「シノア………お前…どうして………?」
「説明は吸血鬼を倒してからですよ!」
そう言ってシノアは吸血鬼は剣を跳ね上げ、“四鎌童子”で体を切り裂く。
「くっ……たかが一人増えた位で調子に乗るな!家畜が!」
「一人じゃねぇ」
「なっ!」
今度は優が現れ、青髪の吸血鬼を後ろから突き刺し、鬼呪を発動して殺す。
「な、なぜだ……なんで吸血鬼である我々が人間如きに………!」
「うるさい!死ね!」
三葉が上から回転しながら鬼呪装備“天字龍”を振り下ろし、最後の一人を叩き潰すように斬る。
「ごくろうさまです、優さん、みっちゃん」
そう言ってシノアは鎌を仕舞うと俺の方を向く。
「廉也、迎えに来ましたよ」
手を差し出して来る。
俺はその手を掴まず、立ち上がる。
「助けてくれたのは感謝する。けど、俺はもう戻らない。戻っちゃいけないんだ」
三人に背を向け去ろうとすると、シノアから驚きの言葉を言われた。
「それは………自分が橘海淵少将が行った実験の被験体だからですか?」
「な!?」
「全部、グレン中佐から聞きました。貴方の過去、そして、あの暴走の正体も」
「…………なら、分かるだろ。俺がなんで戻らないのか」
「はい、分かります。でも、連れ戻します」
俺は振り向き、シノアに尋ねる。
「なんで俺を連れ戻す必要がある?」
俺は笑いながら聞く。
「おーい!さっきの少女は防壁まで案内した!って廉也!」
「廉君!無事だったんだね!」
君月と与一がやって来て、声を上げる。
「ぞろぞろと増えやがってよ。で、何で俺を連れ戻すんだ?」
「お前が俺達の家族だからだ!」
「家族……家族ね………その家族ってのは化け物も入れるのか?」
「廉也……何を………」
「グレンから聞いたなら分かるだろ?俺が何者なのか?俺は化け物だ。人間でも吸血鬼でもない。答えろよ、こんな俺は家族になるのか?」
「お兄ちゃんはお兄ちゃんだ!そんなの関係ない!」
「関係あるんだよ!」
俺は怒鳴り、全員を睨みつけるように言う。
「俺は君月を殺しかけた!そして、シノアも殺そうとした!あの時、シノアが止めてなければ、俺は帝鬼軍の人間を殺しつくしたかもしれない!もし、まだ俺が暴走してみろ!今度は止まらないかもしれない!俺は………俺は自分の大事な仲間を殺したくないんだよ!」
気が付けば俺は涙を流し泣いていた。
「だから、俺は戻れないんだ!…………戻るぐらいなら、死んだ方がマシだ!」
その瞬間、乾いた音が響いた。
シノアが俺の頬を叩いた。
不意打ちみたいな形で叩かれ、俺は思わず地面に倒れ込む。
唖然とし、涙が止まった。
俺だけでなく、優も君月も与一も三葉も唖然とした。
シノアは涙を流しながら俺を叩いた。
「死んだ方がマシだなんて………言わないでください。約束したじゃないですか。絶対死なないって」
そう言ってシノアは俺を包み込むように俺の頭を抱きしめた。
「貴方が居なくなったら皆悲しみます。優さんも、君月さんも、与一さんも、みっちゃんも。そして、私も。少なくとも貴方が死んだら、私、ボロボロに泣きますよ。自信ありますから」
俺の頭を解放し、俺の顔を両手で持ち上げ、目を合わせて来る。
「大丈夫です。私は、貴方と約束しました。廉也を傷つさせない、私がさせないと。だから、安心してください。廉也がまた暴走したら私がまた止めます。廉也が無理だって言っても、私は絶対止めます。貴方が傷付かないように」
「俺もだ、廉也!俺は、お前を家族だと思ってるんだ!家族が居なくなったら俺は嫌だ!だから、戻って来てくれ!」
「お兄ちゃん!私、まだ弱いからお兄ちゃんと一緒に居たい!居なくなるだなんて、言わないで!」
「戻ってきてくれよ。でないと、誰が馬鹿優とブラコン三葉に、お調子シノアの暴走を止めるんだ?俺一人じゃ無理だっつーの」
「ぼ、僕は優君や君月君、三葉さんみたいいな気の利いた事はいえないけど、廉君が悩んでるなら一緒に悩むし、廉君の事を否定する人が居たら僕がその人を否定する。それしかできないけどね」
シノア、優、三葉、君月、与一がそう言う。
俺は全員の顔を見渡し、もう一度シノアの方を見る。
シノアは優しい笑みを浮かべ、立ち上がり、もう一度手を差し伸べた。
「帰りましょう、廉也」
「………ああ」
俺は再び涙を流し、シノアの手を取った。
その後、防壁まで全員に護衛される形で戻ると、防壁前にグレンがいた。
グレンは俺の顔を見ると笑い、近づいてきて一発俺を殴った。
「手間かけさせんじゃねぇーよ。クソガキ」
「イッテェ………!」
「一人で抱えるんじゃねぇよ。何のためのチームだ」
「………グレン」
「ほら、さっさと病室戻れ。面会謝絶も監視も隔離も無しだ」
そう言うとグレンはさっさと去って行った。
「私は廉也を病室に連れて行きますので、ここで解散です」
「え?俺達も病室まで付き添うぞ?」
「廉也はまだ病人ですから、大勢で行くと疲れさせてしまいます。お話はまだ後日。では」
そう言ってシノアは俺の手を取り、病室へと連れて行く。
扉を開け、ベッドに俺を寝かせるとシノアは隣の椅子に座る。
「気分はどうですか?」
「よく分からねぇけど、悪い気分ではないな」
「……それにしても廉也の泣き顔、初めて見たかもしれませんね。いいもの見れました」
「そう言うなら、シノアの泣き顔も初めて見たな。いい物見れたぜ」
そう言うと俺とシノアはいつの間にか笑っていた。
「一つ聞いてもいいですか?」
「なんだ?」
「暴走する原因は、薬の効果時間の間に精神に大きなショックを与えると、精神バランスが崩壊し、吸血鬼の本能が暴走すると聞きました。あの時、一体何が廉也の精神に大きなショックを与えたんですか?」
「えっと……言わないとダメか?」
「はい。今後の為にも」
俺はシノアの顔を見ないで答える。
「クローリーが、お前の血を飲んでる姿を見たら、なんか心の中でざわざわとした感じになって、気が付いたら……………」
その時、俺は気付いた。
あの時、血を吸われたのはシノアだけじゃない。
君月も三葉も、与一も吸われてた。
何も感じなかったわけじゃない。
むしろ、怒りはあったし護れなかったことに腹も立った。
でも、シノアの時は違う。
怒りを超える何かと、クローリーを殺したい衝動が俺の中にはあの時あった。
なんでそう思ったのか?
どうして、俺は皆が俺を拒絶する夢をを見た時、シノアの名前を叫んだのか?
答えが今分かった。
俺は……………………
「アレですかね。仲間がやられてるのを目の当たりにして、ぶっつんしちゃった的な感じですかね。取り敢えず、それが分かっただけでもよしとしましょう。じゃ、今日はもう帰りますね。また明日」
去ろうとするシノアの手を俺は掴む。
「………どうかしましたか?」
シノアは一瞬不思議そうにするが、すぐに優しい笑みを浮かべた。
「シノア、俺、気付いたことがあるんだ」
「なんですか?」
「シノア」
「お前が好きだ」