モルガナさんとの亜空間生活   作:最下

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「あなたも世界を観察しませんか?」「……は?」

 

 

『え、あ? 何処だここ……?』

『ここは次元と次元の間、亜空間、私はそう呼んでいます』

 

 

風景がガラリと変わり、上も下も前も後ろも右も左も、星と闇の世界に「立っていた」、地面が無いのに地面を踏む感覚があるのが気持ち悪い。

これも重大だが、いや、

 

 

『……どちらさま?』

 

 

目の前に「浮いている」のは、声こそさっきのロリと同じだが、容姿が声と釣りあう年上美人さんになっていた。

……俗にいうロリババア? それともババアロリ? 今はロリじゃないから……ババア?

 

 

『死にますか?』

『すみませんでした!』

 

 

反射的にキッチリ90度頭を下げる、勢いあり過ぎてアホ毛が額にビターン! としたが気にしない、だって怖いもの。笑顔が怖いもの。

 

 

『自己紹介もしておりませんでしたね』

『私の名はモルガナ、この世の条理の果てを目指すものです。お見知りおきを』

 

 

片足を半歩内側に引きお辞儀をする綺麗なお姉さんことモルガナ、さん。ここまで理解不明な出来事に見舞われると中二病乙とかも思えなくなってくる、亜空間だと条理の果てだと非日常ワードばかりで相槌も打てない。

 

 

『えーと、御丁寧にどうも……。比企谷八幡です』

 

 

なんでこんな場違いな場所で一般人全開な挨拶をしているんだろうか……、夢なら1秒でも早く覚めてくれ。目の前の人の考えは読めないし、この空間も普段の感覚が乱れて気持ち悪くなってきた……。

 

 

『さて先に申した通り、私はあなたが欲しているモノに興味があります』

 

 

俺はそこからもう話についていけない、俺が求めているモノとあんたが求めているモノが何処かで繋がっているとでも言うつもりか? それとも単純な興味で巻き込みやがったのか? まず俺が何を欲していると?

 

 

『だからどうしろと? こっちは何の事やらさっぱりなんですよ?』

『無理もありません、その欲求は本人でも気付かない心の最下層にあるのですから』

 

 

「本人でも気付かない心の最下層」ねぇ、そんなあなた……悩みを抱えていますね? とか特に人間関係とか……、みたいな誰にでも当てはまることを言われても胡散臭いだけだ、 その糸目は伊達じゃないってか。

 

 

『ふむ、細かい話は後にしましょうか』

『そうしてください、後壺や絵画は買わないんで』

 

 

ここがヘンテコな空間じゃなければ、もうその手の人にしか見えないんだけどな。ああ、だから見てもらった方が楽か、納得。もう半分ぐらい自棄になって逆に落ち着いてきた、これならもう間抜けな声を漏らすことは無いだろう。

 

 

『あなたも世界を観察しませんか?』

『……は?』

 

 

  *  *  *

 

 

観察していた世界への接続を解除する。今回の収穫も疲労に見合ったものと言えず、先の長さに辟易とする。愛を知ろうと思いそこらへんの奴の告白から結婚、倦怠期脱出一年後までを見ていたのだが、とにかく精神的疲労がキツい。

長時間同じ姿勢をとって痺れていた感覚が戻ってくると、膝に重みを感じた。

 

 

「何をやってるんですか……」

 

 

人の膝を枕に横たわるモルガナさんを見て、溜息が零れると同時に違和感を覚える。これは……力の乱れ? いや消耗か。俺が観察に勤しんでいる間に何があったのやら……、とりあえず膝から叩き落すことが出来なくなってしまった。

 

 

「疲れたので、慰めてもらおうかと……」

「労いはしますが慰めなんて器用な真似できませんよ」

 

 

俺自身が接触を好まないがモルガナさんの額に手を当てる、……切創、刺創、電撃傷。それだけならいいんだが、胸にサッカーボール程の穴を開けられている。この人の胸はぺったんこだなーとかは思った事あるけど、まさか貫通する日が来るとは夢にも思わなかった。

……手を当てただけである程度読み取れるとか、俺も順調に人間辞めてきてるなぁ。この人には逆立ちしても敵わないが。

 

 

「よく生きてますね、普通死にますよこれ」

「少し、危なかったです……。あ、手を離さないでください、冷たくて気持ちいいので」

「…………」

 

 

……もう少し弱った素振り見せてくれねぇかな。服も体もボロボロでズダボロのボロ雑巾だけど、声質と表情が普段と変わらなくてうっかり膝から叩き落しそう。さて検査開始ー。

 

 

「エテルノの連中ですか?」

「いいえ、まだ時が熟していなかっただけ。世界の決定に逆らうのは骨が折れます……」

 

 

要するにフライングを咎められたって事か、世界様もご苦労なこった。この人にここまで攻撃を通すなんてそれこそ骨が折れる作業だろう。

 

 

「あなたの存在でズレが発生するかと思いましたが……、今ではありませんでしたか」

「念の為言っておきますけど、面倒は嫌いですからね」

「ええ、あなたに頼るのは最終手段にしておきます」

 

 

最終手段でも頼らないでくれ。あんたの手伝いなんて嫌な予感しかしない、少なくとも正義の味方よろしく歓声が湧き上がる様な立場じゃないのだから。別にそんな立場に夢を見るほど純粋な奴でもないけどさ。

 

 

「……今日は久しぶりに目を開いたので疲れました……」

「え!? 目開くんすか!? 嘘!?」

「お静かに」

「むぐ……」

 

 

怪我人を相手にするテンションじゃなかったな、申し訳ない。だが、やはりロリフォームことロリガナさんの時は普通に目を開けてたし、そう変わらないだろうけど是非見てみたい。 

……と、検査完了。

 

 

「およそ120時間ですね」

「長い……、何とかなりません?」

「なりません、これを機に体を休めてください」

 

 

これ程の損傷を約5日で治せるんだから一番化け物だよあんた、しかも10時間あれば人間的日常生活を行えるレベルまでは修復出来るし。解っているつもりだったけど姿形しか人間要素ないなこの人。

 

 

「なら、その言葉に甘えましょう」

「どうぞ、後俺の膝から降りてくれると嬉しいです」

 

 

…………降りろよ。

 

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