明:「おう、夕飯までには帰って来いよ」
ダーク(妖精):「合点!」
とある休日の昼、俺は家でのんびりとクッキーを焼いてた。
「よーしよし、後数秒で完成だな」
なんでクッキーを焼いてんのか、その理由は単純にして明快。
今まではそれなりの数を備蓄してたんだが、今現在パレスに行ってるダークが結構食うから数が減る一方なんで新たに用意してるってわけだ。
因みに今焼いてるクッキーが焼き上がれば完成したクッキーの数は50枚弱。
ケッケッケ、我ながらいつの間に学生からクッキー屋さんにジョブチェンジしたんだって思うぜ。
「けどまぁ、こんだけ作っても一週間…いんや、下手したら3日で食いきっちまうんだよな」
主に我が家の大食らい妖精であるダークの所為でな。
「そんでも、クッキーやお菓子やスイーツに限らず何かしらの品を作るのは楽しいから嫌いじゃねぇのが不幸中の幸いってヤツなのかもな」
菓子系や甘いもんに限らず、長い事自炊してきてるから料理のレパートリーも和洋中以外もなんでもござれに加えて掃除や洗濯もお手の物の万能高校生たぁこの俺、御剣 明の事だってな。ケッケッケ
ーピーンポーン♪ー
ん?
お外のインターホンが鳴ったな。
「…誰か来たな」
今日は休日だから来たのはいつものメンバーかもしれねぇが、ゆりは図書館、ももかはモデルの仕事、つぼみ達は植物園だからちげぇ。
そーなると博士達の可能性もあるがゆりやももか同様、来るなら事前にメールしてくる筈だからこれまたちげぇ。
まぁ、ゆりやももかは合鍵使って入ってくる事も時々あるから否定出来ねぇけどな。
「とりあえずオーブンは……“ピーッ!”ケッケッケ、ベストタイミングだ。んじゃま、玄関に行くとしますかね」
さてさて、いったい誰が来たのやら……
オラ、すっげぇワクワクすっぞってな。ケッケッケ
………
……
…
本日、我が家を訪ねて来たのは意外と言えば意外、そうでもねぇと言えばそうでもねぇ、後輩のオリヴィエ君だった。
「どーぞ、玉露っぽい何かの茶だ」
「ご丁寧にどうも…って、玉露じゃないんだ」
「あぁ、残念な事に我が家には玉露だなんて上等なお茶は置いてねぇんでな。その代わりに……ホレ、作り立てホカホカのクッキーどーぞ」
出迎えてそのまま客間へご案内してお茶とついでにクッキーを出せばあーら不思議。
年が近いヤツならあっという間に距離が縮まるぜ。
「ありがとう、(もぐもぐ…)…わ、美味しい……」
「ケッケッケ、趣味でよく作ってるからな。作り置きで良いなら土産品として詰め合わせを帰りに用意してやるよ」
「あはは、父さんが知ったら驚きそう」
「そうか?寧ろ、“成程…。まぁ、あの男なら作れて当然だな”って言いそうな気がするぜ」
なんせ、パパマンダーは俺の万能っぷりに完全に慣れちまったからな。
見たところ、驚きよりも納得の感情の方が優ってる感じだぜ。
「確かに言いそう…、てゆーか絶対言う」
ケッケッケ、さっすが親子。
父親の事をよーくわかってらっしゃる。
「だろ?(ズズズッ…)」
ふぃ〜、お茶が美味いぜ。
「んで?あえて触れなかったが今日はいってぇどんな訳でうちに来たんだ?」
「あ、漸く聞くんだね」
「おう、漸くだ」
そーでもしねぇと話が先に進まねぇ、ってのは心ん中での内緒事。
この世には知らなくて良い事も沢山あるってな。
「えっと、今日はお父さんが仕事で、僕はする事がなかったからこの辺を散歩していて近くに明の家があるのを思い出したから寄ってみただけなんだけど……駄目だったかな?ほら、前に明はいつでも良いから俺ん家に遊びに来いって言ったのね?だからその通りにしたんだけど……」
「バーロ、駄目どころか寧ろその逆で嬉しいぜ」
出会った頃はあんなにツンツンでトゲっちかったオリヴィエ君が若干のぎこちなさはあるものの、今じゃこんなに社交的になるとはな。
明さん嬉しいぜ。
「ほんと?」
「あぁ、俺ん家やいつきん家で慣れていずれはゆりん家やえりかん家、そんでもって最終目的地であるつぼみん家に行ける様になるまで頑張れや」
尤も、俺らの家じゃなく博士達の家やそれこそ同級生達の家にもな。
そーすりゃオリヴィエも今よりもっとチェンジ出来るだろうからよ。
「うん、頑張る……」
「ケッケッケ、よく言った。…あ、そだ。オリヴィエ、昼はもう済ませたか?」
ふと思い出して時計で確認したら今の時間は昼ちょい過ぎ。
タイミング的には済ましててもおかしくはねぇが果たしてオリヴィエは……
「お昼?まだだけど……?」
おーおー、ラッキー。
こりゃツイてるぜ。
「よし、それなら折角来てるんだから昼はうちで食ってけ」
「え、いいの?」
「おう、明さんが腕によりをかけてご馳走してやるぜ」
つっても、今から買い物に行くと流石に時間がかかるからご馳走は冷蔵庫にあるもんでだけどな。
「ありがとう明。それじゃあ僕も何が手伝おっか?」
「お?オリヴィエ君は意外とノリノリだな」
「まぁね。前に明から色々レシピを貰ってから僕もそれなりに色々作ってるからさ」
「おーおー、そりゃ非常に期待出来るが……今回はノーサンキューだ。完成するまで大人しく“明君〜♪お仕事終わったからお昼食べに来ちゃったけどい〜い〜?”……ケッケッケ、ももかの相手をしてくれや」
「う、うん……」
それにしても今回はまた随分とタイミングが良いな。
もしかしてアレか、俺の家に遊びに行きたいが為に仕事を片付けたとか?
いや〜愛されてるぜ。
「あ〜き〜く…あっ!オリヴィエ君が来てたのね♪」
「来るの早っ……」
「流石はえりかの姉ってか?」
「だね……」
「う〜ん、なんだかよくわからないけど……とりあえずえっへん♪」 (ぽよん♪
「ケッケッケ、相変わらずももかはいい胸をお持ちになさってるぜ」
【終わり】
オマケ1
〜その後〜
オリヴィエ:「なんか胸焼けしてきたかも……」
明:「ケッケッケ、直に慣れるからモーマンタイ」
ももか:「煮っ転がし美味し〜♪あ、オリヴィエ君もおかわりする?」
オリヴィエ:「うん、する」
オマケ2
〜その日の夜〜
サラマンダー:「オリヴィエ、このクッキーはどうした?」
オリヴィエ:「明からお土産で貰ったクッキー。父さんも食べる?」
サラマンダー:「あぁ、酒のつまみとしていただこう」
オリヴィエ:「因みにだけど、このクッキー全部明の手作りだよ」
サラマンダー:「成程…。まぁ、あの男なら作れて当然だな」
オリヴィエ:「あ、やっぱり言った」