まあのんびりとですが続きます。
あと本編前にちょいとした説明。
この作品での深海棲艦についての知識。
深海棲艦はそれぞれの探知範囲内に電波や人がいるとそちらへ向かって襲い始める。
感知範囲はおよそ10㎞四方、ただし『異常』が起きればその限りではない。
基本的に陸地には来ず、それゆえに現在生き延びている世界各国の人々のほとんどは内陸にいる。 日本は首都がグンマーあたりに変わってる。
一話では生が来る直前に起きた『異常』が原因で横須賀の地にはぐれ駆逐イ級が出没した。
翠色の結晶が奔ると同時に室内に悲鳴が奔った。
アラート音がけたたましく鳴り響く中幼子達の悲鳴が響き渡る。
だがそれを止められる者は誰もいない。
事態が突然であったことに加え、そもそも想定外の事態だったからだ。
初の起動実験であった以上そのような異常が起きるかどうかなんて想像もつくはずもなく、故に対処法もなかった。
『いヤだ、siにタkuない。 Daれか、taすケてyo―――――』
ただ無情に時間は過ぎていき――――その少女はうつろな瞳で譫言を呟きながら姉妹のように育った者たちが見る中、艤装に喰われて砕け散った。
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「―――っぁ……寝てたのか」
鎮守府の一角、出撃ドックの近くに建造されているそのブロックの内部、バスルームのような形をしたそのユニットの中で望月は目覚めた。
ぼうっとする視界と意識の中見回し、望月は何故自室ではなくこの場所にいるのかと思考し、直ぐに当然の事実に行きつく。
「そう言えば、戦闘したんだっけ、なら確かに入渠しなきゃだよねぇ」
入渠ドックというのが望月のいる場所の名前だ。
艤装を起動し、身に纏った後には必ずこの場所に行くことが義務付けられている治療施設であり、望月達艦娘の生命線と言って違いないものだ。
「っと―――残り時間は後一時間ぐらいかぁ。 ま、ティターンモデル使った上同化されかけたし当然かねえ」
時計を確認すれば既に長い時間、約半日入っているが、まだあと一時間は治療に時間がかかる。
だがそれは当然のことだと望月は納得している。
戦闘に置いて艦娘にとって致命的なのは被弾ではない。
正確に言えば頭部と艤装内部の核という致命的な二か所に攻撃を受けない限り核の自動再生能力が体を直すので戦闘への影響は対してない。
艦娘にとって一番危惧するべきは同化限界―――核の再生機能が使用され続け、過剰な再生が肉体を侵すことによる末期症状を迎えることだ。
末期症状の悲惨さは
「……まあ、暇だしのんびり寝ますかねぇ」
入渠はしっかり取らなければならない。
故に望月は再び目を閉じ、のんびりと揺蕩いながら数秒後には再び寝始めた。
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「では、報告を纏めよう」
鎮守府の一室、CDCから少し離れた場所に位置する会議室の席が自身を含めて6つ全て埋まったところでその男真壁司令がそう切り出した。
場にいるのは男性二人、女性四人―――それぞれが皆主任クラスの最重要人物であり、当然報告の内容はその場にいる全員が知っている。
昨日の戦闘、そして現在進行中の正式採用された
話を総括する真壁司令が一人へと目を向け、問いかける。
「では最初に、遠見先生」
「はい。 まず、敵深海棲艦の核ですが無事回収しました。 解析にも既に着手しています」
「なるべく急いでください。 ……小楯。 艤装の改装の方はどうだ?」
「良好だ―――ただ戦闘から得られた情報より提案された腕部防護用の装甲の新規設計、開発には最低でも三日、10隻全員分には一週間掛かると予想している」
「接触による同化か……敵の防壁を崩すには射撃よりも近接戦が有効なのは確認できたが接近戦のリスクもまた大きい」
隣に座る医療主任、遠見の話とその更に隣に座る艤装開発主任、小楯の話を聞きながら真壁司令は呟く。
「接触による同化、陸上での活動。 どれも20年前には見られなかった現象だ」
艦娘の初陣から得られた情報は莫大だ。
深海棲艦については40年以上前から存在が確認されているのに殆どが未知だと言っていい。
その原因は通信傍受からの遠隔同化などにより国と国の繋がりがほとんど殺されていること、そしてそれが原因で日本という島国が他の大陸国との交流がほとんど根絶したからだ。
現在でも交流があるのは年に一度数少ない航空機を飛ばして連絡を取り合う中国とロシア程度、其処から仕入れた情報でかろうじてドイツが生きていることくらいしかわかっていない。
そして横須賀鎮守府は艦娘関連の極秘事項もあり日本という国内においても20年近く潜伏し、ありとあらゆる存在との接触は最低限に、それこそ国内において知る人は現在の総人口8千万弱の中で0.00001%を超えないレベルで秘匿され、艦娘の開発に専念していたため情報面では大きく劣っていると言っていい。 故に長い年月での敵の
「兵装の方の改装は?」
「現在、12㎝単装砲を改造中です。 近接専用のブレードを砲身下部に取り付ける改装が進められている他、長物―――槍系統の武器の試作品が完成しました」
「至近接戦闘用の武器は?」
「短刀と拳銃を基礎装備として艤装に格納してあります……ただ、深海棲艦の装甲は両方ともに貫くのは難しいかと」
「……仕方ないか」
主砲が深海棲艦の装甲を貫くのは望月が敵を倒したことで可能だと証明された。
だが―――それも連射してやっとの事であり、流石に威力の劣る拳銃と短刀では不可能だろうと想定される、精々護身できればいい方だと考えられる。
さらに重要な問題はまだある。
「―――西尾先生、資材の残量は?」
「まだ余裕はあるさね――――だが一、二ヶ月すれば危ないだろうねぇ」
戦いには弾と武器が必要だ。
武器と弾は作るには資材が必要だ。
艦娘の身体はともかく艤装も被弾した場合修復が必要になる。
そして人間である以上食料は必須だ。
だが現在、横須賀鎮守府はそれらの必要な資材をそこまで潤沢に取る事は出来ない。
食料だけは地下プラントである程度賄えているもののそれしかなければいつか来る敵による死を待つだけになる。
まして水面下で動くことを強いられてきた横須賀鎮守府では最低限をギリギリまで食い詰め、初期から残っている物を経年劣化しない様にとって置いて、たった10人の戦闘要員であるというのになおそれしか余裕はない。
経理、兵糧主任の西尾の言葉に司令も頷く。
「―――対策計画……遠征の方も早めに視野に入れるべきですか」
「それはシステム次第だよ―――要、ジークフリードシステムの状態は?」
「予定通り生少尉はジークフリードに乗っても艦娘との通信時に敵による同化などが発生していません、無論システムへの同化による負荷も同じくです」
「ふむ……早めにジークフリードの適応範囲を鎮守府近海から伸ばさなければいけないようだな」
ジークフリードシステムもまた、深海棲艦との戦闘に必須の代物だ。
艦娘が深海棲艦に対する矛であるならばジークフリードシステムは盾と言っていいほどに。
なぜならば深海棲艦の読心能力、そして無差別通信傍受の二つに対抗できる唯一の機械であり、艦娘とCDCを繋ぐ唯一の物だ。
艦娘とジークフリードの双方があって初めて人類は戦術的に深海棲艦に有効打を与えることが可能になったと言える。
だが同時に足枷にもなっているといえる。
システムの欠点として鎮守府からおよそ25㎞の範囲内でしかシステムと艦娘を繋げない。
遠洋に出るとシステムの補助がなくなり、艦娘は深海棲艦に読心されることになる。
数少ない戦力を失う危険性を考えれば鎮守府近海にしか出られないのだ。
「いずれにしろ時間はかかる―――だが、我々にはもう時間は残されていない」
真壁司令が苦々しげな表情で述べた言葉に全員が顔に影を落としながら頷く。
「いつ来るかわからない艦娘の
それは言ってしまえば実現不可能で、あやふやな机上の空論かと言われても可笑しくないものだ。
だが、それでも
「既に大国と呼ばれていたアメリカ、ロシアもいまや物量作戦を行える状態でなく対抗できる国はない。 奴らと対等に戦えるのは、艦娘たちだけだ」
それはもし自分たちが、艦娘が失敗すれば後はないということ。
人類が生きるか死ぬかの瀬戸際だということ。
だからこそ、真壁司令は実現不可能な指令を成功させるしかなかった。
今回は生君が出てないのでポエムなしで。
わかりやすい?捕捉
世界全体では情報通信=電波探知からの同化のコンボのせいで通信が出来ない。
衛星とか経由もダメ。
おかげで情報共有がほとんど出来ておらず、日本に至っては輸入品がなくなったせいで人口がだいぶ減っている。
深海棲艦は大量のPT子鬼群と駆逐艦の群れが基本。
重巡以上はまだ見つかってない(いないとは言ってない)。
追加の艦娘はまだ作れない上に艦娘は開発初期型のせいでいつガタが来るかわからない。
そんな現状です。