ワールドトリガー 全てはこの手で   作:ジュナス

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二十三話

角つきの方にはアステロイドを牽制するように大量に放ち、俺自身は老人の方に斬りかかる。

だが射撃はさっきのように乱反射されいくつかはこちらに戻ってくる。しかも老人には当たらないような射線で。そして尚且つ黒いものでの射撃もしてくる。

俺はそれを立ち回りや老人を盾にするようにして回避し一発も掠らずに避けきる。対する老人は俺の弧月の斬撃を手にもつ杖のようなもので凌ぐ。数合の斬り合いで分かったが、腕前はおそらく超一級。剣術では勝てないだろう。だが不可解なことにこちらに反撃をする気配がない。

 

一旦仕切り直しするために距離を取る。すると相手も視線は逸らさずに相談を始める。

 

「いやはや、玄界(ミデン)の進歩は凄まじい。これほどの戦士が出てくるとは」

「その戦士もてめえらが来なきゃ一般市民だったんだがな」

 

言いながらも油断なく敵を見据える。特にあの老人は脅威だ。角つきはトリガーの性能を向上させる性能があるらしいがあの老人にはそれがない。だが腕前だけは確実に忍田さんをも超えている。斬り合いではこちらが不利で、さらにトリガーの性能も分かっていない。

それに対しあの角つきは黒い小さなものを操り、防御から射撃まで幅広い用途がある。おそらくもっと攻撃的なものも使えるだろう。

この二人が連携を考えたペアなら老人が前衛の方がいいはずだが、どうも連携を行ってくる感じではない。

 

「このまま足止めされるのもマズイですね。ヒュース殿、雛鳥たちを追ってください」

「しかし…!」

「私では捕獲に向いていません。その点ヒュース殿のトリガーなら大丈夫でしょう」

「……分かりました」

「目の前でそんな会話されて逃がさないとでも?」

「もちろん。ここからは私も本気でいきましょう。星の杖(オルガノン)

 

その言葉と共に老人のトリガーが発動する。それと同時に思考加速を最大にする。

だがその状態でもわずかに視認できない速さで何かか迫る。

 

「グゥ!?」

「……!ほう、素晴らしい」

 

「何が素晴らしいだクソが……(沙霧、解析出来るか?)」

『(すみません。反応は確認できましたがそれ以上は……ですがそれはおそらく黒トリガーです)』

 

おいおい、超一級の使い手に黒トリガーかよ。鬼に金棒どころじゃねえぞ。

 

「謙遜なさらずともいいのですよ。オルガノンを初見で凌いだものはいませんでしたので」

『オルガノン……!それはアフトクラトルの国宝の一つだ!』

 

ん?小さいレプリカ?まあいい。情報は助かる。これで相手が黒トリガー使いであることは確定か。ホントやべえな。

 

 

 

「それに凌ぐだけでなく反撃までしてきた相手は初めてですよ」

 

 

そう、俺は相手の正体不明の攻撃を避けるだけでなく、安全圏であろう角つきのすぐ背後にテレポーターを使って回避。そのまま斬りつけて離脱したのだ。

本来なら一撃で仕留めたかったところだが、ギリギリで避けられ左腕の二の腕から先を斬り落とすのが精一杯だった。追撃も考えたが黒いのがあるため断念。流石に精鋭、不意打ちとはいえ一撃とはいかなかった。

 

取りあえず相手の攻撃は超スピードの何か。周りを見るに斬撃だろう。それだけしかわからないが何もわからないよりはマシと考えよう。

 

「そうかい、なら初見で初の黒星付けてやるよ。いくぞオラァ!」

 

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 

 

「烏丸先輩!真田さんを一人にしていいんですか!?相手は二人ですよ!?」

 

そう声を上げるのは玉狛所属の三雲修。彼はA級の隊長であるという事しか真田のことを知らないので心配も大きい。

 

「分かってる。だが真田さんに任されたんだ、俺たちはC級隊員を守るぞ」

「それにあんた気付いてないの?」

 

その小南の指摘に、三雲はようやく気付いたのか周りを見渡す。が、目的の人物がいない。

 

「レ、レイジさんは?」

「レイジさんならあっちに残ってるわよ」

 

その一言で三雲は思い出す。レイジがなんと呼ばれているのかを、そしてチームメイトの何の師匠なのかを。

 

「それに多分あの人かなり強いぞ」

「遊真、あんた分かるの?」

「少しは。たぶんこなみ先輩より強いよね?」

 

その言葉に小南は機嫌が悪そうに顔をそらした。だがそれは肯定しているも等しいことだった。

 

「で、でも強いかどうかじゃ」

「あいつはね」

 

三雲が言いかけた言葉に被せるように小南は言う。

 

「あいつは誰より市民を守ることを考えていたわ。前に聞いたの、なんでパーフェクトオールラウンダーなんか目指してるんだって」

「え……」

「いつ何時、どんな状況で何があろうと市民を守る為に多くの手段を持ちたいって。それだけじゃない、最近になってやっとチームを作ったけどそれ以前は、あいつはチームに誘われようが一人でひたすらに力を磨き上げたわ。だけどそれは個人技だけじゃない、連携だって同じよ。それに即席の連携を組むことは、あいつのサイドエフェクトなら簡単なのよ。

……だけどネイバーを目の前にしたときの雰囲気は今まで感じたこともないものだった」

 

そういい、小南は少し身震いをする。ボーダー屈指の実力者である小南でも驚くほどのものを真田は発したのだ。

 

「それは俺も思った。あれは死に物狂いでかかってくる相手と同じようなものだったよ」

「……そういえばあんた向こうで戦争経験してたんだっけ」

「それと何の関係が……」

 

そこで小南は一旦区切った。これを話していいかどうかを考えたのだ。だけどすぐに決める。どうせ自分が言った程度であいつは怒らないだろう、と。

 

「……最近聞いた噂だけどね、あいつは第一次侵攻の時、生身でトリオン兵から逃げ切ったそうよ。それも見ず知らずの子供を抱いて。それを聞いたときに思ったわ。なんでそんなことを経験した人間がすぐにボーダーに入ってきたんだって」

 

それは三雲には想像できないことだった。自分も生身でトリオン兵に襲われたことはある。その時はすぐに助けが来たからよかったが、あの人は自分ひとりだけでなく子供も連れて逃げおおせたという。

それに第一次侵攻の様子は聞いている。中心地では建造物は壊され、人は殺されるか攫われるかしたのだ。そんなことを直接目にした人間がすぐにボーダーに入る?……自分にそんなことが出来るだろうか?

 

「あいつは、多分だけど後悔の念から市民を助けることを第一に考えてきたんだと思う。だけど今回でわかった。あいつは三輪と同じかそれ以上に腹の底にネイバーへの敵意を燃やしていた」

「……でも俺の時は何もなかったぞ?むしろ友好的でさえあった」

 

空閑のいう事ももっともだ。しかし

 

「でもあんた、市民に被害出すどころかトリオン兵を倒したじゃない。だけど今回は違う。相手は明確にこっちの世界に侵攻してきてる。しかも第一次侵攻を彷彿とさせる物量で」

 

それは最初期からボーダー隊員であった小南だから分かることだ。物量だけで言えばあの時を超えているということも分かっている。

 

「多分本人でも気付いてなかったでしょう。でもこれだけは言えるわ。

ホンキのあいつにはあたしたちでも足手まといになりかねない」

 

その言葉に三雲は戦慄する。玉狛第一は最精鋭のA級部隊、そのメンバーでも足手まといになりかねない実力とは一体……

 

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 

 

そして真田とネイバー二人が戦っているところから離れた建物の上に、レイジとレプリカの分裂した小型のものが共にいた。

 

『それにしても凄まじいものだな。黒トリガーのオルガノンを相手に凌ぐどころか反撃まで加えるなんて』

「レプリカ、そのオルガノンは解析出来そうか?」

『どういうトリガーかはおそらく分かった。あれはトリガーを中心とした円周軌道上をブレードでもって切り裂くものだろう。その軌道が何本あるのか、ブレードは軌道上に何本あるのか、威力や耐久力といったものは分からないが』

「そうか。角つきの方はどうだ?向こうには黒いものをああいう風に細かく制御できるエネルギーはあるのか?」

『すまないが私のデータにはそれらしきものはない』

 

その会話の合間にも真田たちの戦闘は激化していく。

老人の斬撃を、どうやってか見切りグラスホッパーの跳躍で躱し、その隙を突くように射撃してくる角つきにはアステロイドで反撃を入れる。

その際のトリオンキューブの大きさはレイジでも見たことのない大きさのものだった。

 

「……あの人はいつも手加減していたのか?」

 

レイジがそう思うのも無理はない。普段の真田が射撃に使う際のトリオンキューブの大きさは二宮や出水よりも小さいものだったが、現在のそれは彼らの一回り以上は余裕にあるサイズなのだ。そう捉えてもおかしくない。

 

『だがいくら善戦していようと不利なことには変わりないぞ?』

「わかっている。だが俺ではあの戦いに入ってもうまく連携できない。隙が出来るまでここで待機だ」

 

そういってレイジは狙撃体制で戦場を見つめる。

 

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 

 

「いやはや、弱りましたねえ。まさか一人相手に足止めされてしまうなんて。雛鳥に逃げられてしまう」

 

老人がそうぼやくのも無理はないだろう。

なにせ何度も反撃の難しい態勢に崩して角つきを離脱させようとしても、どんな態勢からでも牽制の射撃が飛び離脱どころではないのだ。

それでも強引に離脱しようとしたところをバイパーによって少なくないダメージを負わせることに成功している。二度目は体の全体を覆うようにしてガードしながら離脱しようとしたが、その時にはギムレットでガードの上から片足を持っていったのだ。その際に老人が俺の左腕を斬り落とすことに成功するも、どちらがダメージが多いかは明らかだ。

さらに二人は切り札であるテレポーターの仕組みや欠点も分かっていないので中々に厳しいだろう。おそらくこれが決め手になる。

 

 

対して俺の方も苦しいことには変わりない。

サイドエフェクトを駆使して戦っているが、普段はその間にも情報のやり取りが出来ていたのだが、今回はそんな余裕が一切ない。なので周りの戦況が分からないのがプレッシャーとなっている。

そして全神経を戦いに向けているにも関わらず左腕は斬り落とされ、体にはあちこちにかすり傷が出来ており、少なくないトリオンが漏れてしまっている。対して与えた損害は角つきは左腕一本、右足、他体に数か所とかなりのダメージを与えた、倒しきるまでもう少しだろう。だが老人には目立った外傷を与えられていない。技量で負けている上、相手の継戦能力が分からないことは痛いな。

 

「そういう割に嬉しそうな顔してんのはどうしてだ?」

「おや、そうでしたかな?」

 

とぼけた顔しやがって、まだまだ余裕ですってか?

対して角つきは苦い顔してるし、もしかして角つきは任務最優先、老人の方は戦い大好きってか?

強くて戦いが好きとか絶対経験ヤベーだろ。それに黒トリガー持ちとか、もしかしてこいつがこの部隊で最強か?それなら俺が相打ちになるのも問題はないな。だけど相打ち覚悟で倒せるのか……

 

『(サナダ、近くにはレイジが控えているぞ)』

 

と、忘れたころにレプリカがありがたい報告をくれた。

 

そうか、あいつがいるのか。戦闘に参加してこないってことはおそらくスナイパーとしてスタンバイしてるんだろう。それなら好都合、相打ち覚悟の攻撃も失敗してもあいつが仕留められるだろう。

 

 

……覚悟は決まった。

 

「楽しそうなとこワリイが、こっちにもやんなきゃいけねえことが控えてんだ、そろそろ幕引きと行こうじゃねえか」

「私たちも雛鳥の確保をしなくてはならないので願ったり叶ったりですよ」

 

言うや否や、閃光のごとき斬撃が迫る。

だがもうそれも慣れた。グラスホッパーで避けつつ急接近する。

 

「鋭い……(しかしそれは何度も見ました)」

 

迎撃するように再び斬撃が迫るのが分かる。ここが勝負所だ……

 

「グラスホッパー」

 

この戦闘で初めてグラスホッパーを複数同時に発動させ、回避しながらさらに接近する。

相手も想定できていなかったのか迎撃は追いつかず最後の一閃も越える。

 

「終わりだ!」

 

 

「ええ、残念です」

 

しかし最後の一閃と思っていたものよりも内側にもう一つあったブレードに両足が持っていかれた。これではグラスホッパーを踏んでの回避が間に合わない。そして相手はもう剣を振る動作を開始しているのが見えた。

流石に歴戦の勇士、備えも万全だったか……

 

 

 

「だけどそれくらい読めてんだよ」

 

寸前でテレポーターを発動、相手の目の前から真上に転移し、即座にギムレットを合成。

 

「こちらも読んでいる」

 

だが角つきが射撃体勢に入り俺を撃とうとしているのが目に入った。

 

 

だが残念、別に俺は一人と言ったことはないぞ?

 

つぎの瞬間、どこからか飛んできたきた弾丸が角つきの頭を撃ち抜く。

そしてこちらも合成完了、老人の驚愕の表情が目に映る。

 

「ハッ、ようやく驚きやがったか」

 

その瞬間ギムレットが老人を撃ち抜いた。

 

 

 




作中の小南の、「生身でトリオン兵から逃げ切った」というのは噂なので情報が変質しています
実際は瓦礫に生き埋めにされたおかげでなんとか助かっただけです

あの辺結構強引な感じに思えるでしょうが俺自身も何回か書き直したんですがあれが限界です。申し訳ない
あとあの辺、烏丸にも喋らせようかと思ったんですけど烏丸のボーダー歴がよくわからないので無言です。ちゃんとトリオン兵は倒してますよ?
あと小南はあんなに饒舌じゃないとかあんな頭よくなくね?とか思う人もいるでしょうが、その辺は俺は騙されやすいだけで頭がいいと認識しています。現に頭いいグループにいますし

ではまた
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