俺の勝利で幕を下ろしたえりかとドーナツの争奪戦から翌日の昼、俺とゆりは教室で弁当を食べていた。
普段ならももかも加わるのだが今日の午前中は仕事の為不在。
だが先程ももかからもうすぐ来ると連絡を受けたんで一応ももかの椅子は置いといた。
「次の授業何だっけか?」
「体育よ」
「ももかの奴、ラッキーだな。仕事終わりに受ける授業が好きなのなんだからな」
「はしゃぎ過ぎて怪我しないか見ていて心配だわ」
「子供じゃねぇんだから大丈夫だろ」
「それもそうね」
ゆりとそんな事を話しているとタイミング良くももかが教室に入ってきた。
噂をすればなんとやらってか?
「おっはよ〜、ゆり、明君」
「おーっす、仕事お疲れさん。椅子置いといたぞ」
「お疲れ様。はい、今日の午前中の各授業のノート」
ももかが仕事で学校を休んだ時は俺とゆりが交代でももかにノートを貸す事になっている。
今日はゆりの日。
「ありがと〜、ゆり、明君」
ノート四冊を受け取ったももかは置いといた椅子に座った。
「ももか昼は済ましたのか?」
「えぇ、一応此所へ送ってもらってる時に済ませたけど…」
ももかがそう言った直後、
―くぅ〜…―
あらら。
「…聞いちゃった?」
「おぅ」
「えぇ」
中々可愛い音なこって。
「ゆり!明君!お願い!お弁当少し分けて!」
ノートを膝の上に置き、両手を合わせてももかは俺とゆりに頼み込んだ。
「ごめんなさいももか、そうしたいのだけれども私はもう食べ終わってるから…」
ゆりはちらりと俺を見た。
当たり前だが俺とゆりでは食う量は異なる。
それ故に弁当は俺の方が大きく、中身もまだ残っていた。
「明君!お願い!その玉子焼き頂戴!」
「…随分とピンポイントだな」
「だってその玉子焼き美味しそうなんだもん!」
「そりゃどーも。…ほれ」
俺は弁当をももかに差し出した。
だが、それに対してももかは、
「あーん…」
で、応えやがった。
「…何故に?」
「だって私今手が塞がってるんだもん。だから、あーん…」
見るとももかはさっきまで膝の上に置いていたノート四冊を胸の前で持っていた。
「や、ノート置けよ」
「あーん…」
あ、流すんですか…
「ほら親鳥さん。小鳥が待ってるわよ?」
「…楽しいですかい?ゆりさんよ」
「えぇ、とっても」
このやろぉ…
「早く済まさないと更に注目を浴び続けるわよ?」
―ちら、ちら、ちら―
―ざわざわざわざわ―
「…だよな」
今まで気付かないフリをしていたが、ももかが教室に入ってきた時は元より“あーん”をしてきた時から視線を感じる。
羨望、同情、好奇、嫉妬、妬み、殺意。
中々刺激的なのが含まれてるぜ。
兎も角、いつまでもこの膠着状態を続けるわけにはいかない。
腹を決めるか…
「はぁ…。ほれ、ももか。あーん…」
箸で取った玉子焼きをももかの口へ。
「あーん…」
そして、
―パクっ!―
ももかは玉子焼きを食べた。
あぁ…疲れた…
―おぉ〜!?―
―キャー!?―
あぁ…教室のボルテージが最高潮に…
「美味しい〜!玉子がふわっふわ!」
「そりゃどーも」
「…いつも思うけど、明君料理上手すぎよね」
「そりゃあ小さい頃からずっと料理を作り続けてるからな。今なら和、洋、中、スイーツ、パフェ等なんでもござれだ」
「後ろの二つを言う必要があるのかしら?」
「ある」
自分、甘党男子ですから。
あ、甘党で思い出した。
「どうしたの明君?鞄の中を漁って?」
えっと…お、あったあった。
「仕事で疲れた体には甘いもんが必要。てなわけで、ももかにはコレをやろう」
俺が鞄の中から取り出したのはドーナツが10個程入った袋。
「ドーナツ〜!」
「他人の食べ掛けよりも此方の方が良いだろ?だから弁当返せ」
「はーい!」
ももかはすんなりと聞き入れてくれた。
「…もぐもぐ…美味しい〜!ゆりも食べましょう!」
「良いのかしら?」
「良いぞ。元々皆で食おうと思ってたからな」
「それなら戴くわね」
「おぅ」
俺も食うとするかな。
「…美味しいわね」
「我ながら上手く出来たぜ」
「でも、何で明君急にドーナツを作ったの?」
「昨日、一昨日、と2日連続でドーナツを食ったから何となく自分で作りたくなったんだよ。だから昨日の晩、弁当の仕込みと一緒に作った」
「あ!ドーナツで思い出した!明君!えりかから聞いたわよ!四つ葉町のドーナツ何で私の分を取っといてくれなかったの!?」
…あ、
「悪い。忘れてた」
「ぶ〜!」
…流石は姉妹。
変顔が似ている。
「わーった、わーった。次の日曜にまた四つ葉町へ行ってドーナツを買ってきてやるよ」
「やった〜!ありがと〜!その日、丁度仕事があるから行きたくても行けなかったの」
…現金な奴。
すっかり機嫌を直しやがって。
「今度は忘れないでね?」
「心配ないわももか。今度は私も一緒に行くから」
「わかったわ。明君、もし忘れたら…」
「針千本飲ますってか?」
「明、それは嘘をついた場合よ」
「あ、そっか」
滅多に使わないから忘れてたぜ。
「忘れたら、明君にはえりかがデザインしたドレスを着てもらうから!」
「………」
…………、
「この約束、守ってみせる!」
「…白の騎士?」
「黒の元騎士の方がお似合いよ」
「オイ」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
そして日曜。
俺とゆりは四つ葉町駅前に来ていた。
ドーナツ屋にドーナツを土産として渡すのもどうかと思ったが俺が作った大量のドーナツが入った箱を持って。
「希望ヶ花市よりも人が沢山いますね」
「ドーナツ♪ドーナツ♪」
「さっきからえりかはそればっかだね」
後、つぼみ達を連れて。
何故つぼみ達も一緒なのか、
それは簡単。
約束をした日の放課後、余ったドーナツをつぼみ達に分ける為にファッション部の部室に言った時にももかが俺とゆりが次の日曜に四つ葉町へドーナツを買いに行く事をつぼみ達に話し、えりかがあたし達も一緒に行くと言ったのだ。
特に断る理由も無かったから連れてく事にした。
はい、回想終了。
「一応、まだ昼時前だが今日は休日だからな。早いとこ行こうぜ」
それにまた美希がナンパされてる現場に遭遇するかもしれないしな。
まぁ一度目は兎も角、流石に二度は起きないと思うがな。
はっはっは。
………
……
…
二度目じゃないが一度目が起きた。
公園へ向かう途中、携帯にももかから撮影用の服を着てポーズを決めた写真が届き、それに対しての感想メールを送った直後、携帯の電池が切れた。
原因はここ暫く充電をしなかったこと。
席と商品確保の為ゆりにドーナツを預け、先に行っててもらい俺は近くのコンビニで携帯式の充電機と電池を買いコンビニを出て即充電、そしてゆり達に合流しようとした。
そしたらゆり達がナンパされていた。
「な〜な〜、君達、今暇?暇だよね?」
「俺らと遊ばない?良い所知ってるからよ」
「お断りするわ」
よく見たらナンパしてんのは以前美希をナンパした奴等(AB)だった。
「そんなこと言わずにさ〜、ね?」
「俺たちは四人、君たちも四人。丁度いいじゃん?」
奴等は新たに二人の連れ(CD)を増やし四人でゆり達ナンパしていた。
ABCD
ゆ
い
えつ
あの時に“エスコート仕方を学んでから出直しな”と言ったがコレがあの二人が学んだ結果か。
呆れるが唯一の感心した点をあげるとしたら、いつきが女の子だと分かる事だな。
なんちって。
「…阿呆な事言ってないでさっさと助けるか」
そうして俺はゆり達を助けに行った。
―おい、俺の連れに何か用か?―
―っげ!?―
―お前はこの間の!?―
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
『ちっきしょ!覚えてやがれ!』
「いい加減ナンパすんのを止めるんだな」
前回よりも優しくお話した後、またしてもベタな事を言いながらナンパ野郎四人組は逃げてった。
「遅いわよ明」
「悪かったな。皆、大丈夫だったか?」
「はい。明さんやゆりさん、いつきが守ってくれたので」
「流石武闘派の三人!格好良かったっしゅ!」
「ありがとえりか。…それにしても明さん凄いですね。四人相手に手を使わずに睨み付けるだけで勝つんですから」
「そうか?」
「そうよ。元々の見た目の悪さに拍車が掛かっていたわ」
「ほっとけ」
見た目の悪さは中学の時から気にしてんだよ。
「そう言えば明さん、前にもあの二人と会った事があったんだ」
「あぁ」
面倒な予感がするから何があったかはけして言わん。
「時間を無駄にしちまったな。早く行こうぜ」
だからさっさと公園へ向かうよう、つぼみ達を促した。
「明、コレ返すわね」
「ん、サンキューな」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
そして漸く公園に着いた。
先程のナンパ事件に時間使ったお蔭か、今は昼過ぎ。
客足の波は過ぎたようだ。
「ん、ラブ達見っけ」
前と同じくドーナツを食ってら。
「お〜い」
「あ!明さん!それにつぼみ達も!」
「お久しぶりです、ラブさん、美希さん、祈里さん、せつなさん」
「おいっす〜!」
「タルトやシフォンちゃんも久しぶりだね」
「久しぶりやなぁ、サンシャインはんら」
「キュアキュア〜」
「皆元気そうね」
「俺はこの間会ったけどな」
つぼみ達がラブ達と話始めて、俺はカオルさんの方へ。
「ども。カオルさん」
「お!また来たね青年」
「ちょっとありましてね。…あ、コレお土産です」
「お?ドーナツ?」
「カオルさんのドーナツに感化されて自分で作ってみました」
「グハ!嬉しいねぇ〜ありがと青年。御返しに今日もサービスしちゃうよ〜」
「ありがとうございます」
「大盛りドーナツセットを用意するから嬢ちゃん達と待っててよ」
「分かりました」
カオルさんにそう言われて、俺は皆の元へ戻った。
つ ら
え/ ̄\せ
い| |い
ゆ\_/み
あ
狭くなると思ったが、どうやら少し大きいテーブルだった。
「そう言えば明さん達はどうして此所へ?」
「話はこの間の次の日に遡ってだな…」
………
……
…
斯々然々以下省略だ。
「あのナンパ達、またやってたのね…」
「まったく、懲りない奴等だぜ」
「美希さんもあの人達に絡まれたんですね」
「えぇ。でも明さんが助けてくれたわ」
…あ、嫌な予感。
頼むから美希、アレは言わないでくれよ…
「流石は明さんですね!」
「逃げてくナンパ達に“エスコート仕方を学んでから出直しな”ってクールに言って、そしてその後に…」
「それよりもラブ達が私服と言う事は今日はダンスの練習をしてないんだな」
危ない。
美希はアレを言う気だ。
「みゆきさん今日は用事があるらしいので。…それで明さんが…」
「あ、そう言えば前にももかが一度美希と一緒に仕事をしたいって言ってたな」
「明、少し黙ってて」
―ドゴッ!―
「うぐっ!?」
…ゆ、ゆりの奴…脇腹を…ど、ど突いてきやが…った…
「いくら鍛えていても不意の衝撃は防げないわ。…それで美希、その後に何が?」
「そ、その後にですね、明さんにエスコートのお手本をしてもらいました」
「お手本?」
頼む、言うのはそれだけにしてくれ…
「公園へ着くまで私と腕を組んでもらいました」
あぁ…、
願いは届かなかったか…
「う、腕組みですかぁ!?」
「ひゃ〜流石明さん。もも姉に伝えとこ」
やめれ。
「腕組みか〜…女の子は憧れるよね〜」
「帰りにやってもらおうかしら」
えぇ…
「あたしもやりたいっしゅ!」
「…ボクも良いですか?」
「えりかといつきじゃ明との身長差で難しいわね」
「ちっきしょ〜!」
「明さんとゆりさん、そして美希さんは背が高いもんね」
「高い順だと俺、ゆり、美希だな」
「因みに明さん!美希と腕組みをした感想は?」
感想ね…
「いい匂いがしたな。キュアベリーだけにまさにベリーグッドな匂いが」
『………』
「プッ…、っく…くくくっ……」
あ、やっぱこうなるか。
「ほい、大盛りドーナツセットとサービスのコーヒーお待ち」
あ、カオルさん。
「ありがとうございます」
「青年〜、ギャグもドーナツも中々良いセンスしてるね〜。グハッ」
「ありがとうございます」
「おぉ〜!ドーナツ〜!」
「カオルちゃん、ドーナツもって?」
あ、皆復活した。
「や〜青年がね、おじさんのドーナツに感化されてねドーナツを作ってくれたんだよ。しかも此れが中々良い出来で」
カオルさんは先程俺が渡した箱をテーブルに置いた。
「おじさんと兄弟、それにシフォンちゃんはたっぷり戴いたから後は嬢ちゃん達で分けあってよ」
「わ〜い!いっただっきま〜す!」
「頼んどいた品が来たことだし、俺達も食うとするか」
そうして俺達はドーナツを食べ始めた。
「美味しい〜!明さんが作ったドーナツ!」
「ほんと!カオルちゃんのドーナツとは違うけどこの美味しさ、完璧だわ!」
「いくらでも食べれちゃいそうだわ」
「この美味しさ…何か隠し味が…?」
お、せつなは気付いたか。
「あぁ。入ってるぜ。…カオルさんのドーナツにも入ってますよね?」
「入ってるよ〜、た〜っぷりと〜」
「な、何が入ってるんですか!?」
何が、ってそりゃ…
『真心〜!グハッ』
あ、カオルさんの笑い方が移っちまった。
その後カオルさんは屋台の方へ戻り、俺達は尚もドーナツを食べ続けた。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
ある程度食べ終えてコーヒーでブレイクタイムをしている時にラブがダンスをしてみないかと言ってきた。
「つぼみ達もダンスしてみない?楽しいよ?」
「ダ、ダンスですか!?」
「流石のあたしも、ちょーっと恥ずかしいかなぁ〜…」
「せめて、変身してれば恥ずかしくないんだけどなぁ…」
「変身してても恥ずかしいわ…」
「…以前ハルモニアで踊っていたくせに何を今更恥ずかしがっているんだか」
だがしかし、ハルモニアで踊っていたゆりは中々に可愛かったと俺は思うぞ?
「っ!」
―ドゴッ!―
「うぐっ!?」
…ゆ、ゆりの奴…また脇腹を…ど、ど突いてきやがった…
「明、黙りなさい」
「…何故…バレた…」
「私の方を見て笑っていたからよ」
「…しょうがねぇだろ?ハルモニアで踊っていたゆりが中々に可愛かったんだからさ…」
「また言ったわね」
―ドゴッ!―
「ぐはっ!?…ぬ、貫手は流石に駄目…だ…ろ…」
あまりの衝撃の強さに俺は意識を失うのだった。
「…ばか」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「明、起きなさい」
「…ん…ぅ…」
「起きないとまた突くわよ?」
「起きた!スッキリとした目覚め!」
「約三分のお昼寝はどうだったかしら?起きて早々に悪いのだけど明にお客よ?」
ゆりが指差した方を見ると公園の入口の方からナンパ野郎四人組が此方へ歩いてきていた。
…いや、四人組の後ろに二人いるから六人か。
「見たところドーナツを食べに来た感じじゃないわね」
「だな。…はぁー…めんどうだ」
嫌々ながら席から外れ、皆と奴等の間に立ち、来るのを待ち構える。
「おうおうテメェ!さっきはよくも俺達に恥をかかせたな!」
「仕返しに来たぜ!」
はぁ…阿呆が。
「お前らが勝手に恥をかいたんだろうが」
「そうだそうだ!睨み一発で逃げた腰抜けめ!」
『くすっ』
「…えりか…面倒事を悪化させないでくれ」
と言うか、この状況の中で誰も焦らないとはな。
まぁ俺もだが。
「一応聞くが大人しく帰る気は無いんだな?」
「あたりまえだ!」
「テメェを痛めつけねぇとこちとら気がすまねぇんだよ!」
「…そうか。大人しく帰れば怪我しなくて済んだのにな…」
俺は戦うのは好きだが、くだんねぇケンカは嫌いなんだよ。
「…なら覚悟しろよ?お前等」
「るっせぇ!覚悟すんのはテメェだ!さぁ兄貴達!出番です!」
「助っ人使うとか格好悪い〜!」
………
「つぼみ、いつき、暫くえりかの口塞いどいてくれ…」
「ごめんなさい…」
「えりか、少し黙っててね?」
「もごっ!?」
つぼみといつきは各々えりかの口に手を当て黙らせた。
よし、
これで静かになる。
で?
どんな奴等が助っ人だ?
「はっはっは!どいつだ?俺が倒す奴は?」
「………」
四人組の後ろから現れたのは見知った人物だった。
「ウエスターさんは兎も角、何でサウラーさんもなんですか…」
「…すまない」
そう、
四人組の助っ人は西隼人と南 舜もとい、ウエスターさんとサウラーさんだった。
「ん?おぉ!お前か!明!」
「…なにやってるんですかウエスターさん…」
「サウラーとドーナツを食べに来ようとしていたらコイツらに頼まれてな」
「コイツら、ウエスターを見た瞬間に“兄貴”と呼び出してごまをすり始めて頼んだんぞ」
確かにウエスターさん、体格良いからな。
「サウラーさん、何でウエスターさんを止めなかったんですか?」
「ウエスターは言って止まる奴じゃないだろ?」
「…確かに」
「妙な展開だが!覚悟しろよ!明!」
うわぁ…、
ウエスターさんヤル気満々だよ。
「…明、すまないがウエスターの相手をしてやってくれ」
えぇ…
「来ないのなら此方から行くぞ!」
そう言ってウエスターは雄叫びを上げながら殴りかかってきた。
「ぉぉぉぉおぉ!?」
ん?
雄叫びが途中で驚きに変わった?
しかもウエスターさんの動きが止まった。
「お、おお、お、お…」
えぇっと、
ウエスターさんは俺の後ろを見てるな。
何を見てるんだ?
「…………」
席に座っているせつなが修羅の如く怒っていた。
しかも何故か髪が白くなっていた。
…怒りの熱で髪の色素が燃え尽きたのか?
「ど、ど、どうしよう!ミキたん!ブッキー!せつながイースになっちゃってる!?」
「お、お落ち着いてラブ!お、落ち着くのよ!」
「そ、そうだよラブちゃん!お、落ち着こう!」
うん、
美希と祈里も落ち着け。
「ウエスター…、こっちに来なさい」
「え、お、あ、あ…」
あらま。
ウエスターさんはあまりの恐怖で金縛りになってるよ。
「聞こえなかった?こっちに来なさい」
「は、はい!」
「すげぇウエスターさん、金縛りを強制的に解いたよ」
金縛りを強制的に解いたウエスターさんはせつなの横に。
「動かないでよ?」
そう言ってせつなは席から外れウエスターさんの前に立ち、
そして、
「このっ、馬鹿がぁ!」
―ドゴッ!―
「がっはぁ!?」
ウエスターさんの腹をおもいっきりど突いた。
「うぁ…痛そ」
ど突かれたウエスターさんはそのまま仰向けに倒れ気を失っていた。
「はぁ〜…スッキリした〜!あ、カオルちゃんこの馬鹿何処かに置いといてくれませんか?」
「オッケ〜車の中に寝かしとくよ〜」
「俺も手伝おう」
カオルさんとサウラーは二人がかりでウエスターさんを車の中へと運んで行った。
一方でウエスターさんをど突いたせつなは満面の笑みでドーナツを食べていた。
髪の色が元に戻っている、色素は生きていたか。
「ん〜!ドーナツ美味しい〜!みんなも食べましょ?」
「食べましょって、四人組はどうするんだ?」
「大丈夫よ明。もういないわ」
「あれま」
せつなの怖さに逃げたか。
「良かった〜!せつなが元に戻った〜!」
「ふふふ、どうしたのラブ?わたしは何も変わってないわよ?」
成程、
せつなを怒らすとこうなるのか。
ウエスターさん、貴方の犠牲は無駄にはしませんよ…。
そうして俺達はまたドーナツを食べ始めた。
「あ、つぼみ、いつき。もうえりかの口から手を離しても良いぞ」
「あ、はい」
「分かりました」
「ぷはぁ〜!ようやく喋れるっしゅ!」
「でも直ぐドーナツまた塞がるけどな」
「ふもっふっふっふ〜!」
「…もう塞がっていたか」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
その後新たにサウラーさんが加わり、俺達は日が暮れるまで公園に居た。
結局ウエスターさんは最後まで起きず、帰る時はサウラーさんが肩を貸し若干引き摺りながら帰って行った。
そして俺達もももか用のドーナツを一箱分買って帰る事にした。
「で、ゆりさんよ。いつまで腕を組んだままで?」
「そうね、…駅前までで良いかしら?」
「了解」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
翌日、俺は二度周りから殺意を感じた。
一回目は昼。
ももかが買ってきてくれたお礼として土産として買ったドーナツを俺に“あーん”で食べさせようとした時。
二度目は放課後。
えりかとゆりから腕組みの話を聞いたももかが、教室からフェアリードロップまでと言って俺と腕組みをした時。
はぁ…
やれやれ。
【完】
TSUTAYAで奇跡の魔法をレンタルしたけど今から観る気力が無い…
ちっきしょ〜!