新宿での攻撃から五日後。
シノアは日本帝鬼軍の軍施設の地下に続く階段を降りていた。
そして、地下に着くとそこにある扉を開け中に入る。
中には檻のような扉がありそれを守るようにして軍人が二人立っていた。
「止まってください。ここから先は立ち入り禁止です。」
その内の一人がその人影、柊 シノアに制止の声をかけた。
「私は日本帝鬼軍吸血鬼殲滅部隊に籍を置く者です…」
軍人はシノアの階級章を一瞥し、再び口を開く。
「たとえ、殲滅部隊の方でなっても尉官以下の人間は立ち入ることを禁止されています」
「………一体ここは、なんの施設なのですか?」
「お答えできまs「モルモットの実験場だよ」おい!」
一人の兵士があっさりと口を開き、一人がそれを咎める。
「大丈夫だろ、新宿兵はみんな知ってんだから」
「モルモット、というのは?」
「捉えた吸血鬼どもの体を使って弱点を探ってんだよ」
「つまりは、人体実験ですか?」
「はっ、あいつらが人間だっていうならそうだな」
それを聞き、シノアは詰まらなさそうに息を吐く。
「まぁ、いいです。入れてください」
「だから尉官以下の者は…」
「これでも通れないでしょうか?」
シノアは手を前にだし、柊家のマークが掘られた物を見せる。
「それは、柊家の!?」
「私は、日本帝鬼軍を統べる柊家の血に連なる人間です。これでも通れないでしょうか?」
「い…いえ!もちろん大丈夫です!」
軍人は驚き、そして血の気の引いた顔で、扉を開ける。
シノアは「では」っと一言だけ言い、そのまま扉をくぐる。
「あ…あの、お聞きしたいのですが…」
その時、軍人の一人がシノアを呼び止める。
シノアは首だけを動かし、その軍人を見る。
「なぜ帝鬼軍を総べる柊家の方がその…軍曹などという階級に……」
「軍曹って響きが好きなので、あと軍の中でのくだらない権力争いに興味がないんです。そのせいで姉は死にましたし……」
そう言ってシノアは奥へと進む。
奥へと進んでいると、檻の中にいる吸血鬼はシノアの方を見るが、シノアは気にせず進む。
しばらく進んでいくと光のある一つの部屋についた。
中を覗いて見ると、そこには沢山の実験器具と研究者、そしてそれらを一望できる部屋の窓からシノアが探してる人物、グレンを見付ける。
シノアはその部屋まで歩き、扉を開ける。
「五日探しましたよ、グレン中佐」
「そうかい。それはご苦労だったな」
「少し聞きたいことがあります」
「答える気はない。帰れ」
シノアはグレンの言葉を無視し、机を叩いて話す。
「優さんがまだ目を覚ましません。そして、廉也も。グレン中佐は二人に何をいsたんですか……いえ、二人で何をしようとしたんですか?」
だが、グレンは何も答えようとしない。
そんなグレンの前にシノアは二つのケースを置く。
優の鬼呪促進剤と廉也の鬼呪促進剤が入ったケースだ。
「優さんの《黒鬼》シリーズの装備は特殊なものだから特殊配合の薬を渡せ-と中佐に言われてそうしましたが……あの優さんの暴走はその薬のせいじゃないんですか?いったいあの戦場でのあれはなんなんです?」
だが、グレンは一向に応えようとしない。
「それと、廉也の薬の配合を調べました。廉也からは鬼呪装備を二つも持ってるから、普通の薬じゃ効果は薄いと聞きました。ですが、この薬には通常の鬼呪促進剤に使われる薬は一つも入ってません。答えてください、中佐!」
さっきよりも強く、そして声を荒げる。
「お前が感情見せるなんて珍しいな。怒ってんのか?………で、なんて答えたら納得する?何もしてないって答えたら安心するのか?」
「馬鹿な!何もしてないわけが…」
「じゃ人体実験してるって言ったら怒るのか?」
人体実験、その言葉にシノアは驚く。
「か弱い人間が…崩壊した世界で生き残るにはどうしたらいい?吸血鬼を殺すには?ヨハネの四騎士を始末するには?お前の姉《柊 真昼》が開発した《鬼呪装備》はいったい何人の犠牲の上に完成した?《鬼呪装備》なしで、人間はこの世界で生き残れたか?」
グレンの質問に、シノアは答えることが出来ず黙った。
「なら、いまさら綺麗ごと抜かすんじゃねぇよ。ガキ…それとも、優に惚れたか?もしくは、廉也か?」
その瞬間、シノアは“四鎌童子”をグレンの首に引っ掛けるように出す。
「………中佐、あまりおふざけが過ぎると………私、何するか分かりませんよ?」
シノアの言葉も殺気も本物だった。
だが、グレンは微動だにせず黙って椅子に座っていた。
「殺したきゃ殺せ。だが何度でも言う。俺は、お前の質問に答える気はない。さっさと帰れ」
シノアはこれ以上言っても無駄と悟り、大人しく“四鎌童子”を仕舞い、部屋を出ようとする。
「………優の薬だが、アレ五日で抜ける。もうそろそろ目覚めるだろう」
グレンのその言葉にシノアは立ち止まり振り返る。
「心配なら傍にいてやれ。それと廉也の事だが……」
そこで一旦言葉を切り、グレンは立ち上がる。
「アイツのアレについて知りたきゃ教えてやる。ただし、優が目覚めて、廉也以外のお前の隊の隊員全員が知りたいって言うなら教える。以上だ」
グレンなりの優しさなのか、シノアはそれ以上何も言わず、大人しく部屋を去った。
一人になり、グレンは机の引き出しからある紙の束を取り出す。
「全く………とんだ置き土産を置いてってくれたもんだな…………橘少将」