「……なんだ、お前、その髪は……。3年になったからって、調子に乗ってんのか?あ?」
小綺麗な白の職員室に、怒りに低くなった教師の男声が落ちる。落とされている私は、何も言うことが出来ない。唯、俯いて反省してます感を出すだけだ。しかし、教師の声色は低くなる一方。
「カラコンなんて付けやがって……。かっこ悪いってのが分かんないのか⁉︎」
「……すみません」
怒鳴り散らす教師に、職員室全体が静まり返る。チラリと周りを見渡すと、私を憐れみの目で見詰める女教師が2人と、ヒソヒソ話出す男女混合の教師軍、そして、私を蔑んでくつくつと嗤ってこちらを何度も見返すその他大勢の教師共が目に入る。あぁ、ウザい。なんなの、こいつら。
「今すぐ、元の色に戻してこい。こんな……」
グイッ‼︎
「キャッ……‼︎」
「巫山戯たピンク色の髪から、元の日本人らしい黒にな‼︎」
女の命とも言われる髪の毛の1束を、嫌味教師は思いっきり引っ張り付けた。思わず、か弱い悲鳴が上がる。
「やめてください‼︎痛いですっ‼︎」
「じゃあ、さっさと戻せ‼︎」
「無理なんです‼︎お願いします‼︎やめてください‼︎」
無理難題を意地でも通すつもりか。言ったでしょ、『髪の色は変えられない』って。どうして、信じてくれないの?これは、
「そんなことも出来ないのか⁉︎この病弱娘が‼︎」
プチンッ
私の心の制御線が、音を立てて切れた。次の瞬間には、
バキッ……‼︎
教師の頬に、私の拳ピッタリの大きさの窪みが出来ていた。偉そうに座っていた回転椅子から落ちた教師は、怒号という名の遠吠えを始める。
「このっ……、生徒の分際で、教師の俺に手を上げるなんて‼︎」
「……」
「俺の寛大な心で、欠席だらけのテメェの穴埋めして、D組辺りに止めてやろうとか思ったが、もうそんな慈悲は必要無いな‼︎
「どうぞご勝手に。私だって、こんなカス教師共と、息の詰まる様な空間で過ごす位だったら、E組で勝手気儘にやってた方がよっぽどマシです」
「そうかそうか‼︎さぞ今のお前にはピッタリだろうな‼︎さっさと行け‼︎この屑が‼︎」
「言われなくても行ってやりますよ‼︎」
教師の「後悔しても知らんぞ‼︎」という怒り爆発の声を背に、私は歩みを進めた。ドアを力任せに開け、ピシャッと豪快な音を鳴らして閉めてやる。そこにもたれ掛かり、唇を噛んだ。
決まってしまった、私のエンドが。私、花宮 千鶴は、中学生らしい青春を味わうこと無く、都内最高クラスの進学校、椚ヶ丘中学校における人生的終焉組と呼ばれる3年E組、通称《