「それでは前回やった呪術筆記試験の答案を返します。この結果はこれから与えられる鬼呪装備のランクに影響するので、結果を受け止め次回に活かしてください」
そう言って小百合さんが全員に答案を返す。
俺は97点か。
上々だな。
「流石は廉也。日本帝鬼軍最強の称号は伊達じゃありませんね」
「100点のお前に言われても嫌味にしか聞こえねぇよ」
答案をしまい優の方を見ると青ざめていた。
点数は………ほほう。
0点か。
これはいい物を見たな。
シノアもそれに気づき、ニヤッと笑う。
そして優の背後に忍び寄り手を伸ばす。
「しまっ!」
「させるかー」
答案を死守しようとした優だが、シノアの方が速く答案をかすめ取る。
「うわーすごいこれアレじゃないですか!超人にしか取れないと噂の伝説の点数じゃないですか~」
「やめろ!」
「皆に見てもらいましょう~」
優の追撃を風に舞う木の葉の様に躱し、男子の塊の中に答案を放る。
「おおおおなんだこいつまじで0点だぞ」
「ほんとだすげぇ!!」
「この月鬼ノ組は吸血鬼殲滅部隊の中でもエリートの集まりじゃなかったのかよ?」
「答え全部ひらがなで書いてあんだけどそんな馬鹿がなんでここにいんだよ…」
「見んなコラアアア!!」
優が叫び、答案を引っ手繰る様に取り返すとシノアに近づく。
「てめぇ……いじめっ子過ぎるだろ……」
「いじめっ子とはなんですか。トゲトゲしすぎてクラスに溶け込めないあなたを人気者にしてあげてるんじゃないですか」
「余計なお世話だっつの!!だいたい仲間やら友達やら吸血鬼殺すのにいらねぇんだよ!!」
「いい加減、協調性を学べよ。チームプレイできない奴は軍で活躍するどころか死ぬぞ」
「できるね!俺は超スーパー活躍するね!そして、死なねぇし!」
「子供ですかあなたは」
「ガキかお前」
「うるせぇぇぇぇ!!」
優が騒ぐ輪の中、与一がまあまあと割って入って来る。
「でも優くんはあれだよね。子供の時吸血鬼の都市で監禁されてたから読み書きは日本語より英語やラテン語の方が得意なんだよね。今回は仕方ないよ」
「あーいや、なんつうか…」
優は照れくさそうに笑う。
その後ろから君月が優の答案を奪い見る。
「あ!?」
「………頭にクソでも詰まってるのか?」
「あ゛あ゛!!?そう言うお前はどうなんだよ!?さぞいい点なんだろうな!?」
君月は無言で机から答案を出す。
出された答案には全て100点の文字があった。
「右からラテン語、呪術、英語呪術、日本語呪術、いやー俺は日本語以外苦手だから帰国子女気取りの優さんにはとてもかないませんよ〜」
「てめぇは吸血鬼の前にぶっ殺ぉぉぉぉす!!」
「上等だ!来いやコラぁぁぁぁ!!!」
結局、二人は喧嘩を始めた。
「随分仲良くなったよな」
「本当ですね」
「あれ……仲良いの?」
喧嘩する二人を眺めてると教室にグレンがやってくる。
「おいなんだ相変わらずクソうるせぇなここは」
「グレン様!帝鬼軍の幹部会議からお帰りになられたんですね」
「おい、優、君月。そろそろ喧嘩止めとけ。グレンが来てるぞ」
そう言うと、二人はあっさりと喧嘩を止めた。
「おいグレン!てめぇいい加減俺に鬼呪装備よこせよ!俺は吸血鬼どもに復讐するためだけに生きてんだぞ‼︎なのになんでこんなとこでクズどもと一緒に」
「騒ぐな馬鹿、俺が喋る…なぜクラスを放置して10日以上も失踪したのでしょう?もう我々には鬼呪装備契約のための実力はあると思いますが」
「へぇ、おまえらクズどもに鬼と契約できるだけの実力があるって?」
「あるに決まってんだろ!!君月のクソにはないとしても俺にはある!!」
「てめぇは黙れよ!」
「てめぇこそ黙れよ!」
そして、また二人が喧嘩を始める。
グレンは小百合さんと二言、三言話すと腰の刀に手を伸ばす。
「めんどいの嫌いだし、一回こいつらの能力試してみるか」
「え、ちょ!グレン様!?」
「あれ~中佐、ひょっとして攻撃するつもりですか?」
シノアが面白そうに笑いながら立つ。
「死んだ奴は……自分の修練の足りなさを恨め」
そう言って、刀を床に突き刺す。
すると黒い霧のようなものが教室中に溢れ出す。
その瞬間、教室にいた連中は次々と苦しそうに倒れて行く。
「なんだこれ………!」
「し…心臓が締め付けられ…!」
「え?え?みんなどうしたの?」
皆が倒れていく中、優一郎と君月はなんとか正気を保っていた。
そして、与一はと言うと何が起きてるのか分かってないらしく辺りをきょろきょろと見渡している。
へ~、意外な奴が残ったな。
暫くしてグレンが刀を戻すと、教室には意識を失った者、意識はあるもの倒れ込んでる者。そして優みたいに意識を持ったまま立っている者の三つに分かれた。
「よーし、じゃあ今意識がある奴、見込みがある。このまま訓練続けてきゃ鬼呪装備契約の儀に移れる可能性がある。あと立ってられたお前らは優秀だ。すぐに俺の剣と同ランクの“黒鬼”のシリーズに挑戦させてやる。……で、立っているのは、優、君月、与一、………廉也、シノア、お前らは気絶しろよ」
「あははっ」
「無駄だ」
「呪符無しで余裕な顔しやがって……さすが日本帝鬼軍の頭首筋柊家様と日本帝鬼軍最強様は違うな。可愛げねぇ」
「え~、こんなに可愛いじゃないですか~」
「別に最強じゃねぇよ」
「あのグレン様」
小百合さんがグレンに話し掛ける。
「無茶苦茶な試験はいつものことですが与一くんを“黒鬼”シリーズに挑戦させるのはどうかと思います」
「俺の決定に文句あんのか?」
「文句は無いですが…しかし、与一君は心が安定していても鬼を受け入れられるだけの強さは…」
「強さがなきゃ死ぬ。ここはそういう世界だ、おままごとやってんじゃねぇぞ」
「ですが、鬼は弱い人間を嫌います。与一君はきっと鬼に取り憑かれて」
「うるせぇな」
シノアの忠告を遮り、グレンは与一の方を見る。
「おい与一、お前、吸血鬼に殺された姉貴の復讐したいんだろ?なら命かけるよな?」
「い、命?」
「それとも止めるか?死ぬのが怖きゃ帰って良いぞ」
「与一」
悩んでいる与一に優が声を掛ける。
「お前、帰れ、ここはお前みたいな優しい奴が来る場所じゃねぇよ」
「俺も同意見だ。帰った方がいい」
優と君月は与一を追うが故に残酷なことを言う。
与一は目を強く閉じ、暫く考える。
そして、決意し言う。
「グレン中佐!!僕やります!!もっと強い力が欲しいから!!もう大切な人を失わないですむだけの力が欲しいから!!」
その言葉には与一の決意があった。
そして、そんな与一を優は悲しそうに見つめていた
「よし。なら契約の儀に移んぞ」
そう言って、グレンは俺達を連れ“黒鬼”シリーズが置かれてる契約の間に連れて行った。