B級上位に勝ったランク戦からまた何試合か戦い、未だに俺たちはB級上位にいる。ちなみに現在順位は3位だ。彩香ちゃんの練習も兼ねて俺が暴れることは控えているからか、あの時ほどの大量点が中々取れない。だが、それでも大体一位とか二位なのでここまで上がってきた。
そんな週末、久しぶりに東さんや冬島さんらに誘われ飲みに行くこととなった。
「お久しぶりです、お二人とも」
「おう、よく来たな」
「久しぶりだな、真田」
どうやら俺が最後だったらしく、二人はもう始めていた。さっきまで防衛任務だったから待っててくれてもいいのに。
というかやはりこの人たちは普通のおっさん達だな。失礼だから言わないが。
「あ、すいませんとりあえず生中一つ。あと軟骨」
「相変わらずお前はビールなんだな」
「え?なんかおかしいっすか?」
「いや、テレビとかでやってるだろ?最近のやつらはビール飲まないって」
「あー、確かにやってますね。居酒屋に飲みに来てんのにカクテルとかサワーしか頼まない奴。しかもそのクセここのは薄いとか言うんすよね」
「ホントだよ、そんなしっかりしたの飲みてえならバーに行けっつうんだ」
などといきなりおっさんっぽいグチから始まった。
確かに俺は酒は好きだが、今の大学生連中ってどういう風に飲むんだろう?俺、新歓は行ってたけど結局サークルも入ってないし、その後ボーダー一本だったからあまり知らないんだよな。え?それなのになんで知ってるかって?ネットだよ、言わせんな恥ずかしい。
そして俺のビールが来たところで改めて乾杯をした。
「そういや、この前はやられたよ真田。ウチを0封してくれるなんてな」
「やー、しょうがないっしょ。東さんに残られるとメンドクセーんすもん。あとコア寺は合流したタイミングが悪かった」
「あ、そういや聞いてるぞー?JC囲ってんだってー?」
「ちょ、!冬島さん!誤解招く言い方やめて下さいよ!」
いやほんと、間違ってないけど止めてくれ。俺が変な目で見られんじゃん!
「オペの子の経緯は噂で聞いたけど筧さんはどういう経緯で入れたんだ?」
「どういう経緯って聞かれても、ただ入れて下さい!って来て加古ちゃんが勧誘するような子だったからOKしただけっすよ」
「いや、嘘だな。お前がそんな理由でチームに入れるなら今までにチーム作ってたろ」
ぐっ、確かにそれだけじゃないんだが、これあんまり言うの良くないんだよな……
「まあいいか。信頼出来るお二人だから言いますけど他言無用ですからね?」
「まあ」「内容次第?」
この2人は普通に分別のつく大人だから問題ないだろ。漏れることもなさそうだし。
「で、彩香ちゃんですか。彼女はですね……」
そして俺は第一次侵攻の時のことや今までのことを俺主観で2人に語った。だが俺が重いと思ったのはちょいちょいカットした。彩香ちゃんの母親のことなど。
「つーわけなんすよ。そんな子がわざわざ俺ん所に入れて下さいってきて、尚且つ加古ちゃんに勧誘されるレベルなら入れてもおかしくないっしょ?」
「真田、お前漫画みたいな人間だったんだな」
「確かに。命がけで助けてくれた男と数年越しの再会、少女漫画一直線だな。式には呼べよ?」
「ねーから!しかも話飛びすぎだわ!」
はあ、やっぱりこんな反応されんのか。こりゃ誰に話しても同じ反応されそうだな。全く、めんどくさい。
「つーか俺お前のそんな話始めて聞いたぞ」
「は?当たり前じゃないすか、男の不幸自慢なんて誰が喜ぶんすか。同情してもらってもそれでどうにかなるわけじゃないじゃないですか」
これは俺が常から思っていることだ。若いやつが不幸自慢しても何も生み出せやしない、そんな暇があればそれを糧にして成長しろ、と。
すると東さんが神妙な面持ちで口を開いた。
「真田、男でも時には弱みを見せるもんだぞ?」
「東さん……?」
「モテるコツだぞ」
「ちょっとでも感動した俺がバカだったよ!」
置いてあったお手拭きを投げた俺は悪くない。
「それにしても良く生き残れたな」
「あれっすサイドエフェクト。あれのおかげですよ」
「あー、思考加速だっけ?」
「はい。それまではなんか動体視力いいのかな?ってのが精々だったんすけど、命の危機のせいか、加速度がかなり上がりました。あれなきゃモールモッドに斬り殺されてましたね」
「で、逃げ切ったと」
「いえ、瓦礫に潰されました」
「「……は!?」」
あれ?そんなに驚くことか?生身じゃ普通逃げ切れるわけないじゃん。
いや、まあ確かに衝撃か、瓦礫に潰されたとか。
「いやー、モールモッドの攻撃はギリギリ回避できたんすけど逃げ切れそーになくて。で、バンダーの砲撃かなんかが近くのビルに直撃、瓦礫の雨ですよ」
「ちょ、いや…えー?」
「お前人間辞めたのか……」
「あの時は無我夢中でしたね。上から降ってくる瓦礫を最小限の動きで避けて即死を避けて、気付いたら病院でした。
あ、すいませーん!生中おかわりー!」
いやー、あれはマジで死ぬかと思った。あれは前門の虎、後門の狼を地でいってたな。むしろ背水の陣で前門の戦車、上空から落石が現実なんだが。いやー、我ながらよく生きてた。
「お前、よくそんな体験してボーダー入ったな……」
「いやー、なんかトリオン能力が高いとかでスカウトされまして、あとはノリ?そりゃ才能あるってんならやりますよ」
「いや、そうじゃなくてトラウマとかなかったのか?」
「え?別に怖がる要素ないじゃないですか。あの時倒せなかったのは武器がなかっただけですし」
俺が疑問を呈すると、2人は頭を抱えていた。別に変なこと言ったつもりはないんだがなあ。
「つーかあんなつまんねーことはどうでもいいんすよ。彩香ちゃん入れた理由はわかりましたか?」
「いや、分かったが……」
「ちょっと衝撃的すぎだな」
まあ侵攻の時に助けて以来ってのはスゲーよな確かに。これに過程も合わせればワンクールのドラマが余裕で作れそう。根付さんにこの話持ってったらメディアでなんかしそうだな。本で出したら帯には感動の実話!とか書かれそう。どんだけ売れるだろうか。まあ売らないけど。
「つーかそれ関連で聞きたいことがあるんすよ。年下の女の子と上手く付き合うにはどうすればいいんすか?」
「真田……」
「いくら彼女が出来ないからって手を出すのはどうかと思うぞ」
「ちげーよ!つーかあんたらわかっててやってるだろ!」
そして爆笑するおっさん2人。全く、弄るのは勘弁してほしいぜ。
「そうじゃなくてさー、さっき言わなかったけどオペの沙霧ちゃんなんだけどこっちの関係は簡単に言えば迅と駿の関係に近いんすよ。そんでその2人とさー、なんか距離感じんすよ。なんつーの?仲間って感じじゃなくて尊敬、とは違うけどなんか壁みたいなもん感じんの。どうすればいいんすかね?2人とも年下のオペいるからアドバイス欲しいんすけど」
その俺の質問に対する答えは対象的だった。
「俺を引っ張ってきたのが真木だぞ?壁意なんてもんはない」
「時間が解決してくれるんじゃないか?」
そして役に立たないものだった。
「全く頼りにならねー、こんなんなら沢村さんとかに聞きゃーよかった……」
「悪かったな、頼りにならないおっさんで」
「第一そんな経験ある奴自体珍しいからな?」
……確かにそうだな、まあ俺は俺らしくしてりゃあいいのかな?
「それよりも前から聞きたかったんだがよ……」
そして夜は更けていく。
帰ったのは朝日が昇ってからだったという事だけは覚えている。だが何を言ったかは覚えていない。