苦労人な大天狗   作:神のまにまに

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第二.五話

鞍馬が地獄へ行ってから数分後。

「ねぇ、いるんでしょ?紫ちゃん」

飯縄は、誰もいない場所に向かって言葉を発した。数秒後、その場所がパックリと開き、目玉だらけの空間が出現した。そして、その中から出てきたのは、

「あら、やっぱりバレていましたか」

胡散臭い雰囲気を出す女性。妖怪の賢者、八雲紫だった。

「バレていましたか、じゃないでしょ。あんなに鞍馬君を見つめて。もしかして好きとか?」

「ご冗談を。私程度の妖怪が彼と一緒になれるわけないでしょう。私でも敵わないのに」

さりげなくとてつもない事を言った紫だが、周りに誰もいないからいいのだろう。

「あれ、じゃあなんで鞍馬君のことあんなに見てたの?」

「いえ、少し気になるところがあっただけですわ」

紫は顎に手を当てて、何かを考える素振りを見せながら言い出した。

「彼を山に入れたのはあなたでしたね」

「そうだけど、それが?」

「では―――

―――彼を二度目に山に入れたのも、あなたですか?」

その言葉を聞いた瞬間、飯縄は殺気を出し始めた。

「・・・何が言いたいのかな?」

徐々に増えていく殺気。その殺気に押されながらも、紫は言葉を紡ぎ出した。

「いえ、あなたは彼を、一度この山から追放した。なのに彼を山へ戻した。それは本当にあなたが―――

「それ以上話さないほうがいいよ?」

いつの間にか、紫の喉元には、どこから出したかもわからない刀が添えられていた。

「・・・ッ」

「僕ね、あの時の話をされると、話してる人を殺したくなっちゃうんだ。だから、その話はしない方がいいよ?」

小さい体からは予想も出来ない程の殺気を出す飯縄。紫は冷や汗を流していた。

「・・・わかりましたわ。その話はもう止めにしましょう」

「うんうん、それが一番いいよ」

殺気を収めて、いつもの様に机に寝転がる飯縄。紫は安堵の溜息を吐いた。

「では、私はこれで」

「うん、バイバーイ」

紫はスキマを開き、その中へ入っていった。紫がいなくなったのを確認したあと、飯縄は一人、呟いた。

「あの時の話で殺意を覚えるのは、僕よりも遥かに、鞍馬君のほうが強いよ。彼は、最も大事な人間を失ったんだから・・・」




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