明:「ケッケッケ、ドンマイ」
とある平日の深夜、俺は台所にいた。
「確か床下収納に買い置きが……」
まぁ、何してんのかは今ので大体の想像つくよな?
そう、ある意味で毒、若しくはご馳走と謳われる深夜のカップ麺でございます。
いや、今日も夕飯をしっかりと食ってから寝たんだけどな?
夜中に目が覚めたと同時に腹が減っちまったんだよ。
んで、小腹を我慢しながらよりも満たしちまった方が寝やすいって事で明さんは夜中に台所にいるのでございます。ほい、説明終了。
「なんてこった、あるにはあるが大量に入れといた買い置きがもう半分くらいしか残ってねぇじゃねぇか」
こりゃ下手人は間違いなく今頃部屋でぐーすかぐーすかとお寝んねついでに夢の中で大乱闘してるであろうダークさんに違いねぇな。
「けどまぁ、どうせ明日はゆりと学校帰りにスーパーに寄るつもりだったから丁度いいと言えば丁度いいか」
それに俺の記憶が正しけりゃ賞味期限切れになりそうなのが幾つかあった気がするからな。
そっちの意味でもダークの食い意地には感謝感謝だぜ。
「っと、残ってんのは醤油、シーフード、カレー……成程成程、ダークの好みは定番よりも期間限定や変化球か」
そーいや、ダークは肉まんや握り飯を買う時も定番以外のが常だったし半分とは言え俺とゆりの食育のおかげかあー見えて中々グルメな節があるからな。
そうなると食べ慣れた味よりも刺激を求めて食べ慣れてねぇ方を好むって訳か。
「それなら明日からはダークの飯の味付けを変えてみるのもアリだな」
幸い、我が家には親父が(無駄に、そりゃもう無駄に)手広く色々集めたスパイスとかが豊富に揃ってるだけじゃなく意外とまだ使った事のねぇスパイスも何個かチラホラとあるからそれらを実験と称して色々試すのも悪くねぇ。
それに結果的に美味い組み合わせが見つかればゆりやももか達にもご馳走出来るぜ。
「ケッケッケ、明さんは刀の腕だけじゃなく料理の腕も一流ってな。“くぅ〜”…おっと、」
ダークかと思ったか?
残念、正解は俺の腹の音だ。
あまりにも無駄話(長話)が過ぎるもんだから夜食を待ちかねている腹が早く夜食を食わせろって訴えてきやがったぜ。
「へーへー、わーったよ」
このままズルズルと無駄話(長話)してたら睡眠時間にも響いちまうし、明日は俺が朝飯担当だからな。
「やかん…じゃなくてポットでいいか。どうせ食うのは俺だけだもんな」
………
……
…
さて、沸いたお湯を容器に入れてただいま3分間の待ち時間を迎えている明さんだが……
「オイコラ、いつからスタンバイしていた」
「明がポットを探す少し前からリビングの外でスタンバイしていた!」
「なんてこった」
対面には俺と同じく3分間の待ち時間を迎えているダークが。
しかもコイツ、夜中だってのにテンションの高さが日中と同じだぜ。
「スタンバイしてたって事はダークも小腹が空いたって訳か。あんだけ多く夕飯を食ってたクセにまだ足りねぇとかどんだけだよ」
「フッ、甘い。デザートに食べたサントノーレよりも甘いぞ明!“他所は他所。家は家“よろしく、“夕飯は夕飯。夜食は夜食”だ!」
「成程、なら仕方ねぇ」
現に、俺も甘いもんは別腹論を体現してるような身だからなダークの言う事も理解できるぜ。
あ、因みに言っとくとダークが言ったサントノーレってのはフランスのスイーツでめでたい場面(或いは席)でいただくモンだ。
丸いパイ生地の縁(ふち)に小さなシュークリームが幾つも並び、パイ生地の中央にはホイップクリームがどっさりたっぷり。
本場のサントノーレだとシュークリームがカラメルでコーティングされてるが俺のはコーティングしてねぇ。
んで、何でサントノーレを作ったかって言うと、ちょいと前にオリヴィエに頼まれて作ったからだ。
サントノーレ自体を作ったのはその時が初めてだったんだがこれが中々上手く出来てな?
以降、サントノーレは明さんのレパートリーの一つにめでたく追加されたましたって訳だ。
「そうだろそうだろ。何故なら私の半分は明の遺伝子だからな。さて、そろそろ3分経つぞ」
「オーケーオーケー」
んじゃま、無駄話(長話)もここまで。
手と手を合わせて錬成陣!じゃなくて……
『いただきます』
夜食を堪能するとしますかな。
「因みに聞くが明、サントノーレ以外にデザートは……」
「ねぇよ。それ食って終わりにしやがれ」
【終わり】
オマケ1
〜次の日の夕方・スーパーにて〜
ゆり:「これで買う物は一通り揃ったかしら?」
明:「いんや、まだカップ麺が残ってら」
ゆり:「あら、明にしては意外な買い物ね」
明:「あぁ、ある程度買い置きしておかねぇとダークに全部食い尽くされちまうからな」
ゆり:「ふふふ、それは大変ね」
オマケ2
〜同スーパーにて〜
サラマンダー:「む、御剣と月影か……」
オリヴィエ:「え?…あ、ほんとだ」
サラマンダー:「………」
オリヴィエ:「………」
サラマンダー:「このまま帰るぞ」
オリヴィエ:「だね」