水晶と虚無   作:is.

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第11話 フリッグの舞踏会

学院へと戻った討伐隊一行は、そのまま真っ直ぐ学院長室へと向かった。

オスマン氏の前に整列する一同。学院長用のテーブルには、破壊の杖の残骸が並べられている。

 

「…………ふむ、事の顛末は良くわかった。杖がこのような状態になってしまったのは残念なことじゃが、皆が無事で何よりじゃ。コルベール君、良くぞ皆を守り抜いてくれた」

 

オスマン氏に名前を呼ばれたコルベールは、畏まって答える。

 

「いえ、私は褒められる程の働きをしていません。破壊の杖と、生徒達の勇気のお蔭です」

「うむ。フーケの件に関しては……残念な結果となってしまったとしか言うことが出来ぬが、これも己の身から出た錆じゃろう。皆もこれを教訓に己を律して生きて欲しい」

 

オスマン氏の言葉に誰もが頷く。今のところ、フーケは生死不明扱いだ。

あの業火の中で生き残っているとは考えられないが、ゴーレムともども跡形も無く消し飛んでしまっただけに死んだという証拠も無い。

王室への報告も、破壊の杖により生死不明、恐らく死亡という風にしか説明できない。が、これで一応はフーケの脅威は過ぎ去ったと言えよう。

 

「皆の者ご苦労であった。今夜は……といっても、もう日付も変わってしまったかの。今日はゆっくりと休むと良い。特別に諸君らだけは今日一日休講扱いにしよう」

 

ちらりと時計を見たオスマン氏は、時刻を考慮して生徒達に特別な計らいを見せた。

 

「じゃがあまり休みすぎるでないぞ。明日、いや今夜は『フリッグの舞踏会』がある。もちろん主役は諸君達じゃ。存分に着飾ってくるのじゃぞ」

 

討伐隊に加わった面々への褒章は後日、ということで今日はお開きとなった。これでこの一件は幕引きだ。皆ぞろぞろと学院長室を後にする。そんな中、バッツ一人が呼び止められた。

皆が引き上げた部屋に残ったのは、バッツとオスマン氏の二人のみとなった。

オスマン氏が杖を振ると、傍にあった椅子が浮かび上がり、氏のテーブル前に移動した。そこに座れという事なのだろう。

先ほどまでの和やかな雰囲気がうって変わって、険しいものとなる。

 

「先ず君に確認しておきたいことがある」

 

しばしの沈黙の後、重い口を開いたのはオスマン氏であった。

 

「君は、あの『破壊の杖』の素性を知っているようじゃの」

 

コルベールの報告を受け、バッツが破壊の杖の使い方を知ってるという事実は既にオスマン氏の知るところとなっている。

 

「ああ、俺もあのロッドを何度か使ったことがある。」

 

バッツはさも当たり前という風に答える。

 

「ロッド……?」

「ああ。あんた達は『破壊の杖』なんて大層な名前を付けていたみたいだけど、アレの名前は『炎のロッド』だ」

「何故君がこの杖の事を詳しく知っているのか、説明してもらわないといけないかの」

 

少しの間考えた後、バッツはオスマン氏の質問に答えることにした。

 

「あれは俺の……俺の世界ではそう珍しいものじゃない。ああいった使い方をすれば強力だけど、そうすると使い捨てになってしまうし、そもそもそういう使い方をする者も多くはないが」

「君の……『世界』?」

 

オスマン氏の目が光る。

 

「ああ、俺の居た世界。どうしてかは解らないけど、こっちに呼び出されたみたいだな。恐らくルイズによって」

「ふむ。『サモン・サーヴァント』は基本的にこの世界にいる生き物を召喚する呪文なのじゃが、どうやら君はその例外みたいじゃのう」

「そうみたいだな」

「違う世界の人間……か……」

 

オスマン氏が自慢の白髭を撫でながら椅子に深く体を預ける。

 

「俺からも聞きたい事がある。あのロッドはどういう経緯でこの学院にやって来たんだ」

「うむ、君になら話してもよかろう。あれはもう何年前の事じゃったろうか……。五十年?百年?とにかくあの頃のワシは若さに溢れ、色々と無茶な事ばかりしておった」

 

オスマン氏は遠くを見詰めるような表情で語り始めた。

 

「あの頃のワシは不世出の天才、なんて呼ばれて有頂天になっておってな。自分の力と溢れんばかりの魔術の才能を過信し、各地を渡り歩いては自分の力を試して回ったものじゃ」

 

机の影から水煙草を取り出すと、ゆっくりとふかしながらオスマン氏の話は続く。

 

「今思えば無謀の極みでしかないんじゃがな、単身でサハラに乗り込んで聖地をこの目で確かめようなんてした事もあったのじゃよ。君にはサハラも聖地も何の事かわからないかもしれんがの。サハラにはエルフが住んでおってな、始祖ブリミル生誕の地と語りづがれている場所、我々はそこを聖地と呼んでおるが、そこを占拠しておるのじゃ。我ら始祖の流れを汲むメイジにとっては重要な拠り所でな、いつかはエルフ達から取り戻そうと夢見ておるんじゃよ。」

 

ハルケギニアの歴史はバッツにはよく理解できないと見え、キョトンとしているのに気が付いたオスマン氏は、コホンと軽く咳払いをすると話を脱線させるのを止め、なるべく核心だけに絞ることにした。

 

「……話が少しずれたかの。エルフというのは人間より遥かに強力な魔法を操る種族でな、そんな奴らが住む土地に単身で乗り込むなんて無茶をしていた時の事じゃった。幾人かのエルフに追われ、絶体絶命だったワシを救ってくれた人が持っていたのがこの杖なんじゃよ」

 

破壊の杖、もとい炎のロッドの残骸を愛おしそうに眺めながら、オスマン氏は話を続けた。

 

「ワシを助けてくれた御仁は見慣れぬ服に身を包んでおった。我々とも、エルフとも違う衣服に身を包んでいたが、今思えば異世界の服だったのじゃろうな。見た事も無い、エルフですら恐怖する威力の魔法で奴等を追い払ってくれた。彼はワシを助けてくれたあと、護身用にと自分で使っていた杖をくれたのじゃ。その後彼がどうなったのかは知らん。エルフの勢力圏を抜けた後は別れ別れになって、それぞれの道を取ったからのう。まさか異世界の人間だったとは夢にも思わんかったわい」

 

カッカッカッと明るく笑い飛ばすと、また真面目な顔に戻る。

 

「どうしてこのロッドに『破壊の杖』なんて名前を付けたんだ?」

「ああそれはの、単純な話じゃ。その御仁が使っているところを見たんじゃよ。それにな、威力が強過ぎて根こそぎ焼き尽くしてしまうのと、杖自体が壊れてしまうのとでダブルネーミングじゃったんじゃよ」

「なるほど、確かにな」

 

二人が顔を見合わせてニヤリと笑う。

また真面目な顔に戻ったオスマン氏は、話を続けた。

 

「それにもう一つ確認しておきたい事がある。君のその剣術の技量は、君自身が修得していたものなのか、それともルーンによって与えられている物なのか」

「……?言っている意味がよく分からない」

「君のその左手のルーンは、他の使い魔のルーンとは一線を画すという事じゃ。それはありとあらゆる武器を使いこなしたと伝説にある始祖ブリミルの使い魔『ガンダールヴ』のものと同じ、らしいのじゃよ。もし君の強さの秘密がそのルーンにあるとすれば、君は伝説の再来という事になる」

 

改めて自分の左手の甲をマジマジと見詰めるバッツ。あまり気にしないようにしてはいたが、まさかそんな秘密が隠されていたとは。

 

「期待外れで悪いが、あれは全部俺自身の力だ。そのなんとかっていうルーンの力じゃない」

「そうか、そうであったか」

 

やや残念そうにそう答えるオスマン氏。実のところ、バッツの力を危険視する一方で伝説を目の当たりにできるのではないかという期待を微かにだが抱いてたのだ。

残念そうにしていたのもつかの間、「そういえば」と前置きして、思い出したように新たな質問を投げかけてきた。

 

「君は魔法が使えるかね?」

「それはこっちの『系統魔法』を、って事か?」

「いや、そう限定はせん。ワシを救ってくれた御仁のような、君の世界の魔法でも構わんよ」

「もし“使える”と答えたらどうだって言うんだ?」

 

バッツが警戒するようにそう答えたので、オスマン氏は慌ててバッツの懸念を否定する。

 

「別にそれがどうという事は無いんじゃ。勿論、君がどんな魔法が使えようが、それを理由に君が不利益を被るような事をするつもりは無いし、それを他言するつもりも無い」

 

その言葉を聞いて少し安心したのか、バッツは警戒を少し解いた。

 

「ああ、少しは使える。でもこちらの魔法は使えない、と思う。まだ試した事無いから分からないけど。『錬金』とかいうのは使えたら便利だと思うけどな」

「そうか……」

 

また沈黙の時が流れた、そんな中、バッツの欠伸をかみ殺す仕草を見たオスマン氏は、改めて今の時間を思い出し、話を切り上げる事にした。

 

「君が何故この世界に召喚されてしまったのか、それは君のその左手のルーンと関わりがあるのか、関わりがあるとしたら何を意味しているのか。それについてはこれからワシの方でも調べていくつもりじゃ、何か分かったら直ぐに教えよう。それと合わせて、君が元の世界に戻れる方法も探してみようと思う。何か出来る事があれば遠慮なく言ってくれ、力になるぞ」

「ああ、ありがとう」

「それと、出来るだけ君は魔法が使えないという事にしておいた方がいいじゃろう。君の世界ではどうだったかは知らないが、ここでは平民が魔法を使えるというのは色々と問題を起こしかねん。出来る限り、他の者の前では魔法を使わん事じゃ」

「肝に銘じておくよ」

 

そんなオスマン氏の有り難い申し出と忠告を素直に受け入れ、今日は本当にお開きとなった。

 

 

 

 

 

盗賊騒ぎが収まって、また夜が訪れた。

今夜はアルヴィーズの食堂の上の階に位置する大ホールにて、舞踏会は盛大に催されている。巷で悪名高い盗賊フーケ撃退という戦勝ムードと相まって何時にない盛り上がりを見せている。

そんな雰囲気から一人離れ、会場外のバルコニーでバッツはデルフリンガー相手にワイングラスを傾けていた。

 

「なぁ相棒よ、一つ思い出した事があるんだよ」

 

手摺りに立てかけられたデルフリンガーが話し始めた。

 

「何をだい?」

「昨日の夜、あの何とかって爺さんと話していたときに出てきた『ガンダールヴ』って奴についてさ」

「それがどうした」

 

グラスに残ったワインを一気にあおると、バッツは取り皿に持ってきた料理をつつきながら話を聞いた。

 

「俺はな、たぶん知ってるぜ。『ガンダールヴ』の事」

「へぇ、それで?」

「何でぇ、あんまり驚かねぇな。まあいい。今回の事で色々と思い出したんだよ。俺がもう何年も剣やってるってのは話したと思うんだけどよ、今まで俺を使った奴の中に相棒みてぇに『ガンダールヴ』だった奴が何人かいたような覚えがあるんだよ」

 

デルフリンガーは剣なので表情とかいったモノは一切ない。だから今どんな気持ちで話しているのかは声の調子でしか判断できないが、人間だったらきっと遠い昔を懐かしむような表情をしているに違いない。

そんな何処か懐かしむような調子のまま、話は続く。

 

「まだ詳しくは思い出せねぇけどよ、なんせこちとら何百年も剣やってるんだ、記憶も大分あやふやになっちまっているからよ」

「で、俺以外の『ガンダールヴ』ってどんな奴らだったんだ?」

「色々といたけどよ、総じて気の良い奴らばっかだったぜ。それに俺を大事にしてくれた。だからおめーも俺の事を大事にしてくれよ」

 

何か深刻な話になるかと思っていたバッツはいささか肩すかしをくらってしまったが、わかったわかったと笑いながら和やかに時は過ぎてゆく。

そんなバッツ達の元に、タバサがやって来た。室内と違い、薄暗いバルコニーでは、黒いドレスに身を包んだタバサの姿は、まるで闇を身に纏っているようであった。

暗いのであまり表情は分からない。室内から漏れる光で時折眼鏡が光る。

 

「ありがとう」

 

いきなりタバサが呟くように感謝の言葉を述べた。が、何の事だかわからない。色々と考えを巡らせて、ようやくフーケの罠から抜けだしたときの事ではないかと思い当たる。

 

「ああ、あの時の事か。別に気にする事ないさ」

 

そう答えるバッツは、その時初めてタバサと目があった。酒が入っているのか、少し潤んだ様な瞳がバッツの事を見上げていた。

薄明かりの中で見るタバサの姿は、どこか消え入りそうな危うさを孕んでいる。

 

「あの時、どうやって助かったのか分からない。土の壁に囲まれて、あなたに言われるまま目をつぶって、気が付いたら外に居た。あなたは一体、何をしたの?」

 

どうやら礼を言うのは名目で、本当はその事を知りたかったらしい。何時も表情を崩さないその顔からは、デルフリンガーとは違った意味で心の内を知るのは難しい。

バルコニーの柵にもたれ掛りながら、バッツは静かに答える。

 

「助かったんだ、そんな事はどうだっていいじゃないか」

 

空になったグラスにワインを注ぎながら、そうタバサの質問をはぐらかす。タバサにもワインを進めてみたが軽く首を横に振るだけだ。

ルイズには黒魔法の初歩を教えたが、それ以外の人間にまでバッツの世界の魔法を教えるつもりはない。

もっとも、ルイズにもそれほど深くまでは教えるつもりも無い。せいぜい『ラ』系までの魔法を使えるようになればいいと考えていたのだ。『ガ』系では強すぎる。

だから、タバサにも話さない。

二つの満月に照らされたバルコニーで向かい合う二人の男女。傍から見たらロマンチックな逢引にも見えるが、その場に漂う雰囲気は少しばかり険しいものであった。

 

「あなたには少し謎が多すぎる。メイジに対抗できるだけの腕を持つ人間は居ない事は無い。でも、トライアングルやそれ以上のメイジに勝てる人なんて居ない。それなのに、あなたは……。あなたは、一体何者?」

 

それは質問ではなく、詰問であった。タバサの瞳がバッツを射抜くように見つめる。対するバッツは酔っているのか、酔った振りなのか、少し遠くを眺めながらグラスを揺らしている。

心地よい風が二人の間を吹き抜け、髪を揺らす。

 

「俺は俺さ。根なし草の旅人、バッツ・クラウザー。今は色々あってルイズの使い魔をしてるってだけの、ただの人間さ。それ以上でも、それ以下でもない」

「…………そう」

 

あくまでもしらを切ろうというバッツの態度に、タバサはそれ以上問い詰めることは無かった。

質問以外に話の種がないのか、タバサはそのまま踵を返してパーティー会場へと戻っていってしまった。

タバサと入れ替わるようにして今度はルイズがやって来た。タバサとは対照的に白いドレスに身を包んだその姿は、月明かりだけのバルコニーでも十分な輝きを放っていた。

 

「こんな所にいたのね」

 

騒がしい会場内から抜け出して来たルイズが、こちらに気が付いた。楽しそうにしているが、何処となく疲れた様子が見て取れる。

軽く千鳥足で歩く姿から察するに、大分酒を飲んでいるらしい。

 

「昨日の疲れが残っているのか?」

 

ルイズの様子に気を使うバッツだったが、ルイズは小さく首を横に振ると溜息をひとつついた。

 

「疲れてるってのは外れてないけど、別に昨夜のアレのせいだけじゃないわ。ここ数日で色々と変わりすぎたから、それが一気に実感が沸いてきて戸惑ってるだけよ」

 

バッツの横まで来ると、バルコニーの手すりに寄りかかって、「一杯くれる?」と空のグラスを突き出してきた。

注がれたワインを一息に飲み干すと、また大きく深呼吸をして空を見上げた。

 

「本当に、色々と変わったわ。一昨日までは魔法も碌に使えない落ちこぼれだったのに、今じゃもう魔法も使えるようになって、その上盗賊撃退の英雄御一行様の一員よ。ホント、信じれられない」

 

ルイズの瞳は夜空の星を映している。遥か遠くを見つめるその姿は、夢見る少女そのものだ。夢が叶って喜ぶ反面、急激に変わりゆく自分に対する不安も垣間見えた。

 

「今回の一件で、私はシュヴァリエに推挙される事になったらしいわ。これで私も騎士の仲間入りってわけよ。後ろ指差されていた半端者が、今や皆も羨むエリートになるなんてね」

 

自嘲も含まれた笑いの後、ワインをもう一杯要求する。注がれたワインをまた直ぐに飲み干すと、顔の赤みが更に濃くなった。

 

「で、さっき居たのはタバサ?なんか良い雰囲気だったけど、何かあったのかしら?あの子に限って、とは思うけど」

 

さっきのやり取りを見ていたのか、ルイズがニヤリと笑うと、茶々をいれる。

 

「なに、ただ昨日の礼を言いに来ただけさ」

「昨日のって……。ああ、あの時のあれね」

 

ユラユラと頭を左右に揺らしながら、ルイズが答える。大分酔いが回ってきているらしい。

 

「あの子も真面目ねー。別に使い魔に助けられる位、なんでもないのに。いちいち礼を言ってたらキリが無いわ」

「使い魔は主人に尽くすもの、だからか?」

「そうよ。使い魔がメイジを助けるのは当たり前。でも、あんまり他の子ばっかりってのも見てていい気はしないけどね」

 

だからたまには私も助けなさい、なんてよくわからない事を言いながら、バッツに向かって仁王立ちでビシッと人差し指を突き立てる。目は焦点を失い完全に酔っ払っていた。

時折室内から漏れ聞こえて来る音楽に合わせて、フラフラと左右に体を揺らしながら気持ち良さそうに顔を緩ませている。

 

「酔っぱらってるな?」

「全~然。あんただって結構呑んでんじゃない。私の目はごまかせないわよ」

 

確かにバッツの足元にはワインの空瓶が数本転がっているが、明らかにルイズの方が酔っている。

会場の方から名前を呼ばれて、そのままフラフラと会場へと戻っていくルイズの後ろ姿を見送ってバッツは新たにワインの栓を開けた。

嬉しそうにはしゃぐルイズの姿を見ているのも、そう悪くは無い。

 

「やけに上機嫌じゃねぇか、あの娘っ子。あんな愛嬌のある性格だったっけか?」

 

今まで発言を控えていたデルフリンガーがその口を開いた。

ルイズは色々と不安などを漏らしてはいたが終始満面の笑みを浮かべていたな、と思い起こす。作り物の愛想笑いではない、心の底から嬉しがっているその表情は、バッツが彼女と出会ってから初めて見るものであった。

いや、今までの彼女の人生の中でもあれだけ心から笑えている事は、今まで一体どれ程あったのだろうか。

まだルイズと過ごした時間が少ないバッツの目にも、今までのルイズの態度と今の彼女の姿はまるで違って見える。

 

「最初に会った時はとにかく酷かったからな。第一印象は悪かったよ。でも、今にして思うと、この姿の方が本来のあの子の性格なのかもしれないな」

「だとしたら、俺に対する態度も少しは良くなるかねぇ?」

「さあ?そこまでは分からないよ。なにせ、俺の待遇も良くなるかどうかさえ分からないんだからな」

「お互い、肩身の狭い境遇だねぇ」

 

デルフリンガーとバッツの笑い声が夜空に溶けていく。空に浮かぶ二つの満月に照らされて学園の夜は静かに、けれど賑やかに更けていった。

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