終わりのセラフ~一刀一銃の使い手~   作:ほにゃー

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調伏

「ここから先は、私達殲滅部隊が呼んだ人間か、鬼に呼ばれた者しかこれません」

 

《開かずの間》の扉を見ながらシノアが言う。

 

「じゃあ、祐二君は……?」

 

「俺達は呼んでない。となれば、後者だ。鬼に心を喰われてるかもな」

 

「心を鬼に食われたらどうなるの?」

 

与一が心配そうに聞く。

 

「吸血鬼より質の悪い、人喰い鬼と化します」

 

「だからこそ、修練が必要だ。心のな」

 

「今回は鬼呪装備の恐ろしさについてお二人に分かってもらおうと」

 

「そんな馬鹿丁寧な説明はいらねぇよ」

 

優がそう言い、扉に触れる。

 

「要は鬼に負けなきゃいいんだろ?俺には復讐の為の力が欲しい。力が手に入るなら鬼でもなんでもいい」

 

「あ、ちょっと!」

 

シノアが止めようとするも、優は扉を開け中に入る。

 

部屋の中には沢山の武器があった。そしてこの部屋の丁度真ん中には儀式陣がある。

 

そこに武器を持った男子生徒が立っていた。

 

「遠目で見るだけで手は出さないで下さい。彼は殲滅部隊で……」

 

シノアの言葉を聞かず、優が悪戯を思いついた子供の様な笑顔で笑う

 

「あの斧まだ契約できてねぇんだろ?なら俺が頂く!」

 

優は刀を抜き、峰の方で斬り掛かる。

 

男子生徒は斧でそれを受け止め、優を弾き飛ばす。

 

「スゲェな、おい。でも………廉也の刀よりは弱ぇ!」

 

そう言って、斧に手を伸ばそうとするが、それをシノアが鎌で止める。

 

「全く協調性の無い人ですね。鬼呪装備に素手で触れないでください。触ったら鬼に浸食され、彼と同じように鬼になっちゃいますよ」

 

「俺は負けねぇよ」

 

「いえ、負けます。鬼は暗い欲望を喰らう。貴方の中の復讐心を利用されます。だから一瀬中佐は圧倒的な戦闘能力を持ってる貴方に鬼呪装備を与えないんです」

 

「っざっけんな!なら、鬼に負けないこと証明してやる」

 

そう言うと、優は刀を放り捨て男子生徒に向かって走る。

 

「来いよ、鬼!こっちは丸腰だぜ!」

 

男子生徒は斧を振るうも、優はそれを屈んで躱し、斧を掴む。

 

そして、男子生徒の腹を蹴り、斧を奪う。

 

「おっしゃ!武器を奪っ……」

 

そこで、優は地面に倒れた。

 

「優君!?」

 

与一が慌てて駆け寄る。

 

「行くな、与一。今の優に近づくな」

 

「今、優さんの心の中で鬼と優さんが戦っています」

 

「これに負ければ、優の心は鬼に奪われ鬼になる」

 

「ゆ、優君はどうなるの?」

 

与一が不安そうに聞いて来る。

 

「本来なら、契約呪を使って鬼を調伏するんですが、優さんにはそれがない。十中八九負けます」

 

「そ、そんな!」

 

「今は、優を信じて待ってやれ。だが、もしもの時は………」

 

俺はそこから先は言わず、無言で刀の柄に手を掛ける。

 

シノアもいつでも鎌が出せるように構える。

 

優が気絶して数分が経つと、優が急に眼を開け起きた。

 

「あれ?俺、今何してたっけ?」

 

「そんな!?まさか自力で戻るなんて………」

 

「戻る?」

 

優は何が起きたのが分かってない様子だった。

 

「今、お前は鬼に幻覚を見せられてた。それを、意志の力のみで破って調伏したんだ。契約呪もなしにな」

 

「つまりどゆこと?あの斧は俺の物になったのか?」

 

「いえ、そう簡単には行きません。鬼との契約には手順が必要ですから。貴方にどの武器を与えるかはグレン中佐が決めます」

 

「でも、俺は鬼に勝った。そうだろ?」

 

優がそう言って、俺とシノアを見て来る。

 

「えーと………」

 

「もうグレンの馬鹿も無視できねぇ。だろ?」

 

「あー……そうですね。まー、クラスメイトを救った上に鬼も調伏しましたし、上に伝えておきます。明日からにでも、ここの吸血鬼殲滅部隊の訓練校に通うことになるでしょう」

 

「よっしゃあああああああああああ!!」

 

シノアがそう言うと、優は声を上げて叫ぶ。

 

「な~んて……勝手に決めて私怒られるかなぁ……」

 

シノアが優と与一に聞こえないように小声で呟く。

 

「ま、俺も一緒に怒られてやるよ」

 

そう言って、シノアの頭を軽く叩く。

 

まぁ、優の才能は頭を下げるだけの価値はあるし悪くは無いな。

 

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