つばめ:「明日!」
明:「また一人でか?」
つばめ:「そう!」
明:「そっか、頑張れよ」
つばめ:「おっす!」
ゆり:「大袈裟…ではないわね」
いちか達の一件から数日後の休日、前回と違い今回は茶と煎餅をお供に家でのんびりとくつろいでた俺の元にゆかりから一通のメールが届いた。
“フフフ、暇なら狼の手を貸してくれるかしら?”
どうやら琴爪さん家のゆかりさんはいつの間にかエスパーになったらしい。
正直言ってゆかりからのお助けメールは嫌な予感しか感じず乗り気じゃなかったんだが、程なくしてゆかりの息が掛かったつぼみ達が誘いに来たんで諦めて大人しく行く事にした。
「で?ゆかりに何て吹き込まれたんだ?」
「“フフフ、明をキラパティに連れて来れば面白いものが見れるわよ?”って言われたわ」
「なんてこった……」
毎度お馴染み、冴えに冴え渡る俺の直感が“行ったら前回以上に面倒な事が起こる”って警鐘を鳴らしてやがる……
「やっぱり今から抵抗しても良いか?」
『駄目(です・よ・っしゅ!)』
「…泣けるぜ」
誰でも良いから俺に警鐘じゃなくて福音の鐘を鳴らしてくれ。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「明さん!三番テーブルのプリンとマカロン出来ました!」
「あいよ」
「いちかちゃん!七番テーブルにウサギ3ペガサス2入ったよ!」
「あおい、四番テーブルのお客さんお持ち帰り用のオオカミティラミスを三個ですって」
「りょーかーい!」
―あぁ、まさか本当に明堂学園の御剣様に会えるなんて……!―
―しかもあきら様やゆかり様も一緒……!ふふふ、楽園ここはあったわ!―
―それにしても、御剣さんって改めて見るとなんだか不思議な人ね……―
「フフフ、大人気ね♪」
「…それは新作ケーキがか?それとも俺がか?」
「両方よ♪」
「…へーへー」
キラパティに着いてから数十分後、何故か俺は予め用意されていたキラパティの男性用制服を着てあきらやゆかりと共に大立ち回りを繰り広げていた。
本来、食いに来た筈の俺が働いている理由……、いちか達曰く、前回俺がキラパティ来たかららしい。
詳しく話を聞くとどうやらあきらとゆかりが通ってる苺坂高校がには二人のファンクラブだけじゃなく俺のファンクラブもあるらしくてな?
前回俺がキラパティから出てくるところを偶然ファンの子達が目撃したんだと。
んで、その子達は直ぐ様他のファンの子達に伝え、最終的には“キラパティに行けば御剣さん(俺に)会える”って事になり翌日から学校中でキラパティの事が話題になったんだが、あまりにも話題になり過ぎた為に大勢の子達がキラパティに通い始めちまったからさぁ大変。
いくらジュリオやビブリーの手助けがあっても手一杯な事には変わりなく店の回転率は悪いまま。
“平日で手一杯なのに休日になったらいったいどうなるのか……”
店を持つ者として嬉しくも嬉しくない状況になったんだが、そんな時にアラモード組一の悪知恵を持つゆかりがある提案をしやがった。
“フフフ、それなら明を呼びましょう。お目当ての人が来ればファンの子達も少しは落ち着く筈よ”
それを聞いて最初こそ反対していたいちか達だが、ゆかりのあの手この手その手ネコの手に言いくるめられ最終的に賛成しちまいやがった。
“俺は反対派でしたけど、ビブリーは最初からゆかりさんの提案に大賛成してました”
と、ジュリオ君。
まぁ、ビブリーはそうだろうな。仮に対象が俺じゃなくビブリーだったら俺も迷わずゆかりに大賛成してるからな。
その後の流れはいちか達が俺用の制服を作り始めた一方で言い出しっぺのゆかりはつぼみ達を丸め込んで俺をキラパティに連れてこさせる手筈を整えたって流れだ。
まったく、なんともまぁ泣けてくる話だぜ。
しかもいちかは制服作りをしつつ、俺をモチーフにしたデフォルメ化したオオカミの顔をデザインしたティラミス……【オオカミティラミス】も作っていたんだぜ?
“明さんの中にある甘さとほろ苦さをティラミスで表現しました!”と額に大粒の汗を浮かべながら笑顔で説明してくれたいちか君。
その姿を見てなんとも言えねぇ罪悪感に駆られた俺はいちか達に頼み、自ら店を手伝う事にした。
そして用意してくれた制服(あきらやジュリオと同じタイプだが、二人のとは違い所々に黒色が入っている)を着て、接客をし始めたって訳だ。
因みにつぼみ達は前回俺が案内されたVIP席で俺が接客をしている姿をつまみにオオカミティラミスを堪能してやがる。
「フフフ、可愛らしくて素敵よ明♪」
「バーロ、黙ってティラミス食ってろ」
「えぇ、そうさせてもらうわ♪」
なんてこった、ゆりの奴久し振りに凄く“いい笑顔”してやが……お?ケッケッケ♪
「…何よ、その悪い笑みは」
「口の右っ側にクリームが付いていますぜ?お客様♪」
「っ!?」 (ボンッ!
ケッケッケ、こりゃまた見事に赤く茹で上がっちゃって。
これはまさに反撃のチャンスだな♪
「ケッケッケ♪可愛らしくて素敵だぜ?ゆりさんよ」
「うっ、うるさい!!いいから早く接客しに行きなさい!」
「ケッケッケ♪わっかりましたよー♪」
「っ〜〜!」
ケッケッケ、終始黄色い声を上げるファンクラブの子達を相手にして一時はどうなるかと思ったが、まさかこんな美味しいゆりを見れたんだからこうゆうのも案外悪くねぇのかもな。
―すいませーん!注文お願いしまーす!―
「明君!」
「おう、了解したぜ」
んじゃま、もう一仕事頑張りますかなっと。
「いらっしゃいませお客様。ご注文はオオカミですか?」
【終わり】
オマケ
〜一難去って……〜
ゆかり:「フフフ♪そうよ、来れば間違いなく見れるわ♪えぇ、それじゃあ♪」 (ブツッ!
あきら:「…えっと、ゆかり?」
ゆかり:「フフフ♪面白くなるのはこれからよ♪」
あきら:「…ドンマイ明君……」