ポケモントレーナー最年少でリーグチャンピオンとなり、幾度の大会を制覇しポケモン図鑑カントー地方を完成させて名を世界に轟かせた男・レッド。彼は今、ピジョットの背に乗り、ナナシマに向かって飛んでいた。
彼はチャンピオンになって暫くしてリーグチャンピオンの座を返上してバトルの世界から引退していた。その後の活動は殆ど世間には知られていない。
あまりにも強すぎてバトルのさいに相手のポケモンを殺してしまったため引退した説。ロケット団を壊滅したのがレッドで残党に命を狙われて身を隠した説。あまりにもレッドが強すぎて他のトレーナーが弱すぎるように感じてしまい飽きてしまった説、などと色々な憶測が飛び交っていた。
真実は本人とその家族。ライバルのグリーンと、グリーンの祖父であり、ポケモン博士でもあるオーキド博士しか知らない。
ライバルのグリーンに勝ち、リーグチャンピオンになったあの日からもう8年。16歳だった少年は、24歳の青年となっていた。ポケモンマスターと呼ばれる彼は、ポケモンと人間がより良い生活が出来るように活動を始めようとしていた。
ポケモンに使う『きずぐすり』を自分で作れるよう、薬剤師の資格を取り、ロケット団壊滅した功績を称えられて、ポケモン犯罪を取り締まるレンジャーの資格を特別に貰ったりとレッド失踪に世間が騒いでいる間、レッドは自分の理想の世界を作るため準備をしてきた。
もうロケット団のような存在を作らない。今のようにポケモンと、人間が共存した世界を残せるように最善を尽くす。これがレッドが思い描く理想で、その理想を実現させるためチャンピオンの座を返上した理由だ。
レッドはナナシマに向かっていた理由は、リーグ四天王の一人のカンナに世話になったお礼を言いに向かっていた。カンナに会うのはチャンピオン返上したいざこざ以来だから8年ぶり、レッドが苦手とする女性の一人で、何度貞操の危機を感じたか分からない。それを除けば尊敬できる人物なのだが。
「なぁ、『
レッドは跨ったいる
『知らないわよ、そんなの。自分でなんとかしてよね』
ピジョットに『へんしん』している幻のポケモンのミュウはテレパシーで言った。
『だいたいレッドが蒔いた種でしょ、私は知らないんだから!』
「はぁ!?俺が何かしたってのか?何もしてないぜ!!」
『あんた本気で言ってるの?』
「ナンパとかしてないでしょっての、18年一緒にいてそんなことしたことあるか?」
『はぁ……』
「おい、なんだその溜息」
『もういいわ……この鈍感』
幻のポケモン ミュウ
全世界にどこかにいるといわれているポケモンで、すべてのポケモンの遺伝子を持ち、ポケモンが使う技をすべて使えると言われるポケモン。その幻のポケモンがレッドの初めてゲットしたポケモンである。
と言っても、出会いはレッドがトレーナになる前、6歳の時。レッドがマサラタウンでおもちゃで遊んでいたとき、ふとした拍子に無くしてしまった。レッドがおもちゃを探していたら、そのおもちゃで遊ぶポケモンがいた。そのポケモンこそがミュウである。
「それ、僕のおもちゃだよ、返してよ」
「ミュ~」
いやだとミュウは首を横に振る。
「そんなに首を横に振っても僕のだよ」
「ミュウ~!」
大切そうにおもちゃを抱え首を横に振る。
「もしかしてそれ気に入ったの?」
「ミュウ!」
うん!と言わんばかり頷くミュウを見てレッドは少し悩んで言った。
「う~ん、分かった!いいよ、それあげる!!」
「ミュウ!?」
レッドの一言で驚くミュウ。
「いいよいいよ、僕には友達のグリーンがいるもん。グリーンと遊べばおもちゃなんていらないもん!」
「それじゃあね、それあげる!大切にしてよね!」
バイバイと手を振ってその場を去ろうとするレッドを見て驚いた。人間は欲深い生き物ではないのかと。ミュウが知っている人間はミュウを研究材料としか見なかった。自分の体毛からクローンを作って壊滅した人間を見て愚かな生き物だと思っていた。しかし、この人間の子は欲などなく笑顔でこれを置いていく非常に興味が湧いてきた。
『ねぇ、待って!』
「ふぇ!?だ、誰!?」
『私よ、君の目の前にいるでしょ』
「君喋れるの?喋れるポケモンもいるんだね」
『ねぇ、友だちのグリーンってどこにあるの?』
「僕のお家の隣の家がグリーン君の家なんだよ。僕と同い年で、一緒に遊ぶ友達なんだ。君にもいるんだろ?」
『友だち……。ミュウいつもひとり。友だちいない』
「ふ~ん、それじゃあちょっと寂しいね」
『君は友だちいっぱいいるの?』
「うん、いるよ!グリーン君でしょ、リーフちゃんでしょ、あとはブルー君も友だちだしあとは……」
『ミュウ、君と友だちなりたい』
「うんいいよ!僕はレッドって言うんだ」
『レッド。私ミュウ』
「ミュウか、かわいい名前だね。僕はまだポケモントレーナになれないから、ポケモン持っていたらお父さんやお母さんに怒られるからほかの皆には内緒だよ」
『うん!ミュウも秘密にする!ミュウは秘密するの得意』
レッドが図鑑を完成させて151番目のポケモンとしてミュウを登録してオーキド博士に提出した際はあまりの驚きで3日間熱を出して寝込んでしまった。ちなみにミュウの遺伝子から生まれたミュウツーは、ミュウがマサラタウンにいると知り、復讐心に駆られてレッドの家に襲撃をしたが、レッドのママにフライパンでぶっ叩かれて気絶したところをママの投げたモンスターボールで捕まった。そのおかげでポケモン図鑑が完成したのだから何とも言えない話である。ちなみにミュウツーはママのありがたい説教のおかげで改心して今ではマサラタウンでママと家事炊飯をこなしている。レッドとミュウは世界で一番強いのはママだと思っている。
『えへへへ(でも小さいころのレッド可愛かったなぁ)』
「なに笑ってんだよ、気色悪いな」
『あら失礼、もうすこしでナナシマ諸島よ(でも今のレッドもかっこいいわぁ)』
「はいはい。っておい、進行方向に雷雲だぜ」
『わかっているわ、でもちょっと待って』
ミュウは雲の中に何かの気配を感じて様子を見る。雷雲の中にポケモンの気配を感じたからだ。
『(雷雲にポケモンと言ったらサンダーかしら?でもレッドが仲間にしているから別個体?それとも別な伝説ポケモンかしら?)』
「どうした?」
『レッド!気を付けて何か来る!?』
ミュウがそう伝えると同時に二体のポケモンが現れた。
「ルギア!!」
『ギラティナ!!』
どちらも伝説ポケモンと扱われるポケモンである。その二体が激しくぶつかり合い戦っていた。
「おい、ルギアの様子がおかしいぞ!!」
『体色が黒に近い色をしているわ!レッド近づくわよ!!』
「どうやって!?」
『ギラティナがいるからあいつの十八番、『シャドーダイブ』を使うわよ!!』
ミュウはピジョットからギラティナへと『へんしん』して、シャドーダイブを発動。ギラティナの首筋に噛みつくルギア目がけてやぶれた世界を通って奇襲をかける。ルギアは
「ギラティナ、大丈夫か?」
『おお、これはレッドさんに姉御さん、お久しぶりです。ありがとうございます助かりました』
『ギンガ団の事件以来ね、どうしたのよカントーで暴れるなんて』
「ダメージ受けてるな、『すごいきずぐすり』使うからじっとしなよ」
『すんませんレッドさん、面目ないです。姉御さんあいつはただのルギアでは無いです。ルギアのコピーとでも言いましょうか、別世界からやってきたポケモンです』
『ポケモンのコピーですって!?』
「おい、何か来るぞ!!」
レッドが叫ぶと目の前の空間が歪む。黒いルギアがやぶれた世界へと侵入してきた。
「馬鹿な!!なんでこいつが!!」
『姉御にレッドさん!!こいつはあなた方が知っているポケモンのルギアではございません!!』
『レッド!戦うわよ!!』
「ああ、リザードン君に決めたァ!!」
レッドはモンスターボールを投げて今手持ちで一番早いリザードンを出す。
「グガァァアア!!」
「リザードンすまんバケモン相手だ、俺を乗せてあいつの攻撃をよけてくれ、戦闘はギラティナとミュウギラティナの二体に任せる。頼むぞ!!」
「グォアウ!」
『レッドさん、姉御さん行きますよ!!』
「ギッッシャァアアア!!!!」
ルギアの咆哮、どこか機械音が混ざっている。
「リザードン『えんまく』!ギラティナとミュウはリザードンの後ろに『飛べ』!!」
リザードンが口から煙幕を張り、ルギアの視界を奪う。その隙に二体はリザードンの後ろにシャドーダイブで移動する。
「お前らァ『りゅうのはどう』!!準備!!」
ギラティナとミュウギラティナとリザードンは口を開いて青いエネルギーを圧縮し発射体制に突入する。
「######################!!」
もはやポケモンの咆哮とは言えない叫びをあげながら、煙幕を掃ってルギアが現れた。
「ってぇええ!!」
『『『りゅうのはどう』』』!!!
レッドの号令に合わせて三体の『りゅうのはどう』を発射する。攻撃はルギアの頭部に直撃した。轟音と共に大爆発が起こる。
『やったわ!!』
「ミュウの馬鹿、フラグ立てんじゃねぇ!!」
爆発した空間が歪みミュウとレッドを引きずり込む。それを見たレッドはリザードンをボールに戻す。
『姉御、レッドさん!!』
ギラティナがミュウとレッドを歪んだ空間から助けようとするが、ミュウとレッドは歪んだ空間に吸い込まれていった。
残されたギラティナはただやぶれた世界を漂うしかなかった。
作者はポケモンはプラチナまででしかやったことがありません。ポケモンも敵として出そうか考えていますがのんびりやっていきたいと思います。