グローバルコーテックスが主催する、レイヴンと呼ばれる人型ロボット、アーマード・コアを操るパイロット、その認定試験で、ある変態に目を付けられた可哀想なレイヴンのお話
「これよりACを投下しレイヴン試験を開始する」
そう宣言し、グローバルコーテックスの試験官はAC用の輸送ヘリ内の仮レイヴン達を見渡す
そもそも達というのは間違いだ
ここには試験官を除く、俺も含めて二人しか居ない
やはりこのレイヴンという職は人気があまり無い
基本的にはやる事は傭兵だし、汚い仕事も金で受けこともある
だが同じ仮レイヴンの、アップルボーイとかいうこの好青年は汚れ仕事などどこ吹く風の様な純粋な目をしている
「各自乗るACは、グローバルコーテックスが基本的な武装を整えてある。出撃前にどちらに乗るか決めておけ」
機体の違いは使用企業パーツが違う、という点だ
ミラージュ社は最先端を行く企業で、ピーキーで高性能なパーツが多い
クレスト・インダストリアルはシェア二位だが生存性と信頼性に長ける企業だ
「えーっと、ムラクモ……君だっけ」
「ん、なんだ」
早速アップルボーイ──面倒くさいし林檎少年でいいか──等思いつつ返事する
「なんか凄い捻りも無い渾名付けられた気がするけどまぁいいか。で、どっちの企業の機体使うの?」
なんだそんな事か
「お前がいいなら、ミラージュを使わせて貰っていいか?」
「いいの? クレストの方が生存率高いのに」
すこし顔を顰める
こいつはレイヴンになるには優しすぎる
もし、俺が裏切って攻撃してくるかもしれないのに相手の心配をするなんて
「いいんだ。元々、俺は高速戦闘の方が割に合ってる」
「本当にいいの? やられそうになっても助けられないよ」
本当に、こいつは優しすぎる
「いいんだ。クレストの方に乗ってくれ」
すると試験官がやってきた
先ほどと比べると随分な渋い面をしているが、何があったのやら
「おい、今回は会社の重役さんが来ているらしい、頑張ればもしかしたら専属として勧誘されるかもしれないぞ」
どこの企業だ?
「どこの企業ですか? 」
先に林檎少年に言われた
「キサラギだ」
林檎少年と一緒に顔を見合わせた
林檎君は顔を青褪めさせていた
多分俺も青ざめていたと思う
なんたって”あの”キサラギだ
CMは街のあちこちでよく見るが、いつも黒い噂が絶えない企業なのは間違いない
例えば、傭兵に人体実験をしているとか、生体兵器を量産しているとか、さらにはヘンテコなパーツから滲み出す変態性etc....
「まあ、少なくとも企業とはパイプを作っておいても悪いことではない。それと、もうすぐ作戦空域に入るから準備しておけ」
「了解」
俺と林檎君は声を合わして昔のSFの様な、パイロットスーツを着込み始めた
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『機体駆動メインシステム、光学装備異常なし』
貸出ACなのでボロくなった各関節から悲鳴を上げつつ、酷使され続けたジェネレーターがエネルギーを吐き出し始める
『FCSチェック……マッチングクリア。おはようございます、レイヴン』
「
パイロットスーツのヘルメットに備え付けのマイクに、出撃準備完了を伝える
『了解……作戦領域まで三十秒。ブリーフィングにて、指定した座標にACを投下。当ヘリは反転しミッション遂行後、ビーコンの起動を確認出来次第回収に向かいます』
せまっくるしいACのコクピット内で目の前のタッチパネルを動かし、ビーコン起動のプロセスを確認する
「了解……因みに全滅の場合は?」
『ミッション失敗時、当機はそのままグローバルコーテックスのガレージに帰還します。またその場合あなたの家族、または親類に破壊されたACの弁償義務が発生します』
頬を引き攣らせつつ、改めてエネルギーバイパスの確認、最効率化を行う
「そりゃあ……ゾッとするねぇ。 ちなみに総額お幾ら? 」
『そうですね……具体的な数字は出せないので、とりあえず良い所の10年分給料と同程度だと思われます。 ですので出来るだけ生き残れるように頑張ってください……私だって寝覚めが悪いですし』
いきなりの私情に、びっくりしながら苦笑して返事を紡ぐ
「はははっ。そうだな……なら、もし生き残れたらオペレーター契約してくれたら百人力よ」
『戦闘開始まで十秒。分かりました……ですけどそれは俗に言うフラグってやつでは? 』
「大丈夫だ、問題ない 」
『嫌な予感しかしないんですが? 開始まで5秒……ロック解除します』
ACの各部のロックが外れる振動と共に下へのGが発生し、内臓が下に落ちるような気色の悪い感触が生まれ、地に着くのと同時に、激しい振動が襲う
「ぐぅ……っ」
『降着確認。ミッションスタートです』
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「うー……これが実戦……か。えっと、とりあえずブースター起動しよう」
頭部や機体の各部の複数のセンサーから得られた情報をCGに変換し、投影しているモニターに目を向けてみた
「レーダーには……軽戦闘用MTの反応が3体、か」
ACの手に握られたライフルの安全装置を外し、ブースターを吹かして地面を滑る
「うん? うわっ! 」
僕の隣をもう一人のレイヴン候補、ムラクモ君が無駄の無いブースター管理をしながら走り抜けていった
「うわぁ……速いな。 ……本当に僕生き残れるかな……」
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レーダーに捉えたこちらの機影を追い、MTが振り向こうとする瞬間に俺は軽量機のお家芸で懐へ入り込んでいる
一瞬でレーザーで形成されたブレードを展開、高熱でMTのコクピット周辺の装甲を飴細工の様に溶断し、真っ二つとなり胴体が泣き別れとなった
「まず一つ」
デフォルトカラーのアイライトが光り、次のMTへとブーストで接近していく
狂ったようにMTが装備された機銃を、俺に向けて撃つがたった百数程度のAPを削ったところで同じ様に懐への侵入を許し、中のパイロットごと装甲を溶かし、装甲と人間が同一の固まりになる
「ふたぁつ」
レーダーに表示された敵を示す赤点の方向へ目を向けると林檎少年が残っていた二機を倒しきったところだった
『ふむ……それなりの力はある様だ。 認めよう、君達がレイヴンだ』
『やあやあ! こんにちは! アッヒャ! キサラギ所属の人事課のアサダって言うんだけどね? そのミラージュ機、乗ってる君? そうそう君だよ君! 』
教官の声に被さるように出てきた声の主は、例のキサラギ関係者の様だ。しかも俺に目を付けやがった。
「キミにキサラギのテストパイロットとして専属契約結んで欲しいんだよ! 」
「……え? マジで俺? 」
いつの間にか近くに来た林檎少年は、なんとなくこちらに向けたカメラアイから哀れみを感じる
やめろ、そんな目で見るな
…………助けて下さい