『緊急警報!緊急警報!吸血鬼たちの襲撃がありました!!敵は西防御壁に攻撃を仕掛けています。民間人の皆さんは東防御壁へ退避してください!!』
「一体どういうことだよ!」
「新宿は日本帝鬼軍の第二都市だぞ!!」
「吸血鬼が攻めてくることなんてあるのかよ!」
「吸血鬼殲滅部隊は何してんだ!!」
新宿内に入るとそこは大混乱だった。
防壁の内側では帝鬼軍の軍人たちの怒声が飛び交い、警報がけたたましく鳴り響いてる。
俺達が移動してると、吸血鬼たちは戦闘ヘリを使い、俺達を攻撃してくる。
「くそっ!完全に戦争じゃねぇか!」
「グレン中佐の言った通りだ。関西の吸血鬼どもは日本帝鬼軍を潰すつもりだ」
その時、近くの塔から帝鬼軍が弓を構える。
「あれ、僕と同じ鬼呪装備…」
「の、ダウングレード版です」
「鬼呪装備を簡略化した通常呪術装備だ。銃のような一般的な火器では吸血鬼は殺せないからな」
『兵士のみなさんは西へ!吸血鬼が大挙して押し寄せて来ています!渋谷本隊が合流するまで……なんとか防ぎきってください!』
「…俺達はどう動くんだ?」
優がシノアに指示を仰ぐ。
「私達は吸血鬼殲滅部隊ですよ?もちろん吸血鬼が出てきたのなら……」
「殲滅あるのみだ」
そう言い、俺は“獅子斬童子”と“六道煉獄”を抜く。
そして、皆もそれぞれの武器を構える。
「全員、死ぬなよ」
その言葉と同時に、俺達は西側へと向かい、吸血鬼を殲滅する。
吸血鬼をあらかた倒すと放送が流れた。
『命令を伝えます、命令を伝えます。現在かつてこの新宿をたった一部隊で吸血鬼から奪還した<月鬼の組>の一瀬グレン中佐が出動されてます。あと少し持ちこたえれば戦況が変わります。みなさん持ちこたえてください。続いてシノア分隊へ一瀬中佐からの命令です。―至急新宿五丁目交差点に来い。敵の司令塔がいる―とのことです。向かってください』
「お前ら、聞こえたか?」
「ああ!五丁目に言って、吸血鬼どもを皆殺しだ!」
俺たちは急いで、新宿五丁目へと向かうが、その行く途中でも吸血鬼に襲われる。
「おい!ここでずっと戦ってても拉致明かねぇぞ。先へ行こう!」
目の前にいる吸血鬼を斬り殺しながら君月が言うと三葉も頷く。
「賛成だ。グレン中佐の命令も敵司令塔がいる新宿五丁目へ集合しろ、だ。敵の頭を一気に叩くぞ!」
「ところで最前線にいく前にちょっといいですか?」
「なんだよ?」
優が問いかけるとシノアは言った
「突然ですが、今から優さんの第一回目の修業を始めまーす」
「修業?」
「優って言うか、正確には優と君月、与一への修業だ」
「修業って、こんな時に何言ってるんだ?」
「こんな時だからだ。取り敢えず時間が惜しいし、歩きながら説明する」
そう言って、俺達は新宿五丁目を目指しながら歩き出す。
「すでにさっきの吸血鬼の貴族とぶつかってわかったと思いますが、鬼呪装備の中でも最上位である“黒鬼”シリーズの保有者であっても、今のままだと瞬殺です。前線に出てもまるで役に立ちません」
優も先程のクローリーとの戦闘を思い出したのか頷く。
「もうね、あれです。リストラされた父親並に使えない存在です」
「おい!リストラされた父親になんて鞭打ちだよ!父親が何したってんだよ!謝れ!父親に謝れ!」
優のツッコミを無視し、君月が口を開く。
「冗談は置いといて、結局何をするんだ」
「大したことじゃない。コイツを使うんだ」
そう言って、俺は懐から薬の入ったケースを見せる。
「早い話。ドーピングだ」
「飲むと鬼と同化しやすくなって本来の力が引き出せます。理論上、一錠飲めば1.5倍、二錠飲めば1.8倍の力が使えます」」
それを聞き、優が感嘆の声を上げる。
「すげぇじゃん!じゃあ、十錠ぐらい飲めば……!」
「神でも殺せるんじゃないですか?ただし、三錠も飲めば内臓が破裂して死にますけど」
笑顔で言うシノアの言葉に優たちは驚く。
「二錠でもショック死しかねない深刻なダメージを受けます。なので普通は一錠まで」
「薬で簡単に強くなれると思ったか?何事にもそれ相応のリスクがある」
「おまけに効果時間は十五分。薬が切れたら完全な無防備です」
そう言って、シノアは三人に薬を渡し、次にアラームを取り出し渡す。
「このアラームのボタンを押すと十三分で音が鳴ります。鳴ったら全力で逃げてください。残り二分であなた方はただの人間ですから」
「聞かせてくれ。どうしてあの貴族と闘った時、これを出さなかった?これさえあれば、アイツに」
「勝てない。この薬は飲んでから効果が出るまでに十秒掛かる。奴のスピードは見ただろ。奴は十秒もあれば、俺達を皆殺しに出来た」
「……最後にもう一つ。これがお前達の言う、鬼呪装備の本当の使い方なのか?」
「いえいえ、これは一時的処置です。鬼呪の力を使いこなすにはもっと勉強と修業が必要です。でも、今はそれ、やってる時間ないでしょう?何せ戦争始まっちゃいましたし」
「……確かにな」
「でも、薬飲んで強くなるとか、なんだか嫌だなぁ……」
与一は薬を見つめながら言う。
「ああ、そこは安心してください。この薬、人体に副作用がありまくりなのは日本帝鬼軍お墨付きですから」
(((全然安心できねぇ(ないよ)!)))
「…………で、飲むタイミングは?」
「前線にグレン中佐がいるのなら中佐がするでしょう。ですから中佐の命令に従ってください。まぁ中佐にその暇がなさそうなら私がしますが」
その時、君月が俺の手元をじっと見つめ口を開く。
「ん?廉也、お前の薬、俺達と違くないか?」
君月が俺が持ってる薬のケースを見つめながら言う。
俺の薬は優たちのと違って黒い錠剤になっている。
「え?本当ですか?」
「何?」
シノアと三葉も俺の手元を覗き込む。
「ああ。これな。えっとだな………俺は鬼呪装備を二つも持ってるからな。普通の薬じゃ効果は薄いんだ。これは、俺用に特殊な配合で作られてる。だから、お前達とは違うんだ」
そう言って、俺は隠すように薬を仕舞う。
「さて、もうすぐ新宿五丁目だ。お前ら、気を引き締めろよ」