?わかるって」

「……俺はお前のことはわからないわ」

「でしょうね。あたし自分で言うのもアレだけど、かなり変な奴だし」

 

そう言ってにししと笑う横山は、普段と変わらないように見えた。傷についてなにも思っていないわけではないだろう。だが、それでも自分の顔に傷がつくというのは女子としてはかなりショックなのだと思う。

 

「あたしはね、自分で決めたの。死ぬかもしれない場所に行くって、自分で決めた。確かにハッチとサッサンのためっていう理由があるからハッチが自分を責めたくなる気持ちはわかる。逆の立場ならあたしも多分自分を責める。でもね、あたしは自分の選択をハッチにそう思われたくないの。それは、あたしの選択を『自分の選択』でないっていってるのと変わらないから」

 

うまく言えないや、といって横山は頭を掻く。

 

「……そう、だな」

 

掠れた声しか俺は出せなかった。

 

 

ーーー

 

 

その後少し話をして横山の病室を後にした。

 

佐々木さんはまだ集中治療室で手術を受けているため面会はできない。手持ち無沙汰になってしまったが、一度帰った手前横山のところには戻りづらい。

 

どうしようかと考えていると

 

「君」

 

背後から声がかけられた。振り返ると、そこには中年の男性と女性、そして中学生か高校生くらいの男がいた。

 

「……はい」

「君が比企谷八幡くんかな?」

 

なぜ俺の名前を、と思ったところで女性の顔を見てなんとなく察した。

 

「横山の?」

「私は、夏希の父親だ」

「あ、どうも……比企谷です」

「知っている。よく夏希が話していたからな」

 

横山の父親は非常に落ち着いた人だった。顔は厳格な感じだが、雰囲気はどことなく柔らかい。近くにいる男がよく似ている。

 

「申し遅れた。私は横山冬慈という」

「私は横山秋子」

「……横山深夜っす」

 

どうやら一家総出で見舞いに来てたらしい。そしてこれが噂の弟か。弟はどうやら父親似らしい。

 

「娘の見舞いに来てくれていたのだな」

「ええ、まぁ……」

「ありがとう」

「いえ……」

 

礼を言われるようなことはなにもしていない。

 

「……少し、時間はあるかね」

「え?」

「君と、話してみたい」

 

 

ーーー

 

 

ラウンジ

 

「コーヒーで大丈夫かね」

「いえ、お構いなく」

「私が引き留めたのだ。気にしなくていい」

 

そういうと冬慈さんは俺に缶コーヒーを渡してきた。

 

「……すんません、ありがとうございます」

「いいんだ」

 

冬慈さんは俺の横に座ると缶の紅茶を開けた。

 

「……それで、話って?」

「そう身構えるな……といっても身構えるだろうな、この状況では。なに、あの男嫌いの夏希が気を許す男が少し気になってな」

「はぁ……」

「……見舞いにいったということは、夏希の怪我のことも?」

「……ええ」

「……あの子は美人になった。秋子に似てな。昔からかわいい子だったが、高校生になって大人びて美しくなった。無論、身内贔屓もあるだろうがな」

 

昔がどうだったかは知らないが、横山はもともとかなり美人だ。男嫌いとあの核兵器みたいな気性の荒さが無ければかなりモテていただろう。現に横山の中身を知らないチャラ男がよくナンパしてるのを見かける。雪ノ下姉妹には一歩劣るかもしれんが、それでも美人であることに変わりはない。

 

「さらに歳を重ねればもっと美人になっただろう。……だが、今回の戦争であの子の美しい顔に傷がついた」

「…………」

「この戦争に参加することを伝えられた時、猛反対した。普段のボーダーとしての活動よりも遥かに危険なものになるかもしれない。そんな場所にあの子をいかせたくなかったから」

 

子供を大切に思う親なら誰でもそう思うだろう。

 

「だがあの子は頑なに聞かなかった。『あたしの大切な人達が命懸けで戦うのに、あたしだけ逃げるなんて嫌だ』と言ってな。あの子に反抗期らしい反抗期はなかったからまさかここで反抗されるとは思わなかった」

 

冬慈さんは苦笑しながら紅茶を飲む。

そして俺に視線を向けてきた。

 

「君の境遇は知っている。辛い過去を経験してきたんだってな」

「…………まぁ、世間的には辛いものでしょうね」

「身近な人を喪うというのは、どの年齢になっても辛いものさ。それが感受性豊かな子供なら尚更だ」

「…………」

 

子供……実際、俺はまだ世間では子供だ。どうしよもない、変えようのない事実だ。だから昔は早く大人になりたくて、残されたものを守れるような大人になろうとして自分を追い詰めたんだったな。今思えば滑稽だ。

 

「夏希は、こう言った。『これはあたしの選択であって、ハッチやサッサンに強制されたものじゃない。だからあたしになにがあっても、あの2人を絶対に責めないで。もし責めるのなら、それはあたしの覚悟と選択を他人のものだと言うのと同じだから』、と」

「……あいつらしいです」

「子供というのはいつまでも子供というわけでは無いのだな。知らぬ間に大人になっている」

「…………」

「話が逸れてしまったな。私が言いたい事は、『君はなにも悪くない』ということだ。人というのは誰かを悪くして、自分の正当性を保ちたいと思ってしまう生き物だ。それなのに君は自らを悪くすることで他人を守ろうとする。美徳ではあるが、その優しさは時に他人を傷つける。それを忘れないでほしい」

「…………俺は、優しくなんかないっすよ」

「君にとっては優しいことではないのかもしれないな。うむ、君は夏希が言っていたような子だな」

「…………」

「しかし、このような話は慣れないな。夏希にも似たような話をしたことがあるが、どうもうまく言えない。ましてや娘の友人相手にするとは思わなかった」

「……俺も、まさか友人の父親にそんな話されるとは思いませんでしたよ」

「ははっ、驚かせてしまったな。じゃあ私はそろそろ行こう。秋子と深夜が待っている」

 

……待っている、か。

 

 

いいなぁ。

 

「……困ったら、いつでも頼りなさい。娘の友人の頼みだ。出来る限りのことはする」

「……ども」

「では、またいつか」

 

そういって冬慈さんは歩いて行った。

 

1人残された俺は、すっかりぬるくなってしまったコーヒーを飲み干した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もういいの?」

 

戻ってきた冬慈に秋子はそう問いかける。

 

「ああ、私にできることは何もない」

「……そう」

 

冬慈が『待っている』と言ったとき、あの少年は酷く羨ましそうな目をしていた。彼自身は無意識かもしれないが、それでも確かにその羨望は向けられていた。そしてその目に冬慈は酷く心を痛めた。

 

「私達はあの子の親になってやることはできない。だが、味方になってやることはできる」

「夏希のお友達だもんね」

「いい子だったよ。夏希はやらないがな」

 

その言葉にいつまで経っても娘離れができない夫に秋子は呆れたようにため息をつく。夏希が比企谷をそういう対象として見ていないこともわからないらしい。

 

「……深夜は?」

「もう夏希のとこにいるわよ」

「深夜は相変わらず夏希大好きね」

「そうだな。私達も行こうか」

「ええ」

 

 

ーーー

 

 

集中治療室前に行くと、知っている顔がいた。

 

「比企谷」

「風間さん」

「お前も負傷したと聞いたが」

「あー……無理言って抜け出しました」

「……まったく」

 

呆れたような顔を風間さんは俺にむけた。

集中治療室の前には風間さんの他に俺を連れてきてくれた諏訪さんと有馬さんがいた。

 

「……佐々木さんは?」

「まだ治療室だ」

「…………そうですか」

「比企谷」

 

俯く俺に低めの声がかけられる。有馬さんだった。

 

「有馬さん…俺……」

「君はなにも悪くない。琲世が自分で選んだことだ」

「…………」

 

そんなことわかっている。さっきから何度その言葉を聞いたか。俺は実際なにも悪くないだろう。佐々木さんも横山も自分の意思で戦うことを選んだ。

それでも考えずにはいられない。

 

俺があの時、参加しないと言っていればと。

 

「……俺は、また守れないのか」

「え?」

 

ぼそっと呟いた有馬さんの言葉はよく聞こえなかった。

 

「……なんでもない」

 

そう言うとほぼ同時に集中治療室の『治療中』の文字が消えて中から医者であろう人が出てきた。

 

「先生、息子は」

 

医者に向かって有馬さんは真っ先に口を開く。当たり前だろう。有馬さんにとって最後に残された家族なのだから。

 

「結論から言いますと、一命は取り留めました」

 

その言葉にその場にいた全員が安堵する。だが、あれだけの怪我を負った以上、無事ではあるまい。

 

「手は尽くしました。ですが、出血量が多くて脳にダメージが入ってしまいました。応急処置がなければ、確実に失血死していたと言えるほどの負傷だったので命が助かっただけ幸運でしょう」

「…………」

 

風間さんの表情が僅かに曇る。応急処置をしたのは風間さんなのかもしれない。

 

「……それで、琲世は今後どうなるのですか」

「峠は超えました。しかし、脳にダメージが入ってしまったため、いつ目覚めるかわからない状態です。また、容態も安定はしていないためまだ予断は許されない状態です」

「昏睡状態、ってことですか」

「それならばまだいいでしょう。場合によっては植物状態で一生目覚めません」

 

一生、目覚めない。

 

その可能性を突きつけられて崩れ落ちそうになるがなんとか堪える。俺よりも、確実に有馬さんの方が辛いのだから俺が崩れ落ちるわけにはいかない。

 

「……そうですか」

「先程言いましたが、容態は安定していないのでまだ面会はできません。明日以降、またお越し下さい。ご親族の方は」

「私です」

「ではこちらに。詳しいことをお話し致します」

「お願いします」

 

有馬さんは医者と共に歩いて行った。

 

その場には沈黙が流れる。誰も言葉を発しようとしない。

 

「比企谷、お前は本部に戻れ」

 

風間さんは立ち上がると俺にそう言った。

 

「……でも」

「どうせお前のことだ。痛む身体を無理やり引き摺ってきたのだろう。お前の怪我も軽くはない。さっさと戻って休め」

「…………」

「今俺達ができることはなにもない。今後、お前がどうするかも考えながら今は休むことだ」

「……はい」

 

 

 

ーーー

 

 

 

「…………」

 

揺れる車の助手席から外を眺める。雨は変わらず降り続いている。

 

「どーだったよ」

「……どう、とは」

 

火をつけていないタバコを咥えながら諏訪さんはそう俺に聞いてきた。

 

「お前が行きたいって言ったんだろ?あの二人に会って、どう思ったよ」

「…………」

「ある程度は予想してたんだろ?」

「まぁ、それは……」

「想像してたよりも酷かったか」

「……はい」

 

死ぬよりははるかにいいが、まさかこれほどまで深い傷を負うとは思っていなかった。横山は左目が失明している可能性があるし、佐々木さんに至ってはもう目覚めないかもしれない。

 

「……ったく、頑張りすぎなんだよ。お前も、あいつらも」

 

諏訪さんはそう言って頭をがしがしとしてきた。

 

「いくらお前しかいないって言ってもよ、お前が死んだらこちらとしても寝覚め悪いんだよ。だからもう無茶すんじゃねぇ」

 

その言葉を向けているのは、俺であり、横山であり、佐々木さんだ。

多分諏訪さんは俺達が市民を守れるのはその場では自分しかいなかったから無茶したって思っているんだろう。そういう意図が無かったといえば嘘になるが、残念ながら俺にとってその理由は命を賭けるには弱い。色々理由があるけど、多分この理由は諏訪さんは言い当てることはできないだろう。

 

「今後、どうすんだ」

「……え?」

「どうすんだよ、お前。そんな状態で続けられるのか」

「…………」

 

諏訪さんが言っているのは、恐らく『ボーダーを続けるのかどうか』ということだろう。

言いたいことはわかる。俺みたいに仲間がやられて心が折れて辞めた人も旧ボーダーにはいたらしい。なにより俺のような状態の人間が下手に留まることはあまりいいとは言えない。自分にとっても周囲にとっても。

 

「……ま、ゆっくり考えろ。今は休め」

「……うす」

 

答えは、多分すぐには出ない。俺のここ数年でこの場所は大切なものになってしまったから。

 

窓の外を再び眺めるが、依然として曇天のままだった。

 

 

雨はまだ止まない。

 

 

 

 

 

 

佐々木琲世

死の未来:継続

 

 

 

***

 

 

 

遠征艇内部

 

「報告は以上です」

 

ミラはそう言って締めくくると同時にホログラフィックのウィンドウを消す。

 

「ご苦労」

「いやぁ、ヒュースを捨て、エネドラが死んだお陰で帰りは広くてすごしやすい!」

「……俺のやり方は疎ましいか?ランバネイン」

 

皮肉げに腕を伸ばす弟、ランバネインの言葉に静かにハイレインは問うた。

 

「いや?当主の決定だ、文句は言わん」

「この場は無礼講だ。今は配下としてではなく、弟としての意見を聞きたい」

「……兄者がそう言うなら。実に合理的だと思ったが、いい気はしないのは確かだ。エネドラはともかく、ヒュースの方はうまいことできないかとも思いはした」

「そうか」

「だがその代案を俺が出せない以上、口を出すわけにはいかん。それに兄者の思惑を達成させるにはそれが手っ取り早い」

「ヴィザ翁は、どう思いますか」

「エネドラ殿は……まぁ我々では救えぬ者故にとやかく言いますまい。トリガーホーンの根が脳を侵食してしまった以上、彼はどうしよもなかった」

「恐らく、もってあと半年程でしょうね」

「しかしヒュース殿は実に惜しい。あれほどの人材はそういませんからな。私が剣を教えた中でも五本指に入るほどの素質を持った者でしたからな」

「でしょうね。しかし……」

「承知しております。彼は、このままいけば我々の敵になります。身内での無用の争いを避けるためにも必要なことでした」

「うーん実に惜しい。金の雛鳥が手に入っていれば」

 

ランバネインのその言葉にミラはジト目をランバネインに向けるが、ランバネインは肩を竦める程度だった。

 

「…………」

「隊長?」

「……いや」

 

ミラの言葉を聞きながらもハイレインは思考の海に潜る。

正直な話、玄界はヴィザが言ったように進化している。だが今回の戦争においてこちらが用意した戦力は、玄界の戦力を上回っていたと思う。当然といえば当然だ。戦闘に参加している黒トリガーの数がかなり違う。ノーマルトリガーの性能は黒トリガーの足元にも及ばないものが多い。強化トリガーですら黒トリガー相手では瞬殺されかねない。

なのに今回、黒トリガーがノーマルトリガーに敗北、または足止めされるという事態がいくつもあった。目的が殲滅ではなく捕獲だったため多少は仕方ないが、ここまで上手くいかないとは思っていなかった。

 

「ニムラを先行させ、敵の緊急脱出のトリガーを封じ、さらにはラービットも多数投入したのに金の雛鳥を奪取できないとはな」

 

ここまで上手くいかないとなると、何者かがそうなるように仕組んでいたようにさえ思える。

こちらは向こうの情報を持っていたが、向こうはこちらの情報は無かったはず。情報がない以上、対策のしようがないはずなのにこれほどきっちり対策をするなど土台無理な話のはずだ。

 

だがニムラのように情報がなくとも色々察知することができるサイドエフェクトを持つ者もいる。もしかしたら、敵にも同じようなサイドエフェクトを持っている者がいたのかもしれない。こちらにニムラがいる以上、考えられない話ではない。

 

「色々と疑念は残るが、エネドラ、ヒュースの件を含めて当初の目的は達成した。各自、本国に着くまでゆっくり休むといい」

「ええ〜僕にはなにも無いんですかぁ?」

 

気の抜けた声がするためそちらに顔を向けると、そこには手錠をはめられた青年がいた。手錠をはめられているのにも関わらず、青年の態度は崩れず、非常に愉快な感情が読み取れる。

 

「……ニムラ、わかっているの?あなた一応処罰対象なのよ?」

「わかってますよ〜そんな馬鹿じゃないです〜」

「こいつは……」

 

頭痛でもするのかミラが頭を抱える。

 

「……ニムラ、弁明があるなら聞こう」

「弁明?なんの?寧ろあんなに少ない資材であそこまでの功績を挙げた僕を褒めてほしいくらいなんですが?」

「確かにお前の功績は大きい。おかげでトリガー使いを多数捕らえることができたからな。だがそれ以上に独断先行が多すぎる。これについての弁明はあるか」

「じゃあ逆に言いますけど、僕が請求した資材は正直適量であり多すぎるものではなかったのにも関わらず半分程度の資材しか渡さなかった弁明はありますか?」

「……それは」

「あの時説明した『神の選抜時期故に他地域から仕入れられなかった』なんてクソみたいな言い訳はナシですよ。ちゃんと仕入れルートも在庫も確認してあるんですから。で、これらを踏まえて弁明があれば聴きますけど」

「……今お前がつけている手錠は、特別製だ。下手にトリオンを使おうとすれば両腕が吹っ飛ぶぞ」

「この手錠がどのルートから入手され、どうやってできているのか把握できていないとでもぉ?この程度なら簡単に外しますよ」

「…………」

「で?言い訳は?」

「…………エリン家の当主を神に据える以上、我々の戦力は大幅に下がる。節約できるものは節約する。それだけだ」

「へぇえぇえええぇ〜それはそれでいいんですけどそれで僕だけ責めるのはどーなんですかねぇぇ〜?」

「…………それとこれとは」

「別の話ですけどぉ!でもそれでお互い痛み分けでいいじゃないですか!それで終わり!はい!終了!」

「…………」

 

はぁ、とハイレインは深くため息をついた。この場合、双方共に非があるのは確かだが、この状態のニムラが聞くとは思えない。

どうするかと思考を巡らせたところで

 

「ところでニムラ」

 

ランバネインがニムラに声をかける。

 

「久々の故郷(・・)はどうだった」

 

その言葉にニムラは固まる。そして笑みを深くしながらこう言った。

 

 

 

「死にたいならそう言えよ」

 

 

 

殺気が遠征艇内部を満たす。

そして次の瞬間には、ニムラは手錠を外し、ランバネインに飛びかかっていた。

 

だが

 

「ぐっ!」

「ニムラ殿、少々おいたが過ぎるのでは?」

 

これを見越していたかのようにヴィザはニムラの頭を押さえつけ、地面に転がした。

 

「今は仲間同士で争っている場合ではありませんぞ?」

「…………」

「ランバネイン殿、其方も口が少々過ぎましたな。今のはニムラ殿に言ってはならない」

「うむ、些か浅慮であったな。すまない」

 

その言葉を聞くとヴィザは頷いてニムラを解放する。

 

「ニムラ」

「……わかりましたよ」

 

ハイレインが視線を向けるとニムラは大人しく両腕を上げる。そして先程のものとは違う手錠がヴィザによってはめられた。

 

「ある程度自由にはさせるが、下手に弄るようなことをすれば即失神させる。いいな」

「は〜い」

「……本当にわかっているかしら」

「それと」

「はい?」

「また下手なことをしてみろ。次は容赦なくお前の大切な人間を殺す」

「どーぞ」

「は?」

 

ハイレインは素っ頓狂な声を挙げる。当然だろう。大切な人間を殺すと脅したのにも関わらずそれが二つ返事で了承されてしまったのだから。

 

「どーぞって言ったんですよ」

「……お前、俺がやらないとでも思っているのか?」

「いいえ?貴方はやる。必要なら身内を殺すことに躊躇いは持たない人ですからね」

「ならば……」

「でも」

 

 

「そうしたら僕は必ず貴方を後悔させるようなことを存分にしてから、貴方を殺します。必ず、どんな手を使ってもね」

 

 

 

「…………」

 

凄まじい殺気からそれが嘘や虚勢ではないことをハイレインは感じ取った。ハイレインだけでなく、この場にいる誰もがそう思った。

 

「よく覚えておけ」

 

そういうとニムラは小さな自室へと戻って行った。

 

「隊長……」

「……すまない、今は休ませてくれ」

「はい」

「ミラ、お前も休め。あの最後の攻防でかなり疲れているだろう。肉体ではなく、精神が」

「そんなことは!……すみません、本音を言えばかなり」

「だろうな。あの少年は随分厄介だった」

「うむ、正面からではないとはいえ、この俺が撃ち負けたのだからな」

「なぜ貴方が誇らしげなのかしら、ランバネイン」

「良き好敵手を見つけたのだ。楽しくて仕方ないのだよ」

「……はぁ」

 

疲れたようにため息をついたミラはトリオン体の換装を解いて遠征艇の進路を端末で確認する。画面には規程のルートを滞りなく進むのが映されていた。

 

画面から目を離すと、遠征艇の操作端末が目に入る。

 

それをみて思い出したが、あの真っ二つにしたトリオン兵が見当たらない。あの状態では移動などできないため、自壊したかと思ったがあのスペックのトリオン兵ならば自壊するのにも時間がかかるだろうと考えその可能性を排除する。

自壊してないならどこに……と考えたところで一つの結論に至る。

 

「……本当あの子は」

 

恐らくニムラが回収して、今は分析しているのだろう。あの独断先行や煽るような口調さえなければ非常に技術のあるエンジニアで済むのにと考えたところでやめる。あの皮肉屋で反抗的な態度は自分達が作り上げてしまったものなのだろうから。

 

色々と頭痛や胃痛のタネをニムラに与えられているためそろそろ胃薬や頭痛薬を取り寄せるべきかと考えながらミラも自室へと姿を消した。

 

 

 




多分、ミラはハイレイン以上にニムラの扱いに頭を痛めてる。


横山冬慈(とうじ)
夏希の父親。普通の会社員だが副業として道場を営む。荘厳な顔つきの割に親バカ。

横山秋子
夏希の母親。近くのパン屋でパートをしている。夏希の顔は完全に母親譲り。美人。

横山深夜
弟。受験生だけど姉の見舞いには毎日行く。

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