つばめ:「めちょっく〜……」
とある日の朝、俺は珍しく寝坊して遅刻していた。
「なんてこった、まさか遅刻しちまうとはな……」
と言っても、少女漫画又はラブコメの主人公よろしくトーストを咥えながら全力疾走なんてお約束な事はしてねぇし学校にも遅刻の旨を連絡済みだからいつも通りのんびりと登校してんだけどな。
あ、因みに言っとくが遅刻した原因は昨夜遅くまでテンションが高かったダークの相手をしてたら寝んのが遅くなったからだ。
実はダークは前から外の世界に興味を持っていたらしくてな?
パレスにいた頃は俺やゆりを通じて外の世界の事を見聞きしていた裏俺と裏ゆりの話を聞いて楽しむだけだったが、ご存じの通りダークは半妖精から妖精へと進化(?)したろ?
そのお蔭で外の世界にも行ける様になったから当時は大変だったが、ここ最近はダークも落ち着いてきたんでてっきり熱が冷めたと思ってたから昨夜の質問責めは不意打ちだったぜ。
「けど、好奇心が旺盛なのは良い事だから無下には出来ねぇよな……」
それにダークのあの無邪気なお目々を見ちまったら尚更な?
明さんはああいうのには弱いんですよってな。
「ふぁ〜……ん?」
とまぁ内心でぶつくさ言っていたらいつの間にか背後にももかの気配を感じた。
「………」
「………」 (ニヤニヤ
詳しくは分からんが、俺に気付かれない様にこそこそとしたこの感じから考えると十中八九ももかは何かしやがる。
「ふふ♪だ〜れだ♪」 (ぎゅ
ほれきた。
しかも目隠しとはまた随分とベタな事をしやがるぜ。
「さぁ♪私はいったい誰でしょうか〜♪」
「ん〜…、今をトキメク人気絶頂中の現役女子校生モデルの来海ももかか?」
「ピンポン♪ピンポン♪大正解〜♪」
こう言っちゃ失礼かも知れんが、ももかは頭に“ド”が付く程単純なんで俺が正解したら直ぐに目隠しを止めてくれた。
なんか将来が心配になりそうなド単純さだぜ。
「おはようももか」
「うん♪おはよう明君♪」 (にぱー♪
おーおー、笑顔が眩しいな。
流石は人気モデルだぜ。
「えへへ♪」
「なんだ、今日は随分とご機嫌だな」
「うん♪実は今日は一日仕事だったんだけど予定が変わってお休みになったの♪」
「成程、だからこんな時間帯に学校へ行こうとしてたのか」
さっきチラッと腕時計で確認したが今はだいたい9時50分。
今のペースで行けば三限にはなんとか間に合うな。
「うん!…そういえば、こんな時間になっても明君が学校へ行ってないって事はもしかして…」
お、気付いたか。
「あぁ、お察しの通り寝坊しちまったぜ」
「ふふ♪明君が寝坊だなんてなんだか意外♪」
「そりゃあ俺はももかと違って毎朝ちゃんと一人で起きれる子だからな」
最も、今は同居人(?)がいるがな。
「ひど〜い!私だってちゃんと一人で起きれるもん!」
「ええー?ほんとにござるかぁ?」
「あ〜!明君信じてない〜!」
「いやいや、明さんは信じていますぜい?」
「嘘!だって話し方が揶揄う時の話し方だもん!」
「おやおや、私とした事がこれはとんだご無礼をしてしまいましたな」
「むぅ〜……!」 (ぷく〜
ケッケッケ、ももかの頬がリスみたいに膨らんでら。
“♪〜♪〜♪〜”
「ん?」
「およ?電話?」
「いんや、ゆりからメールだ」
「ゆりっぺから?」
「あぁ」
えっと、メールの内容はっと……
“今日はももかが休みなんだから早く来なさい。……後ろが静かだと落ち着かないのよ”
「………」 (ニヤリ
「ねぇねぇ明君、ゆりっぺは何て?」
「ん、ほれ」
「どれどれ……」
ケッケッケ、ゆりのやつめ。中々可愛いメールを送ってくるじゃねぇか。
「キャ〜♪ゆりっぺったら可愛い〜♪」
「こんなメールを貰っちまったら早く行かねぇとな」
「うんうん♪今日は私も行ける様になったから早く行って安心させないとね♪」
「あぁ、つー訳で学校までひとっ走りするか?」
「おっけ〜!」
「んじゃま、位置について…」
「よーい…」
『ドン!』 (ダッ!
お、初っぱなからトップギアの俺に着いてくるとはももかも中々早くなったな。
てか、トーストを咥えてねぇとは言え学校まで全力疾走するだなんて俺も中々お約束な事してるな。
「明君、負けた方が購買で奢りだからね〜♪」
「オーケー」
【終わり】
オマケ1
〜その後〜
ゆり:「……まさかももかが一緒だったなんて」
明:「ゆ〜り〜」 (ニヤニヤ
ももか:「ゆりっぺ〜♪」 (〃
ゆり:「……あによ」
二人:『なんでも(ねぇ〜、ないわ)よ〜♪』 (ニヤニヤ
ゆり:「……あんなメール送らなければよかった」
オマケ2
〜帰宅後〜
ダーク(妖精):「Zzz…Zzz……」
明:「なんてこった、まだ寝てんのか」
ダーク(妖精):「もう…食べられん……」
明:「しかも随分とベタな寝言だな」