とある日の放課後、ゆりやももかと一緒に帰っているとももかが“ちょっと寄り道しかない?”と言い出した
「寄道つっても何処へ行くんだ?」
「植物園…もしくは本屋かしら?」
「植物園なら紅茶とクッキー、本屋ならファッション誌ってとこだな」
「ぶ〜!明君もゆりもハズレだわ」
「なら何処……まさか俺の家じゃねぇだろうな?」
「それも良いけど今回は違うわ。ちょっと公園へ行きたいの」
「そりゃ良かったぜ……」
何せ前に来た時は部屋の中をあっちこっち漁りやがったからなぁ……
「でもまた行こっかな〜明君ち」
「漁んねぇならいつでも歓迎してやるよ」
「は〜い!」
「んで、何で公園に行くんだ?」
「最近公園にクレープの移動販売車が来てるんだって!」
「へぇー、そりゃ知らんかったぜ」
「甘いもの好きなのにね」
「まったくだ」
「えりかが前につぼみちゃん達と行ったらしいから私も行きたいなぁ〜、って思ってたの!」
「成程。んじゃ、行くか」
「えぇ」
「やった〜!それじゃあ明君、ゆり!善は急げよ!早く行きましょ!」
そう言ってももかは俺達の手を掴み走り出した。
「わーった、わーったから引っ張んなっつーの」
「ふふふ、やれやれね」
「えへへへ〜♪」
………
……
…
結局、ももかは公園に着くまで手を離してはくれなかった。
「とーちゃーく♪」
「はぁー……」
公園に着いて更にももかはテンションが高かったが、反対にゆりのテンションは低かった。
大方、三人で手を繋いで(実際は引っ張られて)走ってる姿をご近所さん方に見られたのが恥ずかしかったんだろ。
「まぁ、ドンマイ」
「…こうなったらクレープをやけ食いしてやるわ」
「胸焼けしても知らねぇぞ?」
「甘いものは別腹だから平気よ」
「私も別腹ー!」
「へーへー」
二人はそう言ってるがゆりは兎も角、ももかは絶対途中で食べれなくなる気がするんだけどな。
まぁそうなったらゆりにパスだな。
「すいませーん、注文良いですか?」
「はい!いらっしゃいませ!」
「えっと、私はストロベリージャムにバニラアイスと生クリーム。明君とゆりは?」
「…ん?あ、俺はミックスベリージャムにバニラアイスと生クリーム」
「私はブルーベリージャムとバニラアイスで」
「わかりました。出来上がりまで少しお待ちください」
「なら俺が此所で待ってっから、ゆりとももかは今の内に飲み物買ってきてくれ」
「わかったわ」
「明君には何を買ってくれば良い?」
「水で頼む。ほれ、小銭」
「それじゃあ買ってくるわね」
「行ってきまーす!」
「おう」
その後、二人の姿が見えなくなると店員さん(カオルさんの様なオッサンではなく、俺達よりも三つ上ぐらいの女の人)がクレープを作りながら俺に話しかけてきた。
「ふふふ、素敵な彼女さんと妹さんですね」
「あ〜……そうゆうのじゃなくて、あの二人は俺の親友ですよ」
てか、ゆりとももかが姉妹ならまだしも、そんなに俺に似てるのかねぇ?
「ふふふ、親友だとしても両手に花ですね」
「はい。俺には勿体ないぐらいの綺麗で素敵な百合とダリアです」
にしてもあれだな、ももかの“ダリア”は兎も角、ゆりの“百合”ってのは中々洒落が効いてるよな。
「勿体ないなんて、お客様だって中々格好良くて素敵ですよ?」
「いやいや、外面は良くても内面はそうでもないかも知れませんよ?」
何せ“男は皆、羊の皮を被った狼”って言うしな。
「ふふふ、本当に悪い人はそう言う事を言いませんよ」
「そうですか?」
「そうですよ。それにお二人が貴方の事をどれだけ信頼してるかは一目見れば直ぐにわかりますよ?」
「…すいません、クレープ三つでいくらですか?」
「ひょっとして照れてるんですか?…ふふふ、可愛いですね」
「…もう勘弁してください」
はぁー……
ほんと、これだから歳上の女の人は苦手だぜ。
―……!…―
―………!―
「ん?」
「どうかしました?」
三人分を精算していると何やら言い争う声が……
「いえ、なんでもないです。クレープ、ありがとうございます」
「はい、またいらしてください!」
精算し終えた俺は一応、確認の為さっき聞こえた言い争いの出所を探った。
「なーんか嫌な予感がするんだよなぁ」
仮にそうだったとしてもゆりが一緒にいるから平気だとは思うんだけどな。
何せゆりは俺と同様、薫子さんから教わった空手と明堂院流の技を体得してるからな。
その気になれば悪い虫なんか瞬く間に“クシャポイ”ってな?
「なぁなぁ、一緒に遊ぶぐら良いじゃんかよぉ」
「何度も言うけど、連れを待たせてるの。だからお断りよ」
「ならそのお連れさんも一緒にさ〜」
「俺達は三人、君達も三人。ほら、丁度良いじゃん?」
「ゆり……」
「大丈夫よ、ももか」
………、
俺の嫌な予感は見事に当り、ゆりとももかは公園の入口でパット見、大学生ぐらいのチャラい三人組にナンパされてた。
まぁ確かにゆりとももかが美人だからナンパする気持ちも分からなくはねぇが、生憎俺がいる限り二人にちょっかいは出させねぇ。
そんなわけでレスキュー開始っと。
「ゆりー、ももかー」
「「明(君)!」」
………
……
…
その後、ナンパ野郎達をちょっとした“お話”で追い払った俺達はようやくクレープを食べた。
宣言通りゆりはクレープのやけ食い(つっても二個だが)をし、それに便乗したももかも二個目を買ったが、予想通り途中で食えなり結局俺が食う羽目になった。
そして今は帰り道。
話の話題は俺がナンパ野郎達にした“お話”についてだ。
「それにしてもあの時の明君は凄かったよね〜」
「そうか?俺からしてみれば“お話”ぐらいで怯えるなら最初っからナンパなんかすんなって思うんだが?」
「や〜、明君のお話は怖いから皆怯えると思うんだけどなぁ〜」
「そんなにか?」
「うん。だって元々鋭い目付きが更に鋭くなるのよ?」
「オマケに無駄に鍛え上げられたその身体から出す威圧感も相当なものだわ」
「そこまで鍛えたつもりはねぇんだけどな。てか、無駄は余計だろ」
「ふふふ、ごめんなさい」
「あ、そう言えば明君?」
「ん?」
「明君さっき、“俺の女と妹に手を出すな”って言ったけど、“俺の女”と“俺の妹”は私とゆりのどっちだったの?」
「げっ……」
「そうね私も聞きたいわ」
「…あれはクレープを待ってる時に店員さんに言われた事を使っただけだから別に深い意味はねぇぞ?」
「ん〜、でも聞きたいの」
「同じく」
「言わなきゃ駄目か?」
「「駄目」」
「………」
「………」
「………」
「…さてっと、ちょっくらスーパーにでも寄ってくとするか」
「…逃げた」
「…逃げたわね」
「言うな」
「…ひょっとして言うのが恥ずかしいとか?」
「聞くな」
「ふふふ、明?顔が少し赤いわよ?」
「見るな」
「相変わらず変な所でウブね」
「でもそれが明君の可愛い所よね♪」
「夕飯に招待してやっから勘弁してくれ」
俺のライフはもうゼロだ……
「え、良いの?やった〜♪」
「悪いわね、ごちそうになって」
「よく言うぜ。どうせ悪いと思ってねぇくせによ」
「あら、わかる?」
「んにゃろ……」
「ねぇ明君、夕飯は何を作ってくれるの?」
「取りあえず家に戻って冷蔵庫と相談して決めるつもりだ」
「それじゃあ早く明君の家に行きましょ!」
そう言ってももかはまた俺達の腕を引っ張りながら走り出した。
「…またこうなるのね」
「らしいな」
「えへへへ〜♪明君家で〜晩御飯〜♪あ、えりか達も呼んで良い?」
「あぁ。もう好きにしてくれ」
【終わり】
オマケ
〜主夫〜
明:「……ちょっくら薄いな。ええっと醤油〜醤油〜……」
えりか:「…明さんが生き生きしてるっしゅ」
ゆり:「いつもと違って大勢で食べるから嬉しがってるのよ」
つぼみ:「ええっと、わたし達も何かお手伝いをした方が?」
ゆり:「止めときなさい。寧ろ邪魔になるだけよ」
明:「〜♪〜♪♪〜」
カカカカカカカッ……!
いつき:「……ですね」
ももか:「ふふふ〜♪エプロン姿の明君も格好良いな〜♪」
明:「お前らー、デザートに俺が昨日作ったピーチパイ食うかー?」
えりか、ももか:『食べるー!』
つぼみ:「明さん、スイーツまで作れるんですね……」
ゆり:「ある意味女の敵よ、明の料理の腕前は」
いつき:「あはははは……」