楽しみにして下さっていた方々、お待たせしました。
白い世界に居た。
何処までも続く白い世界。
俺はそこに突っ立ていた。
背後に気配を感じ振り向くと、そこには黒いマントのような服を着た長身の男と、白いワンピースに近い服を来た少女が立っていた。
俺の鬼呪装備の鬼。
獅子斬童子と六道煉獄だ。
「…………兄さんと自由なのか?」
そう尋ねると男はニヤッと笑いそして――――――――
「やっと思い出したか!廉也!」
「お兄ちゃ――――ん!!」
二人が俺に飛び掛かってくる。
「うおっ!?」
そのまま俺は白い部屋の床?に倒れる。
「いやー!やっと俺達の事を思い出してくれるとは!お前ならいつかやってくれると信じてたぜ!」
「またこうして話せるね!」
「いや、その、なんていうか……………」
二人を座らせ、俺は話す。
「今まで二人の事忘れてて………それが急に兄妹だったこと思い出して………今まで鬼だと思って話してきたのに…………俺、どんな顔して二人と接すればいいのかちょっと分からないんだ」
正直に、今自分が思ってることを話す。
すると、兄さんが立ち上がり、俺の頭を殴った。
「何すんだよ!?」
「バカ野郎。んなこと気にすんな」
そう言って俺の頭に手を置く。
「お前は俺達の事を思い出してくれた。それだけで充分だ。笑えよ。久しぶりの再開なんだからよ」
「そうだよ!お兄ちゃん!自由ね!もっとお兄ちゃんとお話したい!」
俺に抱き付き、見上げて来る自由を暫く見つめ、俺は頭を撫でる。
「そうだな。これからは今まで話せなかった分、一杯話そうな」
「うん!」
「よし!そうと決まれば今日は語り明かそうぜ!」
「おー!」
「ほどほどに頼むよ」
そう言い、俺も床に座って兄さんと自由の三人で話をした。
目が覚めると、天井が目に入った。
机の上には獅子斬童子と六道煉獄がある。
「今日も頼むよ、二人とも」
帝鬼軍の制服に着替え、鬼呪装備を装備し家を出る。
新宿襲撃戦から七日が経過した。
その間、俺達シノア隊は新宿内で待機している。
「そう言えば優の奴、資料室に籠ってるんだっけ」
折角だし、様子見に行くか。
資料室に向かい、中に入る。
そこではちょうどシノアと優が何かを話していた。
「よぉ、御二人さん。何の話してるんだ?」
中に入るとシノアは俺の方を向き、優は「よ!」っと片手を上げて言う。
「これが話の内容か?」
シノアの手から本を取り上げ、読む。
「人間の吸血鬼化について…………優、ミカを人間に戻す方法を探してるのか?」
「………まぁな」
「なるほど。…………シノア」
「なんですか?」
「お前ならこれについて詳しいんじゃないのか?」
「そうですね。それなりに情報は持ってます。優さんさえ良ければ、私の持ってる情報を話しますよ。聞きますか?」
「うん聞く!」
優は子供の様に頷く。
「あは。そんな時ばかり素直で可愛いですよね」
「そこが優の良い所だろ」
「いいから話せよ!」
優を少しからかった後、シノアは話を始める。
「先ず、人間の吸血鬼化は滅多に起こりません。吸血鬼は人間と違い増えることを嫌ってますし。さらに、吸血鬼の強さは生きた年数と、主の能力がかなり色濃く反映されると言われています。ミカさんのあの強さはかなり高位の吸血鬼に選ばれたんでしょう」
「高位の…貴族……あいつか…」
「心当たりがあるんだな」
「…………まぁな」
「また吸血鬼を皆殺しにしてやるー!っとか思ってるんですか?」
「いや、ミカが生きてた。今はそれだけでいい。もちろん吸血鬼は嫌いだけどな」
なんというか、優も成長したな……………
「んで、吸血鬼を人間に戻す方法は?」
その質問にシノアは首を振って答える。
「そか。そりゃ残念」
「…………なんか優さん、急に大人っぽくなりましたねぇ。生きる目的が変わったからでしょうか」
「俺は最初から大人だろうが」
「お前が大人なら小学生は全員大人だな」
「廉也!テメーそれどういう意味だ!」
優が怒っていると、アナウンスがなった。
『呼び出します。百夜優一郎特殊二等兵及び橘廉也准尉。新宿中央軍官舎一号執務室へ出頭しなさい。繰り返します――――――』
「呼び出し?グレンか?」
「いや、グレンじゃない。一号執務室ってことは……………」
「柊家の人間ですね」
「柊家って確か……………」
「ああ。日本帝鬼軍の中枢にして、壊滅した日本を取りまとめて復興させた呪術組織の中心だ」
流石の優もそれは知ってるか。
「あれ?そう言えばシノアも苗字に柊って……………」
「あ!気づいちゃいました?そうですそうです。一族の一員です。とても偉いんですよ。さぁ、敬いなさい思う存分敬いなさい」
「ちょーうざい」
「あはー。まぁ、冗談はさておき、私ははじっこでコソコソしたいタイプなので中枢には全然出入りしてないんですが…………柊家の人間は怖い人ばっかなので気を付けてくださいね」
「なんでその偉くて怖い人が俺と廉也を呼んでんだ?」
「さぁな。行けば分かるだろ」
優と二人で一号執務室を目指してると途中でグレンが待っていた。
「よぉ馬鹿優、廉也。調子はどうだ?」
「そう言うグレンはどうなんだ?」
「剣で刺されて血ぃ吐いてたろ」
「もう治った」
「んなわけねぇだろ」
「少なくともガキが心配することじゃない。で、そんなに慌ててどこに行く?」
「別に慌ててねぇけど、伝令聞こえてねぇの?」
「本家様に呼ばれて尻尾振って駆け付けるってわけか」
やたら棘のある言い方だな。
「んだよ、その言い方……………もしかして、お前軍中枢と仲悪ぃの?」
優の言葉にグレンは笑う。
「…………優、知ってるか?お前を助けたのは俺だ」
「は?」
優は、グレンが何を言ってるのか理解できないみたいだ。
「吸血鬼の都市から助けたのは俺だ。生きる方法や剣の使い方も教えた」
「…………なんなのお前?今日はすげぇ恩着せがましいんだけど」
「恩を感じてるなら今日返せ。お前は俺の物だ。俺の派閥だ。だから柊家に尻尾を振るな」
流石の優もここまで言われてようやく理解したみたいだ。
「ああ、なるほどね。そういう話か」
「そう言う話だ」
「つまんねぇの。人間同士の争いに俺正直興味が」
「黙れよ、ガキ。お前が興味無くても世界はそうして回って「んな心配いらねぇんだよ」
グレンの台詞を切って、優は話しながらグレンを通り過ぎる。
「俺はもう絶対仲間を見捨てたり裏切ったりしないから」
…………やっぱり優の奴、大人になったな。
「………ふぅん。お前一つ勘違いしてるぞ。俺はお前の仲間じゃない。上司、命の恩人、親代わり。これだけ揃ったらもう、お前にとって俺は神だな」
「う、うぜぇ~……………」
「パパって呼んでもいいぞ?」
「死ね!」
グレンと優の漫才を見た後、俺と優は一号執務室へと続く通路を歩く。
執務室が見えると、そこから三葉が出て来るのが見えた。
「あ、お兄ちゃん!………と優か」
「おい。俺の顔見て嫌そうな顔すんなよ」
「優、ちょっと落ち着け」
大人になったかと思えばすぐコレだ。
「それで、三葉も呼ばれたの?」
「ううん、呼ばれたあと。今回の吸血鬼撃退に一役買った功績で階級が上がるって」
「へ~、出世か?」
優がそう言うと三葉は自慢げに言う。
「まぁ当然だな。あたしにはその価値があるしな」
「あっそ」
優は興味なさそうに三葉の横を通り抜ける。
「ちょっと!少しは突っ込みなさいよ!」
「は?」
「あんたも分かってるんでしょ!あたしはあの戦場で全く役に立たなかった!あんなに偉そうなことばかり言ってたのにまた……………また誰も助けることが出来なくて…………」
三葉の言葉を優は黙って聞く。
「あたしは………あたしは弱い………。なのにあたしだけ出世する。名門・三宮家というだけでそれを卑怯だと笑うなら………笑うなら…………」
肩を震わせ今にも泣きそうな三葉を俺の方を向かせ、抱きしめる。
「ふぇ?」
「笑わない。例え、他の連中がお前の事を笑っても俺は笑わない。俺だけじゃない、優もシノアも、君月も与一も笑わない。お前が頑張ってるのは俺たちが良く知ってる」
頭を撫でながら三葉に言い聞かせるように言う。
「お前を笑う奴なんか気にするな。誰かがお前を笑うなら、其の分俺はお前を褒めてやる。褒めてこうして頭を撫でてやる。だから、そう気負うな。お前もそう思うだろ、優」
三葉を抱きしめながら優に話を振る。
「ああ。もちろんだ。てか、知らなかった。まさか、自分のチームに二人もお嬢様がいるなんてさぁ」
「そう言えば、シノアが柊家って知ったのもさっきだったな」
「………お前バカなのか?」
三葉が俺に抱きしめられたまま、優に言う。
「でも、庶民なんてそんなもんだろ?お偉いさんとか興味ねぇーし。名門だ三宮だ柊だなんて言われても覚えらんねぇよ。俺が興味あるのは吸血鬼をぶっ殺すだけだったしな。それに、チームの仲間が出世して悪いことってあんの?」
「流石優だな。バカみたいな慰めナイスだぞ」
「おい。それ褒めてんのか?それともけなされてんの?」
「両方だ」
「んだと!?」
「……………まったくバカと話してると小さなことで悩んでる自分が愚かに見えるな」
三葉が小さくそう言った。
「ま、偉くなって俺を助けてくれよ三葉。見てたと思うけど、俺家族を吸血鬼に囚われてんだ。あいつを…………家族を盗り返したい」
「………たぶんそれを面接で聞かれるぞ。「吸血鬼に仲間がいる疑いのある危険人物を見晴れ」と上から命じられた」
「つまり俺を?」
「ああ。裏切り者の可能性があるとのことだ」
「で?お前はどう思ってんの?」
「「有り得ない」と言っておいた。「誰かを騙せるような脳ミソがあるようにはとてもみえない」とな」
「見事に優の事を的確に言い表してるな」
「なぁ?お前ら俺の事嫌いなの?さっきから凄い俺の事罵倒するよね?」
「まぁ、それはいいじゃねぇか。結局の所、お前の事を信じてくれてるってことなんだしな。ありがとな、三葉。優を信じてくれて」
笑ってそう言うと、三葉は顔を赤くして、俺の胸に顔を埋める様に抱き付いて来る。
「お兄ちゃん、柊家は怖い所だ、気を付けて。優も気を付けろ」
三葉はそう言い、俺から離れて去る。
「皆怖い所って言うけどなんでだ?まさか、中がお化け屋敷にでもなってんのかね」
「その意味はすぐにでも分かるぞ」
俺は扉を開けて中に入る。
優も後に続いて入って来ると扉が閉まり、中央で明りが付く
そこには一匹の吸血鬼がいた。
「はぁ?なんでここに吸血鬼が?」
「お前を……殺す………死ね人間!」
吸血鬼は優に向かって飛び掛かかる。
「ざっけんな。死ぬのはてめぇだ」
優は刀を抜き、吸血鬼を一撃で葬る。
「優、背後にもいる」
そう言い、俺は暗闇に向け六道煉獄を発砲する。
暗闇から吸血鬼が心臓を押さえて現れ、そして倒れると同時に消える。
「ったく、なんだよ一体?」
「裏切り者を試す踏み絵だよ」
その声と同時に、部屋の明かりが付く。
「お前が吸血鬼を殺せるかどうか試した。結果、お前は非武装の吸血鬼を平然と殺した………という事実が一つ増えたな。だがそれだけだ。では、面接を始めよう」
「………誰だよ、てめぇ」
「柊暮人。日本帝鬼軍の中将だ」