大本営では新たな『深海棲艦』が現れたという情報で緊急会議を開いていた。世界は20年ほど前に突然『深海棲艦』と呼ばれる兵器ような生き物が世界中の海域を暴れまわり、船という船を沈め占拠してしまった。これに対し各国は軍事兵器を使って戦ったがまるで効果がなかった。この時指揮をしていた大将はこう呟いた。「まるでゲンガーに対してラッタがとっしんを繰り出しているようなものだ」と。この時海軍大将が言った言葉の意味を理解できる者が誰一人いなかった。その男の名前は庄城戸しょうきど。のちに大本営にて元帥となる男の名前だ。
軍事兵器が通用しない相手を倒すただ一つの道が人類の前に現れた。世界大戦時に沈んだ戦艦の魂を持つ少女たち。艦娘かんむす。彼女らの力で深海棲艦に対応できるようになった人類は反撃の狼煙を上げた。日本本土近くの海域は何とか取り戻したと思ったら、今度は新しい深海棲艦の登場である。
大本営の会議室にて、投影機に映し出された写真を見て元帥は驚いて呟いた。
「これは……伝説のポ……モ……のル、…アか?」
「元帥?」
元帥の一言に気が付いた秘書官を務めている大和型一番艦・大和は元帥の変化に気が付いて声をかけた。
「いや、こんなものも敵にはいるのかとね」
大和は元帥がここまで動揺しているのを初めて見た。どんな状況でも冷静に対応してきた元帥が動揺しているのを見て集まったかく鎮守府の提督も動揺を隠せない。
投影機に映し出さてた写真には龍のような深海棲艦が写っていた。
「元帥が驚くのも無理はないかと、報告によれば大きさは約6メートルほど今までの深海棲艦とは違い自ら飛行でき、艦載機などを撃破するとのことです。口からは砲身が確認され砲撃を行ってきます。わかっているのがここまでです」
舞鶴鎮守府提督が書類を持って報告した。たったこれだけの情報か、と他の鎮守府の提督は彼を責める気にはなれなかった。そもそも彼の情報は彼が遠征に艦隊を出撃した際にたまたま新たな深海棲艦と出会ってしまった。
駆逐艦と軽巡には満足な対空装備などなく、駆逐艦の一隻が轟沈する被害を受けた。一番辛いのは彼と彼の艦娘たちだろう。
「うむ、報告ありがとう。尊い犠牲を払って得た情報だ、十二分に活用せねばな」
床城戸元帥はそう言って腕を組んだ。
「ふむ、まずはこの化け物を名前を付けねばなるまい。これからの戦いでまた相見えるかもしれん」
会議室にいた一同は頷いた。
「これからこやつを『ルギア』と称し戦うことにする」
元帥は今まで敵につけてきた『イロハニホヘト』を付けずにまるで物語に出てくる龍の名前を付けた。
「『ルギア』ですか?」
舞鶴鎮守府提督が訪ねた。
「うむ、『ルギア』とは昔、母からよく聞かされたおとぎ話に出てきた龍の名よ。これから我々の戦いはもっと過激なものになるだろう、みな心してかかれ」
「「「御意」」」
「これにて会議は終いじゃ、情報が少ない何かあったら報告せよ」
こうして緊急会議は終わった。
『レッド!!』
歪んだ空間に巻き込まれたミュウとレッドは巻き込まれる瞬間に『シャドーダイブ』を使ってやぶれた世界から脱出を図った。
表の世界へと現れたミュウは『へんしん』を解いて本来の姿に戻った。レッドとミュウが現れた場所は上空。レッドとミュウは重力に従って海面へと落ちていく。
ミュウは『ねんりき』を使ってレッドを支える。
『レッド!大丈夫!?』
「っ、ああ、なんとかな」
『近くのポケモンセンターにテレポートするわよ』
「ああ」
ミュウはレッドごとテレポートを実行する。しかし、テレポートした場所は赤レンガの大きな建物の前だった。
『な、何ここ?私どこにテレポートしたの?』
「おい、こんな場所見たことねぇぞ。どこだここ?」
レッドは帽子を被り直して建物を見る。今まで旅をしてきたレッドたちには見覚えがない場所だった。レッドはポケモン図鑑を取り出してマップを開く。
【居場所を特定できません】
電子音声がそう伝えた。
『どこなのここは!?』
ミュウが慌てた声を伝えてくる。レッドは落ち着いて言った。
「ミュウ、落ち着け。お前らしくもない」
『っ!……ええごめんなさい』
「人に聞けば分かるだろう。丁度迎えが来たみたいだしな。ミュウお前は姿を隠せ」
『わかったわ』
ミュウは『へんしん』を使ってモンスターボールのバッチになってレッドの帽子にくっついた。
「おい、お前ここは一般人は立ち入り禁止だぞ」
軍服を着た男が駆け寄ってきた。
「すみません、私は旅のトレーナーですが、道を間違えてしまいました」
「何ぃ、なんだって!?貴様何と言った」
敵意むき出しの反応に思わずたじろぐレッド。嫌な考えが一つ浮かぶ。
「自分はポケモントレーナーのレッドという者です」
「ポケモントレーナー?なんだそれは、貴様ふざけているのか!?ここは大本営、一般人が入れる場所ではないぞ!どうやって厳重警備された門を越えてきた!!」
『レッド、もしかして』
(ああ、俺たちの世界とは別の世界に来たのかもしれん)
ミュウがテレパシーで伝えてきた。しかし、まだ確証が足りない。
「落ち着いてください、自分はマサラタウン出身のレッドと申します。一人旅をして道に迷いここまでやってきました。大きな建物故、誰かに道を尋ねようと思い入りましたが人に出会えず、ここまで来てしまったのです。勝手に侵入したことは詫びます。申し訳ありませんでした」
『レッド、まずいわ、逃げるわよ』
(待て!ここはどこか場所を確認してから逃げるべきだ)
テレパシー作戦会議を開き、高速で相談する。
「ふむ、マサラタウン出身といったな、どこにある街だ?」
この男の一言でほぼ分かった。ここは本来いた場所ではないと。
「カントー地方です」
「関東地方の何県だ?」
なにけん?何それ?レッドの中に疑問が生まれた。
「何県だと聞いている、言え!!言えないのか!?」
「えっと、t「何を騒いでおる?」……ん?」
テレポートと言おうとしたとき建物から声がかかった。男は振り返って敬礼をする。
白い軍服を着た初老の男が歩いてきた。隣には美しい女性が立っている。
「何事だ、と聞いておる」
「はっ、一般市民が侵入していましたのでどこのものかと尋ねておりました」
「ふむ、ここは大本営だ。一般市民の立ち入りは禁止しておるが……」
初老の男はここまで言うと言葉が止まった。またレッドも初老の男を見て呟いた。
「オーキド博士?」
『レ、レッドこの人、オーキド博士にそっくりじゃない?』
ミュウもそう思うほど、初老の男はオーキド博士に似ていた。
「オーキド……だと?……きみは……どこから来たのかね?」
「元帥殿?知り合いでございますか?」
「自分はマサラタウンから来ました」
「マサラタウン…………か」
「元帥どうしたんですか?」
女性が不安そうに訪ねた。初老の男は右手を挙げて伝えた。すこし黙ってくれと。
「ふむ、マサラタウンか。……身分証明書のたぐいはあるかね?」
「ハイあります」
レッドはトレーナーカードを取り出した。初老の男はジムバッチが施されたトレーナーカードを見ると、目を大きく見開いてしばらく黙ったかと思うとトレーナーカードをレッドに返すと帽子を取って頭を下げた。
「リーグチャンピオンとは知らずに失礼いたしました。どうぞお許しください」
突然の謝罪にレッドも女性も男も固まってしまった。
『何?何!?何があったっていうの!?』
ミュウも困惑している。
「えっ、いや、自分こそ失礼いたしました」
レッドも訳も分からずとりあえず頭を下げる。初老の男は言った。
「ささっ旅の疲れもありましょう、ここで少し休んでください」
そういうと女性に向かって「大和、この方を客間に招待しなさい」というとレッドのバックを持って案内を始めた。
『あ、ありのままのことを話すわ』
(話さんでいい)
ミュウがテレパシーで謎の説明を開始しようとするのでレッドはそれを止めた。簡単に言うと目つきの鋭いオーキド博士のそっくりさんに豪勢な客間に通された。この緊張はグリーンに勝って殿堂入りするときにポケモンを登録するマシーンの前に立った時と同じものだ。胃が痛くて死にそう。
大和と呼ばれた女性は笑顔でコーヒーを差し出すが、目が笑っていない。なんだろう、マジ切れしたシロナさんみたいだ。
「初めまして、私は庄城戸元帥の秘書官を務めております、大和型一番艦の大和と申します」
「マサラタウンのレッドです」
聞いたことの無い単語がいくつかあってレッドは混乱状態に陥っていた。レッドはなんでもなおしを飲み込みたい衝動に駆られながら何とか答えた。
「ふむ、申し訳ないが大和。私はこの方と二人きりで話をしたい。少し席を外してくれるか?」
「はい、わかりました」
女性は返事をすると一礼をして部屋から出て行った。
初老の男はそれを確認すると話を切り出した。
「君はマサラタウンの出身だと言ったね」
「はい」
「では、オーキドという者を知っておろう」
「はい、私にポケモンをくれた人です」
レッドの一言を聞くと初老の男は頷いて言った。
「うむ、では単刀直入にいうと私はオーキドの兄のショーキドと言う。マサラタウン出身じゃ」
レッドは、あたまのなかがまっしろになった。