イベントで、まさかのヒロインX参戦に驚きを隠せない。彼女は一体、何トリアなんだ!?
「ええっと、もう話してもいいかな?」
目の前の小柄な少女は、突然の展開に困惑しているのかオロオロしている。何この天使、一家に一人欲しいんですけど。
「まあ、俺達が件のリィンとデュバリィで間違いないですよ。で、何か用があったのでは?」
「ご、ごめんね。私はトワ・ハーシェル。この学院の生徒会長をしています。えーと、荷物を預かりに来たんだけど」
「僕はジョルジュ・ノーム。生徒会役員ではないけど、トワの手伝いさ。武器等の預かりは、入学の説明書に書いてあったよね?」
「ああ、了解しました。お願いします」
「モガーモガー」
「えと、そろそろ放してあげたら」
おっと、いけない。リィの口を塞いだままだった。
リィの口から手を離し、背中に掛けていた武器を入れたザックをハーシェル先輩に預ける。
「さて、今は時間が惜しいから見逃すが、今夜は覚悟しておけ」
「寝かせないつもりで来なさい!」
「止めようねー。まだ純粋な人がいる前で、その発言は」
リィの言葉からナニを想像したのか、顔を真っ赤にしてアワアワするハーシェル先輩を後目にして講堂へ移動する。
「若者よ、―――世の『礎』たれ!!」
そして気が付いたら、もう始業式が終わってた。
まあ、どの世界でもお偉いさんのスピーチが長ったらしくて子守唄になるのは、共通事項らしい。
現に、隣のリィなんか話が始まった瞬間に、意識を飛ばしていやがった。
「ほら、リィ。起きろ!」
「止めて!乱暴するつもりでしょ!?ウス=異本みたいに!あ、お早うですわ」
「お早う。どんな夢か、非常に気になる寝言だね」
リィが俺に寄りかかって寝てたのが羨ましかったらしく、周囲の視線、特に男子から棘が含まれているように感じる。
「あはは。なんか難しいこと言われちゃったね。僕はエリオット・クレイグ。同じ色の制服ってことは、一緒のクラスだよね?よろしく」
そろそろ移動しようか、と準備をしていると、リィとは反対の隣に座っていた同じ色の制服の少年に声を掛けられる。
男とも女とも取れる中性的な顔立ちや声だから、恐らく女装したらあのパイセンなんか一発で堕ちそうだな。
是非とも、邂逅しないことを祈ってるよ、エリオット君。
「こちらこそ頼む。リィン・シュバルツァーだ」
「デュバリィ・シュバルツァーです。宜しくお願い致しますわ」
ヤバイ。リィが本気で外堀を埋めにかかってる。しかも、おそらく義妹だけでなく両親も懐柔済みと見る。
そうなると、ガチでアルの計画が成功することになっちまう。
嗚呼、また平穏が遠ざかる。卒業後は、ユミルにレジャーランドを建設して『ユミルブリリアントパーク』の支配人となって、のほほんとした生活を送る俺の夢が遠ざかって逝く。
「リィン、行きますわよ」
「へ?」
「話聞いてた?私達は、他のクラスとは別でオリエンテーリングがあるんだって」
「移動するって、さっき僕らの担任だって言ってたサラ教官が」
見ると、俺達と同じ真紅の制服の生徒が入口に移動していて、講堂に残っているのは俺達だけになっていた。
考え事をしていたから、聞き逃したのか。
「…リィン、早くしないとサラが鉄拳だって」
「それは困る、ってフィー!?」
「ん。久しぶり、デュバリィも」
後ろからボソリと声を掛けられ、振りぬくとそこには眠たげな目をした銀髪の少女、フィー・クラウゼルがいた。
数週間前に会ったばかりであるが、知り合いがいるのは嬉しい。
「もしやと思いますが、サラってあのエクレアですの?」
「ん、その通り。二人共、元気そうでなにより。ところでリィン、アレは書いて……モガモガ」
「フィーも元気で何よりですわ。……アレの事はまだダメですの。外堀を埋め切るまで、辛抱ですわ」
「………ん。了解」
「げっ。エクレアもいるノカー」
同名の別人である事を願っていたが、あのエクレアが担任というか、教師になるとは。世の中どうなるかワカランナー。リィとフィーの内緒話も、ワカランナー。
ってことはだな、俺の平穏がさらに遠ざかるじゃないか。
「サラ教官を知ってるの?」
「一応な」
他のメンツを追いかけながら、エリオットと話す。
しばらく前の生徒の後を着いていくと、やがて本校舎から少し離れたところにある旧校舎へと到着した。
というか、すごく見覚えのある建物だなぁ。具体的には数週間前に、《怪盗》から、お宝の匂いがする、と教えられて強制的にスネークした建物に。
「リィン、リィン」
「なんだ?」
「現実は非常」
「受け入れるしかないですわ」
俺を諭そうとする二人だが、目の焦点が合ってないので全然説得力がない。フィーなんか、白目剥いちゃってるよ。女の子がそんな顔しちゃいけません!俺も、人の事言えないけどな。
ジッとしていても仕方ないので、中に入ると増々もって見たことあるような錯覚に陥る。
そうこうしている内に、檀上にこれまた見覚えのある女性が立っていた。
「それじゃあ、聞き逃した人もいるから改めて、自己紹介といきましょうか。私はサラ・バレスタイン、あなた達《Ⅶ組》の担任を勤めさせてもらうわ」
その女性、サラはそう言ってウインクをした。
《Ⅶ組》という言葉に何人かの生徒が戸惑っている中、
「へぇ~、あの酒乱が出世したもんだ。アデッ」
声に出ていたのか、イイ笑顔のサラから額にゴム弾をくらった。
ほんと、俺の青春は一筋縄でいきそうにない。
―――out side
「へー。あれが、今年から始まる例のカリキュラムを受ける新入生か」
「その通りだ。上手くいけば、私達も協力した甲斐があったと言うもんだ」
時は少し遡る。
旧校舎から少し離れた崖の上の四人の人影があった。
「ま、せいぜい頑張りな。後輩」
その中の一人。黒いバンダナを巻いた白い髪の少年は、他の三人に気付かれないよう懐にある、『E』と刻まれた白いUSBメモリのような端末を弄った。
「……さあ、死神の
『Eternal!』
発せられた電子音は、誰の耳に届く事も無く虚空に響くのだった。
ちなみに、今回のタイトルは適当です。深い意味はありません。