その後も彩香ちゃんと少し話をし、現在はソファにバラバラに座っている。
「で、筧さん、なにがあったの?この人とどうやって出会ったの?」
などとグイグイ聞いているが、もしかしてただナンパ関連から救ってもらったのかと思っているのか?
彩香ちゃんも困った顔でこちらを見るが俺は肩をすくめるだけだ。話すか話さないかは彩香ちゃんに一任している。
「えっと、真田さんには大規模侵攻の時に助けていただきまして……」
あ、固まった。すると加古ちゃんは目で訴えてくる。おそらく本当なのか、と聞きたいのだろう。事実なので頷くしかない。
「え、でも真田さんって本部が出来てから入隊したんじゃ……」
「そうだよ。俺は当時一般人であれに遭遇した。当時子供だった彩香ちゃんが逃げ遅れてたから抱えて逃げたんだよ」
あまりにも想像できないことだったのか、俺に話を振ってるくるので正直に話す。
一応母親のことは俺が勝手に話していいことではないので言わない。
まあこれでも間違いではないので問題ないだろ。
「え?一般人で?真田さんって何者…?」
「まあ途中で瓦礫に生き埋めにされたけどな」
「えぇ!?だ、大丈夫なんですか!?」
「いや、大丈夫だったから今ここにいるんだけどね」
俺がそう言うと、沙霧ちゃんは恥ずかしそうに、そうでしたと言って俯いてしまった。
だけど心配してくれるのは嬉しいよ、とフォローを入れておく。
「そんなことが、ね。そうだ、本題に入りましょう。筧さん、あなた私の隊に入らない?」
「そういや勧誘してたって言ってたな。A級はいいぞ?なにせ固定給がもらえる」
「え、まだまだ理由あるのにそれを一番に出す?」
あれ?やっちゃった?金にガメツイやつって思われた?まあ俺のモチベーションがそれだから仕方ない。俺は今年にも大学卒業なのだ、固定給の職に就きたいと思うのは間違いじゃないだろう。たぶん後方勤務になればいいのだろうが、ちょっと派閥は面倒なのでもう少し後にしていただきたい。
「いや、他にもちゃんと知ってるぞ。トリガーを自分仕様にカスタム出来たり、色々特典があるのも」
「誤魔化したわね。まあいいけど。どうかしら?筧さん。どこかのチームに入るか予定がないならウチに入ってみない?」
「え、えっと……」
あまりにも加古ちゃんがグイグイ来るせいか、俺の方に助けて欲しいと目で訴えかけてくる。まあ仕方ないか。
「加古ちゃん、あんまりグイグイいかない。ちゃんと言い分を聞いてあげないと」
そう言い、俺が先を目で促す。
「あ、あの……C級で噂になってたんですけど、真田さんと戦って認めてもらえたらチームに入れてもらえるって本当ですか?」
「え、なにその噂。俺別にチーム募集してないんだけど」
俺がそう言うと、ハッキリ分かるほど彩香ちゃんは落ち込んでしまった。
そのせいで加古ちゃんからは睨まれ、沙霧ちゃんからは非難するような目で見られた。
というか素で返したがこれは俺ん所に入りたいって意味だったのか?
「いや、まあ入りたいならいいよ?加古ちゃんが勧誘するくらいならセンスあるんだろうし」
「い、いいんですか!?」
「うん。いいっしょ?沙霧ちゃん」
「私はいいですけど……」
「ちょっと!横取りしないでよ!」
「本人の意見が優先。残念だったな」
などと、沙霧ちゃんもOKなのでアッサリ加入許可を出す。そこに加古ちゃんは文句を付けるが、本人の意思を尊重しようと意見を一蹴する。
そしてそんなにアッサリ加入が認められた彩香ちゃんは呆気に取られている。もしかしたら駄目元で言ったのをすんなり認められて信じられないって感じなのかもしれない。
「ていうか彩香ちゃんのトリガーって今何なの?希望ポジションとかは?」
「今はハウンドを使ってます。ポジションはシューターです」
「ん。なら慣れるまでハウンドメインにしてアステロイドとメテオラを補助にしてバッグワームはサブ側に。シールドは両方にだな」
勝手に決めて悪いとは思うが、実際慣れてないオプショントリガーなんて入れるだけ無駄なのだ。それにシューターとしての基本はアステロイドとハウンドなのだ。バイパーはセンスないと使い辛いやつだから今は入れない。メテオラは建物破壊などの撹乱などにも役に立つのでこちらは入れる。
で、シールドは必須だしバッグワームも同様だ。
「これは今の所の仮だから、自分にあったトリガーセットはおいおい考えていこう。その為に必要なことは手伝うから」
「は、はい!よろしくお願いします!」
「うん。こっちこそよろしく」
「よろしくお願いします」
……は!?
「加古ちゃん、一つ気付いたことがあるんだが……」
「なによ?」
「このチーム構成犯罪臭がする。というかむしろ犯罪臭しかしねぇ…!」
この後めちゃくちゃ笑われた。
◆◇◆◇◆
彩香ちゃん加入から数日が経ち、ランク戦当日となった。
あの日から、俺は彩香ちゃんに付きっきりでシューターとしての動き方から状況による弾の選び方、人の狙う箇所まで色々教えた。その中でも一番驚いたことは合成弾を簡単に使い熟すセンスだ。これはハッキリ言って異常だ。こういう技術があると教えた翌日には普通に合成弾を使ってきたのだ。しかも合成にかかる時間は10秒ほどだった。マジで天才である。
あとこれには劣るがトリオン量にも驚いた。多分二宮と張る位あると思う、まあ俺の方が多いんだが。というかあいつなんでB級に落ちてきてんだよ。邪魔なんだよ、俺がA級になるのが面倒になるだろうが!
ちなみに今回の作戦は以前から変更している。作戦は2人揃うまで彩香ちゃんは見つからないように待機、見つかったなら臨機応変に対処。2人揃ったら弾をばら撒いて蹂躙していく、というものだ。
これはある程度無駄弾を撃っても問題ない彩香ちゃんのトリオン量に由来する。因みに俺はそれにプラスして、周囲の警戒と攻撃のフォローという感じだ。
そしてステージはあまり高低差がなく、さらに高い建物も少ない市街地Aにする。最初は建物の高さのある市街地Bにしようとしたが、今回は狙撃されにくいように、なるだけ平面なステージにした。ここだと高さがあまりないので長距離狙撃は難しいし、区画整理もしっかりされているせいであまり射線が通らないのだ。
そして俺のトリガーセットはメインにバイパー、アステロイド、シールド、グラスホッパー。サブにライトニング、メテオラ、バッグワーム、シールドとなっている。近接も欲しかったが、フォローにシールドを使うだろうからスペースがなかった。カゲには近づかれる前に勝負を仕掛けなければいけない。
今回のコンセプトはサーチアンドデストロイ、近づかれる前に蜂の巣にすればいいじゃない、である。カゲは大変だがコア寺は連射しとけば問題ないだろうと思われる。あいつらの長所は連携だけど個々の技量はマスタークラスまでいってないし。いくらシールドの性能が上がっているといっても、ボーダートップクラスのトリオン量を持つ俺たち二人の斉射をまともにくらえばなす術はないだろうし。
「じゃあ確認だけど、彩香ちゃんはスタートしたら?」
「バッグワームを使って隠れてます」
「OK。本当は開幕から戦闘してもらいたいところだけど、まだ集団戦闘には慣れてないだろうから我慢してくれ。で、俺が合流したら?」
「そうしたら状況により臨機応変に攻撃します」
「うん。頑張ろうな。あと沙霧ちゃん、今回からオペするの2人になるけど大丈夫そう?」
「はい。いけると思います」
そう、心強い返事をくれる。まあ問題はないだろう。
さてと、
「新生真田隊、行きますか」
「「はい!」」
◆◇◆◇◆
「あ、東さんどうしましょう!せっかく作戦立てたのに台無しですよ!?」
そういい、動揺しているのは東隊の小荒井だ。そして同隊の奥寺も同じ気持ちなのか、不安そうな顔をしながら隊長の東を見ている。
「正直俺も予想外だ。まさかこんなタイミングで上がりたてのB級を入れるなんて」
その一言で2人は更に落ち込む。頼りになる東でさえこういうのだ。2人は内心でかなり不安になってきた。
「だが、あいつがC級の弟子を取っていたなんて話を聞いたことはないから、本当に上がったばかりの子を入れたんだろう。ポジションが分からないのは痛いが実力はまだあまり高くないはずだ。お前たちの連携なら問題ないだろう」
「東さん…!」「はい…!」
だが東は2人を元気付ける言葉を忘れない。
しかし東は内心では真田が本当にそんな普通の人間を入れてくるとは考えていない。だが今は2人を不安にさせるようなことは言うべきでないと判断したのだ。
しかし東は勘違い、というか過剰な評価をしている。真田になぜこのタイミングで加入させたかと問えばこう答えただろう。
「ノリ」
と。
◆◇◆◇◆
「おい!なんでそんな大事なこと言わなかったカゲ!」
そう言って隊長に吠えるのは、影浦隊のオペレーターの仁礼光。言葉使いから分かる通り強気な女の子である。
「別に言っても言わなくても同じだろ?新しく入ったのはB級上がりたてのやつなんだからよ」
などと、どうでもよさそうに返すのは影浦隊隊長の影浦雅人だ。因みに影浦は本来はアタッカーランクトップクラスに入る実力はあるのだが、度重なる隊務規定違反による減点によりポイントはかなり低い。ちなみにB級にいるのも隊務規定違反のせいだったりする。なのでエンブレムが存在し、それはチームの傾向である攻撃重視を表すような猛獣の牙である。
「で、結局どうするの?」
そう影浦に尋ねるのは絵馬ユヅル、影浦隊のスナイパーだ。
最近はとある事情により少しやさぐれている。
「取り敢えず優先目標は東隊だ。そうしねーと楽しめねえ」
そう大雑把な指示だけだし、自分はまた真田のランク戦を見ている。
「うう、ゾエさん嬉しいよ。カゲがこんなにランク戦でやる気になってくれるなんて」
そう言って感激しているのは北添尋、ガンナーである。
「よし、今度こそ真田さんを完膚なきまでに叩き潰す」
そう言って気合を入れるのだった。