Pさん奮闘記   作:アニッキー

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その1[ここは346プロダクションです]

 

「どうしてこうなった……どうしてこうなった!」

 

 とある理由により頭を抱えている自分。そんなところに、聞き覚えのある声が頭の上から聞こえてきた。

 

「急にどうしたんですかプロデューサーさん?」

 

 振り返り、顔を上げると、そこにはプロデューサーのアシスタントという立場にいる女性、今日も綺麗な黄緑色の制服を着た女性、千川ちひろさんがいた。

 

「ああちひろさん……いえね、今まで765プロでプロデューサーしてた俺が、なんで346プロでプロデューサーしてるんだろうと」

 

「そんな、何を今更。もうこちらに来てから1ヶ月も経ってるのに」

 

「いやまあ、そうなんですけど……くっ、これも全て律子が悪い。『竜宮小町? はっ、伊織達を俺がプロデュースできない時点で終わってるよそんなユニットは。せいぜいE止まりだよE止まり。俺のプロデューサー人生をかけてもいいね。もしAランクになるってんなら俺は、このプロダクションを抜けて1からやり直してええよ(笑)』なんて言ってたらAランクにしちゃったんですよあいつ、おかしいでしょ!?」

 

 765プロのプロデューサーは俺なのに! いやまあ、律子もプロデューサーなわけなのだけれど。プロデューサーとアイドルの二足のわらじ。俺には到底真似できない。尊敬はするが、それとこれとは話は別だ。

 

「……どう考えてもプロデューサーさんが悪くないですか、それ」

 

 ちひろさんが呆れたように言った気がするが、気のせいだろう。多分、いや、きっと。

 

「その後なんやかんやで色々あってここに拾ってもらえたわけですか……今の俺は言わば復讐者。打倒竜宮小町、そして765プロ! 最終的には律子及び社長直々に土下座させて帰還を懇願させますよ。そして俺はこう言うんです。『帰還してほしい? そんな話は聞かん!』ってね」

 

 

「ふふっ。帰還だけに、聞かん……」

 

 聞き覚えありまくりの声が耳に入ったが、もちろんスルーである。おっ、ウケたの?と内心嬉しい気持ちもあるが、それは口には出さないでおく。俺、大人だからね。それにしても、ニヤニヤが止まらないぜ。

 

「は、はあ…… 」

 

「というわけで、混沌よりいでよ我がアイドルユニット、“ニュージェネレーションズ”よ! 1にレッスン2にレッスン、34もレッスン5にレッスンだ! 営業? まあ技術を磨いてからおいおいよ。ってわけでレッスンに行くぞー」

 

 …………。

 

「……まだ来てないみたいですね」

 

「まあ、まだ待ち合わせの1時間前ですしね」

 

「…………」

 

  とりあえずちひろさん、無言でこれ以上ないくらいの笑顔を向けるの止めてくれません? 本気で怖いから。

 

 そんな微妙な間の中、事務所に入ってくるアイドルがいた。そのアイドルは、俺達がいることに気付くと、手を前に伸ばし、バッとした。バッと。そして。

 

「闇に飲まれよ(お疲れ様です♪)!」

 

 彼女流の挨拶をしてきた。なので俺も、学んだ知識を総動員し、挨拶を返す。なんかそれっぽいポーズをしながら。バーンッ!みたいな音が似合いそうな、そんなポーズ。

 

「ああ蘭子、闇に飲まれよ。くくく、今宵は肉脇肉踊る舞踏会になればよいな!(今夜のライブ楽しんでやってこいよ!)」

 

「ふふ、言わずとも。我は皆に崇拝され、今宵ルシファーとして再誕することになるであろう!(うん、私、キラキラできるように頑張る!)」

 

 そんな神崎蘭子に俺、サムズアップ。蘭子は高らかに笑いながら、この場を後にした。

 

「……ちゃんとわかってて話してるんですよね、それ」

 

 俺と蘭子のやり取りを見たからか、ちひろさんがそんな事を訊いてくる。ふっ……。

 

「俺もあんな時期を超えて来た身ですからね」

 

 あの頃の俺は、若かった。そして、痛かった。

 

「はあ、なるほど……?」

 

 ちひろさんはいまいち合点がいってないようだ。まあ、経験者にしかわからないこともある。ちひろさんは経験者じゃなかったのだろう。きっと。

 

 それから……。

 

「「「おはようございまーす」」」」

 

 どうやら1時間が経ったようで、事務所に彼女達がやって来た。俺がここ、346プロでプロデュースしているアイドルユニット、“ニュージェネレーションズ”のアイドル達が。

 

「おう、おはよう。卯月、凛、それから未央」

 

 3人を見据え、俺、明るく挨拶。

 

「おはようございますプロデューサーさん♪」

 

 島村卯月、今日もいい笑顔なキュート担当。

 

「おはよう、プロデューサー」

 

 渋谷凛、クールの申し子。色んな意味で。そんなクール担当。

 

「なんで私だけついで扱い……まあいいや、おはようプロデューサー。私達がいなくて寂しかった? なーんて、えへへ」

 

 本田未央、俺より間違いなくコミュ力高い子。コミュ力お化け。そしてパッションの塊、パッション担当。

 

 彼女達が、俺の担当ユニットのアイドルだ。

 

「ああ、寂しかったよ。この1時間すげぇ寂しかった」

 

 特にやる事もないし、ちひろさんはいつの間にかどっか行っちゃうし。

 なので。

 

「プロデューサー……そこまで私達のこと──」

 

「寂しすぎて、友紀に貸してもらったパワプロで一人選手作成しちゃった」

 

 暇潰し用にゲーム、持ってきておいて良かったわーホント。

 

「最近のサクセスは1時間前後あれば作れちゃうもんねえ……!」

 

 未央から激しいツッコミが飛んでくる。だが待ってほしい。一応、理由があって選手を作成していたのだ。

 

「今後の願掛けも込めて、卯月の名を借りて優秀な選手作ろうとしたんだけどさ……いやー、やらかしちゃって」

 

「どうしちゃったんですか私!」

 

「あー、いや、まあ、うん……ダイジョーブ博士に会ってダイジョーブじゃないことに」

 

「ダイジョーブジャナイコトニ!?」

 

「大丈夫卯月、すごい片言になっちゃってるよ?」

 

 凄く驚いている卯月を見て心配したのか、凛が卯月に言葉をかける。目が点になっている卯月の耳には、残念ながら届いていないようだが。

 

「で、そのダイジョーブじゃないしまむーはどうなったの?」

 

「出会う前はオールBあった卯月が最終的にはこんな事に……」

 

 3人にゲーム画面を見せる。

 本邦初公開、これが俺が育成した選手、島村卯月だ。

 

「オールD……」

 

 ボソッと呟く未央。

 

「うん、まあ、卯月らしいというかなんというか……」

 

 凛さんや、フォローのつもりなのか知らないけど、フォローになってない気がしますよ。

 

「まあ、現実を見ろって神の思し召しなんだろうと割り切ることにして選手登録した。ゲームくらいはパーフェクト卯月を見たかったんだけど」

 

 普通じゃない卯月さんを。スーパー卯月さんを。

 俺のそんな言葉に島村さん、気になることがあったのか、咄嗟に口が開く。

 

「パーフェクトじゃなくても私、足はちゃんとついてますよ!?」

 

 島村卯月、実に天然である。そしてそのネタはどこで知ったのだろう。俺、気になります。

 

「ネタがマニアックすぎるよしまむー!」

 

「わかる人にはわかるから」

 

 その手の人には。

 

「というか、卯月のツッコミがそもそもおかしいような気が……」

 

 みなさんもご存知の通り、天然故である。俺の記憶によると、卯月はその手の知識は疎かったはずだ。

 

 

「あっ、ナナ知ってますよ。シャアが乗ってた機体ですよね? 確かジオン──」

 

 

「菜々さんはガノタです、いいね?」

 

 そんな嬉々としながら言わないで下さい17才。そして、言っておいてからやっちまった!みたいな顔しないで下さい17才。

 

「でも、ほら、逆に考えなよ卯月。オールAは成長止まり。だけど、オールDってことは、これから成長することができる。卯月はまだまだ成長できるんだよ」

 

 誰かさんの暴言が耳に入らなかったのか、スルーするに限ると察したのか、彼女には関与せず、凛は卯月にそんなことを言う。島村卯月、思わずほろり。

 

「凛ちゃん……うん、そうだね! これから成長していけばいいんだよね! 島村卯月、頑張ります!」

 

 そんな2人の微笑ましいやり取りを、少し遠くから見つめる俺と未央。菜々さん? ウサミン星に帰還したんじゃない?

 

「うんうん、いい話だなー。……でもさプロデューサー、確か、最近のパワプロってAより上あったよね?」

 

「うん、S」

 

 

「うわあああああんっ……!!」

 

「あっ、卯月──!」

 

 事務所から颯爽と出ていく卯月。慌てて卯月を追い掛ける凛。事務所には、置いてきぼりをくらった、俺と未央が残っている。

 

「……で、未央。どう収拾つけるんだこれ。未央が俺に振ったせいでいい話で終わらなくなりそうなんだが」

 

「えっ? なにその私のせいみたいな言い方。振ったのは私だけど、トドメ刺したのはプロデューサーだよね。はい論破」

 

「ぐっ、どないせぇと」

 

「とりあえずそれっぽいこと言ってこの話を締めるとか?」

 

 なかなか無理難題な事を言う。しかし、こんな時こそ、プロデューサーの手腕が発揮するといっても過言ではない。思い出せ俺、何度だって俺はパーフェクトコミュニケーションをしていた筈じゃないか! それくらいバッドコミュニケーションをしていた気がするが、それはいったん置いておいて。

 

「それっぽいことそれっぽいこと……そ、そうだ、話を強制的に終わらせることができるワード……!」

 

 俺は大きく息を吸い込み、クワッと目を開いた。そして発する、あの言葉を。

 

「俺達の戦いは、これからだ──!!」

 

「えっ、未完オチ!?」

 

「……なるほど。未完オチだけに、オチがみっかんなーいわけですね」

 

「楓さんーーーーっ!?」

 

 はいぐだぐだー。そういえば、最初から事務所にいましたねぇ貴女……!!

 

 そんな、346プロダクションのある日の風景。はてさて、竜宮小町を打倒するのはいつになることやら……。

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