苦労人な大天狗   作:神のまにまに

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取扱説明書の今日はいい永遠力暴風雪(えたーなるふぉーすぶりざーど)日和に不意打ちを受けました。


第一話

妖怪の山、天狗の里の、ある家に一つの声が響いた。

 

「大天狗様~お手紙ですよ~」

 

声の元は1人の天狗。他の天狗と違う所があるとしたら、頭の上に赤い帽子を付けているという所だろう。まあ、手紙と赤い帽子と言ったら大体予想はつくだろう。郵便配達である。ちなみに、この帽子を付けている理由は、「なんとなくそれっぽいから。」らしい。

 

「はいはい、今行くぞ」

 

そんな声が聞こえたかと思ったら、玄関が開き、中から1人の天狗が出てきた。

 

「こちらがお手紙になります」

 

帽子を付けている天狗は、手紙をドサリ(・・・)

と置いた。

 

「・・・やっぱりか」

 

家から出てきた天狗は、頭を抱えながらそう言った。天狗の前にあるのは、どこから出したと言いたくなるような数の手紙が、これでもかとばかりにあった。さて、お気づきの方が殆どだろうが、この天狗は妖怪の山一の苦労人と名高い大天狗、鞍馬法眼である。そして、彼にとってはこの光景は日常茶飯事である。

 

「では、自分はこれで」

 

そう言って、帽子をかぶった天狗は次の配達場所へ飛び立っていった。

 

「・・・まずは家の中にいれるか」

 

彼は、いかにも面倒くささ全開と言った様子で、手紙の山を自宅へ運ぶ作業に移った。

 

 

 

「やっと終わった・・・」

 

今、彼の目の前には溢れんばかりの手紙の山が広がっている。作業を始めたのが太陽が昇り始めた中間あたりで、今は太陽が真上に来ている。この事が、彼がどれだけ大変だったのかを物語っている。

 

「それじゃ、いつも通りのことをするか。」

 

その言葉と共に、彼は手紙の封を開けて、中身を見出した。

 

「『この間烏天狗が洗濯物を吹き飛ばしていった。』『烏天狗が子供に変なことを吹き込んでいた。』

『烏天狗がやたらと写真を取ってくる。』『神社の賽銭箱に賽銭が一つも入っていない。』・・・また文絡みじゃないか。最後のは除くとして」

 

手紙の中に書かれているのは、殆どが彼の部下である烏天狗、射命丸文の起こした事だった。最後のは何かって?知らん。

 

「毎回毎回あいつは・・・山から出るのは勝手だが、迷惑はかけるなと何度も言っているだろうが・・・お陰でこっちはこの有様だ。今度見つけたときは少しお灸を据えてやるとしよう」

 

愚痴をこぼしながらも一枚一枚丁寧に手紙を開けていく鞍馬。一つの手紙を開けるごとに一回ため息が出る。ため息をすると幸運が逃げていくというらしいが、もしそれが本当ならば、彼の運はもう修復不可能だろう。

 

「『主が食べるのを自重してくれない。』『白黒の魔法使いに本を盗まれる。』『姫が働かない。』『そんなことよりお賽銭。』・・・なんかお悩み相談みたいになっているんだが。というか何故それを俺に言う」

 

なんだか手紙の内容がおかしくなってきたが、彼はひと通りの手紙を開け終えた。

 

「それじゃ、返答を書きますかね。まずは、『あなたの神社に賽銭が来ないのは、まずそこの環境をどうにかしたほうがいいかと。』っと。さて次―――

 

 

 

―――『あなたの姫を働かせるには、まずは働かないとご飯抜きとか、そうことを言ってみてはどうでしょうか。』・・・ふぅ、やっと終わった」

 

彼の前には、先程の手紙の山と同じ数の手紙の山が出来上がっていた。

 

「殆どが文絡み、その他は全て個人的な悩み。いつから俺はお悩み相談者になったんだ」

 

ちなみに、彼がこの作業をやっている理由は、天魔直々の命令だったりする。その命令を簡潔に言えば、「お前の部下が迷惑な事ばかりするから、お前が責任取れ。」というものだ。彼からすればおまえは何を言っているんだと言いたくなることなのだが、事実なので仕方がない。なのでこの作業をしているのである。

 

「全く、この間の月がおかしくなった事も収拾がついてないというのに。よし、次に何か起きたときはストレス発散も兼ねて、俺が出ることにしよう」

 

さりげなく大変なことを言ったのだが、本人は本気らしい。大天狗が妖怪の山から出るなど、言語道断なのだが。彼がそんなことを心に決めていた時、玄関の方から声が聞こえた。

 

「鞍馬様、いらっしゃいますか?」

 

女性の声だった。鞍馬は玄関の方へと足を運ぶ。扉を開けた先にいたのは、白い髪に獣耳、そして背中に背負っている剣と盾が特徴的な少女、鞍馬のもう一人の部下、犬走椛だった。

 

「ああ、椛か。何かあったのか?」

「はい、鞍馬様。天魔様がお呼びです」

 

そのことを聞いた鞍馬は顔を顰めた。彼の実際の経験から、天魔が呼ぶときは、大抵嫌なことだ。将棋の相手をしろとか、人里に行って料理の食材を買って来いとか。完全にパシリである。

 

「わかった、すぐに行く。お前は帰っていいぞ」

「了解です」

 

そう言うと、椛はどこかへ飛びさって行った。

 

「さて、鬼が出るか蛇が出るか。出るのは天狗だろうがな」

 

そんなくだらないことを言いながら、彼は天魔の元へ飛んでいった。




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