終わりのセラフ~一刀一銃の使い手~   作:ほにゃー

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廉也の真実

「吸血鬼に………近い人間……」

 

その言葉に優は驚きの表情を浮かべる。

 

それは他の皆も同じだった。

 

「昔、まだ鬼呪装備も無かった頃、帝鬼軍は吸血鬼に対抗するためにある実験を行ってた。実験の名は“人造吸血鬼兵計画”。吸血鬼の力を持った兵士を作る実験だ。その実験の責任者だったのが、帝鬼軍設立時の初期メンバーにして優秀な研究者だった橘海淵少将だ」

 

「橘ってまさか!?」

 

三葉が声を上げる。

 

グレンは頷き言う。

 

「ああ。廉也の実父だ。話を続けるぞ」

 

グレンの話を纏めるとこうだった。

 

橘海淵少将は、手始めに吸血鬼の血を人間の体に容れることから始めた。

 

その結果、人間の血と吸血鬼の血が拒絶反応を起こし、人間は死亡。

 

拒絶反応が起きるなら、血を全て交換し、体の中に吸血鬼の血のみを流す実験では、人間の臓器が吸血鬼の血に耐えきれず、内臓が破裂し死亡。

 

そのため、臓器を吸血鬼の物と取り換えて血を流した結果、その兵士は吸血鬼と同等のスペックをもった兵士となった。

 

だが、数日が経つと体調に異常をきたし吸血鬼へと変貌。

 

そして、その兵士は殺処分となった。

 

橘少将は頭を抱え試行錯誤をした。

 

だが、そうしてる間に鬼呪装備が開発され、帝鬼軍は徐々に力を付け始めた。

 

そして、一向に結果の出ない橘少将に軍上層部は痺れを切らし、橘少将が保有する権限を全て剥奪の上、降格処分にしようと検討していると言う噂が帝鬼軍内に流れ出した。

 

功を焦ったのか、それとも、今の地位を手放すのが怖かったのか橘少将は自暴自棄となり、ある手術を秘密裏に行った。

 

それは、吸血鬼の脳細胞を人間の脳に移植すると言うものだった。

 

「吸血鬼の脳細胞を移植だって!?」

 

「そんなこと可能なんですか?」

 

「どうだろうな。術式の書かれた紙やデータは橘少将が全て燃やしたらしく方法は分からずじまいだ。だが現に手術は成功した。その産物が橘廉也だ。そして、この話にはまだ続きがある」

 

脳細胞の移植手術に選ばれたのは兵士ではなく、まだ年端のいかない子供だった。

 

名前は橘廉也、橘海斗、橘自由。

 

橘少将の実子だった。

 

橘少将は密かに自分の子供で人体実験を行っており、特殊な薬や訓練で通常の兵士よりも優れており、さらに精神も鍛え上げられた子供。

 

この時点で、この三人はどの兵士もよりも優秀な存在だった。

 

その三人を使い、吸血鬼の脳細胞移植手術をした結果、橘海斗、橘自由の二名は吸血鬼と言う工程を飛ばし鬼に成り果て、廉也は見事吸血鬼の脳細胞に適合するも、吸血鬼の力を存分に発揮できないことが判明。

 

結果、橘少将は責任を取る形で処刑。

 

「ここまでが廉也が何者なのかの話だ」

 

此処までの話を聞き、誰一人として口を開く者はいなかった。

 

それだけ内容があまりにも衝撃的過ぎたからだ。

 

「廉也の持ってる薬は、奴の中に眠る吸血鬼の力を引き出す物。だが、あの薬は同時に服用者の精神を脆くさせる。もし、薬の効果時間の間に精神に大きなショックを与えると、精神バランスが崩壊し、吸血鬼の本能が暴走する。代わりに、吸血鬼としての力を100%まで引き出すことが出来るがな。以上だ」

 

「………廉也はそのことを知ってるのか?」

 

優が口を開いた。

 

「いや。手術の影響の所為か、どうも手術以降の記憶は無いらしい。自分に兄妹がいたのかすら覚えてない」

 

「その鬼になった兄妹はどうなったんだ?」

 

君月が聞くと、グレンは君月の方を見て言う。

 

「鬼呪装備になってる。“獅子斬童子”と“六道煉獄”。廉也の鬼呪装備だ」

 

「まさか、お兄ちゃんが鬼呪装備を二つ、それも“黒鬼”を所有できるのは中の鬼が実の兄妹だから?」

 

「断定はできないか、可能性としては高い。で、どうなんだ?」

 

グレンは全員の顔を見つめて尋ねる。

 

「今の話を聞いて、お前達は廉也をどう思った?」

 

その質問に全員が一瞬黙り、考える。

 

そして、シノアが答えを言おうとした瞬間…………

 

「グレン様!」

 

部屋にグレンの部下の小百合がやって来た。

 

「どうした?」

 

「最上階の部屋から廉也さんが姿を消しました!」

 

「何?」

 

廉也が逃げたと聞き、全員が反応する。

 

「廉也さんは、見張りの兵士を倒し、兵士の持ってた通常呪術装備を手に逃亡!施設内の閉鎖を行いましたが、恐らく…………」

 

「くっ!」

 

その情報を聞き、優は外へ出ようと動き出す。

 

「待て」

 

グレンが優を止める。

 

「何すんだよ離せ!廉也を連れ戻さないと!」

 

「何の為にだ?」

 

「え?」

 

「何の為に、廉也を連れ戻すんだ?仲間だからか?それとも、友達だからか?そんな甘っちょろい考えで行くって言うなら、やめろ。余計に、アイツを苦しめるだけだ」

 

グレンの言葉を重く優たちの心にのしかかった。

 

だが、優は振り絞るように声を出し、言葉を出す。

 

「仲間だとか友達とかだからじゃない。俺がアイツを連れ戻したいからだ!これは俺のエゴだ!俺はもう何も失いたくねぇ。だから、廉也を連れ戻す!」

 

「中佐、わたしも優と同じです。わたしはお兄ちゃんに助けられ、いつも励まされました。だから、お兄ちゃんが今苦しんでるなら今度はわたしがお兄ちゃんを励ます番です!わたしも、自分の為に行きます!」

 

「同感だ。それに、俺はアイツに殺されかけたんだ。一言の謝りも無しに去っていくなんて許さねぇ。こっちも一言言ってやりたい。だから、俺も行く」

 

「中佐、鬼呪装備の契約の儀の時、僕にいいましたよね?何時までベッドの下にいるんだって。僕はもうベッドの下で震えるだけでいるのは嫌です。僕も自分の為に行きます」

 

優、三葉、君月、与一の順に、自分の意志を話す。

 

そして、グレンの目はシノアに向けられる。

 

「私は、廉也に言いました。廉也を傷つさせない………私が、させないと。今、廉也が傷付こうとしてるなら、私はその約束を守る為に、彼を追います!」

 

「………そうかい。なら、俺は何も言わねぇ。これより、シノア隊はすぐに橘廉也准尉の後を追え。ぶん殴ってもいい。必ず、全員で帰ってこい!」

 

『はい(おう)!』

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