花を護る騎士 ブレイドナイト   作:葵祈つばめ

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〜災難〜

とある日の放課後、いつも通り平和な賑やかな私立明堂学園の中等部の廊下を俺は今全速力で走っていた。

 

「きゃ!?」

 

「うぉ!?」

 

「なんだ!?」

 

途中何人かの生徒にぶつかるが、

 

「スマン!」

 

と、走りながら謝るので精一杯。

 

何故俺は全速力で放課後の中等部の廊下を走っているのかと言うと、

 

「待てぇー!!」

 

「待ってくださ〜い!」

 

後方から追ってくるつぼみとえりかの魔の手から逃げる為だ。

 

「…ったく、しつこいな。大人しく諦めやがれ!」

 

俺は後ろの二人に言うのだが、

 

「それは此方の台詞だぁ〜!」

 

「そうです、明さん!」

 

「…なんてこった」

 

あえて言わせてもらおう、

 

ダメだこりゃ。

 

てか、えりかは兎も角、

 

「つぼみはえりかのストッパーだろ!なんで止めないんだよ」

 

「わたしだって、見てみた…じゃなくて!興味あるんです!」

 

「おーい、言い直したけど結局言ってることは同じだぞー」

 

…まったく、

 

「なんで、こんなことになっちまったんだ…」

 

逃げながら俺は事の発端を思い出していた。

 

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

―キーンーコーンーカーンーコーンー―

 

 

本日最後の授業の終了を告げる音が高等部の廊下に響き渡る。

 

「ん〜、あ〜終わった〜」

 

俺は自分の席で凝り固まった両肩を解そうとしたが、止めた。

 

「その振り挙げた手を誰の頭に落とすつもりだ?」

 

俺は後ろを見ずにそう発言し、後ろに振り返り言った。

 

「なぁ、ももか?」

 

「んもぅ、何で分かるのよぉー」

 

言われたももかはぶーたれながら挙げていた手を自分の腰に当てた。

 

…なまじ、現役モデル故かそんな立ち姿でさえ、様に見えるもんだなぁ。

 

まぁ、尤もそんなことは絶対に言わないけどな。言ったら確実に調子に乗るのが目に見える。

 

「だから言ったでしょ、ももか。彼にそんなことしても失敗に終わるって」

 

「あ、ゆり」

 

ゆりが少々呆れながら近付いてきた。

 

「分かってたんならなんで止めなかったんだ?」

 

「言って止まる娘かしら?ももかは」

 

「あ〜…」

 

止まらないな。

 

悲しいかな、言い切れてしまう。

 

「あ、そうだ、明君に伝える事があったんだ」

 

一人沁々と悲しんでいたらももかがそう言ってきた。

 

「ん?何だ?」

 

「放課後になったらファッション部に来るよう伝えてって、えりかが」

 

「じゃあもう行かねぇとな」

 

そう言って俺は鞄を持ち席から立って教室を出た。

 

「私達は後から遅くれて行くわ」

 

「りょ〜か〜い」

 

後ろからももかがそう言い、俺は振り返らずに片手を挙げてそう答え中等部のファッション部へと歩き出した。

 

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

〈ファッション部・部室〉

 

 

―ガラガラガラ―

 

 

「お〜い、来たぞ〜」

 

 

―ど〜ん!!―

 

 

「何事?」

 

俺はドアを引いて中に入った瞬間、絶句してしまった。何故なら目の前に様々な服が重なりあって出来上がった塊があったからだ。

 

「あ、明さん」

 

「えりか、この塊は何ぞよ?後、他の奴らの姿が見えねぇけど?」

 

俺は部室を見回して窓際でマネキンに服を着せていたえりかに聞いた。

 

「いつきは生徒会、なみなみ、なおみ、るみこ、とっこはちょとした頼み事であったから走らせてて、つぼみは……」

 

「助けて下さ〜い!」

 

「…ん?塊の中から声が」

 

「その塊の中よ」

 

「…マジか」

 

つぼみ、まさかの生き埋め。

 

何故塊があり尚且つ、つぼみが塊の中にいるのかは後々聞くとしてとりあえず、

 

「助けいるか?」

 

「お願いします〜!」

 

「ん、りょ〜かい」

 

俺は腕捲りをして救出作業を始めた。

 

 

* * *

 

 

服の塊を剥ぎ続けること30分、無事つぼみを救出できた。

 

因みに剥いだ服は丁寧に畳んで机に置いた。

 

その数、20着以上はあるか?

 

「ふぃ〜、救出完了〜」

 

「ありがとうございます!明さん!」

 

救出されたつぼみはペコペコと何度も頭を下げ俺に礼を言う。

 

「いやいいから、気にすんなって。それにそう何度も頭を下げられると、むず痒くなる」

 

「あ、…はい、すみません……」

 

そう言ってつぼみはまたペコペコと頭を下げる。

 

…あぁ負のループだなこりゃ。

 

「でゅわ!」

 

 

―ガバ!―

 

 

「きゃ!?」

 

いきなりえりかが後ろからつぼみに抱き着いた。

 

「えりか、いきなりなにするんですか!」

 

「だって、こーしないとつぼみは止まらないでしょ?」

 

えりか、ナイス。

 

「あうぅ……」

 

「それより、あの服の塊とその中にいたつぼみについて聞きたいんだけど?」

 

心の中でえりかに賛辞を贈った後、俺は気になっていた事を二人に聞いた。

 

「あ〜、アレよ。次のファッションショー用のデザインを考える為に試作を含めた今までのを資料として使いたいから、つぼみに頼んで運んでもらってる最中に…」

 

「あ、察し」

 

「…うぅ〜」

 

つぼみは恥ずかしかったからか頬を赤に染めてた。

 

にしても、

 

「この間文化祭でやったばかりなのにもう次のショーにむけて準備すんのか」

 

「今回のショーは最後にちょっとした企画があるんです」

 

「ちょっとした企画?」

 

「んむっふっふっふ〜」

 

いつの間にか復活したつぼみから気になるワードが出て、おうむ返したらえりかがいつもの変顔で笑っていた。

 

…なんか嫌な予感。

 

えりかが変顔して笑っていると碌な事がない。

 

俺の直感がそう言っている。

 

「まぁそれは後で言うとして……」

 

「俺は今、言ってほしいんだが?」

 

「今回の明さんの衣装がコレね」

 

「こんにゃろう、聞いちゃあいねぇ」

 

「あははは……」

 

マイペースを貫くえりかに呆れながらも俺は衣装を受け取ろうと手を出したのだが、

 

「あ、明さん。衣装は既にマネキンに着せてありますよ」

 

「…先に言ってくれ」

 

つぼみの発言によって俺は少々ドジってしまった。

 

服の代わりに虚しさを受け取っちまったな。

 

軽く自虐的な事を思いつつ俺は窓際に置いてある二体の服を着たマネキンを見た。

 

「今回は二着か」

 

「今回、明さんの衣装にはキルトを起用したっしゅ」

 

「へえ。…えぇっと一着目は、黒色のジーンズに紺色のキルトをパレオ風に巻いて、上も黒色のワイシャツ」

 

「どうですか?、明さん」

 

ふむ、

 

「まあ悪くないな。スカート状に巻くのは抵抗があるが、片足が見えるように巻く分には文句ない」

 

「やりました!えりか!」

 

「よっしゃ!」

 

いぇーい、とハイタッチする二人は見てて微笑ましかった。

 

「しかも、キルトを使う案を出したのはつぼみなの!」

 

へぇ、

 

「そーなのか?つぼみ」

 

「はい。明さんは細身で背が高く脚も長いですからとてもお似合いかと思いまして」

 

「そうか。サンキューな」

 

 

―ズキュン!!―

 

 

「はわぁ//////」

 

礼を言ったらつぼみの顔が真っ赤になっちまった。

 

「出ましたぁ!女殺しの笑顔!」

 

「オイ、えりか。なんだその失礼極まりないフレーズは」

 

「説明しよう!女殺しの笑顔とは明さんのその甘いフェイスで見せる笑顔である!その笑顔を見て赤くならない女はいないと言われている!」

 

「…へーへー、名誉なことで」

 

変顔で高らかに説明するえりかの話を聞いて、俺は呆れるしかなかった。

 

「それだけ明さんの笑顔が魅力的なのが悪いっしゅ!」

 

「知るか。俺は悪くねぇ」

 

「はうぅ〜」

 

「おっと、大丈夫かつぼみ?」

 

「…はい。だいじょうぶです。心配をおかけました」

 

「そうか」

 

「さらにそこからアフターケアのコンボ技を出してきたぁ〜!」

 

「アホらしい。次の服見よ」

 

「…あははは」

 

再び騒ぐえりかを無視して俺は二着目を見ることにした。

 

「えぇっと、二着目は…黒色ズボンに黒色ワイシャツ、黒ベストと……」

 

…これは、

 

「バーテンダー?」

 

「はい」

 

何故にバーテンダー?

 

俺にショーの時にカクテルボトルを振れと?

 

まぁ、それだったら別のショーになるわな。

 

しかし、

 

「また上下真っ黒コーデか」

 

「いいじゃん、明さん黒が似合うんだから」

 

「そうですよ明さん」

 

「う〜ん、私服も黒が多いからたまには他の色の服を着てみてぇな」

 

「他の色の服、ですか?」

 

「ほうほう。例えば?」

 

つぼみは単なる興味本意で、えりかは新しいデザインの参考にするためか目をキラキラ輝かせながらメモ帳を開きペンを用意して聞いてきたから俺は考え始めた。

 

「例えば……」

 

『ごくりっ!』

 

俺のもったいぶった物言いに二人は固唾を飲み、その時を待っていた

 

が、

 

……………

 

…ん?

 

……………

 

…なんてこった

 

「全然浮かばねぇ」

 

『だぁぁぁぁぁ!?』

 

我ながら呆れる答えに二人はずっこけた。

 

「おー、ナイスリアクション」

 

 

どことなく音の乾いた拍手を俺は二人に贈った。

 

こんな光景、滅多に見れねぇからな。

 

「もったいぶった結果が何も無しかーい!」

 

「いやぁ、すまんすまん」

 

「結局、明さん自身も黒がお気に入りなのですね」

 

「まぁそういうことだな」

 

黒しか浮かばない俺って心がアレなのか?

 

認めたくないものだ。

 

あ、でも戦う時もだが文化祭の時も黒色の服だったな……

 

これは認めるしかないな。

 

あぁ、悲しいぜ…。

 

俺は窓の外を見ながら心の中で嘆いていたら、二人がなにやら話していたんで、俺は気を入れ換えがてらぼんやりと聞くことにした。

 

「…えりか、明さんどうしたのでしょう?」

 

「たぶん心の中で嘆いてるんじゃない?」

 

「嘆いてる、ですか?」

 

「そ。結局、黒しか浮かばない俺って心がアレなのか…って」

 

殆ど当たってますよ、えりかさん。

 

「でも、明さん黒がとてもお似合いですよ?」

 

と、つぼみのフォロー。

 

「まぁね。ちょうどゆりさんと対極の色だし」

 

…対極、…白?いや、ゆりは紫色だろ?

 

「後、明さんが変身した姿ってパッと見、あの三人よりも悪役な感じがするしね」

 

おいこら、

 

「…少し分かります」

 

分かんないで。

 

つぼみのまさかの追い撃ち。

 

「でしょ。そして、ダークプリキュアとのツーショットを考えてみ?」

 

…どれどれ……

 

「ん〜……」

 

暫しシンキングタイム

 

 

―ポク、ポク、ポク、ポク、ポク、ポク、ポク、チーン!―

 

 

…ん〜。我ながらダーク感強烈だな。

 

「…はっ!?」

 

「浮かんだでしょ?つぼみ」

 

「はいっ!これは番くんに報告ですっ!」

 

「だぁぁぁぁぁ!?」

 

聞いたえりかはまたずっこけた。

まぁ、聞いてた俺も少し肩が落ちたが。

 

「…つぼみ、一体何を考えたのよ……」

 

よろよろと起き上がりながらえりかはつぼみに聞いた。

 

「ダークプリキュアと明さんのペア、番くんの漫画の悪役にピッタリです!」

 

…あぁ、そういえば番長君、そんな漫画描いてたなぁ……

 

「ちっがぁぁぁう!!」

 

「きゃっ!?」

 

おぉ、えりかが吠えた。

 

「ダークプリキュアと明さんのペア、デザイン的にメチャクチャ格好いいでしょ!!」

 

…なんてこった

 

「そして、この二人の服を交換したら尚更グッド!」

 

と言って力強く立てるえりか。

 

って、ちょっと待った。

俺の聞き間違えか?今えりか、交換って言ったか?

 

「交換ですか?」

 

「そ!交換!明さんの女装!」

 

「はぁ!?」

 

流石にこれには俺も声を荒げる。

 

「えりかてめぇ、今女装っつったか!?」

 

「そ!今度のショーの企画はコスプレ!そして明さんは女装するのだぁ!」

 

「っざけんなぁ!なんで俺だけコスプレじゃなくて女装なんだよ!」

 

「その方が面白そうだからっしゅ」

 

と言ってテヘペロするえりか。

 

「え〜り〜か〜!」

 

俺はえりかに詰め寄ろうとするが、

 

「落ち着いてください!明さん!」

 

つぼみに腰を掴まれてしまった。ちくしょう

 

…それから数分後にようやく落ち着き、つぼみから開放された俺にえりかは言った。

 

「あ、明さんの女装用衣装はコレね」

 

えりかが見せた衣装は凄く見覚えがあった。

 

「ダークプリキュアの服じゃねぇか」

 

「明さん、よく見てください。ダークプリキュアよりも裾が長いです」

 

「流石にあの短さで着せるのはねぇ」

 

「そう思うなら最初っから着させるな」

 

「まぁ兎も角、明さんには今からコレを着て……」

 

着て、が聞こえた瞬間に俺は部屋から逃げ出した。

 

我ながら中々の瞬間加速。

 

「あ、明さんが逃げました!」

 

「逃がすなぁ!追うっしゅ!」

 

そうして逃走が始まった。

 

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

「…ようやく撒けた」

 

なんとか二人を撒く事に成功した俺は壁に寄り掛かりながら息を整えていた。

 

まったく恐ろしい執念だぜ。

 

いったい何があの二人を彼処まで掻き立てるのやら…

 

…俺の女装か。

 

そんなに見てみたいのかね。

 

何が良いのか俺には分からん。

 

分かる奴がいたら出てきて教えてくれ。

 

「あ、明さん」

 

わぁお。

 

前方の曲がり角から絶妙のタイミングでいつきが出てきた。

 

「どうしたの明さん?ぐったりしているようだけど?」

 

「斯々然々、以下省略だ」

 

「あはは……苦労しましたね」

 

「まったくだ。俺の女装のどこが良いんだっつーの。いつきの男装で満足しやがれ」

 

「や、ボクで満足されても……」

 

その後もいつきと話していたら、奴等が再び現れやがった。

 

「ようやく追いついた!」

 

「げっ」

 

「今度は逃がしませんよ、明さん!」

 

そう言いながらじりじりと迫ってくる二人。

 

どうする、いつきを二人に投げてそのスキに逃げるか。

 

すまん、いつき。詫びは後日必ず……

 

 

「にこ♪」

 

…ん?

 

何だ?何やらいつきから嫌な予感を感じて距離をとってしまった。

 

「どうしたの明さん?」

 

いや、まさか…な?

 

認めたくはないだが、俺の直観が言っている。

 

“いつきは敵だ"と。

 

いつきも俺が気付いたことに気付いたのか先程の笑みは消え、新たに好戦的な笑みを浮かべた。

 

「あ〜あ残念、作戦失敗しちゃったよえりか」

 

「ちっきしょー!バレたか!」

 

成程、そう言う事か。

 

あのままいつきを捕まえようとすれば、逆にいつきに捕まってたわけか。

 

しかも、その際に抵抗してたら後ろの二人にどのみち捕まる。

 

逆に二人に方を突破すればOKか、否!無駄にしぶとい二人だからそう簡単には突破させてくれやしない。

 

さっきのと逆でいつきにどのみち捕まる。

 

中々に周到な策。やってくれるじゃねぇか。

 

計画者は誰だ?

 

つぼみ……はないな。

 

となるとえりか、いつきのどちらか……

 

「どうしたの明さん、黙ったままで?」

 

いつきが話し掛けてきた。

時間稼ぎの為にここは話をするべきだな。

 

「いやなに、ここからどうやって逃げるか作戦練ってただけだ」

 

あくまで余裕の感じで。動揺を表に出さずに……

 

「へ〜、余裕そうだね」

 

「まぁな」

 

うし、気付かれてない。しかも、後ろの二人も動いていない。

 

いつきと話してる最中に捕まるのは間抜けだからな。

 

「ねぇ明さん」

 

「なんだ?」

 

「どうしてボクも二人に協力してるのか気になりません?」

 

…今さら何を、

 

「どーせ俺の女装を見たいからだろ?」

 

「うん!」

 

うわぁ……楽しそうに頷いた。

 

無邪気か、無邪気なのか。

 

「それに……」

 

「それに?」

 

まだあるのか?

 

「武道以外でのリフレッシュが出来るからさ」

 

あぁ…生徒会での疲れが溜まってんだなぁ。

 

「いつき、今度何か甘いもん作ってやるわ」

 

「ありがとう」

 

そして然り気無く、

 

「だからそこを通してくれるか?」

 

「それはダメ」

 

「ちっ」

 

しょうがない。

 

「押し通るか」

 

狙うはいつき側。

走っていつきの目の前で猫だまし。

 

いくらいつきでも一瞬の隙が出来る。

 

そこを抜ければ。

 

「何か策があるみたいだね明さん。だけど、此方にも策はある」

 

そう言いながらいつきは指を鳴らした。

 

その直後……

 

「おいおいマジかよ……」

 

いつきの後ろの曲がり角からなみなみ、なおみ、るみこ、とっこが出て来やがった。

 

しかも、皆申し訳なさそうに此方を見ている。

 

大方えりかに部長命令とか言われて命令されたんだな。

 

哀れファッション部部員。

 

なみなみ、なおみ、るみこ、とっこ。お前らも今度甘いもん作ってやる。

 

俺がそんなことを思っていたら、

 

「因みに後ろには私達がいるわ」

 

と、ゆりの声が聞こえた。

 

…ゆり達もか。

 

振り向けばももかとゆりが居た。

 

「いくら明君でも、この包囲網には敵わないでしょ」

 

明るい声でももかが言った。

 

前方五人、後方四人、計九人の包囲網。

 

…年貢の納め時か。

 

俺は、はぁ〜と深いため息をついてその場に胡座をかいて座った。

 

「煮るなり焼くなり好きにしろ」

 

「確保ー!」

 

えりかの号令のもと、俺は捕まりファッション部部室へ連行された。

 

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

〈ファッション部部室〉

 

 

「着替え終わったぞー」

 

そう言いながら俺はカーテンを開いた。

 

『わぁあ!?』

 

俺の姿を見た途端、ももかとゆり以外は目を輝かせ驚きの声をあげていた。

 

因みにももかは、

 

「謎の敗北感……」

 

と、落ち込んでたし、ゆりはももかを慰めてた。

 

「明さん、髪下ろしたんですね」

 

「おう」

 

「なんだかお兄様みたいです」

 

「あぁ〜、言われてみれば確かに同じぐらいの長さだな」

 

つぼみといつきと話していたら、

 

「よーし!今後はショーでちょくちょく明さんに女装させるっしゅ!」

 

えりかが大声で言いやがった。

 

「断る」

 

そう言って俺はえりかに老若男女無差別拳を食らわすのだった。

 

「はぁー……泣けるぜ」

 

 

 

【終わり】

 




これからも宜しくお願いします。

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