とある日の夜、俺は修練の場に来ていた。
「………」
「………」
と言ってもミラージュ達とドンパチする為じゃなく、ただ一人で静かにぼーっとしてるだけなんだけどな。
「………」
「………」
ミラージュ達には事情を話して退いてもらったんだが、
「………」
「………」
何故かムーンライトミラージュは退かずに隣に座ってやがる。
「………」
「………」
「………」
「………」
「なぁ」
「何かしら?」
「俺は一人にしてくれって言った筈だが?」
「えぇ、確かに言ったわ」
「なら何でいるんだ?」
「理由は色々あるけど強いて言うなら明の事が心配だからよ」
「心配?」
「そ、心配」
直後、ムーンライトミラージュが俺の肩を押して横倒しにし、ぽすんと膝で受け止めた。
まぁアレだ、“膝枕”って奴だな。
「何で膝枕を?」
「あら、膝枕は嫌?」
「嫌じゃねぇが……」
「なら良いでしょ?寧ろ疲れている今の明にとってはありがたい筈よ」
「別に疲れてねぇんだがな」
と言いながらも、横になると意識が段々曖昧になってきた。
「…おろ?」
「ふふふ、やっぱり疲れてるじゃない」
体力的にはまだ余裕ある筈なんだが、ムーンライトミラージュの方が正しかったからしい。
「明は普段から無理し過ぎなのよ。ただでさえ荒行を積んでいるし、皆の為にお兄さん役を振る舞わないといけないのだから疲れない筈がないわ」
「荒行は兎も角、別に振る舞ってるつもりはねぇんだけどな……」
「けれどみんなが明の事を慕っているのは事実でしょ?」
「まぁそうだな」
「皆は明に甘えてるんだから、明もたまには誰に甘えなさい。そうしないといつか身を滅ぼすわよ?」
身を滅ぼすねぇ……
「俺はまだまだ楽しく生きて行きてぇから身を滅ぼすのは御免だな」
「それなら誰かに甘えて息抜きをする事ね」
「今お前に膝枕してもらってる様にか?」
「えぇ、滅多にしない事だから存分に堪能しなさい」
「へーへー」
何かいつの間にかカウンセリング的な事になってたが折角貰った忠告に感謝しつつ、やって来た心地良い睡魔に身を委ねる事にした。
―………?―
―………―
―………―
―……!…―
薄れ行く意識の中、サンシャインミラージュとムーンライトミラージュが何か言っていた気がしたがよく覚えてねぇ。
薄れ行く意識の中、温かく柔らかい膝の感触と甘く包むような香りに包まれ、
「お休みなさい。ゆっくり休んでね、明」
と、慈しみに満ちたムーンライトミラージュの声を最後に俺の意識は閉じていった。
まあ、偶にはこんなのも悪くないな……
………
……
…
「…Zzz…Zzz……」
「薫子さんから連絡を貰った時には何事かと思ったけど……」
「…Zzz…Zzz……」
「ふふふ、気持ち良さそうに寝ちゃって……可愛い明……」
「…Zzz…Zzz………」
「………」
「…Zzz…Zzz………」
「………」
“ちゅっ……”
「…Zzz…Zzz……」
「…ふふふ♪」
「寝込みの明を襲って頬にするなんて、ゆりも随分大胆になったね」
「…コロン、薫子さんと一緒に待っててって、私言わなかったかしら?」
「おっと、失礼。明がゆりに襲われるんじゃないかと思って心配で来たんだけど、どうやら遅かったみたいだね」
「…ばか……」
【終わり】
ある意味、明だったら冴羽リョウ以上にマジスイーパーになりそうね(´・ω・`)
オマケ
〜同時刻のミラージュ達〜
ムーンライトミラージュ:「あらあら、うふふ♪」
ナイトミラージュ:「どうした?急に笑い出したりして」
ムーンライトミラージュ:「たった今、表の私が明の寝込みを襲ったのよ♪」
ミラージュ達:『キャーッ!』
ナイトミラージュ:「なんてこった……」
ムーンライトミラージュ:「と言っても頬にキスしただけなんだけどね」
ミラージュ達:『なーんだ』
ナイトミラージュ:「…紛らわしい言い方すんなっつーの」
ムーンライト:「フフフ、ごめんなさい♪」