翌日、迅が宣言通り原因を発見してきた。
どうやら俺の推測通り、未確認の小型のネイバーだった。細かい性能は知らされていないから知らないけど。
しかもこいつ、市内に数千体も潜伏していた。それを駆除するために、C級隊員までをも動員した大規模な作戦が展開された。迅の指揮のもと。
そして昼夜を通して行われたこの作戦で数千体のラッドは無事駆除された。
だが問題はこいつらを送り込んできたのが全部同じ国なのか、それとも違う国か分からないところだ。調べてもらえば分かるかもしれないが、もし同じ国なら侵攻への下調べに思えてならない。特に今回の作戦により最大動員数がばれたのはどう転ぶか分からない。相手が諦めるか、それとも強大な戦力を万全な態勢でもって攻め込んでくるのか。
今できることは改めて鍛えあげることくらいだな。トップチームがいないけど二宮とかとランク戦しよう。気は抜けないな。
そして数日後、再び会議室に呼びたされた。
「失礼します。真田真哉、到着しました」
入ると、そこにはいつもの城戸派と林藤さん、忍田さんがいた。
タイミング的に空閑のことでなにか進展でもあったのか?
「真田、申し開きはあるか」
あら?城戸さんもう激おこ?こりゃ秘匿してたのバレてんな。
忍田さんたちの方を見るが首を振る。こりゃバレたか。まあいいや。
「司令が何のことを言っているのか、理解しかねますが」
「惚ける気か!貴様がネイバーのことを秘匿していたことは分かっているんだぞ!」
「ははは、鬼怒田さん。なにを言ってるんですか?なにをあなたたちに報告する必要がある」
「な、なにを……!」
「なにが言いたいのかね」
「あなたに報告したところであなたはどんな指示を下す?どうせ排除するだけだろ」
「それのどこが問題あるというのだ」
「わかんないっすかね?唐沢さん、あんたならわかるだろ?」
「ふむ、こちら側に引き込めるかもしれない、ということだろう?だからどちらか片方ではなく、両名に極秘裏に報告した、と。どちらかが暴走した場合、最悪どちらかが抑えられるように」
「その通りです。あと相手が黒トリガー持ちだったってのもある。より慎重になるべき案件だ」
俺がそう言うと、城戸派の唐沢さん以外が苦虫を噛み潰した顔をする。こりゃなにかしてんな?
「まさかもう刺客を差し向けたんですか?そういやこの前の会議、三輪もいましたね。そん時から三雲を張ってたんですか?で、俺が呼び出されたってことはすでに撃退された、と」
「真田くん、きみは彼を味方に出来ると思うかい?」
「襲撃をしてしまったのならなら普通無理でしょう。俺ならやられたら倍返しにしますがボーダー本部には見たとこ被害はない。きっと三雲くんの立場を考えたんでしょうね。こう考えると三雲くんごとならこっちに引き込めないことはない、ってレベルですかね。まあ本部ではムリなんで玉狛支部とかに頼むのがベターなんじゃないっすかね。もちろん派閥などの説明をしてやる必要があると思いますが」
そう言って林藤さんに視線を送るが、まあ余裕そうな顔をしてらっしゃる。忍田さんも腕を組んで動かない。納得しているのだろう。
「それでも、ネイバーの報告を怠るのはどういうことかね!?」
「彼、ネイバーなんですか?向こうの世界から来ても彼の親はこっちの世界の人と聞きます。さて質問です。向こうで生まれたこっちの人間の子供はなんと呼ばれる?」
「そ、それは…!」
「俺、別にどうでもいいんですけどネイバーって戸籍ですかね?それとも人種を指す?で、俺的に判断出来なくてグレーゾーンです。あれ?ネイバーじゃないし問題も起こしてないぞ?ほら、報告する必要なんかない」
「屁理屈を…!」
なに言ってんだ、大人の世界は屁理屈とか大義名分が重要だろう。根付さんと唐沢さんはわかるだろうけど?組織の幹部なら大局的にものを見て欲しいね。損して得取れっての。あと、人には汚いことするけど自分はやられるのが嫌だって?舐めたこと言っちゃダメだよ、大人だろ?
「真田、貴様に一ヶ月の減給とポイントの没収を命ずる」
「な、司令!?」
「ただし、次はないものと思え」
「んー、まあいいっすよ。あと隊じゃなくて俺だけっすよね?うちの隊、関係ないんですけど」
「そうだ」
「りょーかいです。じゃあ失礼します」
言うだけ言って会議室から退室する。
まだあそこにいると、最悪狭霧ちゃんたちにも被害が及びかねなかったと思う。実際狭霧ちゃんもこのこと知ってたんだし。
というか減給一ヶ月って結構緩いよね。前のイレギュラーゲートの戦功でボーナスあったしあんまり問題なさそうだな。あと警告食らったけど実際似たようなことがあってもどうせ同じことするし。一応世間に顔が売れている俺がクビになったら市民はボーダーを不審に思うだろう。それほど、自惚れではないが有名なのだ俺は。
「真田!」
「忍田さん、どうしたんですか?」
「すまなかった。我々のせいで情報が漏れて迷惑をかけた」
「あー気にしなくていいっすよ。もし何かしたいというなら今度奢ってくれれば」
「……本当にすまなかった」
謝る忍田さんを適当に言いくるめて別れる。
というか別に端からあなた方にそこまで期待してなかったし、どうでもいい。しかも今回の俺のマイナスは減給一ヶ月だけ、別に一ヶ月分くらい防衛任務やってりゃ穴埋めは出来る。
というかこの後の展開だな。城戸派はボーダー内の勢力を気にしていたし、多分空閑の黒トリガーを強奪にかかるだろう。そうしないと勢力図が玉狛に傾くため、絶対に城戸さんは許さない。で、どうやってかだが、三輪隊がやられたことを考えるとB級合同でかかるとは考えにくい。多分A級で、多くて5チームくらいであたると思う。でも今A級のトップチームは遠征中だったはず。まあ予定ではそろそろ帰ってくるから、俺ならそれを待って攻勢をかける。あと、市民に見られるとマズイから多分警戒区域内でやるだろう。
いや、よく考えたら俺別にどっちに転がってもいいや。どうせどっちともそこまで仲良くねえし。とりあえず城戸さんたちからは拒否るが、迅から頼まれたら貸し2、3くらいで受けてやろう。忍田さんからは恐らくさっきの件もあって頼みにくいから頼まれることはないはずだ。
方針は決まった。
とりあえずストレス発散にランク戦だな。そうと決まればとっとと行くか。
◆◇◆◇◆
あれから数日後、気付いたら本部に遠征組が帰ってきていた。というかいつ帰ってきてたよ?これ、黒トリガー強奪諦めてんのか?しかも噂では迅が風刃を手放したって言ってたし。どうなってんだろ。
すると本部でたまたま会った出水にランク戦を挑まれた。
結果は五本勝負で4対1で俺の勝ち越し。最近二宮と頻繁にやってたのでシューター対策は万全だった。それでも一本取られてしまったのは流石出水と言ったところか。
そしてランク戦後に例のことを聞いてみた。
「ああ、その件ですか。というかなんで知ってんすか?」
「まあ色々とな。で、どうなの?迅が風刃手放したって噂もあるし」
「そうですね。城戸さんからの命令で玉狛に向かったんですが、迅さんと嵐山隊の妨害にあい失敗。で、そのあと迅さんが黒トリガーを手放して手打ちって感じです」
んー、迅にしては戦闘ってのがワンクッション邪魔な気がする。むしろそれが必要なことだと仮定するなら、風刃の価値を見せ付けるってとこか。
ま、いいか。とりあえずは片付いたんだろう。それにしても嵐山隊が出たってのは忍田さん派と手を組んでたんだな。で、俺んとこに話が来なかったことを考えると、最悪大きなペナルティがくる恐れがあったからだろう。なにせ直前に警告を受けていたからな、俺。
「ていうかあの時、おれら真田さんが潜んでるかもしれないって警戒してたんすよ?それなのにいなかったって言われて……」
「しょうがねえだろ、俺その前にペナルティくらってたんだから。さすがにヤバくなりそうだから忍田さんも遠慮したんだろ」
「ん〜…でも真田さんならやりかねないってのがなー。城戸さんも警戒しろって言ってたし」
「まあ疑心暗鬼にして警戒心を引き上げさせてたのなら、戦略としてはありだな」
「クッソームカつく!もう一戦しましょ!」
「しょうがねーな」
やっぱり城戸さんからはめっちゃ警戒されてんな。獅子身中の虫ってやつかね?でも派閥の方針には従わないだけでボーダーとしては貢献してるからねえ、なかなか処罰出来ないだろ。俺が入った時に処分しとくべきだったな。
「ていうか真田さん、またいやらしい戦い方増やすのやめて下さいよ!いちいちムカつくんすけど!」
「はっはっは。手持ちの札でいかに頑張れるかが大人なのだよ」
とりあえず新しい戦術でボコボコにした。胸のつかえも取れてストレスも解消してスッキリしだぜ。
「めっちゃストレスたまるー!ヤリ馬鹿で発散してやる!」
「がんばー」
そう言って出水を見送る。
楽しそうで何よりだ、弾バカよ。
今日で投稿初めて丸一週間
そしてプロローグ合わせて二十話目
なんかあっという間ですね
あと日間ランキングにも載ってました
これも皆さんのおかげです。ありがとうございます