「危険な人間は、皆殺しにしよう」
与一に取り憑いた鬼は、俺達を天井から見下ろす。
「一、二、三、四、五。おまけに全員鬼呪装備か。これだから人間は厄介だ……危険な人間は皆殺しにしよう」
そう言って鬼は弓を構え、矢を放つ。
放たれた五本の矢を優と君月は転がるように躱し、シノアは後ろに下がって避け、俺とグレンは刀を抜き弾いた。
「おーおー。やっぱ鬼が出て来ると欲望喰ってなくてもツエーな」
刀を鞘に納め、グレンは二人の方を向く。
「あーお前ら、追加の命令だ。お前ら鬼呪装備は手に入れたが契約したてじゃ使いこなせないだろ。だから鬼は呼びだすな鬼呪装備の基礎能力だけであの鬼を始末して見せろ」
「なっ!“黒鬼”に取り憑かれた人間相手にそんな無茶な……!」
流石のシノアもこれは無茶と判断したのかグレンに意見を言う。
だが、グレンはシノアの意見を無視する。
「…………クッ!」
君月は覚悟を決めたのか双剣を抜く。
「ってか殺せってどういうことだよグレン!!与一は仲間だぞ!!」
「はぁ~?仲間?ありゃどう見ても鬼だろうが早く殺して楽にしてやれ」
「ざっけんな!!仲間殺せるわきゃねぇだろうが!!」
「生言ってんじゃねえ!!ここを何処だと思ってる?月鬼ノ組だぞあるのは修羅の道だけだ。それともてめぇは復讐ごっこでもしに来たのか!!」
「……ぐ」
「もう与一は戻らねぇ。テメーが軍人だって胸張れるなら、やるべきことをさっさとやれ」
「………くそ……くそが……くそったれが!」
そう叫び優も刀を抜く。
優と君月が頷き合うと、二人は鬼に向かって走り出す。
鬼は二人目掛け矢を放つが、二人はそれを武器で弾く。
飛び上がり、君月が矢を撃たせないように弓に攻撃すると、鬼は弓で防御する。
その横から優が刀で弓を弾き、鬼の手から弓を離れる。
「よし!鬼呪装備は剥がした!これで与一は――!」
「馬鹿か!気を抜くな!鬼は武器じゃなく与一の中にいるんだぞ!」
グレンがそう叫ぶと、鬼は優を蹴り飛ばす。
「くそっ!」
君月が剣を振り、鬼に攻撃を仕掛ける。
「止めろ、君月!与一を殺す気か!」
しかし、君月は優のその言葉で攻撃の手を止め、与一の体に当たる寸前で剣を止める。
優と君月、そして鬼が着地し、それぞれの武器を構える。
「与一!正気になれ!鬼なんかに負けてんじゃねぇよ!俺達と一緒に吸血鬼倒しにいくんだろ!なら、戻ってこい!」
しかし、優の叫びに何の反応も無く、弓を構える。
君月は苦渋の決断をしたようで大優に告げる。
「もうだめだ、優、殺ろう」
「……ざっけんな!ここで仲間殺したら吸血鬼と同じになっちまうだろうが!俺は!俺がどんなことになろうとも、仲間をもう二度と見捨てねぇって決めたんだよ!だから、正気に戻れよ!与一っ!!」
大量の矢が二人を目掛け襲う。
その様子にとうとうシノアが口を出した。
「グレン中佐、状況と意図が見えません。これは少しやり過ぎじゃないでしょうか?」
「ああ?」
「彼等に与一さんを殺させるのを止めさせてください」
「ふぅん、いつもクールな割にあいつらには優しいんだな。ならお前が与一をやれよ。それであいつらを罪悪感から守ってやれ」
シノアはグレンの物言いに答えない。グレンはその様子を見て言う。
「なんだよ、お前も手を汚したくないのか?初めて可愛いとこ見せたじゃねぇか」
俺は溜息を吐き、刀に手を掛ける。
「優、君月。無理なら下がれ。俺が代わりにやる」
そう言うと、優は何かを考え、刀を後ろに投げ捨てた。
「俺は仲間を殺さない。そして与一も…お前も俺達を殺せない!お前が俺達と一緒なら、目の前で家族を喪ったんなら仲間を殺せる訳がないんだ!だから早く目を覚ませよ!馬鹿与一っ!!」
「じゃあ死ね」
鬼は矢を優に向け、放とうとする。
君月とシノアが走り出し、優を守ろうとするが間に合わない。
「与一!てめぇはまたベッドの下で家族が死ぬのを見てるつもりか!」
その時、グレンが叫んだ。
「さっさと出て来て仲間を守れ!与一!」
そして鬼が矢を放つ。
矢は優に当たらず、優の傍を通り抜ける。
「う………うわああああああああああん!!」
与一は優に走り寄って抱き付く。
戻ってきたか。
「おかえり」
優は泣いてる与一の頭を優しく撫で迎える。
グレンは笑いながら二人に近づき………
「戻んのが遅ぇ!」
優を蹴る。
「うぎゃ!?」
「グレン、アンタもしかしてこうなるって分かってたのか?」
「うるさい黙れ。俺は別にガキがどうなろうがどうでもいい」
「その割には大声で叫んでたよな。さっさと出てこいとか仲間を守れとか言って」
「死ね」
「ヤダね」
「死ね」
そう言ってグレンは与一を見る。
「お前には才能がある。なのに姉貴を助けれなかったことを負い目に感じて生きる欲望が足りてない。だが、今日見つけれただろ。お前の生きる理由は、お前を助けてくれた仲間を守ることだ」
「お前もだぞ、優」
俺は倒れてる優を足先で突っついて言う。
「復讐なんかにとらわれるな。昔の家族を忘れろとは言わねぇ。だがな」
「ここにも家族はいる」
俺がそう言うと、優は全員の顔を見渡す。
「復讐なんかに命賭けるぐらいなら、今の家族を守ることに命賭けろよ」
「……………うるせぇよ」
優が小さくそう言う。
ま、やっぱすぐには受け入れれないか。
でも、中々の進歩だな。
「さて、鬼呪装備も手に入れたことだし、チームワークっぽいこともできたし、一回前線に出てみっか」
「前線!?」
「関西方面の吸血鬼が新宿奪還を計画してることがわかった。それの調査にな」
「じゃあ吸血鬼狩れるのかよ!」
「い、いきなり戦線!?」
「ちょっとは休みとか無いのかよ」
「……あはは」
四人はそれぞれの反応を示す。
俺はそれを眺め、一人笑ってた。
いよいよ実戦か。
アイツらを何処まで守れるか分からないが、俺が生きてる限り全力で守らないとな。