鞍馬が地獄から戻って来た数日後。
妖怪の山は混乱状態になっていた。その理由は、幻想郷中に花が咲いたからである。そして、妖怪の山が混乱状態に陥ると何が起きるか―――
「それはそっちの大天狗の管轄だろう!?こっちに持ってくるな!花のことは知らん!というか、どいつもこいつも俺の所に来るんじゃない!」
―――仕事の倍増である。さらに、大天狗は管理職。それ故に増える仕事の量が、半端無いのである。
「あやや、大変そうですね鞍馬様」
「文、いいところに来た。お前も手伝え」
「では私はこれで!」
「逃すとでも思ったか」
神速の如く飛んで行こうとした文の前を強い風が遮る。鞍馬の能力だ。『強風を操る程度の能力』、それが彼の能力である。
「さあ、もう逃がさん。お前にも俺の苦しみを味わってもらおうか」
「お、お助けー!」
「も、もう無理です・・・」
「なんだ、もうリタイアか?情けない」
数刻後、文の前には大量の書類が積み重なっていた。まあ、隣にいる大天狗はその倍以上の書類を既に終わらせているのだが。
「ふむ、もういいだろう。ご苦労だったな文」
「お、お疲れ様でした・・・」
文は、フラフラに成りながら飛んでいった。
「さて・・・この残りどうしよう」
鞍馬の後ろには、まだまだ大量の書類がスタンバイしていた。
「全く・・・鞍馬様も天狗使いが荒いわ」
鞍馬が大量の書類相手に戦っている間、文は愚痴をこぼしていた。
「大体、私のしているのことの何が悪いのよ。私は新聞を書いているだけなのに」
その新聞を書く過程が悪いということに、彼女は気づかないだろう。
「そういえば、博麗の巫女はもう動いているのかしら」
文は方向を変え、博麗神社へと飛んで行った。
その頃、鞍馬の家
「鞍馬君、お邪魔してるよー」
「お邪魔していますわ大天狗様」
厄介この上ない者が二名、不法侵入していた。飯縄と紫である。そして鞍馬が彼女たちを見て第一声、
「帰れ」
といって強風で吹き飛ばした。だが、彼はその行為がどれだけ愚かなのかをすぐに思い知った。想像してほしい。書類が積み重なった部屋で強い風が吹くと、どうなるか。
「あ・・・」
単純に吹き飛ぶのである。因みに、その時の部屋は窓が開いていたので更に恐ろしい事になった。
「あーあ、やっちゃったね鞍馬君」
「あれはもう戻ってこないでしょうね」
彼がまさしくorzという感じになっていた所に戻ってくる二名の厄介者。飯縄と紫である。
「何故飯縄と八雲がここに居る?簡単に説明して欲しいんだが。俺も忙しいんだ」
「僕は仕事が面倒だったから」
「私は大天狗様に聞きたい事があっただけですわ」
「よし、八雲は残れ。飯縄は帰れ」
仕事を放棄した幼女上司に頭が痛めながら鞍馬は言う。
「む~、酷いよ鞍馬君。僕にあの地獄へ戻れって言うのかい?」
涙目になりながらポカポカという擬音語が似合いそうな叩き方をする飯縄。ロから始まってンで終わる危ない人達なら、確実に襲っている事だろう。
「それで?伝える事とはなんだ、八雲よ」
「無視!?」
「いえ、大天狗様は今回の異変に参加なさらないのかと」
「紫ちゃんまで・・・もういいよ、僕は仲間外れなんだよ・・・」
部屋の隅で、『の』の字を書き始める飯縄。それでも鞍馬達は、全く気にしない。
「なぜ今回の異変に俺が参加する必要がある。放置していればその内終わるし、俺にとっての利点がないだろう」
「あら、そんなこともありませんわよ?」
紫の言葉に目を細める鞍馬。
「・・・どういう事だ?」
「いえ、先程まで天魔様とお話しておりましたの。大天狗様がもしこの異変を迅速に終了させたならば、休暇くらいあげても「ちょっと異変終わらしてくるぞ!」いいのでは・・・ないか・・・」
紫が言葉を言い切る前に飛んで行った鞍馬。休みに餓えているのだろう。
「えっと・・・天魔様?」
「もういいよ、どうせ僕は仲間外れなんだから二人で楽しくやってよ・・・」
「・・・とりあえず、もっと休暇を増やしてあげたらいいと思いますよ」
流石の妖怪の賢者も、この二人相手では押されっぱなしのようだった。
鞍馬が飛んで行ってから数分後、厄介者達は彼の部屋を物色していた。
「って、あら?」
「ん?どうかしたの紫ちゃん」
「いえ、この引き出しだけ鍵が掛かってありますわ」
「どれどれ・・・あ、本当だ。鍵掛かってる」
鍵の掛かった引き出し。何の変哲もなさそうな引き出しだが、彼女達の興味をそそるには十分だった。
「開けてみましょうか」
「んー、そうだね。気になるし開けてみよう」
「では・・・・開きましたわ」
「よーし、中身はなんだろなー。って・・・」
中から出てきたのは一枚の写真。写っているのは一組の男女のようだった。
「写真ですわね。誰の・・・」
「駄目ッ!!」
紫が手に取った写真を奪う飯縄。
「ど、どうしたんですの?」
「・・・紫ちゃん、今の写真の事は忘れてほしいな」
殺気を出しながら言う飯縄。
「・・・わかりましたわ」
「うん、ありがとうね」
「では、私はもう帰りますわ」
紫はスキマを開いて帰っていった。一人残った飯縄は、写真を眺めていた。
「鞍馬君、こんな所に・・・」
写真に写っている男女。男性の方は鞍馬だ。女性の方は・・・
「やっぱり、まだ忘れられないんだね鞍馬君・・・」
写真に、一滴の涙が落ちた。
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