花を護る騎士 ブレイドナイト   作:葵祈つばめ

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ようやく出けた。


スイート編

“カップケーキ”とは、薄い紙やアルミ箔のカップに生地を流し込んで焼いた、一人分の大きさほどの小さなケーキである。

これより大きいサイズのものと同様に、アイシングやキャンディーなどを用いたケーキデコレーションで飾られることもある。

 

………

……

 

さて、俺が何故いきなりカップケーキについて中身の薄い事を語ったのかと言うと、理由は単純。

 

カップケーキが食いたくなったからだ。

 

普段、生活してる中で経験した事はないか?

ふと、急に何かを食べたいと思った事を。

 

俺は今まさにその状態だ。

 

丁度、外をぶらつこうと思った矢先、

しかも俺の友人の家がカップケーキ屋。

 

これはもう行くしかない。

 

ここで決めなきゃ、

男が廃る!てか。

 

というわけで早速俺は家を出て、駅へと歩いていった。

 

その後、電車に乗りガタンゴトンと揺られて数十分、俺は加音町に着いた。

 

「よし、行くか」

 

目指すは、

カップケーキ屋

Lucky Spoon

 

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

さて、俺は今

Lucky Spoonへ向けて歩いているのだが、ふと町を観て呟いた。

 

「相変わらず音楽で溢れている町だよな。加音町って」

 

ちらほらと、楽器ケースを持って歩いてる人や公園にある鍵盤、何処からか聞こえてくる路上ミュージシャンの演奏とかまぁ色々だ。

 

言わずもがな、音楽が住人にとって身近なものとなってんだろう。

 

町中は日々楽しい音色に溢れてて、この町に住んでたら嫌でも音楽が好きになるよな。

 

…そういえば何かの本に書いてあったな。

 

確か加音の意味は、

“高さの異なる二つの音が同時に響くときに聞こえる、各々の振動数の和にあたる振動数をもつ音。

つまりは結合音”と。

 

まぁ、簡単に言うと

“二つの重なった音”だな。

この町においての加音は、“音色”と“人々”か?

 

「まぁ実際のとこ、詳しいことは知らないけどな」

 

てな感じで、強引なまとめをしていると…

 

「お、着いた着いた」

 

Lucky Spoonに到着した。

そして俺は中へと入っていった。

 

………

……

 

あ、奏はいないのな。

 

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

Lucky Spoonでカップケーキを15個も買った俺はその後も加音町をぶらぶらしていた。

 

途中、5個食ったがカップケーキはまだまだ残っている。

 

…いやはや、どうしたもんか。

 

つぼみ達へのお土産にしてやりたいが、こうゆうケーキ系はその日に食べた方が良いよな。

それに痛むかもしれないからな。

 

「ん〜ん〜」

 

取り敢えずぶらぶらと歩いていれば何か閃くだろうから、それまでは暫くぶらぶらと歩くかな。

 

そう決めた俺はその後も加音町をぶらぶらしていた。

 

………

……

 

ん?ランニングしている髪が水色の娘、なんか雰囲気が響に似ているな。

 

ふむ。

 

「走るよ山を〜谷を〜海を〜鍛えろ体〜きっちりと」

 

なんてな。

 

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

「鍛えろ腕を〜脚を〜ラララ〜磨けよ技を〜男なら」

 

その後も時より見る光景を元に替歌にし、口ずさみながら加音町をぶらぶらしていたら、

 

「お?」

 

いつの間にか調べの館の前にたどり着いていた。

 

「………」

 

そして別にこれと言った理由は無く、ただ何となくで俺は調べの館の中へと入っていった。

 

その後、広間の階段を降りながら辺りを見回したが、誰もいないし、気配すら感じない。

あの音吉さんのすら感じない。

 

階段を降りきった俺はそのままパイプオルガンへと近付いて行った。

 

「相変わらず迫力あるよな、このパイプオルガン」

見上げればこの館の天井に届きそうな程の大きさ。

 

響達の話だと、このパイプオルガンは音吉さん一人で造ったらしい。

訳についても聞いたが、……まぁ、平穏無事でなによりだ。

 

そう思いながら見上げるのを止め視線を戻せば目の前には一台のピアノが。

 

再び響達の話だとこのピアノは自由に弾いて良いそうだ。

よく響が奏やエレンに師事してもらって弾いているとの事。

 

「…ふむ」

 

実は殆んどの奴には言ってない故に意外かと思うが、俺は楽器の心得がある。

太鼓、ギター、ピアノ、キーボード、バイオリン、ドラム、ハーモニカ、オカリナ、笛等々。

 

何故心得があるかと言うと理由は簡単、音楽が好きだし後、アレだ。

誰しもが中学の時に経験する厄介な病、アレのせいだ。

 

太鼓に関しては病は関係無く、修行の一環としてだが。

まぁその事については流すが。

 

「最近、ご無沙汰だったからな…」

 

確認を兼ねて弾くことにした俺は椅子に座り隣にカップケーキが入った箱を置き、体勢を整えた。

 

「すぅー…」

 

眼を瞑り息を吸い、

 

「はぁー…」

 

一拍溜めた後に息を吐き出す。

 

「……」

 

そして眼を瞑ったまま俺はピアノを弾き始めた。

 

♪♪♪♪♪♪♪♪♪

 

 

時は戻り明がパイプオルガンを見上げている頃、外では天から光の鍵盤が現れ調べの館へと続いていた。

 

そしてその鍵盤に乗ってハミィを先頭に響、奏、エレン、アコらが調べの館へと降りてきた。

 

「ニャップニャプ〜♪加音町に到着ニャ」

 

「ん〜、楽しかった〜」

 

「そうね。それにメフィストさんとアフロディテさん、とっても喜んでたもんね」

 

「メフィスト様、喜びのあまりアコを抱き締めてたからね」

 

「…ほんと、恥ずかしかった」

 

どうやら察するに、響達はメイジャーランドへ行ってたようだ。

そして、アコがメフィストとアフロディテに何かをプレゼントしたようだ。

 

「さ〜て、調べの館の中へ行こっか」

 

「音吉さんに頼まれたもんね」

 

「“儂とノイズ、それからクレッシェンドトーンはもう暫くメイジャーランドに居るから館の留守を頼まれてくれるかの”ってね」

 

「ピーちゃんなんだか楽しそうだったわ」

 

そして響達は歩き出した。

 

「ハミィ、響のピアノやセイレーンのギターが聴きたいニャ」

 

「あ、それなら響と私のギターを合わせてみない?」

 

「お、それ面白そう!」

 

「そういえば合わせるのは初めてよね」

 

「楽しみだわ」

 

エレンの提案に皆が賛同し、盛り上がっていたその時だった…

 

―♪〜♪〜♪〜♪〜♪―

 

「ハニャ?」

 

「え?」

 

「あら?」

 

「ん?」

 

「何?」

 

ピアノの音が聞こえたのは。

 

「…ピアノの音ニャ♪。誰かがピアノを弾いてるんだニャ♪」

 

「…素敵な演奏」

 

「そうね。でも誰が弾いてるのかしら?」

 

「…もしかして王子先輩!?キャア〜!王子先輩王子先輩王子先輩王子先輩王子先輩王子先輩王子先輩王子先輩王子先輩!!」

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

「奏が壊れたニャ」

 

奏は相変わらずであった。

 

「…見に行けば誰が弾いているのか、直ぐ分かるわ」

 

いち早く復活したアコがそう言った矢先、

 

「王子先輩〜!」

 

奏は調べの館の中へと走って行った。

 

「ニャ、奏待つニャ!ハミィも行くニャ!」

 

「あ、奏!ハミィ!」

 

ハミィと響も後を追うようにして走って行った。

そしてこうなってしまえば、

 

「…やれやれ」

 

「結局こうなるのね」

 

エレンとアコも追うしかないのだった。

 

 

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

 

 

響は奏とハミィを追っていたのだが、追いつくのは意外と早かった。

奏は広間へと降りる為の階段の手前で止まっていたからだ。

 

「あれハミィは?」

 

「…あそこ」

 

と、奏が下を指差した。

 

響が指差す先を見れば確かにハミィはピアノの近くで演奏を聴いていた。

 

「奏は行かないの?」

 

そう言って奏を見ると、奏の頬は微かに紅く染まっていた。

しかもうっとりとしている。

 

「どうしたの?」

 

「…あれ」

 

と言って奏は今度はピアノの方を指差した。

響は内心、“あ、本当に王子先輩だったんだ”と思いながら指差す先を見て、

 

「…!?」

 

思いがけない結果に驚愕していた。

 

「…ね?」

 

「…う、うん」

 

そして響もまた、頬を微かに紅く染めていた。

 

響紅。

 

「…いいよね」

 

「うん」

 

そんな事を言っている内にエレンとアコも追いついてきた。

 

「あれ?ハミィは?」

 

「ピアノの近くで聴いてるわ…」

 

「なんで奏は上の空なの?」

 

「…成程、そうゆうことね」

 

響と奏に構わず下を見ていたアコは一人納得したようだ。

 

「アコ、分かったの?」

 

「アレを見れば全て分かるわ」

 

アコは下を指差しながらそう言った。

 

「ん?」

 

下を見るエレン。

確かにハミィはピアノの近くで演奏を聴いていた。

そしてそのまま視線をピアノの方に移して、

 

「え!?」

 

エレンもまた、驚愕していた。

 

「意外な人物ね」

 

唯一アコだけは何ら変わらなかったが。

 

「エレンもそうなるよね」

 

「あんなの反則よ…」

 

四人の視線の先には、

今も尚眼を瞑りピアノを弾いている明の姿。

よく見れば、リズムをとっていのか身体が揺れている。

その姿は実に楽しそうにピアノを弾いていてその姿はまるで子供の様だった。

 

「明さん、ピアノ弾けたんだ…」

 

「流石にこのイメージは無かったわ…」

 

「不思議と絵になるわね」

 

響、エレン、アコの三人はそう言っているが、奏は…

 

「素敵…」

 

うっとりとしていた。

 

「…出た、奏の例のアレ」

 

「…えぇ。出たわね」

 

響とエレンが言う奏の例のアレ。

そう、奏はイケメン好きなのである。

 

自分が惚れている王子先輩とはまたタイプの違う美形、そして何より過去の共闘で何度も見てきた不敵な笑みを浮かべ勇猛果敢に戦う姿と今の姿とのギャップに奏はハートキャッチされていた。

 

「あぁ…明さん…」

 

「あぁ〜こりゃダメだ」

 

「完全にスイッチ入っちゃってるわね」

 

「…あ」

 

ここでアコが何かに気付いた。

 

「どうしたのアコ?」

 

「よく見たら、明さん微笑んでいるわ」

 

響に聞かれ、そう言ったアコ。

そしてそれを聞いた奏はプリキュアに変身している時と殆ど変わらない素早さで最前列の椅子に座ってピアノの演奏を聴くのだった。

おそらく演奏を聴く以外に、明の微笑みを見るのもあると思うが。

 

そんな奏の行動に三人は顔を見合わせて笑いつつ後を追って結果、仲良く四人で最前列の椅子に座ってピアノの演奏を聴いていた。

 

その後、

演奏を終えた明が響達に見られていた事に気付き不覚にも照れ、それを見た響、エレン、アコの三人は明にハートキャッチされていた。

 

…奏?

照れた明を見た瞬間、意識がフィナーレを迎えてたとさ。

 

奏が復活した後は明が残していたカップケーキを分けあったり、明、響、エレンの三人で弾き合わせをしたり、最後は皆笑顔で声を揃えてハーモニーを響かせていた。

 

 

【完】

 




あえて響達と直接的な会話は無しにしてみました。

再来週、ようやく劇場版のGoプリのDVDが発売だい。
フルCGの短編が楽しみね。

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