明:「嬉しいねぇ。これで漸く肩身の狭さから開放されるぜ」
オリヴィエ:「馴染んでたくせによく言うよ」
とある日の昼休み、俺は最早馴染みの場所となりつつある屋上でオリヴィエと一緒に昼飯を食っていた。
「ケッケッケ、相変わらずオリヴィエは人気者だったな」
「まぁね……」
オリヴィエがうちの学園に転校してきてから早いもんで二週間が過ぎた。
流石にこれぐらい経てばオリヴィエもクラスメートとすっかり打ち解けてるだろう、と思った俺はゆり達に断りを入れ昼休みにこっそり様子を見に行ったらさぁ大変。
教室内ではオリヴィエと一緒に昼飯を食う権利(?)を巡って数人の男子グループとこれまた数人の女子グループがバチバチバチっと熱い火花を散らしあっていた。
そのままオリヴィエ争奪戦を見てんのも面白そうではあったが、俺の腹がいい感じに空腹を訴えてたんで鶴の一声ならぬ狼の一声でエキサイトしてる場を静め、オリヴィエを連れて屋上に来たって訳だ。
ほい、説明終了っと。
「でも、明は僕と同じ…ううん、僕以上に人気者でしょ?クラスのみんなから聞いたよ。明が今までしてきた色々な“武勇伝”をさ」
「なんてこった、噂話ならまだしも武勇伝として広まってるとはな。これじゃ流石の明さんも恥ずかしくてお天道様を見上げながら歩けねぇ。こうなったら仕方ねぇ、明日からは頭巾でも被って身を縮こませながらコソコソと生きてくしか……って、その白けた目はなんだよ」
「いや、相変わらず明は呼吸する様にペラペラと軽口が言えるなって思ってさ」
おーおー、オリヴィエ君ってば中々言ってくれるぜ。
「おたくのお父さんの気取った話し方よりかは雀の涙程度ぐらいだがマシだと俺は思うんだが?」
「あー…うん…確かにそうだけど……って、雀の涙程度って本当に少しじゃん……」
「そうだったか?いやはや、明さんは筋金入りの戦闘狂だから賢い事はよくわかんねぇな、ハッハッハッハ」
「…今日の明はいつにも増して絶好調だね。もしかしてさっきの黄色い声で気分が良くな……りはしないよね。明の性格的に考えてさ」
ほう…。
「果たして本当にそうだと思うか?もしかしたら明さんは周りからちやほやと持て囃されたい願望の持ち主かもしれねぇぜ?」
「それは無いよ。確かに明は軽口を言うし、賑やかな事や馬鹿騒ぎが好きだし、誰かを揶揄ったりするし、筋金入りの戦闘狂だし、彼女が六人もいるプレイボーイだけど……って、大丈夫?」
「大丈夫だ、問題ない。…けどまぁ、出来ればもう少し手短に頼む」
自分の事だから重々承知の上だが、これは心に刺さるもんがってな?
「えっと、それじゃあ……」
まぁ、刺さるつってもこの程度じゃたいした痛みにはならんがな。
そうだな、寿司詰め…いや、差し詰この痛みは蚊に刺される程度の痛みだな。蚊っ蚊っ蚊っ蚊、蚊蚊蚊の蚊。
「明はその軽さは“自分だけの為の軽さ”じゃなくて“みんなの為の軽さ”なんだよ。その証拠に、今こうして明と話してるだけで僕の心はさっきよりも明るくなってるからさ。……あ、もしかして明が僕を連れて屋上に来たのって……」
おっと、これ以上は言わぬが花ならぬ言わせぬが花だな。
「ほいほいストップストーップ。このまま話し込むのも良いがそろそろ昼飯を食わねぇとな。オリヴィエ、先に戴くぜ」
今日の弁当はな〜にかな〜っと。
「明……」
「おっ、今日の俺の弁当は中華弁当か。中々手間暇掛けて作ってくれるぜ……って、作ってんのは自分自身だったな。いやはや、俺とした事がこいつはうっかり八○衛だぜ」
「ありがとう……」
「ん?何か言ったか?」
「ううん、何でもない。僕もお腹が減ったから食べよっと」
「おうおう食え食え。オリヴィエはたーんと食ってつぼみよりも背を伸ばさねぇといけねぇからな」
「だね。そうすれば今度は僕がつぼみを子供扱い……って、明!?」
「ケッケッケ、今のは中々ナイスなノリツッコミだったぜオリヴィエ君?」
「う、うるさい!いいから早く食べるよ!」
「へーいへーい」
【終わり】
オマケ1
〜実は居た〜
ゆり:「あらあら、明が先輩しているわね」
コロン:「と言っても殆んどいつも通りだけどね」
ゆり:「うふふ、それが明流だから仕方ないわ」
ダーク(妖精):「くっ!」
オマケ2
〜その日の夜〜
オリヴィエ:「――って事があったんだ」
サラマンダー:「成程、それはまた何ともあの男らしい遠回しな気遣い方だな。ところでオリヴィエ、この大量のレシピはいったいどうしたんだ?」
オリヴィエ:「明から貰った。やっぱり今の世の中は男も料理が出来ないとやっていけないよ」
サラマンダー:「そうだな…。まぁ、ぼちぼちと覚えていくさ」
オリヴィエ:「ははは、頑張ってねお父さん」