ランク戦が終わり三人で解説を聞いていたらカゲが隊室に乗り込んできた。
全く、何の用だよ。
「で?」
「ソロランク戦で勝負しろ!」
「いーやーだ。まだ彩香ちゃんに教えないといけないこと多いんだから暫くソロランク戦はやらん」
そう言うと、カゲは彩香ちゃんを睨みつける。そしてその視線に怖がった彩香ちゃんは俺の背後に隠れてしまった。
「はあ、なんなんだお前は。まあ暇が出来りゃあこっちから連絡するから……いや、戦いの参考としてやっぱりやるか。よし!今から10本勝負やるぞ!彩香ちゃんは見学な」
「よっしゃ!」「は、はい!」
指導もいいが、参考を見せるのはいいことだしやることにした。カゲはトップクラスのアタッカーだし、こいつを倒せるくらいじゃないとA級には上がれないからな。
ちなみに結果は8対2で俺の勝ち越し。こいつマジで徐々に動きが鋭くなってきてやがる。いつかアタッカーとしてではマジで勝てなくなるかもしれん。
そしてその後はその戦いのことを彩香ちゃんに解説し、今日はお開きという感じになった。でもなんか物足りない。なんだろう……?
「あ、祝勝会やってねえ」
「「え?」」
「祝勝会だよ祝勝会。B級ランク戦にチームで初勝利の時もやってなかったっしょ?まああん時はB級下位だから勝って当たり前なんだけど。という訳で祝勝会をしよう。2人とも時間は?」
「えっと、大丈夫です。晩ご飯も電話すれば」
「私も多分」
と、そこへ
「真田さん、完勝おめでとう」
「おめでとうございます」
「出やがったなファントムババア!」
言った瞬間空気が凍った。
あ、あれ?カゲの時はスルーしてなかったっけ。なんで俺の時だけ……?
「すいませんカゲの真似しただけです。久しぶり加古ちゃん、あと黒江ちゃんも解説お疲れ様」
「はい、ありがとうございます」
明らさまに加古ちゃんから目を逸らして黒江ちゃんと会話してたら加古ちゃんはため息を吐きながらも怒りを収めてくれた。はー、怖かった。
「それよりどうしたのよ?なんか話してたみたいだけど」
「いや、今日これからチーム戦初勝利の祝勝会をやろうって話してたんだよ」
「あら、いいわね」
「だろ?」
「私たちもいいわよね?」
「え?……え?」
「ほら、お祝いなら多いほうがいいじゃない?」
「え、ちょ」
俺が何かを言う前に、電話をしている2人の元へ加古ちゃんは向かった。一応2人からは許可をもらうらしい。俺は許可した覚えないんだがな〜。
「あの、やっぱりご迷惑ですか?」
「いや、そんなことはないさ。一応2人に聞かないことには……「OKだって、双葉」さいですか」
「そういえば店は決まってるの?」
「いや、祝勝会自体さっき決めたばかりだし」
「なら最近いいところ見つけたの!そこにしましょ!ちょっと電話してくるから待っててね」
俺らの祝勝会だよね?あれ?なんか乗っ取られてね?
……これもしかして俺が奢んなきゃいけない流れなのかなあ?俺らの祝勝会なんだけどなあ。
なんやかんやありつつ、加古ちゃんが決めた店に俺の運転する車で向かった。助手席には道案内に加古ちゃんが、後ろには三人が並んでいる。
「つーかこれはたから見たらどう思うんだろうな、男1女4なんて」
「そうね、きっと羨ましがられるんじゃない?両手に華どころじゃないんだもの」
「…まあ間違ってないな。でも俺は彼女が欲しい。はー、いい子いないかなー」
「あの、2人はそういう関係にはならないんですか?」
俺の呟きを聞いた黒江ちゃんがそういう。2人とは加古ちゃんのことを指しているのだろう。だけど
「「ない(わね)」」
完全にシンクロしてしまったが、実際にない。
「なんかあれだ、加古ちゃんだと恋愛感情湧かないんだよね。きっとあれかな、セレブオーラが強すぎるんだよ」
「あら、そんなことないわよ?そんなこと言ったら来馬くんはどうなるのよ」
「来馬はあれだ、仏。そんな人間にセレブオーラとかねえよ。むしろ後光がさすわ」
「フフフ、確かにそうね」
実際の加古ちゃんは前に何かの拍子に聞いたとき普通の(少なくともセレブではない)家庭の生まれというのは聞いた。それなのにあんなセレブオーラを出せるのは凄いと思う。俺も慣れるまでかなり気後れしてたし。
あと来馬、マジ仏。それしかいう事ねえよ。
「そうね、私も真田さんは無理ね。側にいるとつい弄りたくなりそう」
「……お前忘れてるかもしれないから一応言うけど、俺お前より三つ先輩よ?」
「でもボーダーでは私の方が上よ?B級隊長の真田さん?」
まさかぐうの音も出ない正論で返されるとは……
まああんまり先輩扱いされんのは好きじゃないからいいんだけどね。でもあんまりにも舐められるのも好きじゃない。
「今に見てろ、叩き潰してやる……」
「いいわ、受けて立って上げる。せいぜい土俵にしっかり上がってくることね」
途中から後ろの女子中学生3人は仲良く喋っていた。仲良き事は美しきかな。
◆◇◆◇◆
メシは加古ちゃんが見つけただけあってオシャレな店だった。完全に俺だけ浮いてたのは気のせいじゃないだろう。居心地わるいったらなかった。
あと隣に運転手、そして他はみんな未成年なのにワインを頼むのはどうかと思うんだよ。まあベロベロになる事はなかったのでいいんだけどな。
今は若い順に家まで送り、あとは加古ちゃんを送るだけだ。
「今日はありがとな、祝勝会っても俺らまだそこまで仲良くなかったしいてくれて助かったわ。もしかしてその辺理解してた?」
「んふふ〜、どうでしょ〜」
……素で感謝してるんだが、酔っ払いには意味がないみたいだ。
「あの2人はなあ、2人とも俺に命を救われたと思ってるっぽいから何処となく壁を感じるんだよな。俺は別に気にしてないのに」
「その辺は助けられた側次第よね〜。というか真田さん、少女漫画のヒーローみたいなことしてんのね」
「白馬の王子様ってやつ?」
「そうそれ!見た目はヤクザの若頭みたいなんだけどね〜」
「ははっ、違いねえ」
咥えタバコしてスーツしたら完全にそれだもんな。もう少しどうにかならんかったのかな、この顔。これのせいで初対面には怖がられるんだよな。
「でも一時期と比べたら大分顔つきが柔らかくなったわよ?前はそれこそその筋の人ってくらいに怖い顔してたし」
「あー、なんとなく分かるかも」
多分ボーダー入って1年くらい経った頃かな?あの頃はメンタル的に死んでたから、それが顔にまで出てたのかもしれん。
「まああれだ、隊は違うけど気にかけてやってくれると嬉しい。隊持つのも初めてだし、何かあってため込んでるのを見抜けないかもしれない。それに俺だと分からないこともあるだろうし、同性にしか言えないこともあるだろう」
「いいわよ。それに引き抜きを諦めたわけじゃないし」
「本人に言え。俺は出す気はないが本人が望めば俺は何も言わん」
そのまま他愛もない話をしながら、加古ちゃんを送り届けた。
そして降りる前に思い出したかのように尋ねてきた。
「今日はごちそうさま。そういえば前から気になってたんだけどこんなに後輩たちに奢っててお金は大丈夫なの?」
「ああ、問題ない。つーか女がそんなとこまでいちいち気にすんな、黙って奢られてろ」
「フフ、ならまたごはんに行きましょ。真田さんの奢りで」
「そーだな。今度は俺も酒が飲みてえ」
「真田さんはお酒が大好きだもんね」
「じゃあおやすみなさい」
「おうまたな」
そして加古ちゃんは車から降り、俺も自宅に向け車を走らせる。
いやー、それにしても食事会で改めて問題が浮き彫りになるとは。あの2人とどうやって距離を縮めるべきか。……今度忍田さんに相談してみっかな。
とりあえず、前途は多難そうだな。