フォースの暗黒面に堕ちた黒鉄一輝の話   作:A4

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 正直今回の話はやりすぎた感が自分でも半端ないです。不快感を感じたら戻ることを推奨します。
 
 何というか原作一輝の形を留めてなくてオリキャラ化してる感があります。
 
 
 
 ……それは元からですかねw


5話 密輸

恐るべき夜から3か月が経った。一時は敷地内を埋め尽くしていた警官は姿も見えない。珠雫は全焼した離れを見ながら物思いに耽っている。

 あの夜で27あった黒鉄の分家の内15の分家の当主が殺害され、その内8の分家が師範、範士までもが殺さた。それにより八十、二瓶、銕を始めとする8の家は伝承していた流派を失伝し廃絶する羽目になる。幸いにもそれらの家は何らかの経済的基盤を持ってはいたが武門、魔導騎士の名家としては死んだも同然であった。

 この事態に対して黒鉄厳の対処は迅速であった。この事態が本家の落ちこぼれ一人が引き起こしたという不名誉な事態を隠蔽するがために反伐刀者団体の精鋭の襲撃を受けたという形を取り、警察に圧力を掛けそれを押し通すことに成功する。しかしどう繕うとも黒鉄の家の影響力の減衰は明らかであった。

 

 「酷い物ですね」

 珠雫はぽつりと呟く。しかし黒鉄とその分家に対する同情はその言葉に殆ど含まれてない。彼女は兄が何故これを起こしたのか、その心情と理由を感じた。理由は分からないがあの時確かに何かが兄の憎しみを彼女に伝えたのであった。

 (これからどうしましょうか…)

 ふとそんな事を思う。父は辛うじて命を取り留めたものの生命維持装置に繋がれ機器なしでは意思疎通が不可。母はあの夜、兄の負の感情を浴び心を病んだ。長兄はどこぞの病院で辛うじて生きているとは聞いたが所在が知れない。次兄に至っては行方知らずである。

 あの夜兄が体験した8年間の地獄の一端を経験したことで珠雫は兄を恨む気持ちは湧かず、むしろこの家の本当の醜さを知った。

 『僕は将来大おじい様のような立派な伐刀者になるんだ!』

 ふと昔、幸せだった頃一輝が目を輝かせて語っていたことを思い出す。サムライリョーマのようになりたいという願いを。

 「伐刀者か…」

 口に出して思う。『伐刀者を目指してみようと』

黒鉄の家に嫌気がさし魔導騎士をやめようとしていたがふとそう思った。伐刀者の道を目指しさえすれば兄に会える、そんな気がした。

 彼女はこの時の事を後から回想して思う、まるで見えない大きな流れに乗せられたようだと。

 

 

 

 

 

 同時刻、黒鉄一輝は日本海にて船上の人となっていた。乗っている船はある貿易会社の所有するフェリーであり名目上は中華人民共和国に中古の日本車を売りに行く、そういう事になっている。

 「黒鉄さん、追手が!」

 船室に一輝より一回り上の男が駆け込んできて言う。

 「沿岸警備隊に話を通していたのでは?」

 一輝は慌てた様子もなく言う。

 「沿岸警備隊ではありません!国軍です」

 それを聞き一輝が立ち上がる。ライトセーバーの納められたホルダーが微かな音を立てた。

 「数は?」

 「戦闘ヘリが一機、哨戒艇が2隻です。停船をこちらに命じています」

 「無視してください、後は領海に逃げ込んだら勝ちです。後は僕が」

 そう言い放ち船尾に向かう。見ると確かに戦闘ヘリと哨戒艇が確認できた。

 『止まりなさい!君らは安全保障貿易管理法における規制品目の密輸の疑いがかかっている!この命令に従わない場合即時射撃を開始する!』

 その警告の内容は本当である。このフェリーが積んでいるのは中古車などではなく仮想敵国である中国に輸出が御法度の工作機械、高性能遠心分離機、電子機器といったものであった。捕まったら余裕で懲役20年以上は確定である。

 

一輝は掌を戦闘ヘリに翳すと射撃に備えて回転を始めていたM134ガトリング砲の銃身が回転を止め、次に高速回転し浮力を産み出しているメインローターが回転を止める。

 そのまま重力に従い海中に没し、25億円のスクラップを一つ産み出した。

戦闘ヘリの異常に攻撃を受けたと判断した2隻の哨戒艇が76㎜単装速射砲の砲塔をフェリーに向けるべく回転を始めるがその動きが突然止まったかと思うとまた別の方向にそれぞれゆっくりと回り始める。哨戒艇の砲塔はゆっくりと僚艦を狙うと分速60発の割合で榴弾を吐き出し始めた。

2隻の哨戒艇がそれぞれ同士討ちを始める。一輝はその2隻の船員の困惑と恐怖を感じ口元を綻ばせた。

砲撃を受け続けた一隻は機関部と船体に砲弾を貰ったのか徐々に速度を落としていくのと同時にもう一隻は弾薬庫に砲弾を喰らったのか爆発を繰り返し炎上する。

フォースを使い増援が来ないのを確認し一輝は踵を返した。

 

 

 

 ある港にてフェリーから作業員が重機を使い大型のコンテナを運び出している。一輝はそれを尻目に一人の男と話していた。

 「……それではこれで間違いはありませんね」

 「ああ、確かに受け取った。これで取引は成立だ」

 一輝は米ドル札の詰まったケースを取り上げる、向かい合う男も納品リストを仕舞った。

 「それでこちらの注文の物は揃えられましたか?」

 「ああ、それに関しては問題ない。むしろ追加注文の方が難しかった」

 男は黄と呼ばれており中国の軍閥の一つと深い関わりを持つマフィアの一員である。

 「追加注文ですか?」

 一輝が訝しげに言い斜め後ろを振り返る。今回の取引の内容は完全に人任せであったのでよくは知らない。

 「まぁ、見てくれ。きっと満足するはずだ」

 この二人は中国語での会話を行っている。一輝は黒鉄の家にいる間、何とか自分を認められがたいために武術だけでなく勉学、特に語学を自習していた。結局は報われはしなかったが意外な所で役立っている。

 「…何か嫌な予感がする」

 その『追加注文』とやらに思わずそんな事を感じた。

 

 

 「大人(ターレン)、これは一体?」

 「大熊猫(ダー・シォン・マオ)、君の国ではパンダと言うらしいな。こいつを手に入れるのは苦労した」

 倉庫の片隅にある檻の中で白黒の毛皮を持つ獣がのそのそと笹を食んでいる。黄がそれを自慢そうに示す。

 「……」

 一輝が今回の商品の仕入れを担当した男に無言で目をやる。

 「黒鉄さん、あれにはちゃんと高値で買ってくれる所があるので問題ありません」

 少し神経質さを感じさせる細身の男が慌てつつも言う。

 「それでこれが今回の品だ。あと船は外を出てずっと右だ」

 積み上げられたケースの一つを降ろし蓋を開ける。その中には軍事用の高出力ブラスター・ライフルが4挺とエネルギー充填用のパックが詰められていた。

 「……確かに、それでは後の事は頼みます」

 一輝はそう言い外に出た。言われた通りに進むと言われた通りに確かに船がある。注文通りに改造されているのならば4基のエンジンを搭載し高性能のレーダーを備えているはずだ。

 

 

 今回の取引は工作機械を始めとする禁制品の密輸出、そして禁制品の密輸入であった。国内ではエネルギー弾を扱う兵器の取り扱いは厳しく、その分需要は非常に高かった。それを狙っての今回の取引である。行きに使ったフェリーはここで売り払いその代わり帰りは改造された快速艇で帰る、そえこそが今回の計画であった。

 

 

 

 黒鉄珠雫が伐刀者になる決意を固めているのと同じ頃、黒鉄一輝は反社会組織のトップになっていた。

 

 

 

 

 黒鉄一輝が黒鉄の家を出てまず感じたのは自分の力の衰えであった。いや、その表現は正確ではない元に戻ったというのが正しい。あの時は自分の感情にフォースが呼応し限界を超えた力が出せたのだろう。

 その証拠に戦闘における短期的な未来予測が不安定になった所に現れた、あの夜では完全な予知が可能でありどんな精鋭の剣筋をも読めた。しかしそれも一時的なドーピングに近い物で得たのであろう、その事を確認した一輝は現状を冷静に分析した。

 自分は現在この国において最高クラスの犯罪者であり警察、黒鉄からの刺客、軍。もしかすると魔導騎士連盟支部からの勅令により伐刀者一個大隊が自分の追撃にかかるだろう。

 一輝は自分の力に自信を持ってはいるが休みなく襲いかかる群を相手に勝てると思えるほど自惚れてはいなかった。そして最終的に自分の身を隠す組織とそれを強化する資金が必要であると判断した。

 

 その結論に達した一輝の行動は早かった。手近で小規模の反社会集団の拠点を襲い主要な幹部を殺し、また新たな組織を襲い吸収する。その繰り返しである。

 従属を強いられた側は当初は困惑し憤った。しかし彼らのような暴力を生業とする存在は何よりも危険性を見抜くという事に長けておりそれ故、目の前の優しげな笑みを湛えている青年が獣のような凶暴性と危険性を持つという事を本能的に察知する。

 その支配は敵対者には恐るべき残忍性を発揮するが従属を誓えば扱いは悪くなく、成果を出せばそれに相当する地位と褒章が与えられるという悪くないものであり、従属した者は新しい組織においての地位を得るべく努力をする。こうしてこの組織の盤石は固まって行った。

 

 

 この組織づくりにおいて一輝がフォースを使ったのは最初の洗脳、暗示のみであった。それ以降は彼がいなくとも回るように飴と鞭を使い分け的確に運営していった。ある意味彼はその点においては父の血を色濃く引いているのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 時をさかのぼる事、3か月。黒鉄一輝が狂い、一族の者を斬り捨てていたのと同時刻、ある邸宅にて一人の男が執務机に向かい万年筆を動かしていた腕を止め宙を見上げた。

 別に天井に何かが張り付いているわけではない、その視線はどこか遠くの物を見透かすかのようであった。

 彼は自力でフォースの暗黒面に堕ちた者が出現した事を珍しく思いつつ執務机に備えられた受話器に手を伸ばした。

 




 落第騎士読んでると日本が戦勝国になったと書いてあるんですがどうやってあの超大国に勝ったのか今のところ謎。
 一輝の曾祖父が片っ端から斬り捨てたのか連合国側に回ったのかそこらへんどうなんだろう。それとも自分の読み落しかまだそこまで読んでないかのどちらかですかね?



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