見事原宿を解放した俺達はこのまま新宿へと向かう。
ここから新宿に向かうと結構な距離なので、君月が使える車を探すと言って優と何処かへ言った。
残った俺達は休憩もかねて、昼食を取る。
配給の豆の缶詰だが、このご時世食えるだけ有り難いんだ。
誰一人文句を言わず食べる。
まぁ、割とうまいんだがな。
「意外とおいしいですね」
シノアの意見に頷く。
「動いたぞ。これで新宿はすぐだ」
「おお!」
「本当に動いたんですか?」
「車泥棒は犯罪だぞ、君月」
「まぁ、今回は大目にみてやろうぜ」
その時、俺達の後ろで物凄い音がする。
振り返ると、そこには車が動いて、街灯にぶつかっていた。
「おい、君月。車の傍に優を一人にさせたのか?」
「………しまった」
君月はそう言うと、車に向かって走り出す。
「おい優!お前何やっ……うおわ!」
が、車が急にバックし、君月が危うく轢かれそうになる。
君月は寸前で横に飛び回避した。
「テメーぶっ殺すぞ!」
君月がそう叫ぶと、優が車から顔を出す。
「乗れよ!俺が新宿まで連れてってやる!」
なんでアイツドヤ顔なんだ?
「いいから降りろ!」
「ええ~!!」
何時もと変わらない光景に俺は苦笑いをして、溜息を吐く。
「あいつらは何をやってるんだ?」
「あ、あはは………」
「さて、ではシノア号に乗って出発と行きましょうか」
シノア号って、シノアが運転するのかよ。
てか、シノアの身長的に運転できるのか?
そう思ってるとシノアは運転席に座り、俺達に声を掛ける。
「皆さん!早く乗って下さい」
そう言ってシノアが前を向くと、座高が低すぎて前が見えていなかった。
「あれ?…………あれ?」
なんとか前を見ようと必死になるシノアだったが、結局座った状態で前を見るのは不可能だった。
そして、足がアクセルとブレーキに僅かに届いていない。
「「アハハハハハハハハハハハ!!」」
そんなシノアの姿を見て、優と君月が笑う。
「お前の身長じゃ無理だろ!」
「シノア、背ちっちゃ!」
あ、バカ……シノアに背が低いってのはまずい。
シノアは身長の事を笑った優と君月の方をゆっくりと見る。
「あっは…………なるほどぉ」
シノアはそう言って笑いながら“四鎌童子”を出す。
優と君月は自分達がやった過ちを即座に理解するが、遅かった。
そして、表参道一帯に二人の男の悲鳴が響き渡った。
全員で車に乗り込み、新宿に向かう。
後部座席に無理矢理、俺と与一、シノア、三葉が詰め込むように乗り、運転席に君月、助手席に優だ。
ちなみに後部座席の座り順は三葉、与一、俺、シノアの順だ。
「……もうシノアを身長でからかうのは止めよう」
「……初めて意見があったな」
運転席から君月と優のそんな会話が聞こえた。
それっきり、会話が無くなり車内には沈黙が流れる。
すると行き成り何処からか音が聞こえた。
「ヨハネの四騎士か?」
「どうする?倒すか?」
「いや、奴等倒してもキリがない。逃げ切れるならこのまま新宿へ」
「待て」
三葉が声を上げ、優と君月の会話を遮る。
「この音……新宿の方からだ」
その言葉に全員の体に緊張が走る。
「皆さん、臨戦態勢。あらゆる状況に対応できるようにしてください」
シノアの言葉に全員が警戒する。
「次の角を曲がったら新宿の防御壁が見えるはずだ」
そして、車が角を曲がった瞬間に見えたのは新宿の防御壁から黒い煙が立ち上ってる光景だった。
驚いていると、道の真ん中に一人の男が居るのが見えた。
「貴族だ!君月、このまま轢け!」
優が声を上げ、君月がアクセルを全開にする。
そして、全員が扉を開け、車外に飛び出る。
車は吸血鬼に向かって走るが、吸血鬼は猛然と迫る車を避けもせず、片腕で受け止めた。
吸血鬼は車を持ち上げ、俺達目掛け投げる。
“六道煉獄”を抜き、車を撃ち抜いて爆発させる。
すると与一が爆発に紛れて矢を五本放つが、吸血鬼は剣を抜き、いとも簡単に矢を弾く。
さらに、矢を弾くだけにとどまらず与一に向けて、衝撃波を放つ。
与一をシノアと三葉が武器を重ね合わせ衝撃波から守るが、力が強いのかシノアが顔をしかめる。
「みなさん独断で動かないで!相手は一級武装した吸血鬼です!今までの相手とは……!」
シノアが指示を飛ばしてると、吸血鬼はシノアが隊長だと判断したのか、シノアの背後に回り、剣を振り下ろそうとする。
俺はシノアと吸血鬼の間に移動し、吸血鬼の剣を“六道煉獄”で受け止める。
そして、“獅子斬童子”を抜刀し、剣を持った腕を斬り飛ばず
「へ~、人間の割にはやるね」
吸血鬼は焦ることも無く、ただ笑っていた。
「どうするシノア?」
「相手は貴族ですが、六対一。数ではこちらが有利です。まず、一対一でも殺されない廉也、優さん、君月さんの三人を前衛に、私、みっちゃん、与一さんで援護しながらあの吸血鬼を始末しましょう」
「それが最善だな」
刀と銃を構え、作戦を行動に移そうとすると、貴族の吸血鬼の傍に二人の金髪と青髪の女の吸血鬼が降り立つ。
まずいな……見た感じあの吸血鬼の男よりは弱いが、貴族クラスだ。
六対三。
これはキツイな……………
「どうする?撤退か?」
優が尋ねるが、この状況では逃げるのは無理だ。
だが……………
「シノア、皆を連れて撤退しろ。俺が殿になる」
「な!?何を言ってるんですか!」
「このメンツでアイツら三人を相手にして生き残る確率が高いのは俺だ。なら、俺がアイツらの相手をする」
「無茶苦茶ですよ!そんなの許しません!」
「ならここで全員仲良く戦死するか?全員死ぬぐらいなら、一人を囮に残りが生き残った「馬鹿言ってんじゃねぇ!」
優が声を上げる。
「誰も殺させねぇ、死なせねぇ。俺は………そのために力を手に入れたんだ。……そうだろ?阿修羅丸」
そう言い、優は“阿修羅丸”を構える。
「……優」
俺が優の方を見てると、青い髪の吸血鬼が貴族の吸血鬼に話し掛ける。
「クローリー様ぁ~、こんなところでなにやってるんですか?」
「前線で第七位始祖がお呼びです。クローリー様」
「んー?フェリド君が私を?それは行かないとねぇ。……ここも面白くなってきたんだけど……まぁいいか、また今度にしよう」
金髪の吸血鬼の伝言を聞き、クローリーと呼ばれた貴族は渡された剣を鞘に仕舞い、斬られた右腕を左腕で掴む。
「今回は見逃してあげるよ。でも次は君達の血を吸わせてもらうからね~」
「何?」
その時、俺は咄嗟に“六道煉獄”を後ろに向けるが、クローリーはいつの間にか俺の後ろに移動し“六道煉獄”を持ってる手を押さえる。
「反応できるなんて面白いね」
クローリーはそう言い、俺の肩をポンっと叩く。
「またね、可愛い家畜君達」
そう言い残し、クローリーは女の吸血鬼どもと何処かへと消える。
「……助かった」
シノアはその場に座り込む。
「なんだよこれ!鬼呪装備手に入れてもこんなに差があんのかよ…!」
優は歯を噛みしめ、叫ぶ。
「優、お前の鬼呪装備は俺と同じ“黒鬼”だ。鬼呪の力を使いこなせれば、差は埋まる」
「なら、使い方を教えてくれよ!」
「お前一人強くなってどうする?お前が吸血鬼の貴族と互角になっても仲間は死ぬ。シノアも、三葉も、与一も君月もだ。大事なのはチームワークだ………」
そう言って、俺は優の頭を軽く叩く。
「ま、今回は運が味方したのもあるが、死者は無し。それに、お前が自分から撤退を提案してきた。少しだが、お前も成長出来てる」
「廉也の言う通りです」
シノアが立ち上がり、優に言う。
「今回、貴方から撤退を提案してくれて嬉しかったです。それに、やっぱり貴方はグレン中佐が言った通り仲間想いですね。廉也に言ったあの言葉良かったですよ」
「いや、別に………俺はただ思ったことを言っただけだ」
優は照れくさそうに顔を赤くしてそっぽを向く。
すると、まだ新宿で大きな音が聞こえた。
「……なんかもう渋谷に帰りたい」
与一が弱音を吐く。
「どの道、ここを落されたら次は渋谷だ。腹をくくれよ、与一」
「では、行きましょう」
シノアを先頭に、俺達は新宿へと歩き出した。
おまけ
「あ、廉也は後でお説教ですからね」
「なんでだ!?」
「無茶をするなどは言わないと言いましたが、無茶していいとは言ってません。今回無茶しようとしたのでお説教です」
「お兄ちゃん、後で私からもお説教だぞ」
「ええ…………」