ワールドトリガー 全てはこの手で   作:ジュナス

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一話

「……て、…きて!」

 

何やら体をゆすられるような感覚がして意識が浮上する。

誰かが起こしてくれてるのだろう。

 

「ふぁ〜、おはよ」

「はい、おはようございます」

 

俺が挨拶をすると女の子の声が返って来る。

……ん?俺どこで寝てたっけ?

そして声がした方を見るが、そこには少し困った顔の栞ちゃんがいた。こいつ今玉狛支部にいんじゃなかったっけ?

……あ、思い出した!昨日林藤さんと飲んでたんだ!

 

「いやーゴメンゴメン。林藤さん連れてきたはいいけど帰んのめんどくさくなってソファ借りてたわ」

 

ゴメンゴメンと手を合わせて謝るとしょうがないなあと言った感じの顔をしている。

いやー申し訳ない。

 

「これから朝ごはん作るんですけど真哉さんも食べてきますか?」

「え?作ってくれんの?いいの!?」

「いいですよ。どうせ一人前も二人前もあまり手間は変わりませんし」

「ありがとー!やっぱり栞ちゃんはいい嫁さんになれるよー」

 

はいはいと適当に流されてしまったが、一応本気で言ってるんだが。俺もこういう彼女が欲しいもんだ。こんな風に朝起こしてくれてご飯も作ってくれる人。

今の職場は出会いがないからなー。あっても最近新しく入ってくるのは大分年下の子ただしな。いっそ高校生まで守備範囲に入れるか?いやでもそれだと犯罪っぽくね?でも選択肢が……合コンしてーなー…

 

「真哉さんどうしたんですか?うんうん唸って」

「いや、俺の灰色生活をどうやって脱出するかでちょっと…というかもう出来たの?ゴメンね何も手伝わなくて」

「いいですよー、本当に簡単なものですし」

 

そう言うが出てきたのは目玉焼きとベーコン、梅干しと白米、そして味噌汁とサラダ。なんかスゲーしっかりとしたのが出てきた。やっべ、うまそう。

 

「じゃあ冷めないうちに食べましょうか」

「おう。じゃあいただきます」

 

食べてる間は他愛のない会話をしながら食べる。というかやっぱり美味いな。ベーコンはちゃんとカリカリに焼けてて焦げもないし、目玉焼きも俺の好きな半熟な感じ。味噌汁も塩分控えめな感じ。うん、美味い。

 

「ごちそうさまでした。いやー、美味かった」

「そう言ってくれると作った甲斐がありますよ」

「やっぱり栞ちゃん、いい嫁さんになれるよ。むしろ結婚して欲しいね」

「なに朝っぱらから口説いてんのよ!」

「グヘッ!?」

 

割と俺が本気で言ってると背後から頭をどつかれた。この声は……

 

「いきなり痛いじゃないか小南ー」

 

予想通り、この支部所属の小南桐絵だった。

 

「痛くしてんのよ。ていうかあんたいつからそんなナンパヤローになったのよ」

「いやー、最近の出会いのない灰色生活に嫌気がさして。実際栞ちゃんって家事スキル高くね?」

「確かに栞はそういうの上手いけど、あんたが高校生と付き合ってると犯罪にしか見えないわよ」

「なに!?それは俺が老け顔だと申すか!よろしい、叩き潰してやる!」

「いやよ、なんでそんな朝っぱらから。というか老け顔なのは事実じゃない」

 

小南の指摘通り、俺は老け顔だ。自覚もある。大学生の頃、友達には老け顔だし雰囲気がヤクザみたいと言われたこともある。確かに顔と合わせて190cmちょっとの身長とゴツイ体格してればしょうがないかもしれない。だけど年下の女の子に面と向かって言われんのは流石に凹む……

 

「じゃあどうすんだよー!ボーダーじゃ出会いなんかねーし、合コンの機会なんかねーんだぞ!」

「ナンパしてくればいいじゃない」

「いや、俺そういうの好きじゃないし」

 

こんな風にふざけた話ができるのも、この二人とは結構付き合いが長いからだ。小南とは俺がボーダーに入って以来だし、栞ちゃんともよく覚えてないが年単位の付き合いがある。

俺は結構人見知りなのだ。

 

「そういやあんたそこそこファンレターもらってたわね?その子たちの誰かと付き合えばいいじゃない」

「は?ヤダよ。その子たち俺のボーダーとしてのいいとこしか見てないじゃん。俺の普段の姿見て理想と違うっていってすぐ別れるだろ」

「あら、女の子なら誰でもいいってわけじゃないのね」

「当たり前だろ、俺をなんだと思ってるんだよお前」

 

こいつも言ってたが、俺はちょっと人気があるみたい。俺は結構派手に戦うのでたまーに市民に戦闘を見られることがある。その人たちから見た俺は頼りになるだとか、ワイルドでカッコイイだとかファンレターに書かれていた。それを読んだ後の任務は自分でも動きがいいと思う。我ながらちょろい。

因みに市民が俺の名前が分かる理由としては、ボーダーのサイトに名前が掲載されているためだ。あと正隊員はみんな広報サイトに名前が載るらしい。わざわざ俺は見ないので知らないが。

 

「そういえばこんな朝っぱらからのんびりしてるけど今何時よ?二人とも学校は?」

「真哉さん、今日は土曜日ですよ?あと今は8時です」

「あー、学校卒業してから曜日感覚が…そりゃ学校ねえわな。あれ?なんか予定あった気が……」

 

スマホのスケジュールを確認すると、『10時に本部』とあった。

ん?なんだっけ?……まあいいや、どうせ着いたら思い出すだろ。

 

「すまん二人とも、今日用事あったの忘れてた。一回家帰んなきゃいけないからもう行くよ。栞ちゃん、朝ごはんご馳走さま。今度何か埋め合わせするよ」

「そんなこと気にしなくていいですよー」

「栞、あんなやつに遠慮する必要なんかないわよ」

 

…小南が冷たい。いつからこんな毒舌で冷たい子になったんだろ。あれ、最初からあまり変わってないかも。いや、でも昔はツンツンな感じだけど今は冷たい感じがするよな、やっぱ。ま、いっか。

 

「じゃまたなー。林藤さんによろしく言っといてなー」

 

そう言って玉狛支部を後にした。

それにしても予定ってなんだっけ?メール漁れば出てくっかな?

スマホを弄りながら帰宅の途についた。

 

 

 

「で、忍田本部長。なんですか?俺に頼みたい事って」

 

あの後、原因のメールを発見したがそれは忍田本部長からのものだった。それも内容は詳しく書いてなくて頼みたいことがある、とだけ。面倒な匂いがプンプンするぜ……

 

「真田、お前はこの春に大学を卒業したな?」

「はい。就活も面倒なんでボーダーに就職ってことになってるはずっすよ?」

 

これこの人も知ってるはずだよな?ただの確認か?

 

「勉強はできる方だったよな?」

「ええ、まあ。自分で言うのもなんですけど出来る方だと」

 

ていうかなんで太刀川正座させられてんの?もしかしてまたやらかしたんか?つうか噂で聞いたあれは本当なのか?

 

「こいつの勉強を見てあげられないだろうか。こいつまた単位落としてたんだ」

「……」

 

ようはこれはあれか?成績の悪い太刀川に家庭教師してやってくれってことか?ていうか太刀川、テメエの事なんだからヘラヘラしてんじゃねぇよ。なんで本部長にこんな手間かけさせてんだよ。

 

「お前確か今年で二十歳だよな。つうことは二年だろ?今なん単位中なん単位取れてんだ?」

「128中26」

「は?通年でなん単位履修出来んの?」

「44」

「……」

 

流石にまだ余裕はあるだろ。いやでもこっからズルズルと落としまくったのが友達にいたぞ?こいつもそうなりかねん。

ていうかこいつそこまでバカだったっけ?戦闘の時の頭のキレは中々だと思ってたんだけど…もしかして興味ないことには身が入らないのか?

 

「お前ちゃんと講義は出てんだろ?いや、でもその割りにランク戦出まくってたなお前」

「もしかして慶、お前……」

 

俺たち二人の視線に太刀川は顔を背けた。

 

「忍田本部長、これ俺が教える以前の問題です。大学にしっかり行かせて授業受けさせて下さい。それでも無理なら協力も考えます」

「……すまない」

「いえ。それでは」

 

そう言って忍田さんの部屋から退出する。

というか太刀川は噂通り勉強出来ないんだな。というかあれは出来ないというよりやる気がない感じだな。やる気がないのは一番厄介だ。なんであいつ大学なんか入ったんだ?いまはA級隊員で給料も固定給もらってんのに。わざわざ大学に進学する必要ないんだけどな。まあいいか。

 

そのままぶらぶら歩いてるとランク戦のモニタールームに着いた。暇だし見てくか。

 

中はそこそこに人がいたし、チラホラとA級もいる。

あ、あれ荒船じゃん。

 

「よー荒船。なんかスナイパーに転向したんだって?」

「あれ、真田さん。珍しいですね、ランク戦見に来るなんて」

「おう。忍田本部長に呼ばれててな、太刀川の野郎の件で。あいつまた単位落としたってよ、それも授業サボって。多分今頃説教受けてんだろ」

「あー、それは…お疲れ様でした?」

「まあそんなわけで本部に来て暇だったからここ覗きに来たってわけ」

 

あ、自分で話逸らしちった。もう軽い感じで聞くのは面倒だし流すか。聞かれたくないことかもしれんし。

 

「このあとどこがやんの?」

「那須隊と諏訪隊と来馬隊です」

「お、玲ちゃん出てんだ。そりゃ来た甲斐があった」

「真田さんが下の名前で呼ぶのって珍しいですね。何かあったんですか?」

「ああ、ちょっとした師弟関係?的な」

「え?那須って真田さんの弟子なんですか?」

「あー違う、逆だよ逆。玲ちゃんってバイパーの使い方上手いじゃん?だからどうやってんのか教えてもらったんだよ」

 

玲ちゃんに教えて貰うまでは俺はバイパーの使い方はサイドエフェクトによる強引なものだった。簡単に言えば確率の問題で、俺が力技で場合わけして解いて行くのに対して玲ちゃんは公式をつかってスマートに解く感じ。それでも同じか俺の方が早く、正確に出来る時点で俺のサイドエフェクトのチートぶりが分かる。まあ基礎のレベルが最低限あったから出来ることだが。

 

「…俺からしたら真田さんの方が上手いと思うんですけど」

「あれ?お前もしかして俺のサイドエフェクト知らない?」

「真田さんも?それは知らなかったですね」

「も?まあいいや。俺のは思考加速っつって考えるスピードが速くなること。これがなきゃ俺トリオン任せの中途半端なB級隊員だったぞ」

「スゴイ便利そうですね」

「おう。お、もう始まるな」

「ですね」

 

そしてランク戦が始まった。

 

 




ちなみに設定としては四月です
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