花を護る騎士 ブレイドナイト   作:葵祈つばめ

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つばめ:「燃えたよ、燃え尽きたよ。真っ白に……」

明:「…古いな」

ゆり:「…古過ぎてその言葉は通じないんじゃないかしら?」

つばめ:「なんてこった……」



〜料理〜

とある日の休日、俺は休むのも立派な修行だと漸く思い昼を過ぎても自宅でのんびり寛いでいたんだが……

 

 

“あ〜き〜く〜ん〜!”

 

 

「なんてこった……」

 

ももかから送られてきた一通のメールによって俺の穏やかな休日は終わりを迎えた。

 

「…泣けるぜ」

 

ん?

何が泣けるかって?

 

そりゃあ勿論、行ったら面倒事に巻き込まれるって確実にわかってんのにももかの元へと向かう準備をしている俺自身にだ。

 

「…前々から思ってたんだが俺がどんなに荒行を積んでもももかには敵わねぇ気がするぜ」

 

ん?

何故かって?

 

理由は簡単、俺の直感がそう言っているからだ。

 

今までの経験上、俺の直感は結果の良し悪しに関わらず当たるからな。

 

ほんと、自慢にして良いのか否か複雑な長所だぜ。

 

「さてっと、いい加減に行くとしますか」

 

今回はいったい何が起きるのやら。

 

まったく楽しみじゃねぇぜ。

 

 

………

……

 

 

「で、仕事が終わって家に帰ってきたらみんな用事で誰もいなくて寂しいしお腹も減ってて困ったから俺を呼んだと?」

 

「うん!」

 

「………」

 

フェアリードロップに到着早々半泣きで抱き着いてきたももかをアイアンクロー(出力10%)で防ぎ家に上がってメールの理由を聞いたら案の定、こんなんだったぜ。

 

「…はぁー……」

 

「…明君?」

 

「なんでもねぇよ。…んじゃま、俺は帰るから自分で頑張れ」

 

さーて、帰って夕飯の仕込み……

 

「や〜!帰らないで〜!」

 

は無理か。

 

若干呆れて何も言えねえが、いつもの事だからしゃーねぇか。

 

ほんと、慣れって恐ろしいもんだぜ。

 

「明く〜ん〜……」

 

「わーったわーった。帰らねぇから離してくれ」

 

「やった〜♪」

 

おーおー、相変わらず変わり身早いな。

 

後、頼むからそんな輝いた笑顔が俺を見ねぇでくれ。

 

「で、何を作れば良いんだ?」

 

「美味しい料理だったら何だって良いわ!」

 

「作り手が最も困る事を言うなっつーの。……冷蔵庫の中身は好きに使っても良いんだよな?」

 

「うん!明君やゆりだったら好きに使っても良いってママが言ってた」

 

「なんてこった……」

 

「それだけ明君とゆりの腕を買ってるって事よ!」

 

「へーへー、そりゃあどーも」

 

んじゃま、早速冷蔵庫チェックっと。

 

…お、卵が俺ん家よりも沢山あるな。

 

「ももかー、また卵料理でも良いかー?」

 

「うん!」

 

「りょーかーい」

 

さて、こっからが問題だ。

 

ゲスト(ももか)を待たす訳にはいかねぇからなるべく手間が掛からない卵料理にしねぇとな。

 

目玉焼き、スクランブルエッグ、卵焼き、オムライス……

 

や、オムライスは米を炊かねぇといけねぇから駄目だな。

 

オムレツ、スフレ……ん?

 

「…オムレツとスフレ、この二つを合わせたら面白そうだな……」

 

そうなると前に来るのは……

 

「おりょ?どうしたの明君?」

 

「…ももか、俺の新作料理を食ってみねぇか?」

 

「明君の新作!?食べたい!食べたい!」

 

「オーケーオーケー。あ、ついでにゆりも呼ぶか」

 

確かゆりも今日は予定が無いって言ってたもんな。

 

「さんせーい!」

 

なら早速ゆりに電話、っと。

 

 

………

……

 

 

『あら?どうしたの明?』

 

「ゆり、ちょっと聞くが今何処で何をしてる?」

 

『明にお昼をお願いしようと思ってそっちに向かってる最中よ』

 

「2〜3個ツッコミたいが、今回は見逃してやる。…これから新作料理を作るから10分以内にフェアリードロップに来い」

 

『了解』

 

 

………

……

 

 

その後ゆりは本当に10分以内に来た。

 

いやはや、ゆりもまた中々立派な食い意地を持ってらっしゃる。

 

「成程、それで明を呼んだのね」

 

「うん!」

 

そして料理が完成するまでの間にももかからこれまでの経緯を聞いていた。

 

「それなら今度から私も困った時は明にお願いしようかしら?」

 

「おいおい、俺は家事代行サービスなんかしてねぇっつーの」

 

「まぁまぁそう言わずに良いじゃない♪私達を助けると思って……ね?」

 

「ね?じゃねぇっつーの。……ほれ、出来たぞ」

 

「おぉー!待ってました〜♪」

 

「これはスフレオムレツ?」

 

流石はゆり。

一目見ただけでわかったか。

 

「あぁ、作ってそうで実は作ってなかった俺特製のスフレオムレツだ。冷めない内におあがりよ」

 

「うん!ゆり!早く食べましょう!」

 

「えぇ」

 

今日初めて作ったから焼き加減に少しだけ自信がねぇが、まぁ大丈夫だろう。

 

「「戴きます(!)」」

 

ん?

何故かって?

 

理由は簡単、俺の直感がそう言っているからだ。(本日二度目)

 

「「………」」

 

まぁ、直感関係なしに二人のこの反応を見れば一目瞭然なんだけどな。

 

「「………」」

 

「どうだ、俺が作ったスフレオムレツは?」

 

「…美味しい!すっごく美味しいわ明君!」

 

「口に入れた瞬間、ふわふわの泡が溶けていく……、まるで魔法だわ……」

 

「うん!」

 

「しかもこのスフレオムレツ、外側は焼かれて中身はふわふわの泡だからスプーンで押したら反発するわ……ほんと、凄い弾力ね」

 

「明君、また料理の腕が上がったんじゃない?」

 

「そうか?」

 

「うん!ゆりもそう思うよね!」

 

「えぇ、今の明の腕ならなら名門料理学校の厳選されたメンバーの中に入っててもおかしくはないわ」

 

「なんだその例え」

 

ゆりにしては珍しくボケた例えだな。

 

「でも順位的には3位〜5位ね。流石の明でも同年代ならまだしも勝てない先輩が二人ぐらいいそうだわ」

 

あ、まだ続くのな。

 

「で、二位の先輩に振り回されてる姿が目に浮かぶわ」

 

「ももかに振り回されてる今みたいにか?」

 

「えぇ」

 

「ぶい♪」

 

「なんてこった……」

 

俺は何処に行っても誰かしらに振り回される運命なのか……

 

「てか、なんで二位なんだ?」

 

「この手の二位はだいたい自由奔放な性格をしてるもんよ」

 

「ももかみたいにか?」

 

「えぇ」

 

「いぇい♪」

 

「なんてこった……」

 

って、さっきからこの掛け合いループしてねぇか?

 

「でも安心して。一部の同年や年下からはとても慕われてるから」

 

「ん?でも一部からはそうじゃねぇのか?」

 

「見た目と肩書きでちょっとね?」

 

「あ、納得」

 

現に今がそうだもんな。

 

それにしても、

 

「まるで漫画みてぇな内容だったな」

 

「最近龍璃や萌香、番君から色々借りているから自然とそうなっちゃったのよ」

 

「ばんちょー君もかい」

 

「あの子の描く漫画って結構面白いわよね。特に明がモデルの作品とか」

 

「げっ、読んでんのかい」

 

「ふふふ、楽しく読ませてもらってるわ」

 

「…泣けるぜ」

 

「明君!おかわり頂戴!」

 

「って、ももかはもう食い終わったのかよ」

 

「うん!」

 

「…一人黙々と食べてたのね、通りで静かだと思ったわ」

 

「だっておいしんだもん♪」

 

「そこまで夢中に食ってくれるとは作った甲斐があるぜ。サンキューなももか」

 

 

“なでなで、なでなで……”

 

 

「はにゃ〜……」

 

おーおー、こりゃまた随分と蕩けたな。

 

「あら、私にはやってくれないのかしら?」

 

「ん?ゆりもご希望で?」

 

「勿論よ」

 

さいですか。

 

「わーったよ、ゆりもサンキューな」

 

 

“なでなで、なでなで、……”

 

 

「ん……」

 

なんつー顔してんだっつーの。

 

てか、やらせた自分が照れんなよ。

 

「おーい、気が済んだか?」

 

「え、えぇ……」

 

「ふふふ、ゆりったらか〜わい〜♪」

 

「だな」

 

「ももかは黙りなさい。そして明は新しいのを作りなさい」

 

「は〜い♪」

 

「へーい」

 

次はそうだな……、冷蔵庫の中にトマトと顆粒コンソメがあったから次は特製トマトソース掛けにしてみるか。

 

 

“………!”

 

“…!……”

 

“………!”

 

 

「おりょ?」

 

「外が騒がしいわね」

 

「えりか達が帰って来たんじゃねぇか?」

 

 

“ただいま!”

 

“ももかー、帰ってきてるー?”

 

“…微かに美味しそうな匂いがする……はっ!ひょっとして明さんが料理を振る舞ってる最中!?”

 

 

「………」

 

「………」

 

「………」

 

「なんてこった……」

 

「んもう、えりかったら……」

 

「でも、ある意味えりからしいわ」

 

 

“あーきーさーん!あたしも食べるー!”

 

“明君ー!私達もおねがーい!”

 

“明君ー!すまないけどよろしく頼むよー!”

 

 

「あははは……」

 

「うふふ、コックさん新たにオーダーが三件入ったわよ?」

 

「…D'accord.」

 

 

【終わり】

 




オマケ1

〜もしも明が某料理学校にいたら〜

―極星寮にて―

明:「っ!」

創真:「ん?どうしたんすか御剣先輩?」

明:「…この感じ、アイツがやって来る……」

創真:「アイツって……」

明:「一色!今すぐ扉の鍵を!」

一色:「御剣君、残念だけど……」

竜胆:「明〜!お腹減ったからなんか作ってくれ〜!」

一色:「竜胆先輩なら窓からもう来てるよ」

明:「なんてこった……」

竜胆:「一色!幸平!明をちょっと持ってくぞ!」

創真:「うっす」

一色:「今日は御剣君が寮の夕飯を作るので夕方までには帰してくださいね」

竜胆:「任せろ!」

明:「竜胆さん、俺に拒否権は……」

竜胆:「無い!後、昔みたいに“りんちゃん”って呼べ!」

明:「…りんちゃん」

竜胆:「よし!それじゃあ行くぞ明!」

明:「…おー……」

一色:「あはは、相変わらず二人は仲良しだね」

創真:「そっすね。あ、一色先輩、上がりっす」

一色:「おやおや」


オマケ2

〜スフレオムレツのレシピ〜

明:「ほれ、これがレシピだ」

【材料(二人分)】

★トマトソース

トマト……二個
ニンニク……1かけ
顆粒コンソメ……小さじ1
赤ワイン……大さじ3
オリーブ油……大さじ2


★スフレオムレツ

卵……4個
バター……大さじ2
みじん切りのパセリ・塩・黒胡椒……適宜


★手順

1、トマトソースを作る。
トマトはダイスカットにし、ニンニクはみじん切りにする。

2、鍋にオリーブ油を熱し、ニンニクを炒め、香りが出たらトマトを加え、しんなりするまで炒める。

3、2に顆粒コンソメと赤ワインを入れ、中火で10分程1/2量になるまでよく煮詰めてソースが完成。

4、3を煮詰めていつ間に、ボウルに卵を割り、電動ホイッパーで筋が残る状態になるまでしっかり泡立てる。

5、フライパンにバター大さじ1を入れて溶かし、4の半分の量を入れる。

6、中火で1分程度焼き、火を止めて蓋をして1分蒸らす。
半分に折り、皿に盛る。
もう一皿も同様に。

7、3のソースに塩・黒胡椒で味を調え6にかけ、みじん切りのパセリをトッピングして完成。


★明から一言

どんな料理も隠し味である愛情を忘れるな。

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