でこ組:『ゆりさん?』
ゆり:「ねぇ?貴女達のおでこをぺちぺちしても良いかしら?」
でこ組:『ゆりさん!?』
ゆり:「冗談よ♪」
くるみ:「…急に明さんみたいな事を言わないでください……」
ゆり:「ふふふ♪ごめんなさい」
ひかり:「…でも、明さんになら、ぺちぺち……」 (真っ赤っかー……
薫:「…ひかりは本物の……いいえ、なんでもないわ」
とある日の休日、俺は昼食後の運動としてドンパチをしに修練の場に来たんだが……
―そこよ!―
―甘いわ!―
俺よりも早く此所に来ていたゆりがムーンライトミラージュと既にドンパチを始めていたんで、俺は同じく暇していた裏俺(うら)と一緒に二人のドンパチを応援していた。
「いけー。ぶちかませー」
「負けるなー。押してけー」
こんな感じでな?
「そこだームーンライトミラージュ!幻の左を見せてやれー」
―えぇ!そうするわ!―
「怯むなームーンライト!得意の右で応戦だー」
―うるさい!気が散るから黙ってて!―
「なんてこった……」
まさか俺だけ言われるとは……
しかも“うるさい”と“黙ってて”って意味合い的に同じ事を二回も……
「ハッハッハ、言われちまったな表俺(おもての)」
「あぁ。こうゆう時に表と裏の性格の違いが出るもんなんだな」
「かもしれないが、それ以前に俺達の応援が適当過ぎるだけなんだけどな」
「ハッハッハ、まったくだ」
“幻の左”や“得意の右”って、どこぞの格闘漫画の世界だよって話になるもんな。
「それでも付き合ってくれるからありがたいよな」
「だな」
形はどうであれさっきの応援や普段の軽口にだっても流せば良いものを怒り、呆れ、笑いながらも必ず応えてくれる。
「………」
「表俺?」
「…案外、救われてるのは俺の方なのかもしれねぇな」
「………」
「………」
「…なんか話が少し飛躍してねぇか?」
「そうか?」
「あぁ、しかも表俺にしては随分とらしくない事を言ってたな。最近何かあったのか?」
「いや?至って平穏な日常を過ごしているが?」
「だよな?時々表俺を通じて外の世界を見てるが、特にこれといった事は起きてねぇもんな」
「あぁ」
しかしそうなるといったい何が原因なのやら。
―まだまだ!―
―なんの!―
あ、
「話は変わるけど裏俺よ?」
「ん?」
「あの二人っていつからドンパチしてんだ?」
「表俺が来る一時間前ぐらいからだな」
「マジか」
「あぁ。プリキュアパレスのテラスで昼寝してたらゆりに叩き起こされて修練の場に来たからな」
「ちょい待ち。お前らってそこまで外に出られるのか?てか、此所にテラスなんてあったのかよ……」
「そういえば言ってなかったな。俺達はプリキュアパレスあるこの世界なら修練の場やパレスの外に行けるんだぜ?」
「なんてこった……」
「まぁこの世界はパレス以外殆んど何も無いから誰も外に出ねぇけどな」
「…菖をパレスに連れてきたらテンション上がりそうだな」
「俺は止めやしないが、正体がバレても知らねぇぞ」
「バーロ、冗談だっつーの」
けど、菖達はなんとなーく感づいてる様な節があるんだよな。
それでも追求してこないのはやっぱり藪の中に潜む大蛇に恐れているからだろうな。
まぁ、荒波立てずに済むならそれで構わねぇけどな。
―ハアァァァァッ!!―
―ぐっ、うっ、…きゃあ!?―
「表俺ー、前前ー」
「ん?…なんてこった」
裏俺に呼ばれて意識を戻したら目の前にはムーンライトミラージュの攻撃によって此方に吹き飛ばされて来たムーンライトのが……
―明ー!女の子はデリケートだから優しく扱いなさいよー♪―
「容赦なしに飛ばした本人が何を言うんだか……」
まぁ、言われた通り受け止めるけどさ。
「ほいっと、…大丈夫かムーンライト?」
「えぇ、ありがとう……」
「今日また随分と元気にドンパチしてたな。何か良い事でもあったのか?」
「…別に何もないわよ」 (ぷい
うむ、この反応から察するに確実にムーンライトミラージュとの間で何かあったな。
だが追求すると自滅コース一直線だと俺の直感が警告の鐘を鳴らしてやがる。
「まぁ、何であれ程々にしておけよ?」
「…余計なお世話よ」 (ぷい
「なんてこった……」
「フフフ、いじけてる所悪いのだけど勝負に負けたのだからルールには従ってもらうわよ♪」
「…えぇ、わかっているわ。煮るなり焼くなり好きにしなさい」
煮るなり焼くなりて、今日(きょうび)聞か……いや、大分前に俺が言ったな。
「フフフ♪それじゃあ早速と言いたい所だけど、まだいいわ。それより今はその光景を見ていたいから♪」
「「光景?」」
「表俺、ムーンライト、お前らの今の状態を見てみ?」
「?…っ!?」
「…成程な」
吹き飛ばされたムーンライトを受け止めた今の状態は所謂、お姫様抱っこをした状態になってるのか。
「あらあらうふふ♪」
「ひゅーひゅー」
「…いい加減口笛吹けるようになれよ」
「そ、そんな事言ってないで早く下ろしなさい!!」
「ちょ、落ち着けって」
「嫌よ!早く離して!!」 (じたばた!じたばた!
なんてこった、これじゃあいつまで経っても落ち着ききゃしねぇ。
「離して!!」 (じたばた!じたばた!
…仕方ねぇ、アレを使うか。
「……“ゆり”」
「っ!?」 (ビクンッ!
「出た♪明のフェロモンボイス♪」
「ムーンライトミラージュ、表俺の名誉の為にそこは呼蕩って言ってくれ。てか、いつの間にか変身解けてやがる……」
「ゆり?恥ずかしい気持ちはわかるが、今のゆりはムーンライトミラージュとのドンパチで疲れきってるんだ。だから今は落ち着いてゆっくり身体を休めてくれ」
「…うん」 (しゅん……
「出来るよな?」
「…うん」 (しゅん……
「フフフ♪案外明はブリーダーも向いてるのかもしれないわね♪」
「今この状況でそれを言うか……」
「ふむ、……ゆり」
「…あ、あによ」
「ちょっと鳴いてみてくれ?」
「っ!?」
「まぁ♪」
「なんてこった……」
「ば、馬鹿!だ、誰が鳴……」
「“ゆり”」
「っ!?」
「“さぁ、鳴いてごらん?”」
「フフフ♪明ったらドSね♪」
「まったくだ。何せわざわざ口調を柔らかくする程だもんな」
「“さぁ、ゆり。鳴いてごらん?”」
「……わん」
「聞こえねぇな。もっと大きな声で“鳴いてごらん?”」
「…わん!」
「“よく出来ました。偉いぞゆり”」
「…くぅ〜ん……」
「フフフ♪お楽しみ中に悪いのだけど、そろそろ表の私を借りても良いかしら?」
「ん?…あ、悪い悪い」
「フフフ♪それじゃあ行きましょう表の私♪」
「…え、えぇ……」
ゆりはムーンライトミラージュと一緒に彼女の空間へと行き、今この場に残っているのは俺と裏俺だになった。
「………」
「………」
「裏俺、」
「表俺、」
そうなったら何をするかは単純明快、直截簡明。
「「バトルしようぜ!!」」
これに尽きる。
そして俺達は互いに充分な距離を取り、
「「オオォォォォッ!!」」
俺は変身しながらだが、互いに走り出し、
そして……
「「戦迅狼破!!」」
初手から大技をぶつけ合った。
「ちぃ!同じ事考えてやがったか!」
「当たり前だ!何せ俺はお前だからな!」
「そうかい!なら!」
「あぁ!」
「「ハアァァァァッ!!」」
その後、あまりの煩さに怒り心頭のアンジェミラージュが止めに来るまで俺達のある意味でR指定なドンパチは続いていた。
「「ハッハッ!ハーッハッハッハッ!!楽し過ぎて狂っちまいそうだぜ!!」」
【終わり】
オマケ1
〜その後二人(ゆり達編)〜
(ムーンライトミラージュの心象世界にて)
ゆり:「“負けた方が勝った方の言う事を一つきく”…それで?いったい私に何をするつもりかしら?」
ムーンライト影:「あら?私はただ貴女とお話がしたいだけよ?」
ゆり:「…それなら何故この場に?」
ムーンライト影:「誰にも聞かれたくなかったからよ。…特に明にはね♪」
ゆり:「………」 (ぷい
ムーンライト影:「フフフ♪私は貴女の影だから何でもわかるわ。…たとえば――」 (ごにょごにょ
ゆり:「……ばか」
ムーンライト影:「フフフ♪」
オマケ2
〜その後の二人(明達編)〜
アンジェ影:「――――」 (説教中
明:「…なーんかいつもと違ってやけに怒ってねぇか?」 (ぼそっ
ナイト影:「…他の影達の話だと、さっきまで初代影の膝枕を堪能してたらしい」 (〃
明:「成程、あまりの煩さに我慢しきれなくて途中で抜けてきたからあんなに怒ってんのか」 (〃
ナイト影:「真面目だねぇ」 (〃
明:「だな。それにしてもアンジェ影が膝枕を堪能ねぇ」 (〃
ナイト影:「ケッケッケ、随分と可愛いらしい乙女だよな (笑)」 (〃
明:「ケッケッケ、だな (笑)」 (〃
アンジェ影:「フフフ、全部聞こえてますよ?」 (にっこり
二人:『なんてこった……』