憑依の軌跡:新起動《ジェネシス》   作:雪風冬人 弐式

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 公式でⅢの製作が仄めかされたり、外伝小説が面白かったりして、実は前作で考えてなかったストーリーを思いついたため、再始動しました。
 待っていた方、お待たせしました。ちなみに、目標は月一更新できるようにすることです。


プロローグ

女神(エイドス)よ。……どうか、この子に加護を」

 

 これが、このどうにも耳にこびり付く渋いオッサンの声が、俺がこの世界に来て意識を持った瞬間に聞いた第一声であった。

 覚醒した瞬間、猛吹雪によって意識が朦朧としてその後のことは曖昧にしか覚えていないが、親切な人に拾ってもらい家族として受け入れられ、前世という異世界の知識を有して今を生きている。

 脳が保有する前世の知識によると、どうやら、この俺、リィン・シュバルツァーという少年は、元いた世界のゲームであった『閃の軌跡』の主人公の名前であった。しかし、この世界はそのゲームの話と全く同じではなかった。

 俺が、その事を確信するに至ったのも、これまた猛吹雪の日だった。

 その日、天候が突然荒れ出し、ユミルの住民と共に家を出たまま帰らない義妹を探しに山に入って行った。義妹は程なく見つける事ができたのだが、その後が問題だった。

 義妹を発見した直後、熊のような輪郭の魔獣に襲われ、命からがら逃走し、寒さや疲労などで朦朧とした意識がハッキリとした時だった。

 視界に、何か意味不明なモザイク必須な熊っぽい魔獣のスプラッター死体が一つ映った。

 

「な、なんじゃこりゃぁぁあああ!?」

 

 思わず、非現実的な光景から逃避するために叫んでしまった俺は悪くないと思う。

 そして、さらに驚くべきことに血溜まりに映った自分の姿は――――

 

 

 

 

 

 

<…次は~トリスタ~。お降りの方は、忘れ物がないようお気を付けくださ~い>

 

「ほら、着いたわよ。リィン、起きなさい!」

「おおう。スマン、今起きる」

 

 列車内のアナウンスが目的地に着いたことを知らせ、微睡んでいた意識が一気に覚醒する。

 一緒に移動してきた人物に迷惑を掛けないためにも、寝ぼけた頭を切り替える。

 その際、いつの間にか取り出して弄っていたクリアな橙色の『K.L.S.-01』と表面の八角形の機械的な外見のオレンジの中心に描かれている錠前をしまう。

 

「ほら、アンタの荷物」

「助かる」

 

 気が強そうな外見に似合わず、不承不承といった感じながらも世話を焼いてくれる目の前の茶髪を団子状にして結んでいる少女に、礼を言いながら自分の荷物を受け取る。

 そして、二人で並んで客車から降りると駅の改札を抜ける。

 

「しっかし、俺ら、この学校に入学するはずだよな?にしては、制服の色が違くね?」

「そうね。私たち以外にもいるにはいたけど、少ないわね」

 

 トールズ士官学院。それが、俺らがこれから入学する学校の名前である。簡単に説明すれば、歴史がある伝統を重んじる軍人を養成する学校である。

 その学校の制服を着ている俺らだが、通常は純白か緑の二種類の色しかないのだが、自分と彼女の制服の色は真紅なので、本当にここで合っているのか戸惑ってしまう。

 そんな不安を抱いていると駅を出ると、そこには一面に咲き誇るライノの花があり、元日本人として桜に似たその花のあまりの美しさに足を止めてしまう。

 

「綺麗なのは分かるけど、通行の邪魔よ」

「サンキュ。おっと、そこな少女もスマンな」

「いえ、こちらこそぶつかりそうになってすみません」

 

 感慨に耽っていたら彼女に腕を引っ張られて横にずれたのと同時に、長い金髪の少女が通りすがり、お互いに会釈して別れる。

 

「入学式にはまだ時間あるみたいだが、どうする?」

「そうねえ、街の散策でもする?」

「それはデートのお誘いですかな?では、エスコートさせていただきましょう」

「デートってのは否定しないけど、アンタエスコートできるほどこの街の地理に詳しいの?」

「バカな!?リィがアホじゃない…だと!?」

「元からアホじゃないし!伊達に『始まりの女(イヴ)』になってないわよ。ほら、さっさと行くわよ!!」

「りょーかい」

 

 先導する彼女を追いかけ、チラリとこちらに視線を向けて微妙に左腕を浮かせた意図を察して自分の腕を差し出して組む。

 あの猛吹雪の日、俺がこの体で意識が覚醒してから早十年余りの月日が流れた。

 そしてようやく、ようやく平穏な生活を目指して続けた努力が実を結ぼうとしている。

 そう、あの十年は地獄だった!転生なのか憑依なのかよう分からんが、別の世界に降り立った俺は、偶然にも巡り合った師匠と共に世界の情報を集めると同時に、ミッチリと扱かれた。

 おかげで、八葉一刀流なる技術が習得できたし、『始まりの男(アダム)』と呼ばれるようになったり、色んな出会いがあって楽しかったが二度と経験したくはないと思えるほど苦難のたくさんあった時間でもあった。

 その時間から解放され、青春には必須の学校に今日から通い、彼女とも一緒に生活できる!これを幸せと言わずとしてなんと言えるか。いや、ない!

 気分としては、田舎から上京したばかりの学生、と言ったところだろう。まあ、もはや元の世界の記憶なんて余り残ってないが。

 

「この学校で、俺は青春を満喫してやる!」

「いや、無理でしょ。《蛇》からの監視役として私がいる時点で」

「忘れようとしてたのに!嘘だと言ってよ、バーニィ!」

「バーニィって誰よ?私は、デュバリィよ」

 

 今後の生活への誓いを口に出すが、間髪入れずに否定する、俺のすぐ隣で小馬鹿にしたように笑う彼女、知るぞ知る人から《神速》のデュバリィ、あるいは『始まりの女(イヴ)』と呼ばれる彼女の言葉に、早くも俺の意思は砕けそうになる。

 そして、リィの言葉通り俺の青春は、平凡とは程遠い激動に満ちた時代に否応なく巻き込まれることを、この時の俺は予期することはできなかった。




 
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