ゆり:「始まったばかりなのになんて事言うのよ……」
明:「関係ないね(大下勇次風)。それにEDでエール達が持ってたタンバリンのカラーリングを見れば誰だって気づくだろ?」
ゆり:「それはそうだけど、まさか名前まで言うなんて……」
明:「気にすんな。これを読んでるみんなだって、俺と同じで既に知ってるさ」
とある日の休日、俺とゆりはももかに呼び出されフェアリードロップ(まぁ要するにももかの家だな)を訪れ、そして……
「月光に冴える一輪の花♪キュアムーンライト〜♪」
「………」
「なんてこった」
部屋の中で手作りであろうムーンライトの衣装を着たももかのファッションショーを堪能していた。
「ねぇねぇ!どう?似合ってる?」
「…え、えぇ、可愛らしくてとても似合ってるわよ。ねぇ明?」
「あぁ、一瞬だが本物と思っちまったぜ」
まぁ、その本物は俺の隣にいるんだけどな。
「えへへへ♪ゆりも明君もありがとう♪」
「けど、どうしてももかがムーンライトの衣装を着てんだ?」
「実は前からプリキュア達、特にキュアムーンライトの衣装が可愛いな〜って思ってたから作っちゃった♪」 (てへ♪
なんてこった、これがファッションショップの子の力か……
「…でもどうやって衣装の資料を?」
「ルリルリから写真を貰ってそれを元にして作ったの!」
「…成程ね」
「…あー、そう言えば龍璃はムーンライトのファンだったな」
だいぶ前に龍璃から話を聞いて知ってはいたが、ここ最近は殆んど話しに出た事がなかったからすっかり忘れちまってたぜ。
確かあれはまだ中学の時だったな。
サソリーナの手でデザトリアンにされた龍璃をムーンライトと一緒に助けたら龍璃がムーンライトファンになっちまいやがった。
そしてそれ以降、俺達がデザトリアンとドンパチしてると必ずと言って良い程いつの間にか現れて憧れのムーンライト様の活躍をその目に焼きつけてたっけな。
てか、龍璃は俺が散々危ねぇから逃げろって言ったのにまったく聞きやしなかったし、挙げ句の果てにはムーンライトにサインをお願いしてきたから大変だったぜ。
サインをお願いされてあたふたするムーンライトは見ていてひじょーに笑えたが、龍璃のあの熱量には流石の俺も当時はお手上げだっぜ。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「…その節は大変申し訳ありませんでした」
「えっと、どうしたの龍璃さん?」
「…なんだか急に中学時代の恥ずかしい話を思い出しちゃって……」
「中学時代の恥ずかしい話?」
「キュアムーンライトにサインをお願いしたあの伝説の事だな?」 (ニヤリ♪
「モカっちお願いだからそれを言わないで〜!?」
「「あー……」」
「うわぁーん!博士もつくね君もそんな目で私を見ないで〜!」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
だがまぁ、なんだかんだ言いつつも今となっちゃ懐かしい笑い話だぜ。ハッハッハ。
「およ?ニヤニヤしてどうしたの明君?」
「ん、ちょっと思い出し笑いをな。それよりどうだももか?ムーンライトの衣装は?」
「とっても動きやすいしお花みたいなデザインが更に可愛い♪」
「へぇー、そうなのか」
俺的にはムーンライトの衣装は可愛いっつーよりも綺麗だと思ってるが……まぁ言う必要もねぇか。
「でもちょっとだけ……」
「ん?何か問題でもあんのか?」
「えぇ、そうなの……」
「「???」」
何か問題があったかとゆりと顔を見合わせて考えるが特に何も思いつかない。はて?問題とはいったいなんぞや?
「キュアムーンライトの致命的な問題、それは……」
「「それは?」」
「スカートが前開けだから中が見えちゃ〜う♪」 (ヒラヒラ〜♪
「っ!?」
神妙な顔から一転していつものニヤケ面での爆弾発言(?)。どうやら本日もももかは絶好調らしい。
「成程、確かに改めて見ると結構危ないデザインだな」
ムーンライトとは誰よりも長く一緒に戦ってきたが今の今までまったく気づかなかったとは俺もまだまだ修行が足りねぇな。
「何暢気な事を言っているのよ!いいから早く見るのを止めなさい!」
「安心しろ。ツッコミをしながらゆりが目隠してきた時点でもう何も見えてねぇよ」
俺が反応出来ない早さで視界を奪うとはゆりもだいぶ成長したな。お兄さんは嬉しいぜ。
「んもう♪明君ってばえっちなんだから〜♪」
「自分から仕掛けてきた奴がそんな事をよく言えるな。てか、ゆりさんからとんでもねぇ怒気を感じるんだが大丈夫なのか?」
「…えっ?」
ただでさえ親友が手作りとはいえ自分の衣装を着てる事にたいして恥ずかしいのに、その姿で自分じゃ絶対にやらねぇチラ見せをやりやがったからな。そりゃ怒るのも無理ねぇぜ。
まぁ俺的にはももかの綺麗な肌を見れて眼福だったけどな。ハッハッハッハ。
「…えっと…ゆりさん?」
「フフフ、ももか?少し私とお話ししましょ?」 (ゴゴゴゴゴ……!
「あ、あの……」
「ももか、正座」 (ニッコリ♪
「はい……」
ほらな。てか、普段と違ってサウンドオンリーな分余計におっかなく聞こえるぜ。
「…あ、あの、ゆり?と、とりあえず落ち着いて……」
「フフフ、どうしたのももか?私は落ち着いてるわよ?大丈夫、何もしないわ。お話しするだけよ」
とある黄色い生物の言葉で、“大人たるもの、「何もしないから」と言ったら必ず何かするし、「休憩しよう」と言って本当に休んだりはしない。”ってのがあるが、今のゆりの何もしない発言はまさにこれだな。
「ももか、お前の事は絶対に忘れねぇ。今まで楽しかったぜ」
「明君そんな事言わないで助けてよ〜!」
「悪いが断る。これを機にその無防備さとそれが招く危険についてゆりから教えてもらえ」
「フフフ、一時間かけて教えてあげるわ」
「んじゃま、話しやすいように俺は部屋から出てっからいい加減この手を離してくれや」
「…良いけど目を瞑ったまま部屋から出なさいよ?」
「へーい」
「…明君って目を瞑ったまま出られるんだ」
「数えきれねぇぐらいこの部屋に来てるからなっ、っと」
目を瞑ったまま立ち上がった俺は記憶と気配を頼りに障害物を避けながら歩き無事に扉へ。
「それじゃあ一時間後にまた会おうぜ」
「えぇ」
「明〜く〜ん〜!カ〜ンバ〜ック!」
「フッ、カウボーイってのは振り向かず、クールに去って行くもんなんだよ」
ももかのボケ(叫び)に俺はそう返して静かに部屋から出て行った。
「さーて、一時間何して時間潰すっかなー……」
―フフフ、それじゃあ始めましょうか?―
―うわぁ〜ん!!―
「ケッケッケ、雷はくわばら。ゆりは苛々。ももかはセクハラ。俺は徒らってな」
【終わり】
オマケ
〜その後〜
明:「斯々然々以下省略だ」
つぼみ:「それで明さんはホットケーキを作っていたんですね」
明:「あぁ。てなわけでえりか、事後承諾で悪いが台所を使わせてもらってるぞ」
えりか:「オッケ〜。あ、でもパパとママの分も作ってほしいっしゅ」
明:「あいよ、任せとけ」
いつき:「ホットケーキかー。小さい時に食べた以来だから懐かしいなー。…あっ、何か手伝える事はありますか?」
明:「ん、それじゃあそろそろ一時間経つからゆり達を呼んできてくれ」